平成20年度新司法試験の結果について(4)

選択科目別合格率

以下は、選択科目の選択者別の受験者数、合格者数及び合格率の表である。
これは、受験者ベースで算出している。

  受験者数 合格者数 合格率
倒産 1523 550 36.1%
租税 308 100 32.4%
経済 592 185 31.2%
知財 947 309 32.6%
労働 1994 660 33.0%
環境 341 105 30.7%
国公 108 30 27.7%
国私 425 126 29.6%

倒産法が頭一つ抜き出ている。
租税・知財・労働はほぼ横並び。
経済・環境・国際公法・国際私法が低めである。
昨年は国際法のみ他科目と6〜10%近く低かった。
今年はそこまで差が付いていない。
ただ、国際法は今年もワースト2位を占めている。
また、トップの倒産法と最下位の国際公法との差は8.4%ある。
昨年の記事でも述べた通り、これは選択科目の問題の難易度による差ではない。
選択科目ごとの問題の難易度は、得点調整によって平均化されるからだ。

そうだとすると、このような差がつく原因は何か。
二つのことが考えられる。
一つは、選択科目ごとの学習の負担の大きさである。
負担の大きい科目を選択すると、他の科目に手が回らなくなるために、合格しにくくなる。
このように考えるならば、合格率の高い科目、すなわち、倒産法を選択すべきということになる。
他方、もう一つ考えられるのは、実力者が選択する科目かどうかということである。
実力のある受験生が多く選択する科目があるとすれば、その科目の合格率は上がるはずである。
このように考えると、敢えて合格率の低い科目を選択することで、選択科目の成績を有利にすることができる。
昨年は、国際法だけが突出して合格率が低かった。
そのため、未修者が「国際」という単語に安易に飛びついたのではないかと考えた。
すなわち、上記のうち後者の要因が大きいのではと思った。
ただ、今年はそれほど国際法だけが突出して低いわけではない。
他方、倒産法の合格率の高さは、昨年と同様のものがある。
倒産法は他科目よりも必修民事系科目との親和性が高く学習しやすい部分はある。
その要素が大きいのかもしれない。

一方で、倒産法は昨年と今年について、足切りが多かった。
この傾向が続くとすると、安易に倒産法選択をすると、命取りにもなりうる。
そうすると、労働法あたりが無難なのだろうか。

選択科目の見直し

選択科目は定期的に見直しをすることになっている。
つまり、今ある科目が削除されたり、今まで無かった科目が増えたりする可能性がある。

第3次規制改革推進3カ年計画(平成20年3月25日閣議決定)U15(2)Bカ

(以下引用)

 今後の選択科目の見直しの際には、科目としての範囲の明確性や体系化・標準化の状況等を見据えつつ、単に法科大学院での講座数など受験者等の供給者側の体制に係る要素のみに依拠することなく、実務的な重要性や社会的な有用性・汎用性等を考慮し、社会における法サービス需要に的確に応えるという観点をも踏まえて科目の追加・削除について柔軟に検討の上、その結果に基づき速やかに措置する。その際、現行の選択科目についても、以上の要素を改めて検証する。

(引用終わり)

その具体的な検討は、3回目の新司法試験、すなわち今年度の結果が出てから行うとされていた。
ただ、法務省はあまり乗り気ではないようであり、今年6月の時点では全く着手されていないようだ。

規制改革会議第一回法務・資格タスクフォース平成20年6月24日

(以下引用)

○佐々木参事官 司法試験の選択科目の方でございますけれども、これについては前回も申し上げたと思うんですけれども、司法試験委員会の方で、3回程度実施した後に作業に入ると答申しております。今回、まさに3回目の実施中でございますので、これが終わったころから。

○福井主査 すぐ結果が出るわけでしょう。

○佐々木参事官 司法試験の結果は今年中には出ます。

○福井主査 3回の結果を踏まえて見直すのであれば、今から準備に着手していかないと間に合わないのではないでしょうか。

○佐々木参事官 ただ、どういう結論が出てくるかで見直す必要があるかないかも含めてでございますから。

○福井主査 見直す必要があるかないかを、どういう体制、どういうスケジュールで検討されるわけですか。

○佐々木参事官 それを今から考えていくことになると思います。

○福井主査 現時点では、まだ何も着手しておられないんですか。

○佐々木参事官 今のところはそうでございます。これからということです。

○福井主査 少し遅過ぎませんか。閣議決定された計画では、平成20年度以降逐次検討措置、となっていますから、少なくとも20年度になった段階で検討には入っていただくのが筋です。それで、必要に応じて熟せば措置していただくということでありますし、さらに現行の選択科目について検証すべきであるということもお約束いただいております。現行の選択科目は既に2回の実施実績があるはずですね。それについて、3回たまらないと1回目と2回目について、一切検証ができないということには、物理的にもなり得ませんので、既に検討に着手していただいていてしかるべきかと思われます。いかがでしょうか。

○佐々木参事官 3回程度の資料をまとめて、どういうふうに分析しようかという話でございますので。

○福井主査 そうは書いてないです。

○佐々木参事官 手法としてそういうふうに考えてございましたが。

○福井主査 あくまでも今後の選択科目の見直しの際には云々、とありまして、科目の追加・削除について、柔軟に検討の上、その結果に基づき速やかに措置すべきである。その際、現行の選択科目についても、以上の要素を改めて検証すべきである、ということですので、これはあくまでも20年度以降逐次検討いただくということです。

○佐々木参事官 今年度以降逐次検討ですね。

○福井主査 間もなく次回試験の結果が出るということであれば、これまでの実績についての検証については、恐らくすぐにでもできるでしょうし、本来早期にやっていただいた方がよろしいかと思います。

○佐々木参事官 なるべく早期に着手したいと思います。

(引用終わり)

従って、すぐに選択科目が見直される可能性はそれほど高くない。
ただ、あまりにマイナーな選択科目を勉強していると、見直し段階で削除されるおそれがある。
自分が受験する頃には、勉強していた科目が無い、ということは避けなくてはならない。
一応、これからローで受講する科目を考えている人は、頭に入れておくべきである。

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