法科大学院定員削減の意味(1)

増員推進派の発案

最近、法科大学院の定員削減が検討され始めた。

(毎日新聞2008年12月6日東京朝刊より引用)

法科大学院:9割が定員削減検討 19校は10年度から−−全74校調査

 文部科学省が10〜11月に全国74法科大学院を対象に実施したヒアリングで、4分の1を超える19大学院が10年度入試(09年実施)からの定員削減を決めていることが分かった。また、このほか49大学院が定員の見直しについて「検討を始める」と回答。新司法試験の合格率低迷などを受け、多くの大学院が現状に危機感を抱いている実態が浮かんだ。

(引用終わり)

この、定員削減を言い出したのは、保岡前法相と、中教審の法科大学院特別委である。

(共同通信2008/08/07 21:43配信記事より引用)

法科大学院の統廃合表明 法相「低実績校は整理」

 保岡興治法相は7日、修了者が新司法試験の受験資格を得ることができる法科大学院について、合格実績の低いものは統廃合すべきだとの考えを表明した。法科大学院の設置認可を行う文部科学省と近く協議を始める方針も示した。

(引用終わり)

 

(毎日新聞WEB版08年9月27日15時0分配信記事より引用)

<中教審>法科大学院縮小を…定員見直し、初提言へ

 法科大学院のあり方を検討している中央教育審議会の法科大学院特別委員会は、30日に公表する中間まとめで「法科大学院全体の規模を縮小すべきだ」と提言する方針を固めた。新司法試験の合格率低迷や志願者数減少が続く大学院には、自主的な定員見直しを要望。入学時の適性試験に合格最低ラインを設け、学生の質を担保することも盛り込む。国の諮問機関が法科大学院の規模縮小を提言するのは初めてで、再編統合が加速しそうだ。

(引用終わり)

保岡前法相が法曹増員推進派であることは以前の記事で述べた。
また、法科大学院特別委も法曹増員の推進派である。

(毎日新聞WEB版08年7月24日配信記事より引用)

司法試験:中教審が日弁連に反論 合格者増員「減速」案で

 司法試験合格者を2010年に年間3000人に増やす政府の方針に対し、日本弁護士連合会が「ペースを減速すべき」と訴えていることについて、中央教育審議会の法科大学院特別委員会は23日、「法曹養成制度見直しを必要とするほど重大な問題は認められない」との反対意見をまとめた。

(引用終わり)

また、この定員削減論に対して、各社マスコミは同調する社説を書いている。

(08年10月6日読売新聞社説より引用)

法科大学院 乱立解消は避けて通れない

 法律家を養成する機関として、法科大学院の教育体制をどう改善していくのか――。司法制度改革を実のあるものにするうえで、急を要する課題である。
 中央教育審議会の特別委員会が法科大学院教育の質向上に関する中間報告をまとめた。新司法試験の合格率の低迷が続いたり、定員割れに陥ったりしている法科大学院は、自主的に定員の削減を検討すべきだとした。
 法曹人口を増加させつつ、裁判官、検察官、弁護士の質の低下を防ぐには、法科大学院の教育レベルの底上げが肝要だ。
 経営上の理由から定員を多めに設定した結果、きめ細かい実務教育が不十分な大学院が多いとされる。実績を残せない大学院は、教育の質向上の観点から定員削減に踏み切るべきである。
 法科大学院数は74に上り、乱立状態といえる。総定員は約5800人に達している。
 新司法試験の合格率は当初、7〜8割が目安とされたが、今年の合格率は33%だった。新試験導入からまだ3年目とはいえ、実態は当初の狙いとかけ離れている。
 今回の試験で、合格者がゼロだった大学院が3校あった。実績が振るわない大学院に学生が集まらなくなり、淘汰(とうた)されていくのは、自然の流れといえる。今後、統廃合は避けて通れまい。

(引用終わり)

 

(08年10月5日産経新聞社説より引用)

法科大学院 法曹の質向上へ再編急げ

 中央教育審議会の特別委員会が法科大学院の定員削減や統廃合を促す中間報告をまとめた。レベルの低い大学院が淘汰(とうた)されるのは当然として、本来の設立趣旨を生かせる再編が急務だ。
 法科大学院は、司法改革に伴い、弁護士や裁判官ら法曹の新しい人材養成機関として平成16年に開設された。法学部卒業生など既修者向けの2年コースと、社会人など法学未修者対象の3年コースがあり、修了者は新司法試験の受験資格が得られる。
 新司法試験の合格率は当初7、8割程度と想定された。ところが修了1期生から想定を大幅に下回る結果となり、3回目の今年の合格率は約33%と前年実績をさらにおよそ7ポイント下回った。合格者ゼロの大学院も3校あり、修了者のレベルや法科大学院の教育の質自体への懸念が高まっている。
 法科大学院は現在74校あり、定員は全体で約5800人となっている。当初は20校程度と予想されていたことを考えれば、「乱立」との批判もうなずける。

(引用終わり)

 

(08年10月5日日経新聞社説より引用)

再編避けられぬ法科大学院

 法曹を大幅に増やすための養成機関なのに、その役割が果たせなくなっているのではないか。発足から4年を経た法科大学院の実情をみると、そんな懸念を深めざるを得ない。中央教育審議会も入学定員の削減や再編・統合を初めて提言した。これを機に、各校は自主的に思いきった改革を進める必要がある。
 今年の新司法試験は全国74の法科大学院すべての修了者が受験し、昨年に比べ200人ほど多い2065人が合格した。しかし合格率は32.9%と約7ポイント下がり、合格者ゼロが国立も含め3校あった。
 新司法試験は、法科大学院で学んだ知識や技能が身に付いたかどうかを見極める資格試験という位置づけだ。だから修了者の7―8割は関門を突破できる。こんな青写真が示されていたからこそ法科大学院は幅広い志願者を集めてきた。
 そのもくろみが大きく外れた要因は、乱立と過大な入学定員にある。74校も認可した文部科学省の制度設計ミスは責められるべきだが、しっかりした指導体制を整えないまま開設に走った大学も多い。そのツケが回ってきたのはたしかだ。
 今のままでは法科大学院を目指す意味が薄れ、魅力が大きく減じてしまう。とりわけ一部の小規模校や地方校は危機的だ。名ばかりの法曹養成機関では優秀な志願者も指導教員も十分に確保できず、試験合格はおぼつかなくなる。すでに一部の大学院がこの悪循環に陥りつつある。
 中教審の特別委員会がまとめた提言は、まずそうした不振校は定員削減や他校との統合を進めるよう求めている。文科省がその失策を認めて路線転換した形で、今後、実績の上がっている大学院も含めて影響が出るのは必至だ。国公立、私立を問わず教育内容を充実させるために大胆な再編の道を探り、それができないなら撤退も考える時期である。

(引用終わり)

マスコミは法曹増員推進派である。
一斉に同じ内容の社説を書くのは今回が初めてではない。
日弁連が増員反対の立場を示すと、一斉に社説で批判するということが度々あった。

法曹増員のペース落とすな 08/7/24 日経新聞社説
 「見識を疑う」と町村信孝官房長官が批判したのも、もっともだ。

日弁連―司法改革の原点に帰れ 08/07/22 朝日新聞社説
 町村官房長官は「司法改革に携わってきた立場をかなぐり捨て、急にそういうことを言い出すのは見識を疑う」と述べた。当然の批判と思う。

司法試験合格者 増加のスピードを緩めるな 08/3/3 読売新聞社説
 就職難という理由から増員に反対するのでは、一般の理解は得られまい。

弁護士会 司法改革を後退させぬように 08/2/10 毎日新聞社説
 弁護士の出番が増えているのに、増員を抑制するのでは筋が通らない。既得権のパイを小さくしたくないとの発想に根差しているのなら、世論の納得は得られまい。

弁護士増員―抵抗するのは身勝手だ 08/2/17 朝日新聞社説
 弁護士が増えれば、割のいい仕事にあぶれる人が出る。だから、競争相手を増やしたくないというのだろうが、それは身勝手というほかない。

「弁護士は多すぎ」は本当か 08/2/9 日経新聞社説
 大幅増員すれば弁護士間の生存競争がひどくなり、人権の擁護・社会正義の実現を目指す仕事には手が回らなくなる」。増員反対派の、こんな言い分にうなずき、法曹は増やさないほうがよいと判断する国民はどれほどいるだろう。

法科大学院の定員を減らすことは、将来の法曹候補生の数を減らすことである。
従って、法曹増員とは逆の方向を向いているように見える。
増員反対派の言い出しそうなことである。
しかし、そうではない。
今回の定員削減は、増員推進派の意向によるものである。
現在、法曹増員は壁にぶつかっている。
法科大学院の定員削減は、それを破る苦肉の策ということになる。

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