最新下級審裁判例

大阪地裁平成20年10月23日

【判旨】

 民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(権利等)が事実的,法律的根拠を欠くものであるうえ,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁参照)。

 

神戸地裁平成20年07月16日

【犯罪事実】

 被告人は,

第1 Aらとともに,被告人をリーダーとし,その指揮命令に基づき,A,B,C 及びDらが携帯電話等の入手,電話等による欺罔行為及び金員の振込要求を,E,F,G,Hらが預金口座からの払戻しを,Iらが詐取金の管理をするなどの任務の分担をあらかじめ定めた組織により,反復して,不特定多数人から,親族が保証債務等の返済に追われているかのように装って金員を詐取すること により利益を図ることを共同の目的とする団体を形成していたものであるが,上記団体の活動として,上記組織により,A,B,J,I及びEらと共謀の上,平成17年7月14日から平成18年5月17日までの間,47回にわたり,兵庫県内等において,東京a市 b町c番地K方にいた同人及びその妻Lほか30名に対し,いずれも電話で,同人らの息子や金融会社の担当者になりすまし,緊急に息子の保証債務等の返済資金が必要であるなどとうその事実を言い同人らをしてその旨誤信させ,よって,被告人らが管理する他人名義の普通預金口座に現金合計1億1677万6270円を入金させ,もって,団体の活動として,詐欺の罪に当たる行為を実行するための組織により人を欺いて財物を交付させた,

第2 財産上不法な利益を得る目的で犯した上記組織による詐欺の犯罪行為により 得た現金の帰属を仮装しようと企て,A,B及びEらと共謀の上,平成17年7月14日から平成18年5月17日までの間,Kら多数人に対し,その親族が保証人となった債務等の返済資金が緊急に必要であるなどとうその事実を言って,上記Kら多数人をして,被告人らが管理する他人 名義の普通預金口座42口座に詐取金合計1億1677万6270円を振込送金させて,同口座に預け入れ,もって,犯罪収益の取得につき事実を仮装した,

 ものである。

【判旨】

 被告人は実行行為には関与していないが,

・ 実行犯役の意見を聴取しながら 必要な指示・意見表明を行っていること,
・ 一部の振込口座を用意していること,
・ A及びCとの関係で,自らは一部口座を用意することはあっても,詐欺自体に直接関与していないのに,同人らの詐取金の3分の1,あるいは半分といった大金を取得していること,

 これらの事実にかんがみると,被告人は,本件振り込め詐欺のグループを設立したリーダーとして,被告人とAら実行犯役とも共同正犯の関係に立つものである。

 さらに,Jも,実行行為には関与していないが,

・ 判示第1別表1番号1ないし4の各犯行に関与して,本件振り込め詐欺の 手法を知っていたJが,再び振り込め詐欺行為により金員を得ようと考えたが,同人自身は実行犯役に向かないことから,友人のDを実行犯役にしようとし,同じく金員を得たいと考えていたものの以前に誘いを断り自分からは一緒に振り込め詐欺をやらせてほしいと頼みづらいというDに代わって,被告人に,DをAやCとともに振り込め詐欺の実行犯役にしたいと依頼して,それを可能にしたこと,
・ Jは,Dが本件振り込め詐欺に実行犯役として参加するに際し,その手法をある程度伝え,Dが参加後は,毎日,同人から振り込め詐欺による詐取金等の報告を受け,同人の詐欺の状況を把握するとともに,同人から詐取金を受け取り,その4分の1程度を同人に渡し,その残りを自宅で管理し,その金員の一部をJの遊興や高級車を購入することなどにも費消するなどし,他方,Dには振り込め詐欺に使う道具の入手等のために経費が必要になれば申し出るように言っていたこと,
・ Jは,平成18年4月ころに実行犯役の下に警察から電話がかかってきた時,今後も振り込め詐欺を続けていくかどうかにつきDから意見を求められ,後から本件振り込め詐欺グループに入れてもらったのに自分とDだけが抜けるというのは言いにくいが,何とか皆で振り込め詐欺を止める方向にもっていってほしいなどと,本件振り込め詐欺をやめるか否かについて,Dに自分の意見を述べていること,
・ 上記警察からの電話の後,被告人と実行犯役3人が話し合った結果,振り込め詐欺を続行することになり,Dがその旨Jに報告すると,同人はそれに反対することもなく,その結論に従い,その後も,Dの詐取金の分配を受け,振り込め詐欺との関わりを絶っていないこと,

 これらの事実にかんがみると,Jは,Dとの間で,判示第1別表1番号6ないし47の各振り込め詐欺という犯罪を行うため,共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し,各自の意思を相通じて実行に移すことを内容とする謀議を遂げていたといえる。 したがって,被告人は,A及びC,次いで,D,Jと順次共謀したものと解されるから,判示第1別表1番号6ないし47の各犯行について,これらの者との間で共同正犯が成立するといえる。

 

知財高裁判決平成20年10月30日

【事案】

 米国法人である原告が,「回転要素の角位置を決定する軸LED位置検出装置」とする名称の発明につき特許出願したところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案。

【判旨】

 旧特許法17条の2第4項は,審判請求に伴って行われる場合における特許請求の範囲についてする補正は,同項1号ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限ると規定しているもので,請求項を増加させる補正は,原則として,同項で補正の目的とし得る事項として規定された「請求項の削除」(1号),「特許請求の範囲の減縮」(2号),「誤記の訂正」(3号)及び「明りょうでない記載の釈明」(4号)のいずれにも該当しないものと解するのが相当である。
 そして,同項2号は,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定しており,同括弧書きの文言によれば,2号において補正が認められる特許請求の範囲の減縮といえるためには,補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を限定する関係にあること,並びに,補正前の請求項と補正後の請求項との間において,発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするとしたものである。そうすると,この「限定する」ものであるかどうか,「同一である」かどうかは,いずれも,特許請求の範囲に記載された当該請求項について,その補正の前後を比較して判断すべきものであり,補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としているといえる。したがって,同号の規定は,請求項の発明特定事項を限定して,これを減縮補正することによって,当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって,増項による補正は,補正後の各請求項の記載により特定された発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上記のような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないことになる。
 また,特許出願の審査は,請求項ごとに行われ,拒絶理由の通知も請求項ごとに記載されるものであるところ,審判請求に伴ってする補正につき,出願人の便宜と迅速,的確かつ公平な審査の実現等の調整という観点から,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を認めることとした旧特許法17条の2第4項の制度趣旨に照らすならば,1つの請求項を複数の請求項に分割するような態様による補正は,特段の事情がない限り,認められないとする上記の解釈は是認されるものといえる。
 もっとも,@多数項引用形式で記載された一つの請求項を,引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や,A構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項を,その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合のように,補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものであるときに,補正に際し,これを独立の請求項とすることにより,請求項の数が増加することになるとしても,それは,実質的に新たな請求項を追加するものとはいえず,実質的には,補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっているということができるから,このような補正についてまで否定されるものではない。
 以上の見解に基づいて,本件を検討することとする。
 本件各補正のうち増項に係る部分は,いずれも,請求項の数を,補正前の12から補正後の14に補正するというものであり,実質的にみても,増項によって生じた請求項が補正前の請求項の従属項であるとしても,請求項の数を増加させるものであるこことに変わりはない。そして,この増加は,@多数項引用形式で記載された1つの請求項を,引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や,A構成要件が択一的なものとして記載された1つの請求項を,その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合でもない。
 そして,本件各補正の増項に係る部分は,特許請求の範囲を全体として拡張するものではないものの,これを減縮するものでもないことは明らかであり,また,誤記の訂正であるということも,明りょうでない記載の釈明であるということも,困難であるから,旧特許法17条の2第4項2号ないし4号のいずれにも該当しないといわざるを得ない。
 したがって,本件各補正のうち増項に係る部分は,旧特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項により却下される場合に該当し,これと同旨の審決の判断は,その限りにおいて誤りということはできない。

 審決が判断した本件各補正のうち増項に係る部分については,上述のとおり誤りではないが,審決は,本件各補正のうち請求項13及び14を増項した部分の違法を指摘したのみで,原告のした本件各補正の全体を却下すべきものとした。このため,審決は,その余の請求項についてされた本件各補正の可否について何ら判断することなく,本件各補正前の請求項に基づいて実体判断をして,結局本願発明には進歩性が認められないとして,原告の審判請求を不成立としたものである。
 しかしながら,審決の上記措置は是認することができない。その理由は,次に判示するとおりである。
 確かに,補正は,複数の請求項にまたがり多数の補正事項を含んでいるとしても,基本的には,補正全体が不可分一体性を有するものとし,出願人のした補正がその一部についてでも補正の要件を満たさないときは,その余の補正について審理判断することなく,全体としてこれを却下することができるとされることは,被告の主張するとおりであるが,・・・補正事項の不可分一体性は,補正事項がその内容自体から相互に関連し合って分離することが不可能又は困難である場合があること,出願人が補正事項の全体又は枢要な事項を是認されるのでない限りその補正の目的を達しない場合があるなど,多くの場合にこれを肯定せざるを得ないが,その反面,補正事項の中には,他の補正事項と容易に分離することが可能である場合もあるところ,増項補正は,他の補正事項と,違反事由として目的・要件等が明らかに異なり,截然と区別することが比較的容易である場合もある。本件各補正における増項も,その内容においても,増項補正がされた時期においても,他の補正事項と容易に区別することができることが認められる。
 ・・・本件における手続の経緯を考えると,担当審査官が,前置審査という最終局面まで増項以外の補正事項について新規事項を理由に補正が却下されることのあることを説明しながら,増項補正の点は全く問題視せず,しかも面接において,面接結果と異なった判断や処分をすることとなった場合はその旨を拒絶理由通知書又は電話等によって通知すると告げていたなどという本件の状況の下で,審決において,増項補正の違法のみを理由に補正請求全体を却下し,これによって,補正後の請求項に何ら言及することなく補正前の請求項に基づいて判断をしたことは,あらかじめ増項補正の点についてその違法性を拒絶理由通知等によって認識させ検討撤回等の機会を付与すべきであったか,又は,そのような機会を付与しない場合には増項補正を判断し,併せて,その余の補正事項を判断すべきであったものというべきであり,そのいずれもしなかったことには違法があるものといわざるを得ず,審決は,違法として取消しを免れない。
 なお,参考のために,以下の点を付言しておきたい。
 本件の上記手続の経緯に照らすならば,審決が増項違反のみを理由に本件各補正を却下した措置について,原告は,実質的にみても,防御・反論等を何らしていないものであり,増項補正を撤回することを含め,防御する機会を与えられていないものと認められる。
 被告が主張する増項補正が許される例外的な場合(上記@Aの場合)は,増項補正が許される典型的な場合を例示したにすぎず,法解釈上は,それに限られるわけではない。原告がした本件の増項補正は,補正前の特定の請求項にいわゆる従属項を追加したものというのであるから,少なくとも従前の特許請求の範囲を全体として拡張するものではないということができ,特許請求の範囲の減縮には文言上該当しないとしても,法解釈論として成り立ち得ない見解といえず,明らかに違法な補正であると断じ得るものでもなく,本件のような従属項を追加する補正が一般的に違法であるとする裁判例がないではないが,少なくとも,実務上,周知確立していた取扱いであるとは認められない。現に,A 審査官は,本件の増項補正が問題であるという認識がなかったものと認められる。
 したがって,原告がした本件の増項補正は,権利範囲の拡張や変更を伴わない補正であり,明らかに違法な補正であるとか,到底却下を免れない暴挙ともいうべき補正であるなどということはできず,原告ないしその担当代理人が本件の手続において増項補正が許容されるものと推断したとしても,一概に不合理なものと断ずることはできない。
 なお,本件において,当裁判所は,増項補正の違反を含む補正の場合に,常に増項に関わらない補正事項についてまで判断すべきであるという見解を示しているのではない。本件の事実関係の下においては,審決が請求項1〜12について新規事項の存否について判断しないで,増項補正に係る部分が違法であると判断しただけで,本件各補正の全体を却下するとした措置の違法を指摘したにとどまるものである。被告の考え方によると,出願人が増項補正をしないときは,審判官は,その余の補正事項である新規事項の有無等について審理判断しなければならないが,出願人において増項補正といういわば敵失をしたことによって,上記新規事項の有無等の審理判断をしなければならないという負担を免れるという僥倖を与えられ,出願人は新規事項の有無等の審理判断を受けるという機会を奪われることになるが,本件において,そのような不公平を容認するような事情は見当たらない。
 したがって,本件が審判手続に戻った場合は,被告(審判官)が原告(請求人)に対し,本件各補正のうち増項補正部分を維持するか否かの検討を求めることとなるが,原告が増項補正部分の撤回をしないときは,原則に戻って,増項補正の違法のみを理由に本件各補正の全体を却下することは許されるものというべきである(この場合,原告は,審決取消訴訟で増項補正の適法性を主張することとなる。)。

 

知財高裁判決平成20年10月29日

【判旨】

 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法旧35条3項)。対価の額については,同条4項の規定があるので,勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるが,対価の支払時期についてはそのような規定はない。したがって,勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。そうすると,勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。
 そして特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,同条により認められた法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)。

 

岡山地裁決定平成20年01月30日

【判旨】

 申立人は,平成14年10月24日に成立した介護保険法(以下「法」という。)に基づく 通所介護の居宅サービス事業等を目的とする会社であるところ,平成18年10月1日,その運営に係る事業所であるAについて,法41条1項本文及び53条1項本文に基づき,岡山県知事から,指定居宅サービス(通所介護)事業者及び指定介護予防サービス(介護予防通所介護)事業者の指定を受けるとともに,同日,その運営に係る事業所であるBについて,法41条1項本文及び53条1項本文に基づき,岡山県知事から,指定居宅サービス(短期入所生活介護)事業者及び指定介護予防サービス(介護予防短期入所生活介護)事業者の指定を受けたこと,岡山県知事は,申立人に対し,平成20年1月21日,上記両事業所(以下「両事業所」という。)について,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者としての指定を同月31日をもって取り消す処分(以下「本件各処分」という。)を行ったこと,申立人は,相手方を被告として,本件各処分の取消しを求める訴えを提起したことが認められる。
 そこで,まず,申立人に,本件各処分により生じる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」か否かについて検討する。
 介護サービスを提供する事業は,その性質上,利用者との信頼関係に基づいて成り立つものであり,その信頼関係を維持するには,継続的にサービスの提供を行うことが重要であることは容易に推測し得るところであって,本件各処分に伴い,いったん両事業所が閉鎖されることとなれば,利用者は当然にほかの施設に移動することとなり,仮に本案判決によって本件各処分が取り消されたとしても,申立人が再び利用者の信頼を回復し,利用登録者を再び獲得することが困難となることが予想される。また,両事業所の閉鎖により,申立人は,両事業所の登録利用者に対して介護サービスを提供することができなくなり,申立人の経営に少なからぬ影響を及ぼすばかりでなく,介護サービスを受けることができなくなる登録利用者の日常生活や健康状態に悪影響が及ぶことは容易に推測し得るところである。
 よって,申立人には,本件各処分により,事後的に回復し難い損害が生じる恐れがあり,「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」と認められる。
 次に,本件申立てを認容することが,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」か否かについて検討する。
 本件各処分の理由には,不正の手段により指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者としての指定を受けたこと,人員基準違反及び居宅介護サービス費及び介護予防サービス費の請求に関し不正があったことが挙げられているところ,疎明資料によると,人員基準違反に関しては,Aについては,平成19年5月16日,Cを配置することにより看護職員の人員不足が解消されていること,Bについては,平成18年10月17日,Dを配置することにより看護職員の人員不足が解消されており,平成19年7月1日,看護職員のEに機能訓練指導員を兼務させることにより機能訓練指導員の人員不足が解消されていることが認められる。よって,本案判決が確定するまでの間,申立人が介護サービスを継続することとなっても,登録利用者の日常生活や健康状態に重大な支障をもたらすことは防止し得るものと思われる。
 したがって,本件申立てを認容することは,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に当たるということはできない。
 さらに,本件申立てが「本案について理由がないとみえるとき」に該当するか否かについて検討する。
 申立人は,不正の手段により指定を受けたとの事実認定には誤りがあると主張しており,また,仮に,形式的に取消処分の根拠規定に該当する事実が認められるとしても,申立人は,本件各処分の内容が明らかに重きに失すると主張しているのであるから,事実誤認の有無及び本件各処分内容についての裁量権逸脱の有無については,今後の主張・立証を経て判断をしなければ決し得ないというべきである。そうだとすれば,本件は現段階において「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとはいえない。
 よって,申立人の本件申立ては理由がある。

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