法科大学院定員削減の意味(5)

従わざるを得ないのは

法科大学院にしてみれば、定員削減は規模の縮小や学費収入の減少となる。
できれば、避けたいことのはずである。
しかし、各ローは定員削減にあまり反発していない。
ローが従順とならざるを得ない理由として、専任教員確保の問題がある。

確保すべき教員の数

法科大学院は、専門職大学院の一つとされる。

専門職大学院設置基準

2条1項 専門職学位課程は、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする。

18条1項 第二条第一項の専門職学位課程のうち専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とするものを置く専門職大学院は、当該課程に関し、法科大学院とする。

そして、専門職大学院には、一定の数の専任教員を置くものとされている。

専門職大学院設置基準(下線は筆者)

4条 専門職大学院には、研究科及び専攻の種類及び規模に応じ、教育上必要な教員を置くものとする。

5条1項 専門職大学院には、前条に規定する教員のうち次の各号のいずれかに該当し、かつ、その担当する専門分野に関し高度の教育上の指導能力があると認められる専任教員を、専攻ごとに、文部科学大臣が別に定める数置くものとする。
一  専攻分野について、教育上又は研究上の業績を有する者
二  専攻分野について、高度の技術・技能を有する者
三  専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者

ここでいう「文部科学大臣が別に定める数」については、平成15年文部科学省告示第53号が定めている。

平成15年文部科学省告示第53号1条1項(下線は筆者)

  専門職学位課程には、専攻ごとに、平成十一年文部省告示第百七十五号(大学院に専攻ごとに置くものとする教員の数について定める件)の別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の一・五倍の数(小数点以下の端数があるときは、これを切り捨てる。)に、同告示の第二号、別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数を加えた数の専任教員を置くとともに、同告示の別表第三に定める修士課程を担当する研究指導教員一人当たりの学生の収容定員に四分の三を乗じて算出される収容定員の数(小数点以下の端数があるときは、これを切り捨てる。)につき一人の専任教員を置くものとする。

すなわち、以下の両方を充たす必要がある。

1:平成十一年文部省告示第百七十五号(大学院に専攻ごとに置くものとする教員の数について定める件)の別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の一・五倍の数(小数点以下の端数があるときは、これを切り捨てる。)に、同告示の第二号、別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数を加えた数

2:同告示の別表第三に定める修士課程を担当する研究指導教員一人当たりの学生の収容定員に四分の三を乗じて算出される収容定員の数(小数点以下の端数があるときは、これを切り捨てる。)につき一人の専任教員

まず、1の方からみていく。
一般に、これは12名であるとされている(日弁連法研財団法科大学院認証評価基準参照)。
ただ、その根拠は必ずしも明確でない。

ここで挙がっている平成11年文部省告示第175号は、以下のように定める。

平成11年文部省告示第175号

一 大学院には、専門分野の別に応じ専攻ごとに、不可欠な教員組織として、別表第一及び別表第二に定めるところにより、大学院設置基準第九条各号に掲げる資格を有する教員(以下「研究指導教員」という。)を置くとともに、別表第一及び別表第二のその他の教員組織の欄に特に定める研究指導の補助を行い得る教員(以下「研究指導補助教員」という。)を置くものとする。別表第一及び別表第二のその他の教員組織の欄に定めのない場合においても、研究指導教員数と均衡のとれた研究指導補助教員を置くことが望ましい。

二 一に定めるもののほか、別表第三に定めるところにより、学生の収容定員に応じ、必要な数の研究指導教員を置くものとする。

別表第一(抜粋)

専門分野 研究指導教員数 その他の教員組織
法学関係 法学系 公法、私法等に分割したときは、各専攻ごとに研究指導教員数を三以上とする。
   政治学系   

別表第二略

上記で定める研究指導教員の1.5倍に、研究指導補助教員の数を足した数。
これが、1で必要とされる専任教員の数になる。

ぱっと見た感じだと、専攻は法学系。
従って、研究指導教員数は5名である。
そうすると、「平成十一年文部省告示第百七十五号・・・に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の一・五倍の数」とは、

5×1.5=7.5。

端数切捨てで7。
そして、別表第一のその他の教員組織の欄には、特に研究指導補助教員の指定はない。
従って、研究指導補助教員の数はゼロ。
結局、7名で足りるということになりそうである。

しかし、これは一般に言われている12名と符合しない。
一つの考え方は、法学関係ということで、政治学系をも加えてしまうことだ。
そうすると、「別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数」は8名となる。
これなら、その1.5倍は12となる。

もう一つ、12名になる考え方がある。
「別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数」については、法学系のみで5と考える。
そうすると、その1.5倍は7.5。
端数切捨てで7となる。
このように考えた上で、「その他の教員組織の欄に定めのない場合においても、研究指導教員数と均衡のとれた研究指導補助教員を置くことが望ましい」との文言を捉えて、同数の研究指導補助教員が必要だと考える。
そうすると、「同告示の第二号、別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数」は5と考えることができる。
従って、7+5=12名必要ということになる。
熊大法科大学院は、上記のように考えているようだ。

熊本大学法科大学院自己評価書第8章より引用、下線は筆者)

 本基準の前半部分に述べられている「平成11 年度文部省告示第175 号の別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の1.5 倍の数(小数点以下の端数があるときは,これを切り捨てる。)」は,本研究科については「7人」である(5人(研究指導教員の数)×1.5=7.5 人)。次に,「同告示の第2号,別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数」は,「5人」である。したがって,本基準の前半部分に述べられているところによれば,本研究科に置かなければならない専任教員数(最低限必要な教員数)は,「12 人」(7人+5人)ということになる

(引用終わり)

ほとんどの法科大学院は、根拠を示すことなく、所与の前提として12を用いている。
なお、大阪市立大学法科大学院は、さらに研究指導補助教員にも1.5を掛けた上で、14名必要としている。
しかし、これは一般に言われている12という数字と一致しない。

大阪市立大学法科大学院自己評価書より引用)

 平成11 年文部省告示第175号の別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の1.5 倍の数(小数点以下切り捨て)に,同告示の第2号,別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数を加えた数の専任教員は14 人である(下記のA)

A 研究指導教員数5人(法学系)×1.5=7.5 人 →切り捨て 7人
 +上と同数の研究指導補助教員数 =7.5 人 →切り捨て 7人
     専任教員数                       14 人

(引用終わり)

次に、2の「同告示の別表第三に定める修士課程を担当する研究指導教員一人当たりの学生の収容定員に四分の三を乗じて算出される収容定員の数(小数点以下の端数があるときは、これを切り捨てる。)につき一人の専任教員」の方をみる。
平成11年文部省告示第175号の別表第三は以下のように定めている。

平成11年文部省告示第175号の別表第三(抜粋)

通学又は通信教育の課程 専門分野 研究指導教員一人当たりの学生の収容定員
修士課程 人文社会科学系 二十人

「同告示の別表第三に定める修士課程を担当する研究指導教員一人当たりの学生の収容定員」は20名である。
その4分の3は15である。
従って、収容定員15につき、1人の専任教員が必要ということになる。
そして、収容定員は、入学定員の3倍である。

平成15年文部科学省告示第53号4条

 法科大学院においては、法学既修者を入学させるかどうかにかかわらず、その収容定員は当該法科大学院の入学定員の三倍の数とする。

従って、入学定員5名につき専任教員1人が必要ということになる。

以上から、法科大学院に必要な専任教員の数は、

1:12名以上であること
2:入学定員5名につき1名以上であること

の二つを充たす必要があるということになる。
そして、12×5=60であることから、

入学定員が60名以下の法科大学院→12名必要
入学定員が60名を超える法科大学院→(入学定員数÷5)名が必要。

ということになる。

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