「司法試験平成20年最新判例ノート」
を出版しました

でじたる書房より、電子書籍司法試験平成20年最新判例ノートを出版しました。
価格は税込で315円です。

本書は、平成20年に出された最高裁判例のうち、司法試験での出題可能性のあるものを掲載しています。
収録数は、憲法7、行政法5、民法9、商法6、民訴法4、刑法13、刑訴法7の計51です。
論点と判旨の形式でコンパクトにまとめました。
また、必要に応じて事案の概要も掲載しています。
総ページ数は68ページとなっています。
印刷に便利なPDF形式です。

近年の司法試験においては、新旧ともに判例重視の傾向となっています。
とりわけ新司法試験の短答式においては、直近の判例の知識を直接訊く出題もされています。
この場合、判例を知らないと答えようがありません。
また、新旧共に論文試験においては、直近の判例の事例・問題意識をベースにした出題が少なくありません。
こうした出題においては、建前上、判例を知らなくても基本的知識があれば解答できるとされています。
しかし実際には、最新の判例を知っているかどうかで差が付いています。
その理由は主に二つあります。

一つは、基本的知識を前提にしたとしても、必ずしも判例と同じ問題意識に至らない場合があることです。
確かに、考査委員の想定している解答の道筋は、基本的知識から考えれば到達可能なものである場合が多いでしょう。
しかし、基本的知識があれば、必ずその道筋に至る、というわけではありません。
すなわち、基本的知識を前提にした場合でも、判例とは異なる思考の道筋がみえるときも少なくないのです。
そして、現場で受験生が一生懸命考え、そうした独自の道筋を論じた場合、評価されるでしょうか。
残念ながら、それほど評価されてはいないようです。
これはある種、当然です。
受験生が限られた時間で、基本的知識のみを基礎に考えるのでは、どこかに欠陥や矛盾が混入しがちだからです。
考査委員は、その欠陥・矛盾を捉えて、減点するでしょう。
他方、判例を知っている受験生は、これを基礎に論述をしていきます。
それは判例のとる法律構成である以上、欠陥・矛盾を含みにくいものとなります。
そうなると、考査委員は減点しづらくなるでしょう。
もちろん、その判例の知識を説明するにあたり、正確な基本的知識が必要であることは当然です。
判例を知ってさえいれば受かる、というものではありません。
ですが、同じ基本的知識を持っている受験生同士であれば、判例を知っている方が断然有利です。

もう一つは、時間的・精神的な優位性です。
判例を知っている受験生は、問題を見た段階で、比較的素早く問題点を把握することができます。
これに対し、判例を知らない受験生は、問題文のどこに問題点が隠れているのか、すぐにはわかりません。
何度も問題文を読み返して、ようやく発見できる、または、最悪発見できないかもしれません。
仮に問題点を把握できたとしても、そこで消費した時間の分、答案の構成・論述が雑になってしまいます。
また、判例を知っている受験生は、問題点を把握すれば、それを自信を持って論述できるでしょう。
本問の論点はこれだ、とある種の確信を持てるからです。
全然的外れの論点なのではないか、という不安は少なくて済みます。
他方、判例を知らないと、問題点を発見できても、本当にそれで良いか悩みます。
こういう場合、受験生の心理として、どうでも良さそうな論点まで網羅的に書いておきたいという衝動に駆られます。
最初に発見した論点が的外れだったなら、全然得点できないことになってしまうからです。
その結果、肝心の問題点を十分に論述できず、低い評価になってしまいます。

上記のような理由から、最新の判例を一応知っておくことは重要です。
本書は、短時間でざっと判例を確認するのに役に立つと思います。
ただ、合格するためには、新判例の知識はメインではなく、サブに過ぎません。
基本的知識を固めることの方が重要で、その上で確認すべき知識である。
そのことは、強調しておきたいと思います。

本書が受験生の学習に少しでも役立てれば幸いです。
以下は、本書の一部抜粋です。

 

【 憲 法 】

1:最高裁判所第三小法廷判決平成20年02月19日

【論点】

・我が国において既に頒布され、販売されているわいせつ表現物を税関検査による輸入規制の対象とすることは憲法21条1項に違反しないか。
・関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等の該当性(わいせつ性)の判断。

【判旨】

 関税定率法21条1項4号に掲げる貨物に関する税関検査が憲法21条2項前段にいう「検閲」に当たらないこと、税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制が同条1項の規定に違反しないこと、関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等とは、わいせつな書籍、図画等を指すものと解すべきであり、上記規定が広はん又は不明確のゆえに違憲無効といえないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁)とするところであり、我が国において既に頒布され、販売されているわいせつ表現物を税関検査による輸入規制の対象とすることが憲法21条1項の規定に違反するものではないことも、上記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。

 本件各写真は、いずれも男性性器を直接的、具体的に写し、これを画面の中央に目立つように配置したものであるというのであり、当該描写の手法、当該描写が画面全体に占める比重、画面の構成などからして、いずれも性器そのものを強調し、その描写に重きを置くものとみざるを得ないというべきである。しかしながら、メイプルソープは、肉体、性、裸体という人間の存在の根元にかかわる事象をテーマとする作品を発表し、写真による現代美術の第一人者として美術評論家から高い評価を得ていたというのであり、本件写真集は、写真芸術ないし現代美術に高い関心を有する者による購読、鑑賞を想定して、上記のような写真芸術家の主要な作品を1冊の本に収録し、その写真芸術の全体像を概観するという芸術的観点から編集し、構成したものである点に意義を有するものと認められ、本件各写真もそのような観点からその主要な作品と位置付けられた上でこれに収録されたものとみることができる。また、本件写真集は、ポートレイト、花、静物、男性及び女性のヌード等の写真を幅広く収録するものであり、全体で384頁に及ぶ本件写真集のうち本件各写真(そのうち2点は他の写真の縮小版である。)が掲載されているのは19頁にすぎないというのであるから、本件写真集全体に対して本件各写真の占める比重は相当に低いものというべきであり、しかも、本件各写真は、白黒(モノクローム)の写真であり、性交等の状況を直接的に表現したものでもない。以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在、本件各写真の本件写真集全体に占める比重、その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには、本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難といわざるを得ない。
 これらの諸点を総合すれば、本件写真集は、本件通知処分当時における一般社会の健全な社会通念に照らして、関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に該当するものとは認められないというべきである。

2:最高裁判所第一小法廷判決平成20年03月06日

【論点】

 行政機関が住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネット」という。)により住民の個人情報を収集、管理又は利用することは、憲法13条に違反するか。

【判旨】

 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。
 そこで、住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討するに、住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。これらの情報は、住基ネットが導入される以前から、住民票の記載事項として、住民基本台帳を保管する各市町村において管理、利用等されるとともに、法令に基づき必要に応じて他の行政機関等に提供され、その事務処理に利用されてきたものである。そして、住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等を目的として、都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから、上記目的に利用される限りにおいては、その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。
 また、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はないこと、受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は、懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること、住民基本台帳法(以下「住基法」という。)は、都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を、指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして、本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照らせば、住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。
 なお、原審は・・・

戻る