最新下級審裁判例

東京地裁判決平成20年12月16日

【事案】

 被告の元従業員である原告が,別紙特許目録記載1ないし4の各特許権に係る発明は,原告が被告在職中にした光ディスク装置に関する職務発明であり,その日本国特許及び外国特許の特許を受ける権利を被告に承継させたものであると主張し,特許法(平成16年法律第79号による改正前のもの。)35条3項に基づき(外国特許については類推適用),上記承継の相当の対価として,1億1797万4000円から受領済みの補償金165万円を控除した1億1632万4000円及びこれに対する平成19年11月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案。

【判旨】

 発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいい(特許法2条1項),特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないから(同法70条1項),発明者は,当該特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の創作行為に現実に関与した者,すなわち,新しい着想をした者,あるいは新しい着想を具体化した者のいずれかに該当する者でなければならず,技術的思想の創作行為自体に関与しない者,例えば,部下の研究者に対し,具体的着想を示さずに,単に研究テーマを与えたり,一般的な助言や指導を行ったりしたにすぎない者,研究者の指示に従い,単にデータをまとめたり,実験を行ったりしたにすぎない者,発明者に資金や設備を提供するなどし,発明の完成を援助又は委託したにすぎない者は,発明者とならない。

 

那覇地裁判決平成20年11月19日

【判旨】

 地方自治法242条の2第1項1号の規定による住民訴訟の制度は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為を予防するため,一定の要件の下に,住民に対し当該行為の全部又は一部の事前の差止めを裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである。このような事前の差止請求において,複数の行為を包括的にとらえて差止請求の対象とする場合,その一つ一つの行為を他の行為と区別して特定し認識することかできるように個別,具体的に摘示することまでが常に必要とされるものではない。この場合においては,差止請求の対象となる行為とそうでない行為とが識別できる程度に特定されていることが必要であることはいうまでもないが,事前の差止請求にあっては,当該行為の適否の判断のほか,さらに,当該行為か行われることが相当の確実さをもって予測されるか否かの点及び当該行為を差し止めることによって人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるか否かの点に対する判断が必要となることからすれば,これらの点について判断することが可能な程度に,その対象となる行為の範囲等が特定されていることが必要であり,かつ,これをもって足りるものというべきである。

 

東京地裁判決平成20年12月03日

【判旨】

 特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」とは,公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書,図画その他これに類する情報伝達媒体であって,頒布されたものを意味するところ(最高裁昭和53年(行ツ)第69号同55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁参照),それ自体公衆に交付されるものではなく,一般公衆による閲覧,複写の可能な状態におかれた外国特許庁備え付けのマイクロフィルムのごときものであっても頒布された刊行物ということができる(最高裁昭和61年(行ツ)第18号同年7月17日第一小法廷判決・民集40巻5号961頁参照)。

 

京都地裁判決平成20年12月08日

【事案】

 京都市において開催されたいわゆるタウンミーティングに参加申込みをした原告らが,同タウンミーティングを主催した被告国及び共催者である被告京都市に対し,被告らによる不正な抽選により落選したことで,タウンミーティングに参加し意見を述べる権利を侵害されたとして,又,被告京都市によって原告A及び原告Bがその個人情報を開示されたことからプライバシー等を侵害されたとして,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告国については平成19年2月2日,被告京都市については同月1日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案。

【判旨】

 憲法21条1項は,表現の自由,すなわち,人の内心における精神的作用を外部に公表する精神活動の自由を保障しているところ,右にいう表現の自由の保障とは,国民が内心における精神的作用を外部に公表することを公権力により妨げられないことを意味し,国民が,公権力に対し,内心における精神的作用を外部に公表するための機会の提供など,表現の自由をより実効化するための一定の作為を求めることができることまで意味するものではない。また,憲法13条についても,これは,国民の私生活上の自由が国家権力の行使に対して保護されるべきことを規定していると解されるのであって,公権力に対し,一定の作為を求めることができることまで保障するものでないことは,憲法21条1項と異ならない。

 プライバシー権とは,他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに開示されない権利をいう。そして,・・・プライバシーに該当する情報を開示することがプライバシー侵害として不法行為を構成するためには,同情報が,一般人の感受性を基準にして私生活上の平穏を害するような態様で開示されることが必要であり,その判断に当たっては,プライバシーに該当する情報の内容,開示の目的やその態様等を総合的に考慮すべきである。

 

知財高裁判決平成20年12月24日

【判旨】

 商標法57条2項が準用する民事訴訟法338条1項9号の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」(本件では,準用の結果,「確定審決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」と読み替えることになる。)とは,職権調査事項であると否とを問わず,その判断の如何により判決の結果に影響を及ぼすべき重要な事項であって,当事者が口頭弁論において主張し又は裁判所の職権調査を促してその判断を求めたにもかかわらず,その判断を脱漏した場合をいうものと解される(大審院昭和7年5月20日判決民集11巻10号1005頁参照)。そして,同条項が商標法の確定審決に準用された場合にも同様に解するのが相当であるから,前審に当たる審判において当事者が主張していなかった事項について確定審決が判断をしていないとしても,再審事由たる判断の遺脱とはならないというべきである。

 

知財高裁判決平成20年12月25日

【判旨】

 特許法153条2項は,審判長は,審判において当事者が申し立てない理由について審理したときは,その審理の結果を当事者に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならない旨規定する。その趣旨は,当事者が申し立てない理由は,当事者が審判請求の理由として認識していない可能性があるため,改めて当事者に意見を述べる機会を与えることにより,当事者に検討と意見表明の機会を与えることにある。
 ところで,周知技術は,当業者にとっては例示する必要がない程よく知られている技術であり,当業者が認識しているといえるから,周知技術を示す資料を追加したとしても,常に,改めて当事者に検討と意見表明の機会を与える必要があるとはいえない。

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