平成21年度新旧司法試験短答式試験の結果について

6月4日、新旧両司法試験の短答式試験の結果が公表された。
結果は、法務省HPに掲載されている(旧試験新試験)。

旧司法試験について

旧試験択一の合格点は48点、合格者は1599人だった。
事前の予想では、合格点は50点、合格者は1129人程度と考えていた。
実際には合格点は2点低く、合格者数は470人多かった。
予想より大幅に合格者数が増え、その結果合格点が下がったという形だ。

以下は、平成18年度以降の択一試験における受験者数、合格者数、受験者合格率の推移である。

年度 択一受験者数 合格者数 受験者合格率
18 30240 3820 12.6%
19 23298 2219 9.5%
20 18201 1605 8.8%
21 15218 1599 10.5%

近年、受験者合格率は、低下する傾向にあった。
しかし、今年度は逆に、受験者合格率が上がった。
今年度の択一は、過去2年よりも受かりやすかった。
受験者数は昨年度より3000人ほど減っているのに、合格者数は6人しか減っていない。
予想が外れた最大の要因は、この点にある。
考査委員には、択一は表面的な能力しか把握できないという感覚がある。
大事な部分は論文でじっくりみるべきだ。
択一で余りに絞りすぎるのはよくない、ということかもしれない。

もっとも、このように択一を緩やかに合格させてしまうと、論文の厳しさが増す。
以下は、平成18年度以降の択一合格者数、論文合格者数、論文合格率である。

年度 択一合格者数 論文合格者数 論文合格率
(択一合格者ベース)
前年度比
18 3820 542 14.1% ---
19 2219 250 11.2% 2.9%
20 1605 141 8.7% 2.5%
21 1599 70〜100? 4.3%〜6.2%? 2.5%〜4.3%?

論文合格者数を昨年度の半分の70人とすると、合格率は昨年度の半分程度になってしまう。
やや多めに見積もって100人としても、100人中6人程度しか受からない試験ということになる。
出願者100人に対して6人の割合ならわかるが、短答合格者ベースでこの数字は厳しい。

また、合格者の平均年齢はついに35歳を超え、35.10歳となった。
以下は、平成13年度以降の択一合格者・出願者の平均年齢及び24歳以下合格者割合の推移である。

年度

択一合格者
平均年齢

択一合格者
年齢前年比

出願者
平均年齢

出願者−合格者 24歳以下択一
合格者割合
24歳以下論文
合格者割合

13

28.91

---

31.26

2.35 21.1% 31.4%

14

28.79

−0.12

31.21

2.42 22.5% 27.9%

15

28.82

+0.03

31.39

2.57 22.0% 25.9%

16

29.54

+0.72

31.97

2.43 17.8% 17.8%

17

30.00

+0.46

32.77

2.77 16.4% 18.4%

18

30.43

+0.43

15.7% 17.7%

19

31.51

+1.08

16.1% 18.8%

20

33.36

+1.85

13.0% 22.7%
21 35.10 +1.74 12.9%

昨年度から、択一合格者の平均年齢の前年度比が2歳に近くなっている。
昨年度の受験者がそのまま受験する場合、前年度比は1歳に等しくなるはずである。
それを超える差が生じているということは、単に新規参入が少ないというだけではない。
さらに、若手が撤退したことを意味している。
逆に、若手以外の者は、受け続けているということになる。
出願者の平均年齢は不明であるが、おおよそ合格者年齢の2歳ほど上の数字である。
従って、出願者平均は37歳程度だったと予想される。
40代に手が届くところまで来てしまっている。
これらの人達が予備試験を受験する場合、予備試験の受験者層は相当の高齢となるだろう。
若手はローに回るか撤退し、若手以外は旧試験、予備試験に賭けるという構図になっている。

もっとも、新規参入が全然いないわけではない。
むしろ、新規参入者は択一を越えればチャンスとなっている。
昨年度の注目すべき傾向として、論文での若手の躍進があった。
択一では13%だった24歳以下が、論文では22%を占めた。
5人に1人が24歳以下である。
今年度も、択一における24歳以下の割合は、昨年度とほとんど同じである。
昨年度同様、2割程度を24歳以下が占める可能性は十分ある。

本年度の択一の合格率を高めた理由として、若手を採りたいとする意図を疑う余地はある。
昨年度の結果は、若手は択一が苦手であり、論文が得意だということを示した。
そこで、今年度は択一を緩くした、と考えられなくもない。

昨年度は141人しか受からない試験だった。
にもかかわらず、2割強の若手が受かった。
この事実は大きい。
知識的には、若手でも十分対応できるということである。
あとは、現場でいかに頑張れるか。
そのためには、残りの約1ヶ月を知識補充よりも答案構成を重視して過ごすべきといえる。

新司法試験について

新司法試験の短答式は合格点が215点、合格者数は5055人だった。
受験者合格率は、5055÷7353≒68.7%である。
合格点は210点ではないかと予想していたが、それより5点高かった。
215点という合格点は、今年度が初めてである。

合格者数で切るならば、毎年キリの良い数字になることはない。
他方で、一定の数字で切るなら、毎年コロコロ変わるのは変である。
しかし実際には、キリのよい数字にはするが、合格点は固定しないという態度になっている。
合格者数もにらみながら、当局のサジ加減一つでキリの良い数字が設定されている、という感じだ。

以下は、これまでの短答式の得点データをまとめたものである。
なお、平均点は、受験者全体の平均点である。

年度

合格点

平均点

受験者数

短答合格者数

受験者合格率

18

210

232.9

2087

1684

80.6%

19

210

231.7

4597

3479

75.6%

20

230

250.7

6238

4654

74.6%

21 215 228.1 7353 5055 68.7%

平均点を見る限り、問題自体の難易度は平成19年度よりやや難しいという感じだ。
他方、受験者合格率をみる限り、今年度は最も合格しにくい短答試験だったといえる。
これは、問題の難易度が平成19年度よりやや難しかったのに、合格点が5点上だったためである。

また、今年度は、短答と論文の比重が変更された(詳細は以前の記事その1その2)。
この影響はどの程度あるのだろうか。
以下は、短答で生じた論文換算の得点差をまとめたものである。
ただし、平均点は、短答合格者の平均点である。

年度 論文1点
あたりの
短答の得点
合格点 合格者平均点
(少数以下
切捨て)
平均点−合格点
(かっこ内は論文換算値)
最高点 最高点−合格点
(かっこ内は論文換算値)
18 1.75 210 242 32(18.2) 311 101(57.7)
19 1.75 210 247 37(21.1) 329 119(68.0)
20 1.75 230 267 37(21.1) 337 107(61.1)
21 3.5 215 248 33(9.4) 321 116(33.1)

短答で生じる得点差は、毎年ほとんど変わっていない。
これまでは、平均点を取っていれば、ギリギリ受かった者に対して論文で20点程度の差を付けることが出来た。
また、トップの成績なら、60点程度のアドバンテージがあった。
それが、今年度は平均点なら9点、トップで30点強である。
やはり、論文への影響力は半減している。
もっとも、以前ですらトップでやっと60点だったのだから、もともとあまり意味はなかった。
それが半減したからといって、大して意味はないともいえる。
これまでも、とにかく短答合格点を超えることが重要だった。
これからも、それに変わりはない。

今度は、科目(系)別の傾向を見てみる。
以下は、各科目の平均点及び最低ライン未満者の受験者全体に占める割合である。

年度 公法系
平均点
民事系
平均点
刑事系
平均点
公法系
最低ライン
未満
民事系
最低ライン
未満
刑事系
最低ライン
未満
18 58.5 101.4 73.0 1.9% 0.6% 0.1%
19 60.2 103.0 68.5 4.3% 2.1% 0.9%
20 69.7 104.8 76.2 0.7% 1.3% 0.4%
21 63.0 101.7 63.4 2.7% 2.5% 3.9%

平成18年度、19年度は公法系が難しかった。
平成20年度は強いて言えば民事系が難しかった。
それに対し、今年度は満遍なく難しかったといえる。
特に、刑事系はこれまでで最も平均点が低い。
従来ほとんど出なかった足切りも急増している。
刑法各論・刑訴法の知識が細かかったこと。
それから、文量が多かったことによる時間不足が原因だろう。

今のところ、民事系は難易度が安定している。
他方、公法系や刑事系は、やや波がある。
従って、まずは民事系を安定して取れるようにすべきだろう。
また、上の表には現れていないが、基本科目(憲法・民法・刑法)よりも、応用科目(行政、商、民訴、刑訴)の方が難しい傾向にある。
基本科目は7〜8割、応用科目は5〜6割程度を一応の目標にして勉強するのがよいと思う。

なお、広島会場の特定試験室において、1分早く終了してしまうということがあったようである。
そして、当該試験室の受験生に3点を加点する措置をしたという(「5 加点措置について」)。
これは異例の措置である。
「短答式試験得点別人員調」では、215点の累計人員は5054人となっている。
これは、公表されている5055人に1名足りない。
そして、3点加点する措置は、発表の前日である6月3日の司法試験委員会で決まっている。
「短答式試験得点別人員調」は発表の数日前には作成し終わっているはずである。
そうすると、加点措置は、これに反映されなかったと考えられる。
従って、この加点措置があったがために合格できた者が1名いた、ということになる。
このことは、同じく3点足りずに不合格になった者には、不公平感を感じさせるかもしれない。
1分で3点取れるのか、という不満である。
とはいえ、何らの救済もしないわけにもいかないから、やむを得ない措置ではある。

戻る