平成20年度旧司法試験論文出題趣旨民訴法検討

平成20年度の旧司法試験論文式試験出題趣旨のうち、今回は民訴法について検討する。

【第1問問題】

 弁論準備手続について,口頭弁論に適用される諸原則を踏まえつつ,手続の特徴及びその終結の効果を論ぜよ。

【出題趣旨】

 弁論準備手続が争点及び証拠の整理手続の一つであり,口頭弁論とは別個の手続であること,口頭弁論に適用される公開主義との関係で手続の開始や終了,傍聴の場面で当事者の意向が重視されていること,公開主義及び直接主義との関係で口頭弁論において手続の結果を陳述しなければならないこと,適時提出主義を具体化し,訴訟の促進を図る趣旨から,手続終結の効果として時機に後れた攻撃防御方法の提出について説明義務が生ずること等を中心に,弁論準備手続の意義及び機能を論ずべきである。

意義・趣旨・理由づけで差が付いた

今年の民訴法2問とも、一見、誰もが同じことを書きそうな問題である。
そのため、全然差が付かないのではないか、と思いがちである。
しかし、実際にははっきりとした差が付いている。

第1問については、差が付くポイントは以下の2点である。

一つは、口頭弁論の諸原則の意義・趣旨を答案上明示しているか。
もう一つは、弁論準備手続において、なぜ上記諸原則が妥当する(しない)かを説明しているか、である。

前者について、本問では口頭弁論の諸原則を「踏まえつつ」となっている。
そのため、口頭弁論の諸原則自体を論じる必要は無い、と判断した人が多かったようだ。
しかし、実際には口頭弁論の諸原則をしっかり書いていないと、評価を下げている。
論文試験において「〜を踏まえつつ」とか「〜に触れつつ」とある場合、「〜を論じた上で」に翻訳した方がよい。
これは、新試験の公法系第1問における「反論を想定しつつ」と同じである。

本問の場合、まず「口頭弁論の諸原則について述べよ」という一行問題に対する答えをコンパクトに書く。
その上で、弁論準備手続の各条文と諸原則とをリンクさせて説明する。
これが、最も安定してA評価を採りやすい構成だった。
しかし、弁論準備手続の説明の中で口頭弁論の諸原則の意義・趣旨を書いた人の方が多い。
そういう構成でも、諸原則の意義・趣旨をしっかり明示していれば、評価されている。
ただ、そのような構成だと、文章の流れとの関係で口頭弁論の諸原則の意義・趣旨が雑になりがちだ。
「〜は○○主義の表れである」と書いているが、その○○主義の中身が書いていない。
または、定義は書いているが、趣旨が書かれていない。
そういう答案は、評価を下げている。

後者について、出題趣旨は諸原則とどの制度がリンクするかを述べている。
まとめると、以下の通りである。

1:口頭弁論とは別個の手続である(164条、168条対照)。
2:手続の開始や終了、傍聴の場面で当事者の意向が重視されている(168条、169条2項、172条)。
 →公開主義。
3:口頭弁論において手続の結果を陳述しなければならない(173条)。
 →公開主義及び直接主義。
4:手続終結の効果として時機に後れた攻撃防御方法の提出について説明義務が生ずる(174条)。
 →適時提出主義。

その他にも、当事者双方の立会いを原則とすること(169条1項)は双方審尋主義とリンクする。
諸原則と弁論準備手続の各制度とのリンクは、ある程度色々な考え方が可能である。
従って、筋が通っていれば、多少上記と異なるリンクのさせ方でも構わない。
この点は、多くの答案が出来ていた。

差が付いたのは、諸原則がなぜ妥当するかを説明できているかである。
単に○○については△△主義が妥当する、妥当しない、修正されている、とするだけでは不十分だった。
なぜ妥当するのか、なぜ妥当しないのか、なぜ修正されているのか。
その点に一言でも触れているかどうかで、差が付いている印象だ。
例えば、公開主義との関係では、弁論準備手続では関係者公開にとどまる(169条2項)。
これは、柔軟・円滑、率直な意見交換の下で争点及び証拠の整理ができるようにするためである。
また、その後の公開の口頭弁論における結果の陳述や、弁論において、手続の公正は担保されうる。
このような理由づけが、諸原則や弁論準備手続の理解を示すものとして評価される。
特に本問は、条文が168条から174条までに集中していて、条文自体はすぐに見つかる。
そのため、各制度を挙げられるかではなく、上記のような部分で差が付いている。

民訴の第1問は、昭和63年度以降、全て一行問題である。

昭和63年第1問

 訴訟要件についての職権調査と職権探知

平成元年第1問

 口頭弁論において、当事者は、いつでも攻撃防御方法を提出することができるか。

平成2年第1問

 当事者が相手方の下にある証拠を証拠調べの対象とすることができる場合について論ぜよ。

平成3年第1問

 主要事実と間接事実の訴訟における取扱いの差異。

平成4年第1問

 法律上の推定について説明せよ。

平成5年第1問

 訴えの主観的予備的併合について論ぜよ。

平成6年第1問

 訴訟告知の存在意義および効果。

平成7年第1問

 処分権主義は、訴えの提起の場面において、どのように現れるか。

平成8年第1問

 法律問題に関する釈明について論ぜよ。

平成9年第1問

 原告の法律上および事実上の主張に対して被告がする陳述の態様とその効果について説明せよ。

平成10年第1問

 境界確定訴訟について論ぜよ。

平成11年第1問

 債務不存在確認の訴えの特質について論ぜよ。

平成12年第1問

 口頭弁論の意義と書面の役割について論ぜよ。

平成13年第1問

 弁論主義は、自由心証主義の適用範囲にどのような影響を及ぼすか。

平成14年第1問

 民事訴訟において手続が公開されない場合について説明せよ。

平成15年第1問

 訴訟手続の進行に関する民事訴訟法の原則と当事者意思の反映について論ぜよ。

平成16年第1問

 弁論主義の下における証明責任の機能について,証明責任を負わない当事者の立証活動の在り方に関する規律に触れつつ,論ぜよ。

平成17年第1問

 控訴審における攻撃防御方法の提出に関する民事訴訟法の規律とその背景にある考え方について,第一審と控訴審との関係を踏まえて,論ぜよ。

平成18年第1問

 訴状の必要的記載事項の趣旨を明らかにした上で,その不備を理由とする訴状の却下について,その裁判の形式と効果を踏まえて,説明せよ。

平成19年第1問

 裁判所が争点整理又は事実認定に関して専門家の協力を必要と認めるときに,これを可能にするため民事訴訟法が定める方法について,各方法の目的及び内容の相違を明らかにしながら論ぜよ。

平成21年度も一行問題が出る可能性は高い。
一行問題は独特の書き方、テクニックを要する。
苦手な人は、意識的に対策を採っておいた方が良い。
その際は、予備校の解答例ではなく、再現答案を参考にすべきだ。
予備校の解答例は、制度の羅列に終わっていたり、無理に論点を挙げていたりする。
そういう答案は、本試験では評価が伸びない可能性が高い。

 

【第2問問題】

 債権者Xの保証人Yに対する保証債務履行請求訴訟に,主債務者Zは,Yを補助するため参加した。

 1  第一審でY敗訴の判決が言い渡され,その判決書の正本が平成20年7月3日にYに,同月5日にZに,それぞれ送達された。Yはこの判決に対して何もしなかったが,Zは同月18日に控訴状を第一審裁判所に提出した。この控訴は適法か。

 2  Y敗訴の判決が確定した後,Yは,Zに対し,求償金請求の訴えを提起した。
  仮に,Yが,主債務の存在を疑わしめる重要な証拠であってZの知らないものを所持していたにもかかわらず,XY間の訴訟において,その証拠の提出を怠っていた事実が判明した場合,Zは,YZ間の訴訟において,主債務の存在を争うことができるか。

【出題趣旨】

 補助参加に関する基礎的な理解を問う問題である。1では,補助参加人の地位の独立性と従属性のバランスをどこでとるかという観点から,被参加人自らは控訴を提起しないために,それとの関係では控訴期間が経過した後に補助参加人がした控訴の効力を論ずべきである。2では,補助参加人に対する判決の効力の性質,その効力が及ぶ主観的・客観的範囲を明らかにした上で,民事訴訟法第46条第4号該当性を論ずべきである。

 

独立性・従属性と参加的効力の制度趣旨で説明できたか

小問1は控訴人独自の控訴期間の肯否。
小問2は46条4号該当性。

論点は、明らかである。
そのため、誰もが同じことを書き、差が付かないようにみえる。
しかし、第1問と同様、はっきり差が付いている。

小問1のポイントは、独立性、従属性から説明できているかである。
別の観点から説明しているもの。
形式的な文言解釈や、Zが酷だからというような単なる利益衡量、手続保障や紛争解決などである。
そういった答案は、評価を下げている。
とにかく独立性・従属性から説明していれば、それが論理的かどうかはそれほど関係ない感じだ。
補助参加には独立性と従属性の両面がある。
本来、独立性・従属性という観点のみからは、論理必然的に結論は出せないはずである。
しかし、どちらかを強調してとりあえず結論を出していれば、評価されているようである。
このあたりは、現場での割り切りが必要だろう。

小問2のポイントは、参加的効力を論じ、その趣旨から結論を導いているかである。
参加的効力の趣旨を離れて、46条4号の文言解釈や、YZの単なる利益衡量のみから結論を出す答案は評価を下げている。
なお、参加的効力の趣旨から説明できていれば、46条3号を検討していても、A評価になっている。

出題趣旨は、上記のポイントをそのまま表現している。
評価のポイントは非常にシンプルだった。

今年度の民訴は2問とも、実力者であれば当然にAが取れるような出題だった。
論文の基本である「趣旨から書く」を当たり前に実行すれば、自然とポイントを押えた答案になった。
逆に今年度の民訴でA評価でなかった人は、論文の基本的なことがおろそかになっている可能性がある。
新試験の影響かもしれないが、第2問を「Zが酷」というような利益衡量だけで結論を出している答案があった。
確かに、近年はあてはめ重視である。
しかし、論文の基本は、あくまで基本原則・趣旨から書くことである。
これは変わっていない。
あてはめは、基本原則・趣旨を踏まえた上で事実を評価して初めて意味がある。
甲や乙が酷だから、で結論を出せるのは、当事者間の公平といった趣旨を踏まえた場合だろう。
本問でも、参加的効力の趣旨を踏まえた上で、Zが酷なので信義則上敗訴者責任を分担させられない、というのならば評価されている。
しかし、制度趣旨を無視して単にZが酷だから控訴できる。
Zが酷だから主債務の存在を争える、では評価されない。

また、基本原理といっても、それは適切なものでなければならない。
なんでもかんでも紛争解決と手続保障で書いても、評価されない。
普段からそれなりにテキスト・基本書等を読み、答練や問題集を検討していれば、適切な原理原則はわかるはずである。
その点が現場でわからなくなるのは、事前準備の不足である。

それから、今年度の民訴はAだが、商法が悪かったという人は、会社法改正を意識しすぎているかもしれない。
会社法も、民訴と同じように論述していれば自然と上位になる。
しかし、民訴ではそれが出来るのに、会社法ではできない、という人は多い。
しかも、そういう人は、旧商法下ではできたのに、会社法制定後に急に出来なくなったりしている。
改正事項を意識しすぎて、趣旨から論述できなくなっているのだろう。
そういう人は、商法も民訴のように書く、という意識を持って論述するようにするとよい。

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