平成21年度新司法試験の結果について(1)

受験者合格率27.6%

9月10日、平成21年度新司法試験の合格者が発表された(法務省HP)。
合格者数は2043人。
受験者ベースの合格率は、2043÷7392≒27.6%だった。
この数字は、3つの意味で予想外である。

目安を大幅に下回った

司法試験委員会は、併行実施期間中(平成20年以降)の新旧司法試験合格者数についてという文書を出している。
それによると、今年度の合格者数の目安は2500〜2900人とされていた。
しかし、本年度の合格者数は2043人である。

平成18年度及び平成19年度については、目安の枠内だった。
平成20年度は、初めて目安を下回ったが、35人足りなかったに過ぎない。
そのため、今後も目安の下限の前後で推移するのではないかと思われた。

しかし、今年度は457人も足りない。
ここまで大幅に目安を下回ることは、予想外だった。

前年度比の合格者数減少

新司法試験においては、これまで合格者数は増加し続けてきた。
合格者3000人を目指していたのだから、当然のことといえる。
3000人達成までは増加速度の鈍化はあっても、減少はない。
そう思われていた。
しかし、今年度は、昨年度の2065人より22人合格者数が減少している。
これは、新司法試験始まって以来のことである。

修了生7割を割る合格率

新司法試験では、法科大学院修了生の7割〜8割が合格することが目標とされている。
一部のマスコミでは、未だにこれを各年度の合格率であるかのように報道している。

毎日新聞WEB版2009年9月10日 20時2分配信記事より引用、下線は筆者)

新司法試験:合格率最悪…初の2割台 国の目安に届かず

 法務省司法試験委員会は10日、法科大学院修了者を対象とした4回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2043人(男性1503人、女性540人)で昨年を下回り、委員会が今年の目安とした2500〜2900人に届かなかった。合格率は3回連続低下して27.6%と初の2割台になり、過去最悪を更新した。

 (中略)

◇法科大学院 総定員見直し加速
 新司法試験の合格率が低迷する背景には、全国74校で総定員約5800人まで膨れ上がった法科大学院の乱立がある。過剰な定員が教育の質の低下を招いたとの指摘もあり、過去最悪の合格率を受けて総定員見直しはさらに加速しそうだ。

 「合格率7割を維持するなら、定員は3000人くらいに減らすべきだ。ある程度選択と集中が必要」。5年の銀行員経験を経て今回合格した早大法科大学院修了の男性(30)は、発表会場の法務省前でこう語った。受験者の間でも、受験には「リスク感」が漂う。

 政府の司法制度改革審議会は法科大学院の創設にあたり、新司法試験の合格率を「7〜8割」と例示。法学部以外の卒業生や社会人経験者など多様な法曹像を求めた。だが、今回の未修者合格率は2割弱。社会人からの法科大学院入学者は減少傾向にある。

(引用終わり)

 

産経新聞WEB版2009.9.10 23:09配信記事より引用、下線は筆者)

レベル不十分、法科大学院に厳しい意見

 10日に発表された平成21年新司法試験の合格者数は法務省の目安を大幅に下回る2043人だった。法務省は「目安は法科大学院の教育の充実を前提に設定した。そこに達していないということ」とばっさり。厳しい結果は、法科大学院に教育レベルの向上を改めて迫る形になった。

 目安は、22年ごろに合格者を3千人にする政府目標をもとに示され、今年は2500〜2900人。政府目標の達成には、来年の合格者をかなり増やす必要があるが、法務省は「来年以降も、受験者に法曹となるための能力があるかという観点だけから判定する方法は変わらない」と“手加減”を否定する。

 合格率も3割を割り込み、過去最低になった。法科大学院は当初、7、8割程度の合格率が想定されていた。しかし、平成18年の初回から5割を切り、以降も下がり続けている

(引用終わり)

これが誤りであることは、以前の記事で述べた。
新司法試験開始以前の段階で、当時の司法試験委員会の上谷清委員長も同旨のことを述べている。

司法試験委員会会議(第12回)議事要旨より引用、下線は筆者)

 前回の委員会の審議が終わった直後に,朝日新聞に合格者数に関する記事が出て,それを切っ掛けにして,こういう新聞記事とか,記事を基にした意見が出ている。
 この朝日新聞の記事には事実と異なる記述がある。 (中略) もう一つは,新司法試験は3回受験することができるので,その間にどの程度合格するかということで考えなければいけないにもかかわらず,1回だけの受験で20パーセント台や30何パーセントといった数字が出ているとして,いかにもそれで司法試験の全体の合格率がそれと同じ数字になってしまっているというような議論をしている点。この点はちょっと確率の計算をすればすぐ分かる誤解だが,3回受験することができるわけだから,例えば1回の試験で仮に4割くらいの合格率になるとすると,3回受ければ80何パーセントが合格するという数になると思う。

(引用終わり)

このことは、関係者に取材すれば容易にわかることである。
未だにマスコミがこの点を誤って報道していることには、意図的なものを感じる。

ただ、そうは言っても各年度の合格率があまりに低いと、3回受けても7割受からない。
では、その最低ラインはどのあたりなのか。
以前の記事で述べたが、これは33%である。

やや簡単に説明すると、こういうことである。
100人の修了生がいるとしよう。
合格率が33%の場合、1回目の受験で合格するのは33人である。
残りの67人は、2回目の受験をすることになる。
2回目の受験では、67*0.33≒22人が合格する。
そうすると、残りの45人が、3度目の受験をすることになる。
3回目の受験では、45*0.33≒14人が合格する。
そうすると、残りの31人が、最終的に三振し、合格できない者ということになる。
以上から、合格率33%のときには、ほぼ7割の修了生が合格できる。

昨年度の合格率は、2065÷6261≒32.98%。
すなわち、ほぼ33%だった。
このことから、司法試験委員会は33%を下限として設定したとも思われた。
筆者は、ひょっとすると今年度も33%になるのでは、という予想をしていた。
そして、仮に今年度の合格率が33%になれば、それが合格者数の下限となる可能性がある。
そのような趣旨の記事を書くつもりでいた。
しかし、実際の合格率は27.6%だった。

合格率が27.6%だとどうなるか。
上記と同じ試算をしてみよう。
100人の修了生のうち、1回目の受験で合格するのは27人である。
残りの73人のうち、2回目の受験で合格するのは、73*0.276≒20人である。
残りの53人のうち、3回目の受験で合格するのは、53*0.276≒14人である。
そうすると、三振者は39人。
すなわち、概ね修了生の6割しか合格できないことになる。

このことは、これまで死守してきた修了生7割のラインをついに割ったことを意味する。

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