最新下級審裁判例

広島地裁判決平成21年02月25日

【事案】

 原告らが,同人らの子である亡Aが列車との衝突事故により死亡するに至ったのは,被告が所有し管理していた踏切の設置又は保存に瑕疵があったことが原因であると主張して,被告に対し,不法行為(民法717条1項)に基づき,原告ら各自に対する,損害賠償金4535万9256円及びこれに対する不法行為の日である平成18年12月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案。

【判旨】

 踏切道は,列車が通過する線路と人車の通行する道路が行き交う場所であるから,踏切道の機能が果たされるためには,列車運行の確保と道路交通の安全の適切な調整が行われることが必要不可欠である。そして,その調整は,一義的には,当該踏切道が置かれた具体的な状況に応じて設置される保安設備によって行われるべきものであるから,保安設備と踏切道の軌道施設は,一体たる土地の工作物をなしているとみるべきである。
 そうすると,踏切道における見通しの良否,交通量,列車回数等の具体的状況を基礎として考えた場合に,踏切警報機や踏切遮断機といった保安設備を欠くために踏切道における列車運行の確保と道路交通の安全との調整が全うされず,列車と横断しようとする人車との接触による事故が生じる危険が少なくないといった状況が生じていると評価できるときには,当該踏切道における軌道施設に保安設備が欠けることが,保安設備と本来一体となるべき工作物としての軌道施設の設置の瑕疵であるといえるものと解される(最高裁判所昭和40年(オ)第536号同46年4月23日第二小法廷判決民集25巻3号351頁参照)。

 

大阪地裁判決平成19年06月29日

【事案】

 原告が,大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。単に,以下「情報公開条例」という。)5条に基づき,大阪市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)に対して公文書の公開を請求したところ,市教育委員会が,平成15年8月1日付けで原告に対して別紙1公文書目録記載の公文書(併せて,以下「本件文書」という。)につき,その全部を公開しない旨の決定(以下「本件処分」という。)をしたのに対し,原告が,本件処分のうち,校長の年齢を非公開とした部分を除く部分の取消しを請求した抗告訴訟。

【判旨】

 いわゆる知る権利が憲法21条1項によって保障されていると解されるとしても,同条を根拠に直接,個々の国民が国又は地方公共団体等に対して,その保有する情報の公開を請求することができるとは解し得ないのであって,その意味で,憲法上の知る権利は,なお抽象的なものにとどまるというべきである。したがって,住民に地方公共団体の機関の保有する公文書の公開を請求する権利をどのような要件の下にどの範囲で付与するかは,専ら各地方公共団体がその条例において定めるべき事柄であり,情報公開条例5条が,何人も,同条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する公文書の公開を請求することができる旨規定するとともに,同条例7条において非公開情報の範囲等を,同条例8条において部分公開の要件等をそれぞれ規定しているのは,被告の行政機関である実施機関が保有する公文書の公開請求権を具体化するとともに,当該権利をどのような要件の下にどの範囲で付与するかについて定めたものであると解される。以上によれば,情報公開条例が憲法21条1項に反するということはできず,その趣旨をいう原告の主張は採用することができない。
 また,行政機関の保有する情報公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)26条は,地方公共団体は,同法の趣旨にのっとり,その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し,及びこれを実施するように努めなければならない旨規定しているが,同条が,地方公共団体に対して情報公開に関する施策を策定し,及びこれを実施すべき努力義務を課したにすぎないものであることは明らかである上,情報公開条例の規定内容に情報公開法の趣旨に反するような点も見当たらない。原告は,情報公開条例は,その前文又は目的規定(1条)において,市民が市政参加を呼び掛けられる対象にとどめられ,情報公開の目的が市民の理解と信頼とを確保することとされているなど,情報公開法に比べて不十分で違法であるといった趣旨の主張をする。しかしながら,上記のとおり,地方公共団体の保有する公文書の公開請求は,各地方公共団体の条例の定める要件の下にその範囲で認められるものであるところ,情報公開条例7条は,実施機関に対し,公開請求に係る公文書に非公開情報が記録されている場合を除き,当該公文書を公開すべき義務を課し,情報公開法5条と同様,原則公開の仕組みを採用している上,同条例7条各号に列挙されている非公開情報と情報公開法5条各号に列挙されている不開示情報とに大差がないことからすれば,情報公開条例の前文又は目的規定の文言が情報公開法の文言と若干異なることをもって,同条例が同法に反して違法であるということはもとより,同条例が情報公開請求権を保障した条例として不十分であるということも到底できない。

 

東京地裁判決平成20年10月17日

【事案】

 横浜市,神奈川県横須賀市又は千葉県習志野市に住む原告らが,被告に対し,α海軍施設に米軍が使用する原子力空母又は原子力潜水艦(以下,これらを併せて「米軍原子力艦船」という。)が入港している間,その上空にある「β」ポイントと「γ VOR/DME」を結ぶ経路(以下「本件経路」という。)を航空機が飛行することにより,航空機が米軍原子力艦船に衝突する危険性があるなどと主張して,人格権に基づき,α海軍施設に米軍原子力艦船が入港している間における航空機の本件経路の飛行の差止めを求めるとともに(以下,本件訴訟のうちこの請求に係る部分を「本件民事訴訟」という。),行政事件訴訟法37条の4に基づき,α海軍施設に米軍原子力艦船が入港している間における航空機の本件経路の飛行に係る飛行計画の承認(航空法97条1項)の差止めを求め(以下,本件訴訟のうちこの請求に係る部分を「本件行政訴訟」という。),さらに,α海軍施設に米軍原子力艦船が入港している間における航空機の本件経路の飛行により精神的苦痛を被ると主張して,その間において航空機に本件経路を飛行させた場合に,原告1人につき1日当たり1000円の損害賠償を求める(以下,本件訴訟のうちこの請求に係る部分を「本件国家賠償請求訴訟」という。)事案。

【判旨】

1.本件民事訴訟の適法性について

(1) 国土交通大臣は,航空法その他航空行政に関する法令の規定に基づき,航空行政の主管者として,航空機の安全性,航空従事者,航空路,飛行場,航空保安施設,航空機の運航,航空運送事業者等に関する広範な行政上の規制権限を有するものであり,このような国土交通大臣に付与された航空行政上の権限には,公権力の行使をその本質的内容とするもの(以下,これらを総称して「航空行政権」という。)が当然に含まれているということができる。

(2) ところで,原告らの本件民事訴訟に係る請求は,被告に対し,α海軍施設に米軍原子力艦船が入港している間における航空機の本件経路の飛行の差止めを民事上の請求として求めるものである。しかし,このような請求は,前記(1)で述べたところに照らすと,国土交通大臣にゆだねられた航空行政権の行使の取消し,変更又はその発動を求める請求を不可避的に包含することになるものであるから,本件民事訴訟は,不適法であるといわざるを得ない(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁参照)。

2.本件行政訴訟の適法性について

(1) 行政事件訴訟法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)。(以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)
 このような取消訴訟の原告適格の考え方は,差止めの訴えの原告適格についても,そのまま当てはまるものというべきである。
 上記の見地に立って,原告らが航空法97条1項の飛行計画の承認の差止めを求める訴えの原告適格を有するか否かについて検討する。

(2)ア.航空機が飛行しようとするときは,原則として,国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報しなければならず(航空法97条2項),航空機が計器飛行方式により,航空交通管制圏(航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される国土交通大臣が告示で指定する空港等並びにその付近の上空の空域であって,空港等及びその上空における航空交通の安全のために国土交通大臣が告示で指定するもの(同法2条13項))若しくは航空交通情報圏(同空港等以外の国土交通大臣が告示で指定する空港等及びその付近の上空の空域であって,空港等及びその上空における航空交通の安全のために国土交通大臣が告示で指定するもの(同条14項))に係る空港等から出発し,又は航空交通管制区(地表又は水面から200m以上の高さの空域であって,航空交通の安全のために国土交通大臣が告示で指定するもの(同条12項)),航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏を飛行しようとするときは,国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報し,その承認を受けなければならない(同法97条1項)。そして,飛行計画には,・・・航空交通管制並びに捜索及び救助のため参考となる事項が明らかにされなければならない(同法施行規則203条1項)。
 このようにして,飛行計画の承認を受け,又は飛行計画を通報した航空機は,原則として,航空法96条1項の国土交通大臣の指示に従うほか,飛行計画に従って航行しなければならず(同法97条3項),航空交通管制区,航空交通管制圏又は航空交通情報圏において航行している間は,国土交通大臣に当該航空機の位置,飛行状態その他国土交通省令で定める事項を通報しなければならず(同条4項),また,飛行計画の承認を受け,又は飛行計画を通報した航空機の機長は,当該航空機が飛行計画で定めた飛行を終わったときは,遅滞なく国土交通大臣にその旨を通知しなければならない(同法98条)。

イ.ところで,航空法は,次に掲げる飛行の方式を計器飛行方式という旨規定している(同法2条17項)。

(ア) 航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される国土交通大臣が告示で指定する空港等からの離陸及びこれに引き続く上昇飛行又は同空港等への着陸及びそのための降下飛行を,航空交通管制圏又は航空交通管制区において,国土交通大臣が定める経路又は航空法96条1項の規定により国土交通大臣が与える指示による経路により,かつ,その他の飛行の方法について同項の規定により国土交通大臣が与える指示に常時従って行う飛行の方式

(イ) 前記(ア)の空港等以外の国土交通大臣が告示で指定する空港等からの離陸及びこれに引き続く上昇飛行又は同空港等への着陸及びそのための降下飛行を,航空交通管制区である部分を除く航空交通情報圏において,国土交通大臣が定める経路により,かつ,航空法96条の2第1項の規定により国土交通大臣が提供する情報を常時聴取して行う飛行の方式

(ウ) 前記(ア)の飛行以外の航空交通管制区における飛行を航空法96条1項の規定により国土交通大臣が経路その他の飛行の方法について与える指示に常時従って行う飛行の方式

ウ.前示のとおり,航空機が,計器飛行方式により,航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏に係る空港等から出発し,又は航空交通管制区,航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏を飛行しようとするときは,国土交通大臣に飛行計画を通報し,その承認を受けなければならないところ,航空法が上記場合に,飛行計画の通報だけではなく,国土交通大臣による飛行計画の承認を要することとしたのは,前記航空法等の規定からすると,計器飛行方式が,一定の経路により,かつ,国土交通大臣が与える指示に常時従い,又は国土交通大臣が提供する情報を常時聴取して行う飛行の方式であることを考慮し,航空機相互間の衝突の防止,航空機と障害物との衝突の防止,並びに航空交通の秩序ある流れの維持及び促進といった航空交通管制の観点から,飛行計画を審査し,それを承認することにより,安全かつ円滑な航空機の航行を確保しようとしたものであると解するのが相当である。

エ.このことは,航空交通管理管制官又は航空管制官が管制業務及びこれに関連する業務を実施するに当たって準拠すべき基準を定めた「航空保安業務処理規程第5管制業務処理規程」において,航空法97条1項の飛行計画の承認につき,@管制業務を行う機関は,ATM センター(空域における航空交通及び気象の状況を考慮した飛行経路の設定,航空交通量の監視及び調整その他の航空交通の管理に関する業務を行う機関)による承認に従って航空機に対し承認を発出するものとすること,AATM センターは,航空交通流(空中における航空機の交通の量及び特性並びに飛行する空域等の条件によって生じる航空交通の状況)管理上必要と判断される場合は,飛行計画との相違事項又はEDCT(交通流制御を実施する場合に管理管制官が管制指示として航空機に発出する出発制限時刻)その他の指示を,関係する管制区管制所(航空路管制業務及び進入管制業務を行う機関)等に通知すること,B管制区管制所等は,ATM センターから上記Aの航空交通流管理上の指示を受領した場合は,これに従って航空機に対し承認を発出するものとし,当該指示を受領しなかった場合は,当該航空機の飛行計画が計画どおり承認されたものとして,航空機に対し承認を発出するものとすること,C管制区管制所等は,上記Bによる航空機に対する承認の発出に際して,管制間隔(航空交通の安全かつ秩序ある流れを促進するため,航空交通管理管制官又は航空管制官が確保すべき最小の航空機間の空間)又は障害物との安全間隔の設定のため,飛行経路,高度又は速度に関して,飛行計画の内容と異なる指示を発出する必要がある場合には,同法96条1項の指示としてこれを発出するものとすること,などと規定されていることからも裏付けられる。

オ.以上のとおり,航空法が,計器飛行方式により,航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏に係る空港等から出発し,又は航空交通管制区,航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏を飛行しようとする航空機に対し,飛行計画の承認を要することとした趣旨及び目的は,航空交通管制の観点から,安全かつ円滑な航空機の航行を確保しようとしたものであるというべきであって,航空路の周辺に居住する者の個別的利益を保護すべきものとする趣旨を含むものであると解することは困難である。

(3)ア.これに対し,原告らは,航空法1条が,「航空機の航行に起因する障害の防止を図る」ことを目的とする旨規定していることを理由に,航空機の墜落により起因する障害により生命及び身体の安全を侵害されるおそれがある原告らは,飛行計画の承認の差止めを求める法律上保護された利益を有する旨主張する。

イ.ところで,航空法1条所定の上記目的は,国際民間航空条約の第16附属書として採択された航空機の騒音に対する標準及び勧告方式に準拠して,同法の一部改正(昭和50年法律第58号)により,航空機騒音の排出規制の観点から航空機の型式等に応じて定められた騒音の基準に適合した航空機につき,当時の運輸大臣がその証明を行う騒音基準適合証明制度に関する規定が新設された際に,新たに追加されたものである(最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁参照)。そうすると,同条所定の「航空機の航行に起因する障害」が,航空機の騒音による障害を含むものであることは明らかであるが,同条があえて「航空機の航行に起因する障害」との文言を用いていることからすると,これに尽きるとの趣旨に基づくものであるとはにわかに考え難い。

ウ.しかし,処分の取消訴訟における周辺住民の原告適格の有無を判断するに当たっては,利益を受ける住民の特定性(特定の範囲の個人が他から区別される程度にその利益を受けるといえるか)及び住民が受ける利益の個別具体性が重要な判断基準となるのであって,差止めの訴えについても同様に考えるのが相当であるところ,航空機の航行というその性質の特殊性からすると,飛行計画の承認との関係において,航空機の墜落により生命及び身体の安全を侵害される者の範囲を他から区別される程度に特定することは,その性質上困難といわざるを得ない。

エ.また,処分の相手方以外の者について法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,処分が特定の第三者の同意を要件としていたり,処分をするに当たって特定の第三者に意見聴取,異議申立て等の機会が保障されるなど,処分の根拠となる行政法規における特定の個人の利益保護を図り得る手続を定めた規定の有無が重要な判断要素の1つであるところ,飛行計画の承認につき,このような特定の個人の利益保護を図り得る手続を定めた規定を見いだすことはできない。

オ.そうすると,少なくとも本件で問題となる飛行計画の承認に関しては,航空機の墜落から航空路の周辺に居住する者の生命,身体等の利益を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含む規定を見いだすことは困難であるから,前記(2)で判示したことを併せ考慮すると,航空法1条を根拠に,原告らに飛行計画の承認の差止めの訴えの原告適格が認められるべきであるとする原告らの主張をにわかに採用することはできない。

(4) 以上のとおり,原告らが飛行計画の承認の差止めを求めるにつき,法律上の利益を有しているということは困難であるから,本件行政訴訟は不適法であるといわざるを得ない。

3.本件国家賠償請求訴訟の適法性について

(1) 本件国家賠償請求訴訟は,α海軍施設に米軍原子力艦船が入港している間,本件経路について航空機を飛行させた場合,原告1名につき入港中1日当たり1000円の割合による損害賠償を求める訴えであって,本件口頭弁論終結時までにα海軍施設に入港した米軍原子力艦船に係る損害賠償を求める訴えとは解し難いから,将来発生すべき損害賠償を求める将来給付の訴えであると解される(なお,米軍原子力艦船である○○が,本件口頭弁論終結時において,α海軍施設に入港していたことを認めるに足りる証拠はない。)。

(2) このような将来発生すべき損害賠償請求権については,損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべきであると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である(前記最高裁昭和56年12月16日大法廷判決参照)。

(3) そして,本件口頭弁論終結時以降において,航空機が飛行することにより航空路の周辺住民らが精神的被害を被ることを理由とする損害賠償請求権については,将来それが具体的に成立したとされる時点の事実関係に基づきその成立の有無及び内容を判断すべきであり,かつ,その成立要件の具備については請求者においてその立証の責任を負うべき性質のものであるから,このような請求権は,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものであるというべきである。

(4) したがって,本件国家賠償請求訴訟は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものであるから,不適法なものというべきである。

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