平成21年度旧司法試験論文式の結果について(3)

千葉法相の立場

鳩山新政権において、法務大臣に就任したのは、千葉景子さんである。
千葉法相は自身も弁護士であり、法務行政に詳しい(民主党WEBプロフィール)。
司法改革の議論にも、当初から関わっている。
その点で、自ら「ずぶの素人」と称していた森前法相とは異なる。

法曹人口についての千葉法相の立場は、基本的には増員推進派である。

参院法務委員会平成03年04月16日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 私も、現状の司法試験そのものがこれでよろしいということはないというふうに認識をしているところでございますが、ただ一つ、まず中坊参考人にお尋ねしたいというふうに思いますが、先ほど病理現象というんでしょうか、非常に多数回にわたる受験者が多い、滞留をしているということについて発生原因の一つとして、出願者数が増加している、しかしながら合格者数がそのまま据え置かれてきたという点を御指摘になったかというふうに思います。私もこれを考えてみるに、ずっと出願者数の変動があるにもかかわらずほぼ五百名前後で合格者数が終始をしてきたということについては、これは今後改善をしていく必要はありますけれども、これまでの間もこの点についてはもう少し改革といいましょうか、合格者の増加などが図れなかったんだろうかという感じもするわけです。

 (中略)

○千葉景子君 私は、今後やはり少しでも受け入れ体制を充実させて、法曹人口そして合格者の増加を図っていくということは基本的に当然のことであろうというふうに思っております。ただ、ここまで放置してしまったことに対しては、もう一回法務省としても反省をしていただかなければいけない部分があろうというふうに思います。

(引用終わり)

 

参院法務委員会平成16年12月01日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 是非、それぞれ認識をきちっと持っていただき、連携を取って、この法曹養成制度の発展に努力をいただきたいと思っておりますが、どうも、本当にじゃそういう方向に進んでいるかなということについては、若干私も懸念を感じているところがございます。
 実は、もうこの間、大臣にも大変混乱が起こっているよというお話を申し上げましたけれども、こういう法科大学院、そして司法試験があり、司法修習があって法曹が誕生していくと。こういうことを考えますときに、それを発展させるためにとこの法科大学院が設立をされ、そして新しい司法試験ということになるわけですが、そのときの司法試験の合格者数につきましては七割、八割、この数字はなかなか難しいんですけれども、かなりの法科大学院を卒業した者が司法試験に合格をし、そして次の司法修習という段階に行って、こう流れで、プロセスで法曹ができるということがおよその制度設計として言われてまいりました。
 これが、どうもちょっと今何か変な格好になってしまっているのではないかというふうに思います。これは多分、思った以上に法科大学院の設立、意欲のある法科大学院というのが出てきて、そしてたくさんの法科大学院ができて入学をした人数も多くなったということも一方ではあるのかもしれません。たくさんそれを目指す人が、優秀な人が出てくるというのは喜ばしいことですから、そうだったらば、司法試験の合格者も、逆に言えば、まあ考えていたより増えたねと、これで私は素直にいいのではないかというふうに思うんですけれども。
 どうもそうではなくして、今度は、反面、二〇一〇年、平成二十二年で司法試験の合格者を、法曹人口を三千人ぐらいにしようという、これは、これまで余りにも少ないんで三千人ぐらいまでには何とか増やそうねと、こういう話がありました。これは別に、上限をここまで以上に増やしちゃいけないということではなかったはずなんですけれども、入口は増えちゃった、出口の方は、何か三千人というのがあるということで、何となく、せっかく法科大学院、司法試験そして司法修習という、こういう流れを育てていこうということなんですけれども、その三千人の上限をどうも念頭に置いたせいなのか、この合格者数を抑制しよう抑制しようという、どうも今動き、状況があるやに聞いております
 こうなってきますと、せっかく、社会人として仕事をしている、でも自分は法曹としてやっぱり社会の正義を、法の支配を自分も担っていこうと、そこに専門性も加えて頑張っていこうという人たちが、なかなか、いや、お金掛けてロースクールに入った、お金を、借金をしてですね、それで司法試験を受けたら、いや、ほとんどがおっこっちゃうんだということになりますと、なかなか入学者も少なくなってくる。あるいは、ゆっくりロースクールで十分にプロフェッショナルとしての多角的な教育をしようと思っても、また司法試験を受けるための何か受験勉強をしなきゃいけなくなるような、そういうことになったのでは、この改革の意味というのは損なわれてしまうのではないかというふうに思っております。

(引用終わり)

 

参院法務委員会平成17年03月18日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 私は、法科大学院ができて、今その七、八割というか、法科大学院の教育を今一生懸命やっておられるわけですね。そこでやっぱり一定の教育がきちっとなされるならば、七、八割、当然受かっていいわけですよね。別に制限する必要はない。ない。ですから、別に、将来三千人ということですから、早くそのレベルにみんなが達しているのであれば、別に今年は九百人から千百人というか、頭を押さえなくても、そのレベルであればみんな、じゃ、頑張りましょうと、合格させたって別に何の問題もないというふうに思うんです。

(引用終わり)

もっとも、増員推進派にも様々な立場の者がいる。
増員推進派の中心的存在は、規制改革会議である。
彼らの狙いは、法曹とりわけ弁護士に配分された資源を利用者側に配分することにある。
彼らの立場からは、弁護士会は規制に守られた既得権益集団ということになる。
法曹人口の増加は、その既得権剥奪のための手段という位置づけになる。
従って、彼らの念頭にある法曹人口の増加とは、弁護士人口の増加である。
その究極的な目標は、弁護士資格自体の廃止である。

規制改革会議基本ルールTF、基準認証・法務・資格・TF平成19年5月8日(火)より引用、下線は筆者)

○ 福井委員 特定少数のレントなり既得権を剥奪することに消費者主権の意味があるわけです。アメリカの弁護士は激しく広告競争もするし、自己の売り込み競争もするわけです。勿論、うそをついたりした弁護士は市場から激しく懲罰を受けるという自浄作用が備わっている。日本の弁護士会は、残念ながらそういう状況にない。これもやはり数が少な過ぎると、すべての弁護士が特権的な地位を得てしまうわけです。そこに根本的に大きな原因があるというのがこれまでの答申を貫く基調になっているわけです。

 (中略)

○ 中条主査 典型的なのは、今、鈴木さんなども努力されて、少しずつ変わってきましたけれども、弁護士会は価格を一定にしていたわけじゃないですか。明らかに独占的な行為です。カルテル行為じゃないですか。それが何で社会全体にとって望ましい自治などと言えるのか。自治的な団体というのは必ず利益最大化で行動しますよ。そこは頭に入れた上で私たちは行動しなければいけないと思うんです。

○ 佐々木参事官 価格設定もそういうような意味であったのか、また沿革的には違うものであった可能性も高いと思われます。

○ 福井委員 利権を確保するために価格を決めるとは絶対に言いません。言うときにはみんなきれい事を言います

 

○ 福井委員 例えば知財訴訟をやるとか行政訴訟をやるという人材と、非常に決まりきった小額の貸金債権の回収だけやるという弁護士と、仮に分化しているなら、後者の弁護士にはそんなに高度な知識は要らないでしょう。

○ 佐々木参事官 そのようなことを言うと、そもそも弁護士という資格がなくてもいいわけですね

○ 福井委員 本来はそうなんです。我々は究極的にはそう思っているんです。

○ 中条主査 TOEIC でいいと思っている。

○ 福井委員 例えば行政法TOEIC 何点、民法TOEIC 何点とか、民法の中でも契約法何点で不法行為法何点など、それを言わば胸にバッジみたいに付ける自由を与えておけばそのバッジの点数を見て顧客が勝手に選べばいいとも言える。

○ 中条主査 TOEIC350 点と書いてある人に、だれも仕事を頼まないですよ。

○ 福井委員 直ちに制度化は難しいのかもしれないけれども、理念形としてはそんなものだとも言える。その人が本当に頼みたい事件をどれくらい誠実に安く的確にやってくれるのかということが消費者にわかれば、実は資格試験の大きな目標は、かえってよりよく実現できるわけです。

(引用終わり)

彼らの立場からは、現在問題になっている質の低下や、弁護士就職難といったもの。
これらは、増員の障害にはならない。
彼らはむしろ、それを意図して増員を推進しているからである。

規制改革会議基本ルールTF、基準認証・法務・資格・TF平成19年5月8日(火)より引用、下線は筆者)

○ 安念委員 500人の者が1,500人、3,000人となれば、質が落ちるに決まっているんです。質を維持することはできるはずはない。だとすると、もう質は落ちますということを世の中に宣言するしかないんです。質が落ちるということを前提にした教育方法をするしかないんです。そこを割り切れるかどうかです。

○ 福井委員 質が悪いとわかっていれば別にいいわけです。この人には難しい事件は頼めないと注意できる。我々が町医者に行くときと大学付属病院に行くのとを使い分けているのと同じで、定型的な事件を安くやってもらいたいときには、そんなに質を気にしない弁護士に頼むと、だけれども、難しい事件はそれなりの人に頼む。そこが見分けられるような材料が豊富にそろっていれば、合格のときに超難関である必然性はないでしょう。

(引用終わり)

 

平成17年7月4日第6回規制見直し基準WGより引用、下線は筆者)

福井専門委員:アメリカの場合は、能力の高い高額所得の弁護士もいるが、大半は町の弁護士であり、弁護士だけでは生計を立てられない人もいると聞いている。
 しかし、そのような町の弁護士でも一般国民には役立っており、これは法務省のレポートにも示されているとおりである。このような面を見れば、法曹人口の多さが一般国民に対する法的サービスの享受度を高めることにつながる。つまり、弁護士の底辺を拡大することが有益であるということは諸外国の例でも確かであると考える。

(引用終わり)

千葉法相が上記の立場なら、増員圧力をかけた可能性が疑われる。
しかし、千葉法相の立場は、規制改革会議の考え方とは異なる。

参院法務委員会平成07年10月19日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 今、行政改革委員会の規制緩和小委員会の方でも法曹人口の増加というものがテーマになっているようでございます。ただ、ちょっと私が気になりますのは、当然これからニーズがふえてくるということもございますけれども、一つは、規制緩和それから経済の活性化ということとこの法曹人口あるいは司法制度の整備という問題とは必ずしもパラレルにいくんだろうかと。経済活動と同列に扱うことはどうなのかなという、ちょっと懸念がございます。
 やはり司法の場合には、公正な司法あるいは公的な機能、国民の権利擁護というような観点がございます。そういうことも含めて問題に取り組んでいかなければいけないかというふうに思いますけれども、法務省としては、この法曹三者による改革協や、あるいは今指摘をされております規制緩和の面などからの指摘、こういうものについてどう受けとめて今後取り組んでいかれるのか、その辺のお考えがございましたらお聞きをさせていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

(引用終わり)

千葉法相の立場は、敢えて言えば法務族的増員論である。
すなわち、法務関係に物的・人的資源を集める方策として、司法改革を捉える。
物的資源とはすなわち予算であり、人的資源の獲得が増員論である。
従って、増員の対象は弁護士というよりむしろ、裁判官、検察官である。

参院法務委員会平成03年04月16日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 今できるだけ積極的に条件整備をしていただきたいという話をしたんですけれども、これは合格者が増加することに伴って法曹三者がバランスよくふえていく、増加をしていくということが必要だろうと思いますし、そういうことができないのであればこの合格者増というのも本当の改革になっていかないと言えるというふうに思います。
 そこで、それぞれの法曹三者の場面で条件づくりというのが必要になってこようかというふうに思います。きょうは法務省、そして裁判所も来ていただいておりますので、その辺についてお伺いしたいというふうに思うんですが、この改革の問題が出てくる出発点の一つとしては、やはり検察官、裁判官の不足ということがかなり問題視されてきたであろうというふうに思うんですね。今回も合格者の増加ということを考えるに当たっては、ここの改善というものがなされませんと、せっかく人数をふやしてもそれが検察官、そして裁判官の増加ということに結びついていかない、そういう結果にもなりかねません。

(引用終わり)

 

参院法務委員会平成07年10月19日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 先ほどの改革協での議論の中で、法曹人口を増加させていくということではほぼ大きな合意を得てきているというお話でございました。私もそれには決して異論を唱えるものではございません。しかし、先ほど魚住委員の御質問にもございましたように、やはり法曹人口をふやすといいましても、バランスをとって増加が図られていくということが必要だろうというふうに思うんです。弁護士だけがふえるということでもこれは国民のニーズにこたえることができませんし、それから検察官、裁判官、こういうところがやはり体制がきちっととられませんと、これからのさまざまなニーズにこたえ切れないという部分があるだろうというふうに思います。
 何度も私も質問した記憶があるので、どうもこれもちょっと重なる質問で恐縮になりますけれども、やはりこの問題の発端というのは、弁護士が不足しているという問題よりは、やはり検察官が不足をしているというようなことからもこの法曹三者での協議などが始まってきているわけでございますので、やはり検察官の増員については、先ほどの官房長の御答弁もございましたけれども、これはもう意見として受けとめていただいても結構でございますが、例えば十年間でこれくらいの体制にしたい、それには一年ごとにこういう増員体制をとっていきたいというような計画などがやっぱりとられると、法曹人口の増加についてもバランスのとれた方向性が見えるのではないだろうかというふうに思います。これは同じお答えになろうかというふうに思いますので、御答弁をいただく必要はございませんけれども、ぜひそういう方向も考えていただきたいというふうに思っているところでございます。
 そして、特に私が指摘させていただきたいのは、やはり司法が国民のために機能を果たすためには、人の体制、これを充実させていくということも当然でございますけれども、やはりそれ以外の司法全体の基盤整備あるいは条件整備、こういうものも当然図られていかなければならないだろうと思います。多分、これは改革協などでもいろいろなテーマになっているものと思われますけれども、先ほど予算の話がございました。
 裁判所の予算で考えますと、平成六年ですと国家予算のわずか〇・四%ということでございます。私たちも予算策定の際にはでき得る限り裁判所や法務省などの応援団でいるつもりではございますけれども、ぜひそういうところの皆さんのお取り組みもいただきたいというふうに思っているところでございます。

(引用終わり)

 

参院法務委員会平成10年09月22日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 まず、先ほどから司法改革の問題の指摘が各委員からもございました。・・・(中略)・・・考えてみますと、司法の予算というのは極めて貧弱なわけでして、これはたびたびこの法務委員会などでも指摘をされてきたことです。遠慮なくもう少し法務省も裁判所も予算を獲得したらどうかという話も出ておりました。こういう非常に財政が厳しい折ですからなかなかそれは大変であろうかと思いますし、むだなことをするわけにはまいりませんけれども、やはり三権の一翼を担うということになれば、その割合としてはもう少し積極的に予算の面でも充実をさせていくということは必要なんじゃないか。よく言われますように、現在では裁判所などは国家予算の〇・何%、一%にも満たない、こういう状況です。法務省の予算もそう十分に、あるいはいやすごい大きいなというような額ではないと思います。
 そういう意味では、こういうことを念頭に置いて考えますと、これから本当に法務省、裁判所みずからもこういう問題に積極的に取り組まれる必要がある。審議会の設置というような方向もいろいろ取りざたはされておりますけれども、これまで指摘をされてきた課題などについてもやはり待っているという姿勢ではなく積極的な取り組みというのも求められていくのだろうと思います。

(引用終わり)

このような立場からは、司法を弱体化させるような増員、弁護士に偏った増員は躊躇される。
そうすると、現在問題となっていること。
すなわち、質の低下や就職難の問題は、増員を見直す動機となりうる。
実際、当時の鳩山邦夫法相の3000人は多すぎる発言に対しても、それほど批判的ではなかった。

参院法務委員会平成19年10月30日より引用、下線は筆者)

○千葉景子君 もう一つ発言で、司法試験合格者三千人、多いのではないかと。これもこの間の司法制度改革の流れ、それから閣議決定をして、そしてそれに基づいて多岐にわたる法案を策定をし、そして進んできていると、こういうことを考えたときには、いろいろ意見はございます、この合格者をどうするかというのはですね。問題はございますけれども、その流れの上で今様々な作業が進んでいるということを考えたときに、これ三千人は多いなという発言は、この司法制度改革全体を抜本的に見直そうというようなお考えの下の発言なのでしょうか。その辺、もしそういうことであれば、それは一つの御見識だというふうに思いますし、そうではないのか、ちょっとそこだけ簡潔にお答えいただければと思います。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 司法制度改革の一環の中で、法曹に対する需要が様々に増えていく、そのことはよく理解をいたしておるわけでありまして、そういう意味で三千人、法科大学院開設に伴って新試験、旧試験、これが新試験だけになって三千人というところまで閣議決定しているわけでありますから、私はそれに異論を差し挟むわけではありません。
 ですが、三千人でずっと行きますと、人口当たりの法曹の数というのが非常に増えるわけでございます。それが日本のような、日本の文明というのは訴訟社会ではない、いや、もちろん訴訟は必要なんですよ、だけれども、いわゆる日本は和の文明ですから、訴訟社会という形になるべきではない。つまり、乱訴が続出するような世界であってはならないと考えた場合に、最終的に人口七百何十人に一人というふうになる、法曹がですね、そこまでの必要があるかというふうに考えますと、三千人にするまでは閣議決定でいいんです、司法制度改革。このままずっと行くことに私は疑問を感じます。

○千葉景子君 この問題も、論じますといろんな問題点があろうかと思います
 ただ、決して乱訴を求めようということでもありませんでしたし、それから必ずしも法曹が訴訟にかかわるかどうかと、こういう問題もあります。いろんな分野で法曹がこの社会を支えていこうと、こういう理念もあったわけですので。ただ、今お話がございますように、じゃ、ずっと三千人でいいのか、一定の人数になったところで検証してみることも必要かと、こういう意見もございます。是非ここも、大きな理念を踏まえていただいた上で、これからまた再度議論などできれば幸いだというふうに思っております。

(引用終わり)

法相就任後の記者会見においても、3000人の見直しの余地を含ませている。

千葉法相閣議後記者会見平成21年9月18日(金)より引用)

Q:先日,新司法試験の合格者の発表がありまして,今年は目安を大幅に下回って昨年の合格者数よりもさらに低いという状況になりました。改めて法科大学院のあり方とか,法曹人口そのもののあり方の議論がまた出てくるのですが,一方で閣議決定で前の政権では,3000人を来年ごろまでに目指すということになっているのですけれども,事実上それは厳しいという状況になっているのですが,計画そのものについて見直す考えはありますか

A:これは正直言いまして,目標自体を変えるべきかどうかという,難しいところだと思います。ただ,実際に目標の期間にどうやら難しいなということがありますので,少なくてもその時期は若干延ばす必要があるのではないか,あるいは,それはこれから実情をもう少し検討しなければいけないと思いますので,それによって,多少の軌道修正が必要になってくるのか,その辺りは今回の結果を見たり,それから多くの現場の実情などもお聞きしながら,どのような方向性を出していくか,これもそうのんびりしているという問題ではないとは思っていますが,検討してまいりたいと思っています。

(引用終わり)

このような千葉法相のスタンスからは、現段階で圧力をかける動機は見当たらない。
千葉法相が司法試験委員会に目安通りにせよと指示した可能性は、ほとんどないだろう。

民主党の立場

今回は法相の交代だけでなく、自民党から民主党への政権交代でもある。
そこで、民主党の法曹人口に対する立ち位置を確認しておく必要がある。

司法改革当初の民主党は、法曹増員推進の立場だった。

「司法制度改革への意見」2001/05/17より引用、下線は筆者)

 わが党は法曹人口について10年後で5万人、将来は10万人体制を、早急に年間3,000人規模の法曹養成を提案しており、現段階の審議会の議論はこの趣旨に沿ったものと理解している。ただし、10年後5万人を実現するためには、年間3,000人を上限ととらえず、さらに多くの司法試験合格者を確保する必要がある
 また、裁判官、検察官等の増員については、すでに最高裁判所及び法務省から意見が出されているが最低限その数を実現し、さらに大幅な増員をはかるとともに、現在の待遇を確保するべきである。

(引用終わり)

しかし、質の問題、就職難の問題等を受け、現在はトーンダウンしている。

民主党政策集INDEX2009より引用、下線は筆者)

法曹人口の大幅な増加という観点から年間の司法試験合格者を3000人とする目標がたてられ、また法曹の質の向上のため2004年から法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度が導入されました。

しかし、法学未修コース出身者の新司法試験合格率の低迷、修習終了時の考試(二回試験)の落第者の急増、弁護士志望の「就職難」等の問題が指摘されるようになりました

法曹の質を維持しつつ、適正規模の法曹人口を確保するために、法科大学院、新司法試験、予備試験、法曹人口のあり方等についてプロジェクトチームを設置し検討しています

(引用終わり)

上記に示されたプロジェクトチームは最近、中間報告を出した。
そこでは、法曹人口問題は棚上げにされている。

読売新聞WEB版2009年10月7日14時37分より引用)

法科大学院の定員削減を、民主チーム中間報告

 法科大学院を中核とする法曹養成制度の見直し策について、民主党のプロジェクトチームがまとめた中間報告が明らかになった。

 (中略)

  司法試験合格者を2010年ごろまでに3000人程度に増やす政府目標に関しては「実現は極めて困難だ」と明記したが、見直すかどうかの判断は先送りした。

(引用終わり)

従って、民主党としても、この問題で積極的に動くことは考えにくい。
司法試験委員会が民主党から圧力を受けた可能性は、極めて低い。

以上のことから、政治的圧力の可能性は、ないといってよい。
なぜ、今年度の旧試験に限って目安通りにしたのか。
なぜ、132点を大きく下回る合格点にしたのか。
その答えは、今のところ不明である。

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