平成21年度旧司法試験論文式
民法第2問参考答案

第1.設問1
1.Cからの弁済が期待できないBとしては、D及びEへの請求をすることになる。そこで、法定相続分と異なる相続債務の帰属を定めた遺産分割についての相続債権者に対する対抗の可否について検討する。
2.金銭債務のような可分債務は、分割帰属の原則(427条)に従い、相続により法定相続分に応じて当然に各相続人に分割帰属する。そうすると、相続債権者の関与なく遺産分割によって法定相続分と異なる相続債務の帰属を定めることは、債権者の承諾のない免責的債務引受となるから、相続債権者に対してはその効力が及ばない。
 従って、各相続人は、遺産分割に基づく相続債務の帰属の変更を対抗できないが、相続債権者の方から相続債務についての遺産分割の結果を承認し、各相続人に対し、遺産分割によって帰属した相続債務の履行を請求することは妨げられない。そして、相続債権者に対して遺産分割に基づく債務の負担を超える弁済をした相続人は、遺産分割によって当該債務を負担すべきとされた相続人に対して、その超過部分を求償しうる。
3.本問では、Bに対する相続債務は、相続によってC、D及びEにそれぞれ1000万円ずつ分割帰属し、その後の遺産分割によるCへの単独帰属はBに対抗することができない。
 よって、BはD及びEに対して、それぞれ1000万円を請求でき、Bの請求に応じたD及びEは、Cに対して求償できる。
 また、Bの方から遺産分割の結果を承認してCに対して残額2000万円を請求することもできる。
第2.設問2
1.乙マンションの所有権の帰属について
(1) 相続は包括承継である(896条本文)から、被相続人が生前に第三者に不動産を譲渡した場合、相続によって相続人は被相続人の譲渡人たる地位を承継する。従って、相続人は「第三者」(177条)に当たらず、譲受人との関係で対抗関係に立たない。
(2) 本問において、Aが生前にGに対して乙マンションを売却し、DはAの相続人であるから、DとGは対抗関係に立たない。従って、乙マンションの登記がDにあっても、DはGに対して登記の欠缺を主張しえない。
 よって、乙マンションの所有権はGに帰属する。
2.相続人の担保責任について
(1) 乙マンションの所有権がGに帰属する以上、C、D及びEによる遺産分割のうち乙マンションをDに帰属させる部分は他人物についてのものである。従って、C及びEは、他人物売主と同じくその相続分に応じて担保責任を負う(911条)。
(2) 担保責任の法的性質は売買契約が原始的に全部又は一部無効である場合において、その対価的牽連性を維持するために特に法が売主に負担させた法定責任である。従って、売主の帰責事由がなくても成立し、また、賠償の対象となる損害は当該契約の有効性を信頼したために生じた損害、すなわち信頼利益に限られる。
 そして、担保責任と債務不履行責任は要件を異にする別個の制度であることからすれば、他人物売主の買主に権利を移転させる義務(560条)の不履行について売主の故意又は過失が認められる場合には、別途債務不履行責任(415条)が成立すると解される。債務不履行責任に基づく損害賠償請求は本来の履行に代わるものであるから、その賠償の対象となる損害は、債務の履行により得られたであろう利益、すなわち履行利益にまで及ぶ。
 以上のことは、遺産分割において準用される場合にも同様である。
 もっとも、遺産分割を解除(561条、562条)することはできない。なぜなら、遺産分割自体は協議の成立によって終了し、その後は各相続人間の債権債務関係が残るに過ぎず、遡及効(909条本文)を有する遺産の再分割を行うことは著しく法的安定性を害する結果となることから債務不履行解除は許されないと解されるところ、このことは担保責任に基づく解除の場合にも同じく妥当するからである。
(3) 本問では、以下の通りである。
ア.DはC及びEに対して、乙マンションの所有権をGから取得してDに移転することを請求できる。
イ.C及びEが上記アの義務を履行できない場合には、遺産分割の時にDが乙マンションの所有権が相続財産に含まれないことを知っていたときを除き、DはC及びEに対して遺産分割の費用、登記の費用、Gへの返還の費用その他乙マンションの所有権を取得できると誤信したことによる損害について各々その相続分に応じた賠償を請求できる。
ウ.Dは、C及びEのうち上記アの義務の不履行について故意又は過失のある者に対して、債務不履行に基づいて乙マンションの時価6000万円のうち各々その相続分に応じた金額である2000万円の賠償を請求できる。

以上

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