最新下級審裁判例

東京高裁判決平成21年01月29日

【判旨】

 抗告訴訟の一類型である行政事件訴訟法3条2項所定の処分の取消しの訴えの対象となる処分は,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいうものであるところ,条例の制定は,普通地方公共団体の議会の固有の立法作用に基づく行為であって,一般的,抽象的な法規範を定立する立法作用としての性質を有するものであり,当該条例に基づく行政庁の具体的な行為が介在しなければ,特定の個人の権利義務ないし法的地位に直接具体的な影響を及ぼすものではないから,それ自体が抗告訴訟の対象である行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当しないというべきである。
 そして,地方自治法が条例をもって普通地方公共団体の施策の基本的な事項を定めることと規定していることに基づき,普通地方公共団体が条例を制定した場合も,当該条例は,住民全体の観点から当該普通地方公共団体の施策の基本的な事項を定めるものであり,特定の個人の権利義務ないし法的地位を直接定めるものではないから,上記と同様に解するのが相当である。もっとも,このような立法行為の形式を採る行為であっても,行政庁の具体的な行為を待たずに,特定の個人の権利義務ないし法的地位に直接具体的影響を及ぼすものについては,純粋な立法行為とはいえず,立法の形式を借りた行政処分であるとの理由に基づき,例外的に抗告訴訟の対象となると解する余地がないではない。しかしながら,本来,一般的,抽象的な内容を持ち,基本的事項を定める条例制定については,それが違法であれば当該条例は当然に無効とされるべきであり,そうでなければ当然に有効であって,違法とされる瑕疵ある条例が一般の行政処分のように,一応適法なものとして公定力が認められ,判決による取消しにより遡及的にその効力が失われるものとすることは相当でないし,取消訴訟の出訴期間の経過によりその効力を争い得なくなるという不可争力を認めることも相当ではない。そして,普通地方公共団体が条例を設け又はそれを改廃することについては,議会の議決によるものとされ,普通地方公共団体の長は,議長から議会が議決した条例の送付を受けたときは20日以内にこれを公布しなければならないものとされている(地方自治法149条1号,96条1項号,16条1項,2項)のであり,議会における条例の制定若しくは改廃の議決に当該普通地方公共団体の長が異議ある場合の再議に付する手続等が同法176条に定められているほか,選挙権を有するものによる条例の制定又は改廃の請求(同法74条),議会の解散の請求(同法76条)及び議員の解職請求(同法80条)等に関する規定が整備されていることをも考慮すると,普通地方公共団体の議会の固有の立法作用に基づく行為であって,一般的,抽象的な法規範を定立する立法作用としての性質を有し,基本的な事項を定める条例の制定をもって,行政事件訴訟法3条2項の処分の取消しの訴えの対象となる行政庁の処分その他の公権力の行使に当たるものと解することはできない。
 仮に,行政庁の具体的な処分を待つまでもなく,条例それ自体によって,その適用を受ける特定の個人の権利義務ないし法的地位に直接具体的な影響を及ぼす場合について,例外的に条例制定に処分性を認める余地があるとしても,条例制定の処分性が肯定されるのは,当該条例によって限られた特定の者に対してのみ具体的な効果が生じることが規定上明らかにされている場合や,要件等の規定の仕方が一応抽象的になっているものの,実際には特定の者に対してのみ効果を生じさせることを目的として条例が制定され,他の者に適用される可能性がない場合など,その条例の制定をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することができるような極めて例外的な場合に限られるというべきである。

 

大阪地裁判決平成21年01月30日

【判旨】

 およそ民主主義国家にあっては,国家の維持及び活動に必要な経費は,主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきところ,憲法は,上記のような見地から,その30条において,国民は,法律の定めるところにより,納税の義務を負う旨規定し,84条において,あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする旨規定し,いわゆる租税法律主義を定めている。そして,前記のような租税法律主義の趣旨に照らせば,租税を創設し,改廃するのはもとより,納税義務者,課税標準及び税率等の課税要件並びに租税の賦課徴収の手続についても,法律において明確に定めることが必要であると解される(最高裁昭和28年(オ)第616号同30年3月23日大法廷判決・民集9巻3号336頁最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)。
 もっとも,租税法規は,複雑かつ多様な経済事象をその規律の対象とするものであり,課税の公平及び徴税の適正等の観点から専門的,技術的かつ細目的な規定を設ける必要があるとともに,上記のような経済事象の変動に即応する必要があるところ,このような租税法規の性格に照らせば,課税要件等の細部についてまですべて法律において規定することは実際上困難であって,憲法も,課税要件等の規定について,一定範囲において政令に委任することも許容しているものと解される。しかしながら,このように,課税要件等の規定について政令に委任すること自体は許されるとしても,憲法が定める前記租税法律主義の趣旨からすれば,課税要件の具体的内容の定めを包括的に委任するようないわゆる一般的白紙的委任は許されないと解され,課税要件等に係る基本的事項については法律において定めることを要し,政令その他の下位法令に委任することが許されるのはその技術的細目的事項に限られるものというべきであり,また,委任を認める法律自体から委任の範囲が明確に読み取れることを要するものというべきである。

 

札幌高裁判決平成21年07月10日

【判旨】

 差戻審である当審は,上告審が破棄理由とした事実上及び法律上の判断に拘束されるが(民事訴訟法325条3項),他方,従前の控訴審の審理の続行として,破棄理由とされた事項に限らず,事件全般にわたって審理することができ,破棄判断の基礎となった事実関係を審理の上これを変更することができるのであるから,上告審が破棄判断をするに当たりその基礎として立脚した事実関係の確定については,上記拘束力は生じない(最高裁判所昭和36年11月28日第三小法廷判決・民集15巻10号2593頁参照)。したがって,当審は,上告審判決の前提となった差戻前控訴審判決の確定した事実関係と異なる事実関係を認定した上で,差戻前控訴審判決と同一の結論に達することもできる。

 

知財高裁判決平成21年08月27日

【事案】

1.女性デュオ「ピンク・レディー」を結成していた芸能人である控訴人らが,出版社である被控訴人に対し,被控訴人が発行する本件雑誌(原判決の略称に従う。以下同じ。)中の記事において控訴人らの写真14枚を無断で使用したことが控訴人らのいわゆる「パブリシティ権」を侵害する不法行為になると主張し,それぞれ損害賠償として186万円及びこれに対する本件雑誌が発行された平成19年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案。

2.原判決は,芸能人等の氏名,肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきであるとした上,本件事案における控訴人らの写真の使用が控訴人らの顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的としたものと認めることはできないとして,控訴人らの請求をすべて棄却したため,控訴人らがこれを不服として控訴した。

【判旨】

1.いわゆるパブリシティ権に係る検討

 氏名は,人が個人として尊重される基礎で,その個人の人格の象徴であり,人格権の一内容を構成するものであって,個人は,氏名を他人に冒用されない権利・利益を有し(最高裁昭和58年(オ)第1311号昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁参照),これは,個人の通称,雅号,芸名についても同様であり,また,個人の私生活上の自由の1つとして,何人も,その承諾なしに,みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するもの(最高裁昭和40年(あ)第1187号昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)であって,肖像も,個人の属性で,人格権の一内容を構成するものである(以下,これらの氏名等や肖像を併せて「氏名・肖像」という。)ということができ,氏名・肖像の無断の使用は当該個人の人格的価値を侵害することになる。したがって,芸能人やスポーツ選手等の著名人も,人格権に基づき,正当な理由なく,その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有するということができるが,著名人については,その氏名・肖像を,商品の広告に使用し,商品に付し,更に肖像自体を商品化するなどした場合には,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによる顧客吸引力を有することから,当該商品の売上げに結び付くなど,経済的利益・価値を生み出すことになるところ,このような経済的利益・価値もまた,人格権に由来する権利として,当該著名人が排他的に支配する権利(以下,この意味での権利を「パブリシティ権」という。)であるということができる。
 もっとも,著名人は,自らが社会的に著名な存在となった結果として,必然的に一般人に比してより社会の正当な関心事の対象となりやすいものであって,正当な報道,評論,社会事象の紹介等のためにその氏名・肖像が利用される必要もあり,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という憲法上の要請からして,また,そうといわないまでも,自らの氏名・肖像を第三者が喧伝などすることでその著名の程度が増幅してその社会的な存在が確立されていくという社会的に著名な存在に至る過程からして,著名人がその氏名・肖像を排他的に支配する権利も制限され,あるいは,第三者による利用を許容しなければならない場合があることはやむを得ないということができ,結局のところ,著名人の氏名・肖像の使用が違法性を有するか否かは,著名人が自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利と,表現の自由の保障ないしその社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量の問題として相関関係的にとらえる必要があるのであって,その氏名・肖像を使用する目的,方法,態様,肖像写真についてはその入手方法,著名人の属性,その著名性の程度,当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を総合的に観察して判断されるべきものということができる。そして,一般に,著名人の肖像写真をグラビア写真やカレンダーに無断で使用する場合には,肖像自体を商品化するものであり,その使用は違法性を帯びるものといわなければならない。一方,著名人の肖像写真が当該著名人の承諾の下に頒布されたものであった場合には,その頒布を受けた肖像写真を利用するに際して,著名人の承諾を改めて得なかったとして,その意味では無断の使用に当たるといえるときであっても,なおパブリシティ権の侵害の有無といった見地からは,その侵害が否定される場合もあるというべきである。
 この点につき,控訴人らは,パブリシティ権侵害の判断基準として,「当該著名な芸能人の名声,社会的評価,知名度等,そしてその肖像等が出版物の販売促進のために用いられたか否か,その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうか」によるべきであると主張する。しかしながら,出版事業も営利事業の一環として行われるのが一般的であるところ,正当な報道,評論,社会的事象の紹介のために必然的に著名人の氏名・肖像を利用せざるを得ない場合においても,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによって,著名人の氏名・肖像の利用によって出版物の販売促進の効果が発生することが予想されるようなときには,その氏名・肖像が出版物の販売促進のために用いられたということができ,また,営利事業の一環として行われる出版での著名人の氏名・肖像の利用は商業的理由ということができる。そして,控訴人ら主張に係る上記基準における「出版物の販売促進のために用い」ることや「商業的利用」につき,このような場合をも含むものであるとすると,そのような基準に依拠するのでは,出版における正当な報道,評論,社会的事象の紹介のための著名人の氏名・肖像の利用も許されない結果となるおそれも生じることからしても,控訴人らの主張は一面的に過ぎ,採用し得ないというべきである。
 他方,被控訴人は,パブリシティ権侵害の判断基準として,「その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かにより判断すべきである」と主張する。しかしながら,このうち,その使用行為が「専ら」当該芸能人等の顧客吸引力の利用を目的とするか否かによるべきとする点は,出版等につき,顧客吸引力の利用以外の目的がわずかでもあれば,そのほとんどの目的が著名人の氏名・肖像による顧客吸引力を利用しようとするものであったとしても,「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害とされることがないという意味のものであるとすると,被控訴人の主張もまた,一面的に過ぎ,採用し得ないというべきである。
 そこで,上記説示したところに従い,本件事案におけるパブリシティ権の侵害の有無について検討する。

2.本件写真の使用とパブリシティ権侵害の有無

 本件記事は,昭和51年から昭和56年にかけて活動して広く世間に知られ,子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その振り付けをまねることが社会的現象にさえなり,また,昭和59年以後数回にわたり期間限定で再結成されてコンサート活動を行ったピンク・レディーの写真14枚(本件写真)を掲載するなどの「『ピンク・レディー』ダイエット」との見出しの本件雑誌の16ないし18頁にかけての全3頁の記事であって,その構成は,<ア>見出し部分(16頁右端),<イ>5つの楽曲についての各説明(16頁上下,17頁上下,18頁上部),<ウ>ナイスバディ記事(17頁左端上半分),<エ>Aの語る思い出(17頁左端下半分),<オ>本誌秘蔵写真で綴るピンク・レディーの思い出(18頁下部),<カ>Cの語る思い出(18頁下端)から成るものであって,上記<ア>ないし<ウ>においては,それぞれ歌唱中(本件写真1ないし5,7)又はビーチでビキニ姿で立っている(本件写真4)控訴人らの写真が1枚ずつ計7枚掲載され,上記<オ>においては,歌唱中(本件写真9,11,14),歌唱のための衣装姿(本件写真8),リハーサル中(本件写真10,13),インタビューを受けている(本件写真12)控訴人らの写真計7枚が掲載されているところ,@本件記事は,本件雑誌の読者層が子供時代にピンク・レディーに熱狂した女性ファン層と重なることから,16頁上下,17頁上下及び18頁上部において,ピンク・レディーの曲に合わせてその振り付けを踊ることによってダイエットをすることを紹介することとし,その関連で,17頁左端上半分に振り付けしながら踊って楽しくやせられてピンク・レディーのような体型も夢ではないとの記載,17頁左端下半分にAが語る小学生時代にピンク・レディーの振り付けをまねて踊っていたとの思い出やピンク・レディーの楽曲に合わせて踊ることによって楽しくダイエットができることなどを語る記載,18頁下部に「本誌秘蔵写真で綴るピンク・レディーの思い出」として,歌唱中やインタビューを受けるなどして活躍中のピンク・レディーの写真の掲載,18頁下端にCが小学生時代にピンク・レディーの振り付けをまねて踊っていたとの思い出などを語る記載をするものであること,A別紙「本件写真の大きさ等」のとおり,本件写真は,その面積において,大きなもので約80平方センチメートル(本件写真7)から小さなもので約10.1平方センチメートル(本件写真13)まで,平均約36.4平方センチメートルの14枚の白黒写真であって,それぞれの写真において,縦26p,横21p,面積546平方センチメートルのAB変形版サイズである本件雑誌の各頁との比較でさほど大きなものということができず,また,このことからして,本件写真は,通常の読者がグラビア写真として鑑賞の対象とするものとしては十分なものとは認め難く,本件写真が週刊誌等におけるグラビア写真の利用と同視できる程度のものということもできないこと,B本件記事のうち16頁上下,17頁上下及び18頁上部の各楽曲を歌唱中の控訴人らの写真の周囲には,「Bのひとことアドバイス」と題する踊り方の簡単な説明の文章,本件写真の大きさに比肩する大きさでの踊りの姿勢を取るAの写真,各楽曲についての4コマのイラストと説明による振り付けの図解解説が掲載されるなどしており,本件記事を全体として見た構成において,必ずしも控訴人らの写真が本件記事の中心となっているとみることができるものではないこと,以上の事実等が認められ,本件記事は,昭和50年代に広く知られ,その振り付けをまねることが社会的現象になったピンク・レディーに子供時代に熱狂するなどした読者層に,その記憶にあるピンク・レディーの楽曲の振り付けで踊ることによってダイエットをすることを紹介して勧める記事ということができ,また,本件雑誌の表紙における本件記事の紹介も,その表紙右中央部に,赤紫地に白抜きの「B解説!ストレス発散“ヤセる”5曲」の見出しと大きさが縦9.6p,横1.7pのピンク色の下地に黄色で「『ピンク・レディー』ダイエット」との見出しを記載するものであって,これは,Aが解説するピンク・レディーにかかわるダイエット記事が登載されていることを告知しようとするものということができ,さらに,本件雑誌の電車等の中吊り広告及び歌唱中の控訴人らの写真1枚が付けられた新聞広告も同様の趣旨のものであるということができ,以上によると,本件写真の使用は,ピンク・レディーの楽曲に合わせて踊ってダイエットをするという本件記事に関心を持ってもらい,あるいは,その振り付けの記憶喚起のために利用しているものということができる。
 また,本件写真は,控訴人らの芸能事務所等の許可の下で,被控訴人側のカメラマンが撮影した写真であって,被控訴人において保管するなどしていたものを再利用したものではないかとうかがわれるが,その再利用に際して,控訴人らの承諾を得ていないとしても,前記したとおり,社会的に著名な存在であった控訴人らの振り付けを本件記事の読者に記憶喚起させる手段として利用されているにすぎない。
 以上を総合して考慮すると,本件記事における本件写真の使用は,控訴人らが社会的に顕著な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担を超えて,控訴人らが自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利が害されているものということはできない。
 これに対し,控訴人らは,本件記事においてダイエットを行う記事であるとされた部分を見ると,動きを説明しているのは一部に限られ,ピンク・レディーが演じたダンスの振り付けを知らなければ一連の運動として行うことが不可能であること,読者が本件記事の運動を実践するためにピンク・レディーの楽曲及び振り付けを最も鮮明に想起させるのはピンク・レディーの肖像写真であり,読者もピンク・レディー本人らの振りまねだからこそ実践したくなるものであって,被控訴人はピンク・レディーの肖像に大きな顧客吸引力があることを認識し,これを利用しているものであるということができることなどを主張して,本件記事は実質的にダイエット記事ということができないと主張するが,当時,子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その振り付けをまねることが社会的現象にさえなったピンク・レディーについては,本件雑誌の読者層においてもその楽曲や振り付けを記憶している者が多数存在するものと考えられ,本件記事は,そのような読者層に簡略に楽曲や振り付けを紹介して記憶を喚起してもらった上で,その楽曲に合わせて踊ってもらおうとする程度のものであって,本件記事の説明が簡略であること,被控訴人において,読者がピンク・レディーの楽曲及び振り付けの記憶を思い返す助けや本件記事のダイエットを実践しようとする意欲を起こしてもらうために控訴人らの肖像写真である本件写真を掲載したものであることなどをもってしても,本件記事がダイエット記事であることが否定されるものではなく,控訴人らの主張は採用することができない。なお,控訴人らは,読者等にピンク・レディーの楽曲の振り付けを思い出してもらうために本件写真を利用することも控訴人らの顧客吸引力を利用するものであるかのような主張もするが,読者等の記憶喚起のために控訴人らの写真を利用することが控訴人らの顧客吸引力を利用するものとなるというものではない。
 さらに,控訴人らは,本件写真1,6,8ないし14の9枚の写真は,本件記事のダイエット運動とは無関係のステージ写真やリハーサル写真等であって,このようなダイエット運動と無関係な写真が多数使用されていることは,本件記事が実質的には控訴人らの肖像そのものを鑑賞するグラビア記事であったことを示すなどと主張するが,上記のとおり,本件記事におけるこれらの写真の掲載は,読者にピンク・レディーの楽曲の振り付けで踊ってダイエットをすることを紹介し,これを勧めることに関連して,読者にピンク・レディーが活躍したことの記憶を喚起してもらおうとする趣旨によるものと解することができ,本件記事が実質的に控訴人らの肖像そのものを鑑賞するグラビア記事であるということはできない。
 なお,上記のとおり,ピンク・レディーが昭和50年代に子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その振り付けをまねることが社会的現象にさえなったことに照らし,本件雑誌の購入者中には,当時や現在においてピンク・レディーのファンであるなどで,本件記事にピンク・レディーの氏名・肖像が登場したことによって購買意欲を高められ,本件雑誌を購入した者が仮にいたとしても,上記のとおり,本件記事の主題は,ピンク・レディーの楽曲の振り付けで踊ることによってダイエットをすることを紹介して勧める記事ということができ,本件記事における本件写真の使用をもって違法性があるということはできない。
 また,控訴人らの肖像写真が雑誌に使用されて控訴人らにその使用の対価が支払われたとしても,少なくとも,本件記事における本件写真の使用につき違法とすることができないとの本件の結論に影響するものではない。

3.以上によれば,本件記事における本件写真の使用によって控訴人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたということはできない。

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