「司法試験平成21年最新判例ノート」
を出版しました

でじたる書房より電子書籍「司法試験平成21年最新判例ノート」を出版しました。
価格は税込みで315円です。

本書は、平成21年に出された最高裁判例のうち、司法試験での出題可能性のあるものを掲載しています。
収録数は、憲法9、行政法8、民法20、商法9、民訴法3、刑法12、刑訴法8の計69です。
今回から、各判例ごとに「学習上の留意点」の項目を設け、司法試験対策上、当該判例をどのように扱えばよいかという点について、短答・論文における出題可能性を中心に簡単なコメントを付しました。
また、従来よりも全体的に情報量を増やしています。
総ページ数は219ページで、PDF形式となっています。
本書が最新判例攻略の役に立てば幸いです。

以下は、本書の一部抜粋です。



【 憲 法 】

1:最高裁判所第二小法廷判決平成21年03月09日

【論点】

 有害図書類を販売の業務に従事する者と客とが直接対面する方法によらずに販売を行うことができる設備を有する機器へ収納することを禁止し、その違反を処罰する条例の合憲性。

【事案】

1.福島県青少年健全育成条例(以下「本条例」という。)は、18歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)を「青少年」と定義した上で(14条1号)、「青少年の健全な育成を阻害する行為を規制し、もって青少年の健全な育成を図る」ことを目的とし(1条)、その内容が著しく青少年の性的感情を刺激しその健全な育成を阻害するおそれのあるものと知事が指定した図書等の本条例所定の「有害図書類」を青少年に販売すること等を規制している。本条例では、「自動販売機等」を「販売又は貸付けの業務に従事する者と客とが直接対面する方法によらずに販売又は貸付けを行うことができる設備を有する機器」と定義し(16条1項)、図書類の販売等を業とする者は、その設置する自動販売機等に、有害図書類を販売又は貸付けの目的で収納してはならないとし(21条1項)、その違反者は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処するなどと定め(34条2項、35条)、また、自動販売機等を設置する場合には、設置場所、販売する図書の種類等を知事に届け出なければならないとしている(20条の3)。

2.被告人Aが取締役としてその業務全般を統括していた被告会社は、平成16年11月8日、福島県二本松市内の土地に、DVD等の販売機(以下「本件機器」という。)を設置したが、本条例に定める届出を行わず、平成17年1月28日、本件機器に本条例が定める有害図書類であるDVD1枚を販売目的で収納した。
 本件機器は、上記の土地に設置された無人小屋に他の3台の図書類の販売機と並べて設置されており、小屋には扉もなく自由に出入りできる上、外壁には「無人24H」及びピンク色のハート型と「空間」という表示や、「最強超映像DX雑誌ビデオグッズ」と記載された看板が掲示されていた。
 小屋内にはセンサーがあり、客を感知すると、小屋内の壁3か所に設置された監視カメラが作動し、客の画像が、被告会社の委託を受けた株式会社Bの東京都練馬区内にある監視センターに設置されたモニターに送信される。監視センターには24台のモニターがあり、5名から10名の監視員が交代で、全国約300か所に設置された同様の無人小屋の監視に当たっていた。
 監視員が遵守すべきマニュアル等によれば、監視員は、モニター上の客の容ぼう等を見て、明らかに18歳以上の者であると判断すれば、販売機の電源を入れて販売可能な状態に置き、また、年齢に疑問がある場合には、運転免許証などの身分証明書を呈示するよう求める音声を流し、呈示された身分証明書の画像を確認して客との同一性及び18歳未満の者ではないことを確認できた場合には、同様に販売可能な状態に置くこととされていた。
 しかし、監視センターのモニター画面では、必ずしも客の容ぼう等を正確に判定できるとはいえない状態にあった上、客が立て込んだ時などには18歳未満かどうか判定が困難な場合でも購入可能なように操作することがあった。

【判旨】

1.所論は、本件機器は、対面販売の実質を有しているので、本条例にいう「自動販売機」に当たらない旨主張する。しかしながら、本件機器が対面販売の実質を有しているということはできず、本件機器が客と対面する方法によらずに販売を行うことができる設備を有する機器である以上、「自動販売機」に該当することは明らかである。

2.所論は、監視センターにおける操作などにより、客が18歳未満でないことを監視して確認できる機器まで規制するのは、憲法21条1項、22条1項、31条に違反する旨主張する。
 本条例の定めるような有害図書類が、一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼすなどして、青少年の健全な育成に有害であることは社会共通の認識であり、これを青少年に販売することには弊害があるということができる。自動販売機によってこのような有害図書類を販売することは、売手と対面しないため心理的に購入が容易であること、昼夜を問わず販売が行われて購入が可能となる上、どこにでも容易に設置でき、本件のように周囲の人目に付かない場所に設置されることによって、一層心理的規制が働きにくくなると認められることなどの点において、書店等における対面販売よりもその弊害が大きいといわざるを得ない。本件のような監視機能を備えた販売機であっても、その監視及び販売の態勢等からすれば、監視のための機器の操作者において外部の目にさらされていないために18歳未満の者に販売しないという動機付けが働きにくいといった問題があるなど、青少年に有害図書類が販売されないことが担保されているとはいえない。以上の点からすれば、本件機器を含めて自動販売機に有害図書類を収納することを禁止する必要性が高いということができる。その結果、青少年以外の者に対する関係においても、有害図書類の流通を幾分制約することにはなるが、それらの者に対しては、書店等における販売等が自由にできることからすれば、有害図書類の「自動販売機」への収納を禁止し、その違反に対し刑罰を科すことは、青少年の健全な育成を阻害する有害な環境を浄化するための必要やむを得ないものであって、憲法21条1項、22条1項、31条に違反するものではない。このように解することができることは、当裁判所の判例(昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁、昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁、昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁、昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁、昭和57年(あ)第621号同60年10月23日大法廷判決・刑集39巻6号413頁)の趣旨に徴し明らかである(最高裁昭和62年(あ)第1462号平成元年9月19日第三小法廷判決・刑集43巻8号785頁参照)。

【学習上の留意点】

 判旨において列挙されている判例は、順にチャタレー事件、悪徳の栄え事件、小売市場事件、薬事法事件、福岡県青少年保護育成条例事件、岐阜県青少年保護育成条例事件である。なお、判文上は前5者を引用した岐阜県青少年保護育成条例事件判例を引用するような構造になっているが、岐阜県青少年保護育成条例事件判例は小売市場事件及び薬事法事件を引用していない。短答対策としては、本判例の事案において、上記判例を列挙、引用してそのまま合憲と判断したことを知っておくべきだろう。論文対策としては、平成20年度新司法試験論文式公法系で青少年の知る権利や有害情報規制は出題されているから、しばらくは出題されないと考えてよい。

 

2:最高裁判所第一小法廷判決平成21年04月23日

【論点】

 建物の区分所有等に関する法律70条は、憲法29条に違反しないか。

【判旨】

1.建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)70条1項は、1つの団地内に存する数棟の建物の全部(以下「団地内全建物」という。)が、いずれも専有部分を有する建物であり、団地内全建物の敷地が、団地内の各建物の区分所有者(以下「団地内区分所有者」という。)の共有に属する場合において、当該団地内建物について所要の規約が定められているときは、団地内の各建物ごとに、区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば、団地内区分所有者で構成される団地内の土地、建物等の管理を行う団体又は団地管理組合法人の集会において、団地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で団地内全建物の一括建替え(以下「団地内全建物一括建替え」という。)をする旨の建替え決議をすることができる旨定めている。この定めは、同法62条1項が、1棟の建物の建替え(以下「1棟建替え」という。)においては、当該建物の区分所有者の集会において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議をすることができると定めているのに比べて、建替えの対象となる当該建物の区分所有者及び議決権の数がより少数であっても建替え決議が可能となるものとなっている。そして、団地内全建物一括建替えの決議がされた場合は、1棟建替えの決議がされた場合と同様、建替えに参加しない区分所有者は、時価による売渡請求権の行使を受けて、その区分所有権及び敷地利用権を失うこととなる(同法70条4項、63条4項)。
 上告人らは、区分所有法70条によれば、団地内全建物一括建替えにおいては、各建物について、当該建物の区分所有者ではない他の建物の区分所有者の意思が反映されて当該建物の建替え決議がされることになり、建替えに参加しない少数者の権利が侵害され、更にその保護のための措置も採られていないなどとして、同条が憲法29条に違反することを主張するものである。

2.区分所有権は、1棟の建物の中の構造上区分された各専有部分を目的とする所有権であり(区分所有法1条、2条1項、3項)、廊下や階段など、専有部分の使用に不可欠な専有部分以外の建物部分である共用部分は、各専有部分の所有者(区分所有者)が専有部分の床面積の割合に応じた持分を有する共有に属し、その持分は専有部分の処分に従うものとされている(同法2条2項、4項、4条、11条、14条、15条)。また、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利である敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者の集会の決議によって定められた規約に別段の定めのある場合を除き、区分所有者は敷地利用権を専有部分と分離して処分することはできないものとされている(同法2条6項、22条)。このように、区分所有権は、1棟の建物の1部分を構成する専有部分を目的とする所有権であり、共用部分についての共有持分や敷地利用権を伴うものでもある。したがって、区分所有権の行使(区分所有権の行使に伴う共有持分や敷地利用権の行使を含む。以下同じ。)は、必然的に他の区分所有者の区分所有権の行使に影響を与えるものであるから、区分所有権の行使については、他の区分所有権の行使との調整が不可欠であり、区分所有者の集会の決議等による他の区分所有者の意思を反映した行使の制限は、区分所有権自体に内在するものであって、これらは、区分所有権の性質というべきものである。
 区分所有建物について、老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に、大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると、良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるばかりか、一部の区分所有者の区分所有権の行使によって、大多数の区分所有者の区分所有権の合理的な行使が妨げられることになるから、1棟建替えの場合に区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議ができる旨定めた区分所有法62条1項は、区分所有権の上記性質にかんがみて、十分な合理性を有するものというべきである。そして、同法70条1項は、団地内の各建物の区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば、団地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数の賛成で団地内全建物一括建替えの決議ができるものとしているが、団地内全建物一括建替えは、団地全体として計画的に良好かつ安全な住環境を確保し、その敷地全体の効率的かつ一体的な利用を図ろうとするものであるところ、区分所有権の上記性質にかんがみると、団地全体では同法62条1項の議決要件と同一の議決要件を定め、各建物単位では区分所有者の数及び議決権数の過半数を相当超える議決要件を定めているのであり、同法70条1項の定めは、なお合理性を失うものではないというべきである。また、団地内全建物一括建替えの場合、1棟建替えの場合と同じく、上記のとおり、建替えに参加しない区分所有者は、売渡請求権の行使を受けることにより、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すこととされているのであり(同法70条4項、63条4項)、その経済的損失については相応の手当がされているというべきである。

3.そうすると、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して判断すれば、区分所有法70条は、憲法29条に違反するものではない。このことは、最高裁平成12年(オ)第1965号、同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻2号331頁の趣旨に徴して明らかである。

【学習上の留意点】

 区分所有権法というマイナーな法令についての合憲判決であるため、短答・論文共に出題可能性は低い。ただ、注意すべきなのは、引用判例である。財産権制限の合憲性に関する現在の先例は、森林法事件判例ではなく、本判例の引用する当時の証券取引法164条の合憲性に関する大法廷判決である。判旨は以下のとおりである。
 「財産権は、それ自体に内在する制約がある外、その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。財産権の種類、性質等は多種多様であり、また、財産権に対する規制を必要とする社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策に基づくものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等を図るものまで多岐にわたるため、財産権に対する規制は、種々の態様のものがあり得る。このことからすれば、財産権に対する規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものである。
 ・・・(証券取引)法164条1項は証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともにこれに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるものであるところ、その規制目的は正当であり、規制手段が必要性又は合理性に欠けることが明らかであるとはいえないのであるから、同項は、公共の福祉に適合する制限を定めたものであって、憲法29条に違反するものではない。」

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