最新下級審裁判例

松山地裁判決平成21年07月03日

【事案】

1.詐欺に関する前提事実

(1) 被告人は,中学生のころ,A2と知り合い,いじめを受けていたA2を被告人がかばうなど,友人関係にあった。その後,被告人は中学校に登校しなくなり,二人の交流は途絶えていた。被告人は,平成12年3月に中学校を卒業した後,進学せず,派遣社員として働くなどしていた。

(2) 被告人とA2は,平成15年春ころ,再会し,交流するようになり,一緒に食事をしたり,遊んだりするほか,互いの家を行き来するなどしていた。
 A2は,被告人と再会した当時,仕事には就かず,ほぼ毎日パチスロに通っていた。A2がパチスロに使う金は,A4からもらっていたが,その際,被告人から借りたお金を返すためであると理由をつけることもあった。A2は,同年11月上旬ころから12月末までの間,被告人が見つけてきた稼働先であるB物流センターで働いたが,その給料もパチスロにつぎこんでいた。被告人は,パチスロの勝ち負けを記載できるものとして,A4用紙1枚の「収支表」なる書面を作り,これをコピーしてA2に渡していた。

(3) 被告人は,平成15年1月に20日間ほど広島県で働いた後,無職であったが,同年6月2日から9月26日までは東温市の介護機器製造会社で働き,その給与として,被告人名義の銀行口座に同年6月30日に10万3748円,同年7月31日に15万583円,同年8月29日に13万968円,同年9月30日に13万2183円,同年10月31日に2万2945円と5回にわたり,合計54万427円が振り込まれた。そのほか,被告人は,同年10月28日,1日だけコンビニエンスストアで働き,その給与として,平成16年2月18日,上記口座に4785円が振り込まれた。

(4) 平成16年2月ころ,A2は,1度目の家出をした。被告人は,A4からその知らせを聞き,A4とともにA2を捜した。同年3月末ころ,高知県でA2が見つかり,被告人は,A2の家族とともに迎えに行った。

(5) 平成16年4月中旬ころ,被告人の母親が死亡した。

(6) その後,被告人とA2は一緒に仕事を探し,平成16年5月31日から,派遣社員として長野県のパソコンの基盤を作る会社に働きに行ったが,A2は,2週間ほどで同社を辞めて愛媛県へ戻り,被告人も同年7月1日ころまで働いた後,同社を辞めて愛媛県に戻り,またA2と行動をともにするようになった。長野県にいた同年6月中旬ころ,被告人は財布を紛失した。A2は,長野県にいた間に,親に会社のパソコンの基盤を壊したと嘘を言って送金を頼んだことがあった。被告人が長野県で働いた給与として,被告人名義の銀行口座に同年6月15日に2万70円,同年7月15日に11万9376円がそれぞれ振り込まれた。

(7) 平成16年7月下旬ころ,A2は,2度目の家出をし,高知県へ行ったが,数日で被告人やA4に居場所が分かり,連れ戻された。

(8) 平成16年8月ころ,A2は,「もういやだ!!回りからつねにしばられ生きるのはもういやだ!!都会で死んでやる!!●ちゃん(被告人),おやじ,おかん,●くん,ばーちゃんありがとう。もうおれ死んでくるわ。東京で!!」という内容の書き置きを残し,3度目の家出をした。A2は,その後,大阪市内に行ったものの,すぐに金に窮し,手首を切って自殺を図ったが,通行人の女性に助けられ,生活ケアセンターに入所した。そして,同センターを運営している社会福祉法人の相談室室長であったCから紹介を受け,日雇労働者の夜間緊急一時避難所の警備をするようになった。A2は,助けてくれた通行人の女性や,Cに対し,本名を名乗らず,出身地も偽りを述べ,大阪に来た理由を,借金問題で家族が散り散りになったからなどと話した。

(9) A2が家出した後の平成16年8月中旬ころ,被告人はA2の実家(以下「A家」という。)を訪れ,A4又はA3に対し,A2に7万円を貸したとして返済を求め,A4又はA3から合計7万円の現金の交付を受けた。

(10) 平成17年秋ころ,A2が結核により入院したところ,入院先でのけんかがきっかけとなって,本名が分かり,家族に連絡が行き,同年10月ころ,A2は,A4らと約1年2か月ぶりに再会した。その際,A2は,A4に被告人から7万円を借りたことはない旨話した。その後,A2は,Cにも,中学時代の同級生から恐喝行為を受けていた,その同級生は自分の両親に信頼されていて,両親が自分の話よりも同級生の話を信用するので,自分の話が両親には伝わらなかったなどと話した。

(11) 平成19年9月10日,A4は,本件詐欺事件についての被害届を警察に提出した。

2.強盗殺人に関する前提事実

(1) 殺人事件の発生

 A1は,平成19年(以下,付記のない月日は同年のことである。)当時,東温市内所在の家屋の離れ(以下「離れ」という。)に一人で暮らしていた。
 かつて,同家屋の母屋(以下「母屋」という。)には,A1の六男であるA3とA4夫婦,その息子であるA2とA5の4名が暮らしていたが,平成16年9月下旬ころ,A3らが松山市内に転居し,平成19年当時は母屋は空き家の状態であった。
 9月3日午後0時50分ころ,A1は五男のA6と電話で話をし,その後,何者かに右頸部,右肩部及び背部を刃物様のもので多数回突き刺され,右頸動脈切破による失血により死亡した。
 A6は,同日午後5時15分ころ,A1方を訪れ,A1の死体を発見し,同日午後5時19分ころ,110番通報した。
 A1の死体は,発見時,離れ北側部屋のほぼ中央部分で,多量の血を流してうつ伏せにうずくまるような状態であった。その右手は,布製小物入れ(以下「小物入れ」という。)を握りしめていたが,そのチャックは開いており,中には何も入っていなかった。

(2) 事件前のA1の所持金

 A1は,事件の4日前の8月31日に,まず,D店において,1175円分の商品を購入し,1万円札と175円を支払い,9000円(5000円札1枚,1000円札4枚)のお釣りを受け取り,次に,同店で600円の商品を購入し,1000円札1枚を支払い,400円のお釣りを受け取り,最後に,スーパーEで1825円の商品を購入し,2000円(1000円札2枚)を支払い,175円を受け取っていた。すなわち,上記買い物の後,A1は少なくとも6500円余りを所持していたこととなる。

(3) 被告人に対する捜査の経過

 A6からの110番通報を受け,愛媛県警察本部は殺人事件として捜査を開始したところ,親族への事情聴取などから,以前母屋に居座り,A1ともトラブルになった人物として被告人が捜査線上に浮上し,その所在確認と生活状況に関する捜査が行われた。また,9月10日には,A4から別件の詐欺事件について被害届(前記1(11)のもの)が提出された。
 愛媛県警察は,詐欺事件について被告人の逮捕状を請求し,同月11日,その発付を受けた。
 その後,被告人が,津市内にいることが分かったので,捜査官が津市に向かい,同月15日,被告人を三重県津警察署まで任意同行し,事情聴取を行った後,同日午後11時43分,被告人を詐欺罪で逮捕した。
 同月16日,捜査官らは愛媛県松山南警察署(以下「南署」という。)に被告人を引致する途中,被告人とともに,被告人の津市内での居住アパート(以下「本件アパート」という。)に立ち寄り,被告人の所持品を段ボール箱に詰め,南署へ運んだ。
 被告人は,南署において,本件アパートから持ち出したF製革靴(以下「本件革靴」という。)を含む所持品の一部を任意提出した。
 同月18日,本件革靴について,愛媛県警察本部刑事部科学捜査研究所(以下「科捜研」という。)に鑑定嘱託され,鑑定担当者において,本件革靴の左右1か所ずつに血こんの付着を認め,そのDNA型を鑑定したところ,これがA1の遺体から採取された血液のDNA型と同一であるとの鑑定結果が得られた。

(4) 事件当時の被告人の生活状況

 被告人は,平成18年12月30日まで愛媛県今治市内の会社で約9か月間,派遣社員として稼働していたが,平成19年は,6月18日から同月21日まで松山市内の工場で,同月27日に1日だけ松山市内のクラブでそれぞれ稼働しただけであった。
 被告人の収入については,G銀行の被告人名義の口座へ,1月15日に16万2573円(給料),2月21日に10万3719円(職業安定),3月22日に13万8292円(同),4月18日に13万8292円(同),5月16日に6万4207円(同),7月20日に2万6281円(給料),8月20日に8761円(同)がそれぞれ振り込まれた。
 被告人は,8月25日ころまで,職探しをしながら松山市内所在のマンションに一人で居住していたが,家賃支払日である同日,翌月分の家賃2万5000円を支払うことなく,荷物を残したまま同マンションを無断退去し,A1方から直線距離で約570メートルの位置にある東温市内の実家に戻った。同実家には他に誰も生活しておらず,以前料金を滞納しており,ガス,電気,水道が利用できない状態であった。
 被告人は,同月29日ころ,前記クラブに電話をかけ,応対に出た女性従業員に対し,給料を支払うよう強い口調で求めた。
 被告人のH銀行の口座は,同月2日に1105円が引き出された後は入出金がなく,その残高は245円のままであった。また,前記G銀行の口座残高は,同月31日時点で777円であったが,同日,窓口で770円を引き出したことで,残高は7円になった。
 被告人は,9月1日ころ,絶食して餓死することを決意し,その旨ノートに記載した。
 被告人は,同月3日午後11時43分ころ,コンビニエンスストアで食料品等合計708円分を,同月4日午後8時17分ころ,スーパーマーケットで食料品合計428円分を,同月5日午後8時15分ころ,スーパーマーケットで食料品406円分をそれぞれ購入したが,同月4日の食料品の購入の際には,5000円札を出して支払を済ませた。
 被告人は,同月7日に,派遣会社を通じ,津市内の携帯電話の製造工場で働くこととなり,津市内に転居し,同月10日から15日まで派遣社員として稼働していた。

【判旨】

第1.詐欺罪について

1.本件公訴事実及び争点

 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,A2への貸付金返済名下に金員を詐取しようと企て,平成16年8月中旬ころ,当時の愛媛県温泉郡内のA3(A2の実父)方において,A2の実母A4に対し,真実はA2に対し金銭を貸し付けた事実はないのに,「実はA2に7万円貸しているんよ。返してほしいんじゃ。」などと虚言を申し向け,同女をしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同女から現金2万円の交付を受けた上,さらにその翌日ころ,同所において,同女からA3を介して現金5万円の交付を受け,もって人を欺いて財物の交付を受けた」というものである。
 弁護人は,被告人がA4又はA3に7万円の支払を求め,交付を受けたのは,A2に貸していた金の返済としてであり,欺く行為を行ったものではない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をする。
 争点は,被告人が上記交付以前にA2に対し7万円を貸していたことがあったか否かである。

2.(1) A2供述の信用性について

@ 供述の概要

 平成15年のゴールデンウィークのころ,被告人からパチスロで勝った金の一部を被告人に渡すよう言われた。これを断ると,自分に対する恨みつらみを言われ,腹部を殴るなどの暴力を振るわれ,刃物を突き付けられるなどした。そこで,被告人にパチスロで勝った金の一部を渡すようになった。パチスロで負けが続くと暴力を振るわれた。被告人に対して5000円から,多いときには四,五万円を渡していた。被告人からたかられるのが嫌だったことも家出の理由であった。被告人との間で食事をおごったりおごられたりしたことはあったが,被告人から金を借りたことはない。

A 信用性の判断

 被告人とA2は,再会後,A2が3度目の家出をするまでの間,非常に密接な関係にあった。そして,その間,被告人から暴力を受けたり,金をたかられているということは,平成17年10月ころに入院先の病院でA4と会うまでの間は,誰にも訴えていないし,また,両親を始めとする周囲の者も,被告人と頻繁に接していながら,A2が被告人に暴力を振るわれたり,金をたかられたりしているとは思っていなかった。特に,平成16年8月ころにした3度目の家出では,それまでの家出と異なり,自殺を決意する旨の書き置きまで残していながら,被告人の暴力等への不満や恨みを訴えた形跡はなく,かえって書き置きの中では親族と一緒に被告人の名前を挙げ,今までのことについての感謝を記している。さらに,大阪で自殺未遂で保護された際にも,家出の原因については家族の借金問題としか話していない。そして,A2が家出を繰り返していた当時,A2は,パチスロに興じ,仕事も長続きせず,両親からは,真面目に働くよう口うるさく言われており,その関係が良くなかったことが認められ,それが家出の主たる要因になっていたものと想像される(同事情が家出の一因であったこと自体はA2も否定していない。)。平成17年10月ころ,A2が,A4やCに対し,家出の原因は,専ら被告人から暴力を受けたり恐喝されたことだと話したのは,A2が,今後のことを考え,両親との関係修復を図るため,被告人の悪性を殊更強調して話したと考えることもできる。そうすると,平成15年ないし16年当時の二人の関係について,被告人のA2に対する暴行が繰り返され,一方的に金を取られており,それが家出の原因であったとするA2の供述はそのまま信用することはできない。

(2) 被告人供述の信用性について

@ 供述の概要

 A2に頼まれて,パチスロに使うお金として,平成15年6月に一緒に食事をした後に5000円を,同年7月に酒屋の前で一緒に話をしていた際に5000円を,同月下旬に一緒に食事をした後に2万円を,同年8月に店の前で話していた際に1万円を,同年9月に公園で話している際に1万円を,平成16年7月中に一緒に職探しをしている際に2万円を貸した。

A 信用性の判断

 被告人が述べる金の貸付時期や貸付内容に関する供述はそれなりに具体的である。当時,A2はほとんど働かずにパチスロに通う毎日を過ごしており,パチスロの軍資金については,主としてA4からもらっていたところ,A2自身も認めるように,A4から小言を言われるなどして無心しづらかったことから,当時親しく付き合っていた被告人から同様にして金を借りた可能性は否定できない。検察官は,当時,被告人が金を貸し付ける余裕はなかったし,被告人の母親の収入もわずかであり,A2に貸すくらいなら母親の困窮を助けるのが通常であると主張するが,被告人がA2に貸したとする時期は,被告人自身も稼働し,ある程度まとまった金を得ていた時期であり,かつ,被告人の母親も,平成15年6月ないし8月の間は銀行口座に入金があるなど,多少の収入があったことなどからすると,被告人が主張する時期に,その主張する程度の5000円ないし2万円の金を貸すことがおよそ不可能であったとはいえない。そして,被告人がA2に貸す金が,パチスロの軍資金であったとすると,被告人としては,A2が勝った場合の見返りを期待して金を貸すということも十分考えられる(被告人がA2にパチスロの収支表を作成して交付しているという事実はこのような推論を一定程度裏付ける。)。
 以上からすれば,被告人がA2に金を貸したとする供述の信用性を否定することはできない。

3.前提事実並びにA2及び被告人両供述の信用性に関する検討を総合すると,平成15年ないし16年ころの被告人とA2との関係は,被告人が金を貸すことがおよそ考えられないような一方的な支配服従関係ではなく,A2がパチスロに使う金について,被告人に無心して金を借りていたということも十分考え得る状況にあった。そして,A2に金を貸したとする被告人の供述にはそれなりの具体性があり,客観的状況とも明らかな矛盾はない。
 そうすると,被告人がA4らから受け取った7万円は,被告人からA2へ貸し付けた金の返済とみる余地が十分あり,被告人が上記金員をだまし取ったというには合理的な疑いが残る。

4.以上により,詐欺罪については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。

第2.強盗殺人について

1.罪となるべき事実

 被告人は,A1を殺害して金品を強取しようと企て,平成19年9月3日午後0時50分ころから同日午後5時15分ころまでの間,愛媛県東温市内の同女方において,殺意をもって,同女(当時87歳)に対し,その頸部,背部等を刃物様のもので多数回突き刺し,よって,同女を右頸動脈切破により失血死させて殺害した上,そのころ,同所において,同女所有の現金約5000円及び財布1個(時価不詳)を強取したものである。

2.争点と証拠構造

 A1が判示日時ころにその自宅で何者かに殺害されたことは当事者間に争いがなく,本件の争点は,(1)犯人に強取目的があったか,(2)財産的被害が発生したか,(3)被告人が犯人か(この点に関連してDNA型鑑定の証拠能力の有無)の3点であり,最大の争点は(3)の犯人性である。被告人は,冒頭手続において,全く身に覚えがない旨陳述し,その後の公判廷での被告人質問では黙秘を貫いている。そして,捜査段階における自白調書はなく,被告人が犯人であることは,間接事実の積み重ねにより認定されることとなる。上記(1)ないし(3)は,相互に関連しているため,最大の争点である犯人性の問題を検討する中で,他の争点についても適宜検討を加えることとする。

3.争点に対する判断

(1) 検察官は,被告人が犯人であることの根拠として,(a)本件革靴にA1の血こんが付着していたこと,(b)A1は5000円札を含む現金約6500円等を犯人に奪われたものであるところ,事件翌日,被告人が5000円札を買い物に使用したこと,(c)事件当時,被告人が経済的に困窮しており,犯行を行う動機があったことを主張する。

(2) そこで,まず,(a)の点が認められるか,認められるとした場合の推認力の程度について検討する。

@ 違法収集証拠の主張について

 科捜研において,本件革靴の左右1か所ずつに血こんの付着が認められ,そのDNA型がA1のDNA型と同一である旨の鑑定結果が得られているところ,弁護人は,本件革靴の押収過程に令状主義の精神を没却する重大な違法があるから,これに由来する上記鑑定結果についても,違法収集証拠として証拠能力が認められない旨主張する。
 そこで,捜査機関が本件革靴を保管した過程について検討するに,関係証拠によると,捜査の過程はアないしエのとおりであったと認められる。

ア.任意同行

 9月14日,捜査官4名(I警部,J警部補,K警部補,L巡査部長)は,被告人に対し,殺人事件で事情聴取をするとともに,既に逮捕状を得ていた詐欺事件で逮捕するため,津市に向かった。
 上記捜査官らは,同月15日午後2時50分ころ,被告人を発見し,車道脇の歩道上で声をかけ,愛媛県の警察官である旨を告げ,愛媛県内で起きた殺人事件のことで聞きたいことがある旨伝えた。
 捜査官らは,被告人の了解を得た上で,本件アパートに隣接したホームセンター駐車場に停めた捜査車両へ向かうこととし,被告人とJ警部補が並んで歩き,その後ろにK警部補及びL巡査部長が続く形で,捜査車両に向かった。I警部は,被告人の背後から被告人の下に向かったが,被告人らが捜査車両に向かって反転して歩いてきたため,自らも向きを変え,被告人らよりも先に車に到着した。
 捜査車両の運転席にK警部補,2列目に被告人とJ警部補,3列目にI警部が乗り,被告人の了解を得た上で,津警察署に任意同行した。被告人の姿を発見してから,津警察署に向けて捜査車両を出発するまでの時間は,概ね5分程度であり,その間,被告人は,特に警察署への同行を拒む言動を示さなかった。

イ.津警察署における取調べ等

 津警察署到着後の同日午後3時10分ころから,J警部補が殺人事件についての取調べを開始した。殺人事件の取調べは,同日午後11時ころまで続き,その間,同日午後5時20分ころにはトイレ休憩が,同日午後7時ころには夕食休憩がとられた。取調べの間,被告人が帰らせて欲しい旨申し出ることはなかった。
 夕食休憩後,L巡査部長が,被告人に対し,その当時被告人が着用していた着衣及び靴について,殺人事件との関係で任意提出を求め,被告人は,これに応じ,任意提出書を作成し,提出した。
 そして,同日午後11時43分,被告人に対し,詐欺事件の逮捕状を執行した。

ウ.本件アパートからの所持品の搬出

 9月16日朝,津警察署から南署に引致するにあたり,I警部が,被告人に対し,留置時には着替え等が必要になる旨を伝えたところ,被告人から本件アパートにある所持品を一緒に持って行きたい旨の要望があった。そこで,前日に応援で合流した2名を加えた捜査官6名は,被告人とともに本件アパートに立ち寄り,その承諾を得て,室内に入った。
 そして,物品を入れるビニール袋や段ボール箱を準備し,被告人の面前で,被告人が持ち帰りを希望した所持品にビニール袋を被せるなどして段ボール箱の中に詰め,ガムテープで閉じ,白紙を貼って封印した。本件革靴は,本件アパートの玄関に置かれていたが,被告人が持ち帰りを希望したため,捜査官によりビニール袋を被せられた上,上記段ボール箱に詰められた。

エ.本件革靴の任意提出

 9月16日夕刻,被告人は南署に引致された。夕食後,I警部の指示を受けたL巡査部長らは南署第1号取調室において,被告人の面前で,逮捕時の所持金品と上記段ボール箱内の物品について確認した。そして,L巡査部長らは,詐欺事件の証拠である可能性が認められる物,殺人事件の証拠である可能性が認められる物をそれぞれ選別し,どの事件の関係で調べるかを被告人に告げた上で,被告人に任意提出するよう促したところ,被告人はこれに応じた。そして,本件革靴については,殺人事件の関係で被告人から任意提出を受け,これを領置した。

 以上によると,任意同行から任意提出の各過程において,被告人の承諾を得ながら手続が行われており,そこに不当な有形力の行使や意思の制圧があったとは認められない。弁護人は,専ら殺人事件の証拠物を獲得するために,立件する必要のない詐欺事件により身柄拘束を行い,捜索に同意せざるを得ない状況を作出して本件アパートに立ち入った上,詐欺事件に関連性のない物について事実上強制的に提出させたとしてその捜査手法を非難する。詐欺事件についての当裁判所の判断は前記認定のとおりであるが,A4ら関係者の供述する金員出捐の裏付け,A2らの供述する被告人の言動,A4らの被害感情,被告人の生活状況等に照らし,詐欺事件について捜査の必要がなかったとはいえず,その捜査過程をみても,詐欺事件の捜査が専ら殺人事件の捜査のために利用されたとはいえない。
 よって,この点に関する弁護人の主張は採用できない。

A 捜査機関の故意又は過失により本件革靴に血こんが付着した可能性

 弁護人は,本件革靴に付着していた血こんは,捜査機関の故意又は過失によるものであると指摘するので,この点につき検討する。
 上記認定のとおり,本件革靴は,9月16日に本件アパートでビニール袋を被せられて段ボール箱に詰められて南署に運ばれ,同日中に南署第1号取調室において被告人の面前で確認の上,被告人から警察に対し任意提出,領置の手続が取られており,その間に本件革靴に血こんが付着する可能性はない。
 そして,関係証拠によると,本件革靴は,領置後は証拠品保管用のビニール袋に入れ替えられた上で,第2号取調室に移されて保管され,同月19日,鑑定のために科捜研に引き継がれている。その間の保管や管理に関わった捜査官は,当公判廷において,手袋を着用するなどして証拠品を慎重に取り扱っており,過って本件革靴に血こんを付着させたことはなく,故意に付着させたこともないと供述しており,その供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見い出せない。
 なお,関係証拠によると,A1の血液は同月3日に遺体から約8ミリリットル分採取され,同日中に科捜研に鑑定のため引き継がれている。また,A1の血が付いていたと思料される着衣等の証拠品は,数日乾燥させた上,鑑定のため科捜研に引き継がれており,南署に本件革靴が保管されていた同月16日から19日までの間は,上記血液や証拠品は存在しなかったと認められる。そうすると,南署で本件革靴を保管中に,A1の血が付着するということは,その客観的状況からみてもおよそ考え難い。
 そして,科捜研における付着の可能性についてみると,そもそも故意に血こんを付着させることは考えられず,科捜研関係者も,公判廷でこの点を明確に否定している。また,科捜研においてDNA型鑑定を行う際には,クリーンルームというDNA型鑑定の専門官しか入れない専用の部屋が使われており,専門官は,マスク,手袋,白衣を着用し,試料については,エタノールで洗浄したはさみ,ピンセット等を用い,使い捨ての新品の薬包紙の上で取り扱うなど,混同,混合,汚染を防止するための対策を十分に講じていたと認められる。
 以上により,本件革靴の血こんは,捜査官や科捜研の研究員等が故意又は過失により付着させたものではないと認められる。

B DNA型鑑定の信用性

 本件で実施されたDNA型鑑定は,STR型検査である。STR型検査は,DNA中に存在するSTR型(4塩基を繰り返し単位として存在している多型)に個人差がある点に着目し,その個人差を型として,15か所の塩基について型判定を行い,個人を識別するものである。その分析の方法は,鑑定資料からDNAを精製,抽出し,検査対象部位をPCR法により増幅した後,フラグメントアナライザーで電気泳動させて分析を行うというものである。STR型検査は,平成15年8月から全国の科捜研で統一して実施し,平成18年11月から現在のやり方になっている。そして,本件鑑定に従事した科捜研主任研究員M(以下「M研究員」という。)は,平成16年からDNA型鑑定を担当しており,1年間で1000件程度鑑定作業を行うなど,豊富な鑑定経験を有している。M研究員によると,本件革靴に付着していた血の量は微量であったものの,比較的保存状態が良好であったため,DNA型が正常に検出されており,その基礎とした試料に問題はなく,鑑定手法も上記のとおり,実務上確立した相当なものであって,これによって得られた結果の信用性は高い。
 そして,その鑑定結果によると,本件革靴に付着していた血こんのDNA型は,A1の血液のDNA型と15塩基のいずれにおいても一致しており,M研究員によると,その出現頻度は,約5.4京人に1人と計算される。
 以上からすると,本件革靴の血こんは,A1の血であったと認めるのが相当である。

C 本件革靴にA1の血こんが付着していたことの推認力

 本件革靴は,男性用のF製シューズであり,2月7日に被告人が購入し,9月16日に本件アパート玄関先に置かれていたもので,その間,被告人が履くなどして使用していたと推認される。
 そして,本件革靴の鑑定に従事した者によると,本件革靴の右足外部内側面に縦約2センチメートル,横約1センチメートルの楕円状の,左足外部外側面に縦横約1センチメートルの円状の血こんがそれぞれ認められ,これらはいずれも塗抹状(塗り広げたような状態をいい,スタンプのように均一な状態で,接触面の形が少し残ったような状態で付着するもので,既に液体が付着しているものから二次的に付着した場合に見られることが多い。)に存在していたというのである。
 A6やA3の供述によると,A1は,事件の前のころ,血を流すような怪我をしたことはなく,本件革靴に付着した血こんは,同月3日午後に殺害された際に流出した血に由来するものと認められる。そして,前記のとおり,同月16日以降にA1の血が付着したとは認められず,また,被告人は同月7日に津市に転居しているところ,それ以降にA1の血が本件革靴に付着することはおよそ考えられない。
 以上からすると,同月3日午後0時50分ころから午後5時15分ころまでの間に,A1が殺害されたとき以降,同月7日までの間に本件革靴に血こんが付着したと認められる。
 次に,付着の経緯についてみるに,前記のとおり,血こんが塗抹状に付着していることからすると,他の物に付着していた血が,接触等によって本件革靴に付着した,いわゆる二次的付着である可能性が高い。被告人は,当時,金銭的に極めて困窮した状態にあり,事件の2日ほど前から絶食して自殺することまで決意していることや,被告人の携帯電話の通話履歴,被告人の自宅から発見されたノートその他の関係証拠からうかがえる被告人の生活状況や交遊関係をみても,上記期間内に第三者に本件革靴を貸与したり,第三者と接触し,そのことが原因で本件革靴に血こんが付着するという可能性はまず考えられない。
 他方,被告人は,平成15年から16年にかけて,A1の孫であるA2と親しくしており,母屋によく出入りしていたものと認められる。そして,被告人は否定するものの,A4,A3,A6らA家の関係者の供述やA1の日記によると,平成16年8月にA2が家出をし,9月にA3らが母屋を出た後,被告人が母屋2階に居座り,A1との間でトラブルを起こしていたことが認められる(A1の日記には,平成16年10月の欄に,「●(被告人の名字)君にかたなでおどされにげる」との記載がある。)。
 このように,被告人は,A1との面識があり,被告人が事件当日に何らかの目的でA1方を訪れることは考え得る。
 そうすると,被告人がA1方に赴き,その際に本件革靴に血が付着したか,あるいは被告人がA1方に赴いた際に着衣等の本件革靴以外の場所に血が付着し,そこから本件革靴に二次的に付着したものと考えられる。
 そして,被告人がA1方に赴いたとすると,その時間帯は,A1が殺害された後,その死体が親族により発見されるまでの,9月3日午後0時50分ころから午後5時15分ころまでの間であったとしか考えられない。

(3) 次に,(b)の点が認められるか,認められる場合の推認力について検討する。

@ A1の財産的被害

 検察官は,A1は殺害された際,小物入れに入っていた現金約6500円及び財布1個を犯人に奪われた旨主張する。
 小物入れの中に,A1が財布を入れていたかどうかについて,A3は,A1が買い物の際,布製の財布とがまぐちの財布の2つを持っていた旨供述し,A6は,布製の財布を持っていた旨供述する。A1方の近所にあるスーパーマーケットのNは,その特徴はわからないとしながらも,A1は小物入れに財布を入れていた旨供述する。
 財布の特徴や個数についてはそれぞれ供述は区々であり,変遷もみられるが,A3は週に1度程度,A6は週に2度程度A1に会っており,上記スーパーはA1が日常的に利用しており,これら関係者の供述から,A1が買い物等を行う際には,小物入れに現金を入れるための財布を少なくとも1個は日常的に入れていたことは疑いなく認められる。そして,発見当時,A1が小物入れを手で握りしめていたこと,事件後,A1方からはA3やA6らの記憶に沿う財布が発見されていないことなどの事情を併せ考えると,犯人により小物入れに入っていた財布1個が奪われたものと認められる。
 次に,現金被害の点についてみるに,A1は,8月31日の時点で,買い物の釣り銭である5000円札1枚,1000円札1枚と小銭575円を財布の中に所持していたことが認められ,検察官は,殺害当時,約6500円をそのままA1が持っていたと主張する。
 関係証拠によると,A1は,ノートに日記をつけており,8月31日以降,9月3日までの間は,同月1日に屋敷神のお祓いの謝礼として現金1万円を支払っていることを除き,出費に関する記載はない。弁護人も指摘するとおり,A1の日記には一部A3ら関係者の記憶と食い違う部分もあり,その記載を絶対的に信用することはできないものの,他の部分の記載を見ても,日常品の購入等についても相当細かく記録されており,基本的には信用できるといえる。そして,殺害後のA1方の実況見分の際に,押入れ内の段ボール箱に灰色バッグが入っており,その中にある菓子缶内の封筒から1万円札7枚が発見されている。A6の供述によると,A1は,まとまった現金については別途上記菓子缶内に保管しており,1万円の謝礼については,その中から支払った可能性が高いとのことである。そして,前記のとおりの小物入れの発見状況からすると,検察官が主張するとおり,8月31日時点の金額が9月3日の段階でそのまま残っていたとは断定できないものの,なお相当額の現金が財布に入っていた可能性が非常に高いと認められる。

A 被告人が現金を所持していたこと

 被告人は,9月3日午後11時過ぎ以降,3日間にわたりコンビニエンスストアやスーパーマーケットで食料品等を購入しており,同月4日には,5000円札で支払を済ませている。被告人は,当時,経済的に極めて困窮した状態にあり,同月1日ころには,絶食をして餓死する決意までしていたところ,その後,稼働したり,知人等から援助を受けたりした形跡もないのに,上記のとおり5000円以上のまとまった現金を持っているのは不自然であるといわざるを得ない。
 この点,弁護人は,金銭的余裕が全くなかったわけではなく,自殺を決意したのは別の理由であること,当時の所持金として,5000円程度は残っていたと主張し,これに沿う事情として,被告人名義でゲームソフトやゲーム機器等をリサイクル店等に売却していたことを挙げる。被告人が黙秘しているため,その詳細は明らかではないが,弁護人提出の証拠によると,8月4日から14日ころにかけて,被告人名義でゲームソフト等が売却されていることが確認され,これによると,同月4日に1450円,同月7日に1100円,同月9日に2000円,同月12日に1500円,同月14日には5000円を得ていたことがうかがえる(なお,弁護人の冒頭陳述には,平成18年末ころに売却した小型テレビの対価である1万3000円を失念したまま放置していたが,8月中に発見して生活費に充てたとの主張もされているが,この点は公判廷では証拠として表れていない。)。
 しかしながら,これらはいずれも8月中の出来事であり,少なくとも同月29日ころには1日だけ働いたクラブに給料の支払を強く求めたり,同月31日に銀行口座にわずかばかり残っていた770円を引き出したりしており,弁護人の主張を前提としても,事件当時,極めて困窮した状態であったことに疑いはなく(なお,被告人のノートには,9月2日夜におにぎりを発見して食べた旨の記載がある。),その被告人が5000円札を残していたというのはいかにも不自然,不合理というほかなく,同月3日前後ころ,上記5000円余りの現金を何らかの方法により入手したものと推認される。

B A1の財産的被害と被告人の所持していた現金との関係

 前記認定のとおり,被告人は,A1が殺害された後,その死体が親族により発見され,警察に通報される前の,9月3日午後0時50分ころから午後5時15分ころまでの間にA1方を訪れていることが認められる。そして,その間に,前記認定のとおり,現金が入った財布がなくなっていること,その後,被告人が5000円札1枚以上の現金を所持していたこと,A1の財布には8月31日の時点で少なくとも6500円余りが入っており,9月3日の時点で5000円以上残っていたとしても矛盾はないこと,被告人が他に上記現金を入手するすべは考え難いことなどからすると,被告人が小物入れの中から少なくとも5000円札1枚の入った財布を取ったとみるのが自然である。

(4) 以上を基に,被告人の犯人性について,(c)の動機の点にも触れつつ検討する。

@ 被告人がA1を殺害したか否か

 前記検討のとおり,被告人は,A1が殺害された数時間の時間帯にA1方を訪れていること,A1が手に握りしめていた小物入れから現金入りの財布を取っていること,当時,被告人とA1との間には何ら交流がなく,A1方を訪れなければならないような用事は何もないこと,A1が殺害された際に多量の出血があったが,その血に由来する血こんが被告人の本件革靴に付着していることが認められる。これらの事情からすると,被告人がA1を殺害した犯人であることが強く推認されるといわなければならない。(なお,被告人がたまたま何らかの目的でA1方を訪れた際に,既にA1が死んでおり,その後A1が手に持っていた小物入れから財布を奪い,その場を立ち去ったということも考えられなくはないが,その行動は,A1方を訪れ,凄惨な現場を目の当たりにした者が取る行動としては誠に不自然であるといわざるを得ず,このような行動を被告人が取ることをうかがわせる事情は何ら認められない。)

A 被告人の目的

 被告人が否認しているため,A1方を訪れた際に,被告人がどのような意図であったか,どのような意図で犯行に及んだかは判然としない面がある。しかしながら,A1は,刃物様のもので身体の中心部を多数回刺されているところ,その態様自体から非常に強い殺意が推認される。A3の供述によると,A1方からなくなった刃物はなく,それらが犯行に使用されたとも認められないため,凶器である刃物様のものは,被告人が持参したと認められる。そして,被告人は,A1殺害の際に,A1が握りしめていた小物入れからその所持金を奪っているのである。被告人は,前記のとおり,事件当時,極めて困窮した状態にあり,何としてでも金を得ようと考えて犯行を決意したとしても不自然ではない。以上からすると,被告人は,A1方を訪れる際に,A1を殺害して現金を奪おうと計画していたか,少なくとも刃物様のものを示してA1を脅迫し,所持金を奪おうと決意してA1方を訪れ,その後のA1とのやり取りの中で,A1の殺害まで決意し,A1の殺害及び財布の強取に及んだものと認められる。

B 犯人性に関する弁護人の主張について

 弁護人は,殺害態様が執ようである点や,部屋の中が物色されていないことから,怨恨目的での殺人である可能性が高く,A1が生前トラブルに巻き込まれており,被告人以外の者が怨恨目的によりA1を殺害した可能性があると主張する。
 まず,関係証拠上,A1が生前抱えていたトラブルは,息子の妻ら親族間のもめ事であったと推察され,そのトラブルがA1の殺害にまで至ったとは考えられない(この点は,捜査に関わったI警部が上記親族らのアリバイを確かめ,捜査対象から除外している。)。
 次に,関係証拠によると,被告人は,平成16年8月ころ以降,母屋の2階に居座り,A5のノートにA家の人間に対する恨み言のような内容を書きなぐっていたり,A1に小刀様のものを示して怖がらせたり,A3らから警察を呼ばれるなどしており,A家の者との確執が以前にあったことが認められ,被告人がA1殺害の際に,その態様が激しいものになったとしても,不自然であるとはいえない。
 そして,確かに,A1方には物色された形跡はないものの,被告人としては,A1が手に持っていた小物入れから現金入りの財布を奪ったことから,それ以上の物色をせずに現場を離れたということも十分考えられ,この点が被告人の犯人性に疑問を差し挟む事情とはならない。
 弁護人は,A1が発見された当時,離れの鍵がかかってない状態であったところ,A1は生前自宅にいるときは通常鍵をかけており,知人でもないかぎり鍵を開けないはずであり,被告人は,A1とは面識はなく,仮に面識があったとしても,被告人がA1を脅したということがあったのであれば,被告人を自宅に入れるはずはないとも主張する。
 この点,被告人とA1が面識があることは前記のとおりであり,かつてトラブルがあったとはいえ,孫の友人でもあった被告人が久しぶりに自宅を訪ねてきたとすると,A1が疑うことなく家の中に入れるということも十分あり得ると考えられる。
 その他弁護人は,被告人が強盗殺人の犯人でないことについてるる主張するが,いずれも前記認定判断を覆すに足りるものではない。

(5) 以上により,被告人には強盗殺人罪が成立する。

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