最新下級審裁判例

京都地裁判決平成21年09月25日

【事案】

1.京都市a区bc番地A302号室(以下,Aを「本件建物」といい,本件建物302号室を「本件物件」という。)の賃借人であった原告が,賃貸人であった被告に対し,@保証金の解約引き特約は消費者契約法10条に反して無効であるとして,賃貸借契約終了に基づき,契約締結時に支払った保証金33万円から未払となっている平成19年11月分の家賃5万8000円を差し引いた27万2000円,A更新料条項は消費者契約法10条に反して無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,契約更新時に支払った更新料11万6000円,B防犯カメラの設置及び監視によってプライバシーを侵害され,不当な退去要求によって精神的苦痛を被ったとして,不法行為に基づき,慰謝料10万円及び弁護士費用10万円,C合意に基づく退去費用4万8000円並びにこれらに対する訴状送達日の翌日からの民法所定の遅延損害金の各支払を求める事案。

2.事実関係(不法行為に関するもの)

(1) 被告は,被告の娘の自転車が盗難に遭ったり,本件建物の入居者がストーカー被害に遭ったことから,自宅及び入居者の安全を図るという防犯目的で本件防犯カメラを設置したものであるが,入居者の使用状況を確認することも動機の一つであった。

(2) 被告は,平成19年3月ころ,本件防犯カメラの映像により,原告が本件物件に友人を宿泊させていることを知り,原告に対して,あまり友人を長居させないようにと注意した。

(3) 同年4月ころにも,被告は,原告に対し,男性を宿泊させたことについて,「君,昨日の夜中1時に帰ってきたね。」,「なんで昨日は男と帰ってきた。」などと注意した。

(4) 平成19年9月から10月にかけて,被告は,原告に対し,遅く帰宅したこと,男性を宿泊させることが契約違反であること,契約を守れないのであれば出ていってもらってかまわないということを頻繁に告げ,注意するようになった。その際,原告は,被告に対し,どのようにして原告の帰宅時間や,訪問者を把握しているのかを尋ねたが,被告は一度も答えなかった。

(5) 同年10月9日,原告が,被告の対応に精神的苦痛を感じていることをEに相談したことから,同月17日,原告,被告及び株式会社FのDによる話し合いがされた。その際,被告は,原告に対し,本件建物に防犯カメラを設置していることを明かし,友人を宿泊させること自体は了承するが,宿泊させる回数を減らすことを求め,原告との交渉には株式会社Fを介し,直接交渉をしないことを約した。

(6) 上記話し合いの後も,被告は,原告に対し,深夜に帰宅することや友人を宿泊させていることを直接注意するなどしたので,原告は,精神的に耐え難くなり,平成19年11月4日,被告に対して退去通知をし,同月9日,本件物件を明け渡して,転居した。

(7) 本件建物の入居者及び近隣住民から,原告が他人を宿泊させていることについて苦情が出たことはない。

【判旨】

(不法行為の成否について)

1.まず,本件防犯カメラの設置行為及び本件防犯カメラによる監視行為について,被告は,本件建物の防犯目的及び入居者の使用状況を確認する目的で本件防犯カメラを設置したものであるところ,賃貸物件の所有者がそのような目的で防犯カメラを設置することは正当な管理業務の範囲内であるということができる。また,設置態様としても,1階玄関前天井部分に1個設置したものであって,被告が本件防犯カメラの映像で知り得るのは,本件建物への出入りのみであるから,入居者のプライバシーを過度に侵害するということもなく,被告の監視行為が不法行為となるということはできない。

2.次に,被告による退去要求行為について,本件賃貸借契約条項18条4号には,他人をみだりに入室させることを禁じ,これに違反した場合,賃貸人は契約を解除し又は更新を拒絶できる旨の定めがあること,原告が本件契約締結の際に作成した「誓約書」には,不特定多数の人の出入りを賃貸人に無断でさせた場合や,他の入居者や近隣に財産的,精神的迷惑をかける行為を行った場合には,本件賃貸借契約を解除されても,異議を申し立てない旨の定めがあること,被告は本件防犯カメラの映像で原告が友人を連れてくることを確認すると,度々原告に対して友人を宿泊させないように注意し,契約違反であり,契約を遵守しないのであれば退去するよう注意していたことが認められる。
 たしかに,原告は京都に遊びに来た女友達1人を宿泊させ又は交際相手を週1〜2回宿泊させていたが,その程度及び頻度は常識的な範囲を超えるものではないこと,証拠上,隣接する部屋に騒音等の迷惑行為を行ったことや,近隣から苦情がきたことも認められないことからすると,原告が「みだりに」他人を入室,宿泊させていたとまではいえず,原告に対して退去まで要求することが一般的な賃貸人の行為として若干行き過ぎであったことは否定できない。しかし,単身者用の住居に他人を宿泊させることは,隣接する部屋の入居者に対して騒音等の迷惑をかける可能性の高い行為であるから,賃貸人として,他人を宿泊させないように監視,注意し,遵守できなければ退去してもらうことになるといった程度の忠告をすることが,不法行為となるとまではいえない。

 

さいたま地裁判決平成21年10月14日

【事案】

1.産業廃棄物の収集運搬業及び処分業の許可を得た原告が,埼玉県比企郡A町BC番D所在の土地(本件土地)に産業廃棄物処理施設を設置し,同施設を拠点として,産業廃棄物収集運搬業及び処分業を行うことを計画し,埼玉県知事に対し,平成20年4月28日付けで別紙1ないし4記載の許可の各申請をしたところ,同知事が申請書を返戻し各申請に対する許可・不許可の処分を行わないとして,被告に対し,主位的に上記不作為が違法であることの確認を,予備的に申請書の返戻行為が各申請の受理を拒否する処分に当たるとして,その取消しを,それぞれ求めている事案。

(別紙)

1.産業廃棄物処理施設設置許可申請

(1) 産業廃棄物処理施設の設置の場所

 埼玉県比企郡A町BC番D

(2) 産業廃棄物処理施設の種類

 木くずの破砕施設

(3) 産業廃棄物処理施設において処理する産業廃棄物の種類

 木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除く。)

2.産業廃棄物処理施設設置許可申請

(1) 産業廃棄物処理施設の設置の場所

 埼玉県比企郡A町BC番D

(2) 産業廃棄物処理施設の種類

 がれき類の破砕施設

(3) 産業廃棄物処理施設において処理する産業廃棄物の種類

 がれき類,ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除く。)

3.産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可申請

(1) 許可の年月日及び許可番号

 平成16年8月9日,第G号

(2) 収集運搬業,処分業の区分

 収集運搬業(積み替え保管を含む。)

(3) 許可に係る事業の範囲

(産業廃棄物の種類)

〈積み替え保管を除く〉
 燃え殻,廃プラスチック類(自動車等破砕物を除く。),紙くず,木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除く。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除く。),がれき類,ばいじん(以上10種類)

〈積み替え保管を含む〉
 汚泥(廃蛍光管に限る。),廃プラスチック類(廃蛍光管に限る。),金属くす(廃蛍光管に限る。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(廃蛍光管に限る。)(以上4種類)

(4) 変更の内容

変更前

〈積み替え保管を除く〉
 燃え殻,廃プラスチック類(自動車等破砕物を除く。),紙くず,木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除く。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除く。),がれき類,ばいじん(以上10種類)

変更後

〈積み替え保管を除く〉
 燃え殻,廃プラスチック類(自動車等破砕物を除く。),紙くず,木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除く。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除く。),がれき類,ばいじん(以上10種類)

〈積み替え保管を含む〉
 汚泥(廃蛍光管に限る。),廃プラスチック類(廃蛍光管に限る。),金属くす(廃蛍光管に限る。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(廃蛍光管に限る。)(以上4種類)

4.産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可申請

(1) 許可の年月日及び許可番号

 平成15年8月30日第F号

(2) 収集運搬業,処分業の区分

 産業廃棄物処分業

(3) 許可に係る事業の範囲

ア.業の区分

 中間処分業

イ.処分の方法及び産業廃棄物の種類

焼却:紙くず,木くず(以上2種類)
破砕:木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除くものに限る。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除くものに限る。),がれき類(以上6種類)
圧縮:廃プラスチック類(自動車等破砕物を除くものに限る。),紙くず,繊維くず,金属くず(自動車等破砕物を除くものに限る。)(以上4種類)
圧縮減容:廃プラスチック類(自動車等破砕物を除くものに限る。)

(4) 変更の内容

変更前

焼却:紙くず,木くず(以上2種類)
破砕:がれき類
圧縮:金属くず(自動車等破砕物を除くものに限る。)
圧縮減容:廃プラスチック類(自動車等破砕物を除くものに限る。)

変更後

焼却:紙くず,木くず(以上2種類)
破砕:木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず(自動車等破砕物を除くものに限る。),ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(がれき類及び自動車等破砕物を除くものに限る。),がれき類(以上6種類)
圧縮:廃プラスチック類(自動車等破砕物を除くものに限る。),紙くず,繊維くず,金属くず(自動車等破砕物を除くものに限る。)(以上4種類)
圧縮減容:廃プラスチック類(自動車等破砕物を除くものに限る。)

2.前提事実

(1) 原告は,埼玉県知事から,平成16年8月9日付け許可番号第E号による産業廃棄物収集運搬業の許可,及び平成15年8月30日付け許可番号第F号による産業廃棄物処分業の許可を取得して,産業廃棄物収集運搬業及び処理業を行っている。

(2) 埼玉県知事は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)に基づいて,さいたま市及び川越市を除く埼玉県を区域とする産業廃棄物処理施設の設置の許可,産業廃棄物処理業の事業範囲の変更の許可等の処分を行う権限を有する行政庁である。

(3) 原告は,平成16年8月11日本件土地を購入し,埼玉県知事に対し,平成20年4月28日付けで,廃掃法15条1項に基づき,本件土地に関する別紙1及び2記載の各産業廃棄物処理施設設置許可申請,並びに同法14条の2第1項に基づき,別紙3及び4記載の各産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可申請を行った(本件各申請)。

(4) 埼玉県知事は,本件各申請に対し,現在まで,許可・不許可の処分を行っていない(本件不作為)。

(5) 本件各申請に係る申請書は,平成20年9月12日付けで,原告に返戻された(本件返戻行為)。

3.法令の定め

(1) 廃掃法

(変更の許可等)
14条の2
1項 産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は,その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは,都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし,その変更が事業の一部の廃止であるときは,この限りでない。

(産業廃棄物処理施設)
15条
1項 産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設,産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は,当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

(2) 行政手続法

(標準処理期間)
6条 行政庁は,申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は,併せて,当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

(申請に対する審査,応答)
7条 行政庁は,申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず,かつ,申請書の記載事項に不備がないこと,申請書に必要な書類が添付されていること,申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については,速やかに,申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め,又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

(3) 埼玉県行政手続条例

(申請に関連する行政指導)
32条
1項 申請(法律又は法律に基づく命令(告示を含む。)に基づくものを含む。以下この条において同じ。)の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,申請をした者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請をした者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。

2項 前項の規定は,申請をした者が行政指導に従わないことにより,災害防止,環境保全その他の公益の確保に著しい障害が生ずるおそれがある場合に,当該行政指導に携わる者が当該行政指導を継続することを妨げない。

【判旨】

1.本件不作為は違法かについて

(1) 行政庁には,法令に基づく許認可の申請に対し,許可・不許可の応答を行う義務があるところ,埼玉県知事は,本件各申請に対し,現在に至るまで許可・不許可の処分を行っておらず,この点について,埼玉県知事の不作為がある(なお,本件返戻行為は,あくまで本件行政指導の過程における事実行為に過ぎず,処分と認めることはできない。)。
 そこで,本件不作為が違法となるかにつき検討する。
 行政手続法6条は申請に対する標準的な処理期間を定めるよう規定し,同法7条は,行政庁は,申請がなされたときは,遅滞なく審査を開始し,申請に不備があれば当該申請の補正を求め,又は不許可の処分を行う義務があると規定している。このように,同法6条及び7条が,標準処理期間,申請に対する審査応答義務を定めて,申請に対する事務処理の迅速化,透明化を図っていることからすると,原則として,法令に基づく申請から,当該処分を行うのに通常要する期間が経過しているにもかかわらず,許可・不許可の処分が行われていない場合は,その不作為は違法となり,この期間が徒過したことを正当化するような特段の事情がある場合に限り,その不作為は違法とはならないと解すべきである。そして,この通常要する期間の経過,特段の事情を認めるに当たっては,前記の行政手続法の趣旨が考慮されなければならない。
 これを本件についてみると,原告は,平成20年4月28日付けで本件各申請をなし,口頭弁論終結時までに約1年1か月が経過している。そして,行政手続法6条の定める標準処理期間の経過により当然に本件不作為が違法と判断されるものではないが,標準処理期間は行政庁が申請に対する事務処理に通常必要な期間として定めたものであることからすると,標準処理期間が不相当に短いものでない限り,その経過は本件不作為の違法性の判断に当たり重要な事情となると解するのが相当である。埼玉県知事は,産業廃棄物処理施設設置許可申請及び産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可申請については,標準処理期間を65日と定めていることは当事者間に争いがない。そして,本件各申請についてはこの標準処理期間が経過してからさらに約11か月が経過しているところ,この標準処理期間が不相当に短期間であるとうかがわれるような事情は特に認められない。以上によれば,本件各申請に対する処分を行うのに通常必要とする期間は現在においては既に経過していると認められる。

(2) これに対し,被告は,判例(最高裁判所昭和60年7月16日第三小法廷判決・民集第39巻5号989頁)及び埼玉県行政手続条例32条に基づき,@原告が行政指導にもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明したものと認めるに足りないとき,A行政指導の目的とする公益上の必要性と原告の受ける不利益とを比較衡量して,行政指導への不協力・不服従が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情があるときには,行政指導の継続を理由に処分を留保することも許されると主張する。
 しかしながら,前記の判例は,建築基準法上の建築確認の申請を行政指導を理由に留保することが国家賠償法1条1項の適用上違法となるかについて判断した事案である。そして,違法な公権力の行使によって受けた損害の填補を目的とする国家賠償法と,違法な不作為により不利益を受けている申請人の救済を目的とする不作為の違法確認訴訟とは,その目的とするところが異なる以上,国家賠償法における違法性の判断がそのまま不作為の違法確認訴訟における違法性の判断において妥当するものではない。また,埼玉県行政手続条例32条は,行政手続法6条及び7条が申請に対する事務処理の迅速化を図っていることとの整合性をふまえれば,行政指導を行う際の基準を規定したに過ぎず,本件のような申請に対する不作為の違法性が問題となっている事案において直ちに適用されるものではない。さらに被告の主張を前提とすると,原告が行政指導に従えない真摯かつ明確な意思を表明していない,行政指導の目的とする公益上の必要性が当該行政指導により原告が受ける不利益とを比較すれば行政指導への不協力・不服従が社会通念上正義に反するという理由で,いつまでも処分を留保することが事実上可能となってしまい,かかる事態は同法6条及び7条が,申請に対する事務処理の迅速化を図っている趣旨に反するというべきである。

(3) さらに,被告は,産業廃棄物処理施設を設置し産業廃棄物の収集運搬業,処分業を行うことにより生ずる環境への負荷,生活環境に及ぼす影響等につき,原告が近隣住民に説明しその理解を得られるよう真摯かつ誠実に説明努力を粘り強く続けるよう求め,近隣住民が原告によるこれらの事業に反対している事態の改善を期待して,許可又は不許可の判断を留保してきたと主張する。
 ところで,廃掃法は,産業廃棄物処理施設の設置,産業廃棄物の収集運搬及び処分の事業範囲の変更について,環境への負荷,生活環境に及ぼす影響を考慮して許可要件を定めている(例えば,産業廃棄物の収集運搬事業について同法14条の2第2項の準用する14条5項及び同法施行規則10条においては産業廃棄物が飛散し,及び流出し,並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車,運搬船,運搬容器その他の運搬施設を有すること,処分業について同法14条の2第2項の準用する14条10項及び同法施行規則10条の5においては,ゴムくずの処分を業として行う場合には,当該ゴムくずの処分に適する破砕施設,切断施設,焼却施設その他の処理施設を有すること,産業廃棄物処理施設の設置について廃掃法15条の2第1項及び同法施行規則12条においては,著しい騒音及び振動を発生し,周囲の生活環境を損なわないものであることがそれぞれ定められている。)。さらに,生活環境の保全の見地から必要な条件を許可処分に付すことができるとも規定しており,これらの規定による対処も考えられる(産業廃棄物の収集運搬業,処分業については同法14条の2第2項の準用する同法14条11項,産業廃棄物処理施設の設置については同法15条の2第4項。)。
 以上の規定を考慮すると,本件では原告が不作為の違法を主張して訴えを提起した以上,行政指導に任意に従えない意思を表明したことは明らかであるから,このような場合には行政指導に従わない事業者であることを前提に許可又は不許可の判断をし,許可をする場合には生活環境の保全の見地から必要な条件を付することで対処すべきであり,行政指導の継続を理由に許否の判断を留保することは許されないと解すべきである。

(4) よって,被告の上記各主張は,いずれも通常必要とする期間を経過したことを正当化できる特段の事情とはいえず,本件不作為は違法というほかない。

2.結論

 以上のとおり,原告の主位的請求には理由がある。

 

名古屋地裁判決平成21年09月07日

【犯罪事実】

第1(平成17年9月27日付け起訴状記載の公訴事実)

 被告人は,A1及びA2らとともに,平成15年11月21日午後6時ころから,名古屋市A’区B’C’丁目D’番E’号所在のB1店2階で行われた交通指導員の忘年会に参加したものであるが,

1.同日午後6時ころから同日午後8時20分ころまでの間に,前記B1店2階において,テーブル下の棚の上に置いてあったA1のかばん内から,同人所有又は管理に係る現金約7000円及びクレジットカード3枚ほか5点在中の財布1個(時価7000円相当)を抜き取り窃取し,

2.同日午後8時10分ころから同日午後8時20分ころまでの間に,前記B1店2階において,テーブル下の棚の上に置いてあったA2のかばん内から,同人所有又は管理に係る現金約3万円及び商品券約5枚ほか15点在中の財布1個(時価合計約1万4000円相当)を抜き取り窃取した。

第2(平成17年7月27日付け起訴状記載の公訴事実第1)

 被告人は,不正に入手したB2株式会社発行のA3名義のクレジットカードを使用して,購入名下に商品を詐取しようと企て,

1.平成17年2月2日午後3時25分ころ,名古屋市F’区G’H’丁目I’番J’号所在のB3地下2階生鮮食料品売場において,同売場店員A4に対し,前記クレジットカードの正当な使用権限も同クレジットカードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,A3になりすまして,同クレジットカードを提示し,果物2点ほか5点の購入を申し込み,上記A4をして,同クレジットカードシステム所定の方法により確実にその代金の支払を受けられるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から果物2点ほか5点(販売価格合計3528円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ,

2.同日午後4時から同日午後4時2分ころまでの間,名古屋市F’区G’H’丁目K’番L’号株式会社B4店地下1階所在の株式会社B5店において,同店店員A5に対し,前記クレジットカードの正当な使用権限も同クレジットカードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,A3になりすまして,同クレジットカードを提示し,精肉2点の購入を申し込み,上記A5をして,同クレジットカードシステム所定の方法により確実にその代金の支払を受けられるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から精肉2点(販売価格合計3万1476円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ,

3.同日午後6時17分ころ,名古屋市M’区N’町O’丁目P’番地所在のB6株式会社B7店1階食料品売場において,同売場店員A6に対し,前記クレジットカードの正当な使用権限も同クレジットカードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,A3になりすまして,同クレジットカードを提示し,ビール1ケースほか20点の購入を申し込み,上記A6をして,同クレジットカードシステム所定の方法により確実にその代金の支払を受けられるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人からビール1ケースほか20点(販売価格合計1万1872円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ,

4.同日午後6時37分ころから同日午後6時41分ころまでの間,前記B6株式会社B7店3階所在の「B8店」において,同店店員A7に対し,前記クレジットカードの正当な使用権限も同クレジットカードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,A3になりすまして同クレジットカードを2, 回にわたり提示し,ジャンパー1着ほか8点(販売価格合計5万3655円)の購入を申し込んだが,前記B2株式会社に被告人には正当な使用権限がないことを看破されたため,その目的を遂げなかった。

第3(平成17年10月17日付け起訴状記載の公訴事実)

 被告人は,不正に入手したA8名義の郵便貯金総合通帳1通を使用して,現金自動預払機から金員を引き出して窃取しようと企て,平成17年2月18日午前11時7分ころ,名古屋市M’区Q’R’丁目S’番地所在のB9郵便局において,同所に設置された現金自動預払機に,上記通帳1通を挿入して同機を作動させ,上記B9郵便局局長A9管理に係る現金を引き出して窃取しようとしたが,暗証番号を誤って入力したため,その目的を遂げなかった。

第4(平成17年8月30日付け起訴状記載の公訴事実)

 被告人は,民生委員として名古屋市M’区T’U’丁目V’番地市営B10荘B11棟B12号に単身居住するA10に援助を行うこと等の職務に従事していたものであるが,同人に睡眠薬を摂取させて昏睡させ,その金品を盗取しようと企て,平成17年3月22日午後,同人宅において,睡眠薬であるトリアゾラム剤を同人(当時83歳)に摂取させて昏睡させた上,同日午後9時前後の一定の幅のある時間帯の間に,同所において,同人所有又は管理に係る株式会社B13銀行のA10名義のキャッシュカード1枚ほか3点を盗取したが,その際,罪跡を隠滅するためにA10の殺害を決意し,索状物を用いて同人の首を絞め,よって,そのころ,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡するに至らしめた。

第5(平成17年7月27日付け起訴状記載の公訴事実第2)

 被告人は,判示第4の盗取に係るA10名義の株式会社B13銀行及び株式会社B14銀行のキャッシュカード各1枚を使用して現金自動預払機から金員を窃取しようと企て,

1.平成17年3月23日午後4時6分ころ,名古屋市A’区W’X’丁目Y’番Z’号所在の株式会社B15銀行本店営業部B16出張所において,同所に設置された現金自動預払機に前記B13銀行のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ,同機から上記B15銀行本店営業部長A11管理に係る現金5万3000円を引き出して窃取し,

2.同日午後4時7分ころから同日午後4時9分ころまでの間,2回にわたり,前記B16出張所において,同所に設置された前記現金自動預払機に前記B14銀行のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ,前記A11管理に係る現金を引き出して窃取しようとしたが,暗証番号を誤って入力したため,その目的を遂げなかった。

【事案】

1.被告人は,3月27日,自ら警察署に出頭し,A10が殺害された件について取調べを受けた。

2.被告人は,4月13日から5月27日までの間に合計34日間,休憩時間等を含めると合計275時間以上警察本部の取調室等で取調べを受けた。この取調べのうち5回は午後10時を過ぎても行われ,うち1回は翌日午前零時25分ころまで行われた。

3.上記2の取調べの際は,警察官が,被告人宅から警察本部等までの往復とも被告人を捜査用車両で送迎した上,休憩時間を含め,被告人に常に付き添っていた。

4.被告人は,4月30日,音信不通により勤務先を解雇された。

5.被告人は,4月24日の午後の取調べにおいて,判示第2の事実については認めたが,上記2の取調べの全体を通じて,判示第4のA10が殺害された件については無関係であり,判示第5のA10の預金を引き出すなどした事実は認めたものの,それはA10に頼まれたからであるなどと供述し続けた。

6.被告人は,7月6日から同月27日まで判示第2の4,第5の事実を被疑事実として逮捕・勾留され,8月10日から同月30日まで判示第4の事実を被疑事実として逮捕・勾留され,9月7日から同月27日まで判示第1の事実を被疑事実として逮捕・勾留され,同日から10月17日まで判示第3の事実を被疑事実として逮捕・勾留された。

7.被告人には,実質的に,7月12日ころ1人目の弁護人が付き,同月15日ころ2人目の弁護人が付き,10月1日ころ3人目の弁護人が付いた。

8.被告人は,9月15日から同月26日にかけて,それまで否認していた判示第1の事実を認める供述をし,その旨の検察官調書が作成された。

9.被告人は,10月16日から翌17日にかけて,それまで否認していた判示第3の事実を認める供述をし,本件自白調書Tが作成された。

【判旨】

1.事案2のような長期間,長時間にわたる取調べを,同4のとおり勤務先を解雇されてまで任意に受けることは通常考えにくく,しかも,被告人が,その際,同3のとおり警察官による送迎や付添いを受け,事実上の監視を受けていたことからすれば,被疑事実が強盗殺人という重大事件であったことや,同2の取調べの終わりころには取調べ時間が午後のみになるなど捜査機関側の一定の配慮がうかがえることを考慮しても,特段の事情が認められない限り,一定の時点からはもはや任意取調べとは認められないというべきである。そして,被告人は,むしろ取調べを受けたくなかったと供述し,被告人の夫であるA13も,警察官に対し抗議をしていたと供述するのであるから,上記のような特段の事情は認められないというべきである。
 したがって,被告人の逮捕前の任意取調べは,一定の時点から,任意捜査の限界を超えた違法なものであったと認められる。

2.しかし,事案6のとおり,被告人の最初の逮捕は,最後の違法な任意取調べから1か月以上間を置いて行われ,かつ,被告人は,同2の取調べでは,同5のとおり供述し,判示第2の事実についてはほとんど時間が割かれなかったと推認されるから,上記逮捕とそれに続く勾留は,主に被告人の供述証拠以外の証拠によってされたものと認められる。その後に続く一連の逮捕・勾留も,同8,9のとおり,被告人はそれに先立って当該逮捕・勾留に係る被疑事実を自白した事実は認められないから,被告人の供述証拠以外の証拠によってされたものと認められる。
 以上からすれば,上記の違法な任意取調べを前提としても,上記6の一連の逮捕・勾留については,逮捕・勾留の違法な蒸し返しに当たるとまではいえない。

3.そして,最初の逮捕までの時間の経過や,上記7のとおり逮捕後被告人には弁護人が付き,適切な弁護活動を受けられたと認められること,更に本件自白調書T作成時には上記違法な任意取調べから4か月以上経過していたことに鑑みれば,本件自白調書T作成時には,違法な任意取調べの影響は相当程度薄らぎ希薄化していたものと認められる。
 よって,上記違法な任意取調べは,本件自白調書Tの任意性等には直接には影響を及ぼさないと認められる。

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