平成21年度旧司法試験論文式
民訴法第2問参考答案

【問題】

 Xは,Yとの間で動産の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したとして,Yに対し債務の履行を求めたが,Yは,本件売買契約はYの代理人と称するZがYに無断で締結したものだと主張し,Xの請求に応じようとしない。そこで,Xは,YとZを共同被告とする訴えを提起し,Yに対しては本件売買契約の当事者としての債務の履行を求め,Zに対しては無権代理人としての債務の履行を求めた。
 第1回口頭弁論期日において,Xは,同時審判の申出をし,Yに対しては本件売買契約当時のZの代理権の存在を主張し,Zに対してはZの代理権の不存在を主張した。Yは,Zの代理権の存在を争う旨の主張をし,証拠の申出をしたが,Zは,答弁書を提出しないまま第1回口頭弁論期日に欠席した。

1.裁判所は,第1回口頭弁論期日においてZについて弁論を分離してX勝訴の判決をすることができるか。

2.裁判所は弁論を分離しなかったが,Zはその後の期日もすべて欠席した。証拠調べの結果,裁判所は,本件売買契約当時,Zは代理権を有していたとの心証を得た。この場合,裁判所はどのような判決をすべきか。

3.2とは逆に,裁判所は,本件売買契約当時,Zは代理権を有していなかったとの心証を得たため,XのYに対する請求を棄却し,Zに対する請求を認容する判決をした。この第1審判決に対してXがYを被控訴人として控訴した場合,控訴裁判所は,YとZを共同被控訴人として判決をすることができるか。

【参考答案】

第1.設問1

1.Xは同時審判の申出をしている。そこで、「法律上併存し得ない関係」(民訴法41条1項。以下「非両立関係」という。)の存否を検討する。

2.同時審判申出訴訟は、一方の請求の棄却と他方の請求の認容が法論理上関連付けられている場合に、原告の両負けを防止する趣旨の制度である。従って、非両立関係とは、一方の請求の請求原因が他方の請求において抗弁となる場合をいう。

3.本問において、Yに対する請求ではZが代理権を有していたことは請求原因である(民法99条1項)。他方、Zに対する請求ではZが代理権を有していたことは請求原因に対する抗弁となる(同法117条1項)。よって、非両立関係が認められる。

4.以上から、民訴法41条1項が適用される。これにより、分離して弁論及び裁判をすることが禁止される。よって、裁判所はZについて弁論を分離してX勝訴の判決をすることはできない。

5.なお、Zについて弁論を分離してX勝訴の判決がされることは、Xにとって有利である。そのため、Xの方からZについて終局判決を求める申出(民訴法244条ただし書)がされる場合も考えられる。その場合には、裁判所はXに同時審判申出の撤回(民訴規則19条)を促し、Xの撤回を受けてZについてX勝訴の判決をすることになる。

第2.設問2

1.Yについては、X勝訴の判決をすべきことに問題はない。

2.では、Zについてはいかなる判決をすべきか。

(1) Zは終始期日に出頭しなかったため、擬制自白(民訴法159条1項、3項)が成立する。そのため、裁判所は、Xの主張する請求原因を全て認めなければならない(同法179条、弁論主義の第3原則)。

(2) もっとも、前記第1の3のとおり、Zの代理権の存在はZに対する請求では抗弁となる。裁判所はZの代理権の存在を認定できるか。

ア.民訴法41条は同法40条を準用していない。すなわち、同時審判申出訴訟も通常共同訴訟であり、ただ弁論及び裁判の分離が禁じられるだけである。そうすると、共同訴訟人独立の原則(民訴法39条)が妥当するから、共同訴訟人間の主張共通は生じない。

イ.XはZに対してZの代理権の存在を主張していない。Zは終始欠席し、第1回口頭弁論期日に答弁書を提出していないから、陳述擬制(民訴法158条)の余地もない。すなわち、XZ間ではZの代理権の存在の主張はされていない。従って、裁判所はZの代理権の存在を認めることができない(弁論主義の第1原則)。

(3) よって、裁判所は、ZについてもX勝訴の判決をすべきである。

3.以上の結論は、非両立関係にある請求について特に同時審判申出訴訟が設けられた趣旨を没却するようにもみえる。
 しかし、民訴法41条1項は必要的共同訴訟とは異なり、原告の申出を要件としている。これは、第一に原告の利益、すなわち両負けの防止を目的とする趣旨である。従って、原告の両勝ちの防止は、その趣旨とするところではない。また、同条は同法40条の準用をしていない。これは、判断の統一を法的に強制すると、かえって当事者の柔軟な訴訟追行を困難にし、又は手続保障を害するおそれがあることから、併合審理によって事実上期待するにとどめる趣旨である。そうである以上、非両立関係にある請求に対する判決が結果的に矛盾することも、同条は当然に予定しているといえる。
 よって、制度の趣旨を没却するとはいえない。

第3.設問3

1.控訴裁判所がZの代理権を認める場合、Zについての第1審判決を確定させれば、Yの事件とZの事件とで判断が矛盾する。そこで、判断を統一するために控訴裁判所がZを共同被控訴人に加えて判決をすることはできるかが問題となる。

2.民訴法41条は同法40条を準用していないから、同時審判申出訴訟も通常共同訴訟である。従って、上訴による移審も各別に生じる。また、同法41条3項は、控訴事件が各別に係属することを前提とする。そうである以上、控訴裁判所が当然に他方の被告を共同被控訴人として扱うことは許されない。
 なお、41条が判断の統一を法的に要求する趣旨でないことは、前記第2の3のとおりである。一方のみが控訴されて判断の不統一が生じることは、同条の予定するところである。

3.本問では、Zについては控訴がないから移審は生じない。よって、控訴裁判所が、YとZを共同被控訴人として判決をすることはできない。

以上

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