近時の公訴時効関連の改正に関する司法試験
対策上の留意点について

平成22年4月27日に、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)が成立した。
これに関し、司法試験との関係で必要な留意点を概観する。

公訴時効の対象からの除外及び期間の延長

刑訴法250条が、以下のように改正された。
下線部が、改正部分である。

刑訴法250条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年

2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一  死刑に当たる罪については二十五年
二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七  拘留又は科料に当たる罪については一年

今回の改正の対象となるのは、人を死亡させた罪である。

そのうち、まず死刑に当たるものは、公訴時効の対象から除外された(250条1項かっこ書)。
刑法犯で該当する罪は、以下のとおりである。
☆のついているものは、短答で問われても答えられるようにしておきたい。

☆殺人(199条)
☆強盗致死・強盗殺人(240条後段)
☆強盗強姦致死(241条後段)
汽車転覆等致死(126条3項)
往来危険による汽車転覆等致死(127条)
水道毒物等混入致死(146条)

上記は、いずれも改正前の時効期間が25年だったものである。
なお、内乱の首謀者(77条1項1号)、外患誘致(81条)、外患援助(82条)、現住建造物等放火(108条)、激発物破裂(117条1項)及び現住建造物等浸害(119条)にも死刑があるが、人を死亡させた罪には当たらないから、除外の対象とはならない。

次に、上記以外の罪で、禁錮以上の刑に当たるものについては、時効期間が延長された(250条1項各号)。
刑法犯で該当するのは、以下の罪である。

1号該当の罪(改正前15年の時効期間を30年に延長)

強制わいせつ等致死(181条1項)
強姦等致死(181条2項)
集団強姦等致死(181条3項)

2号該当の罪(改正前10年の時効期間を20年に延長)

傷害致死(205条)
危険運転致死(208条の2)
不同意堕胎致死(216条)
遺棄等致死(219条)
逮捕等致死(221条)
特別公務員職権濫用等致死(196条)
建造物等損壊致死(260条後段)
ガス漏出等致死(118条2項)
往来妨害致死(124条2項)
浄水汚染等致死(145条)

3号該当の罪(改正前5年の時効期間を10年に延長)

自殺関与・同意殺人(202条)
業務上過失致死・重過失致死(211条1項)
同意堕胎致死(213条)
業務上堕胎致死(214条)

延長後の時効期間は、改正前の2倍になっている。
個別の時効期間を覚える必要はないが、禁錮以上が対象になっていることは知っておきたい。

例えば、過失致死は人を死亡させた罪であるが、罰金刑である(刑法210条)。
従って、禁錮以上の刑に当たらないから、時効延長の対象とならない。
旧来どおり、公訴時効の期間は3年である(刑訴法250条2項6号)。
過失致死が罰金刑であることは、この改正がなくても知っておくべき短答の知識である。
今回の改正と併せて出題される可能性があるので、セットで押さえておきたい。

適用範囲について

今回の改正法は、施行日時点で既に公訴時効が完成している場合には、適用がない。
他方、施行日以前の罪であっても、施行日時点で未だ公訴時効が完成していないものには、適用がある。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)附則3条

 第二条の規定による改正後の刑事訴訟法(次項において「新法」という。)第二百五十条の規定は、この法律の施行の際既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない

2 新法第二百五十条第一項の規定は、 (中略) 、同法の施行前に犯した人を死亡させた罪であって禁錮(こ)以上の刑に当たるもので、この法律の施行の際その公訴の時効が完成していないものについても、適用する

従って、公訴時効期間満了が施行日であるか、その前日であるかによって、取扱いが異なることになる。

論文式試験への影響について

論文式試験については、ほとんど影響がないといってよい。
確かに、殺人などの公訴時効の対象から除外された罪を使った公訴時効の問題は作れなくなる。
しかし、傷害致死や窃盗など、その他の罪を使って作問することは容易である。
論点自体は、時効期間が変わっても直接内容が変わるわけではない。
また、論文式試験では法文を確認できる。
従って、たとえ改正の内容を知らなくても、現場で確認すれば足りる。
そして、そもそも、公訴時効は旧試験時代から論文で正面から出題されたことがない。
従って、論文対策としては、気にする必要はない。
もっとも、過去に出版された予備校等の問題を解く際には、注意を要する。
改正後の条文に照らすと、問題として成立しない場合があり得るからだ。

刑の時効の対象からの除外及び期間の延長

今回の改正では、刑の時効についても、対象からの除外と期間の延長が行われた。
これは、公訴時効の改正との平仄を合わせるためである。
例えば、殺人を犯した場合、訴追前はどんなに逃げても、訴追を免れない。
しかし、死刑の言渡し後に逃げた場合には、その執行を免れる。
これは不均衡だ、ということである。
もっとも、公訴時効は法定刑が基準であるのに対し、刑の時効は宣告刑が基準となる。
そのため、厳密に対応させることは不可能である。
結局、死刑については刑の時効から除外。
その他の刑については、無期と10年以上の懲役・禁錮について延長という対応となった。
改正後の条文は、以下のとおりである(下線部が改正部分)。

刑法

31条 刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。

32条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。

一 無期の懲役又は禁錮については三十年
二 十年以上の有期の懲役又は禁錮については二十年
三 三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年
四 三年未満の懲役又は禁錮については五年
五 罰金については三年
六 拘留、科料及び没収については一年

34条 懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。
2 略。

改正前は無期懲役・禁錮の時効期間は20年、10年以上の有期懲役・禁錮は15年だった。
34条については、時効から除外された死刑が、中断の対象からも除かれている。

注意点としては、前述のように、公訴時効と必ずしも対応していないという点である。
例えば、殺人は公訴時効の対象外であるが、殺人による無期懲役の刑には、30年の時効がある。

ただ、司法試験では、論文はもちろん、短答でも刑の時効が出題される可能性は低い。
死刑が刑の時効の対象から除外されたことを、一応知識として押さえておけば充分だろう。

なお、刑の時効の改正は、施行日前に確定した刑には適用されない。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)附則2条

 この法律の施行前に確定した刑の時効の期間については、第一条の規定による改正後の刑法第三十一条、第三十二条及び第三十四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による

公訴時効とは異なり、刑の時効については適用の必要性のある事例がなかったためである。

送致前の還付公告について

今回の改正では、還付公告に関するものが含まれている。
従来、検察官のみに認められていた還付公告の主体に、司法警察員が加えられた。
これにより、検察送致前の段階でも、還付公告が行えるようになる。
以下は、この部分についての条文の新旧を対照したものと、関係する参照条文である。

●改正前刑訴法499条(下線部は改正された部分)

 押収物の還付を受けるべき者の所在が判らないため、又はその他の事由によつて、その物を還付することができない場合には、検察官は、その旨を政令で定める方法によつて公告しなければならない。

2 公告をしたときから六箇月以内に還付の請求がないときは、その物は、国庫に帰属する。

3 前項の期間内でも、価値のない物は、これを廃棄し、保管に不便な物は、これを公売してその代価を保管することができる。

 

●改正後刑訴法499条(下線部は改正された部分)

 押収物の還付を受けるべき者の所在が判らないため、又はその他の事由によつて、その物を還付することができない場合には、検察官は、その旨を政令で定める方法によつて公告しなければならない。

 第二百二十二条第一項において準用する第百二十三条第一項若しくは第百二十四条第一項の規定又は第二百二十条第二項の規定により押収物を還付しようとするときも、前項と同様とする。この場合において、同項中「検察官」とあるのは、「検察官又は司法警察員」とする。

 前二項の規定による公告をした日から六箇月以内に還付の請求がないときは、その物は、国庫に帰属する。

 前項の期間内でも、価値のない物は、これを廃棄し、保管に不便な物は、これを公売してその代価を保管することができる。

 

(参照条文、下線は筆者)

●改正後刑訴法499条2項関連

刑訴法

222条 ・・・第百十八条乃至第百二十四条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が・・・する押収又は捜索について、・・・これを準用する。但し、司法巡査は、第百二十二条乃至第百二十四条に規定する処分をすることができない

220条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一  人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二  逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。

2 前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない

3項以下略。

 

123条1項 押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない

124条1項 押収した贓物で留置の必要がないものは、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被告事件の終結を待たないで、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定でこれを被害者に還付しなければならない

 

●司法警察職員、司法警察員、司法巡査の用語関係

刑訴法

39条3項 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、・・・以下略。

189条1項 警察官は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。

 

刑事訴訟法第百八十九条第一項および第百九十九条第二項の規定に基づく司法警察員等の指定に関する規則1条

 警察庁および管区警察局に勤務する警察官のうち、巡査部長以上の階級にある警察官は司法警察員とし、巡査の階級にある警察官は司法巡査とする。
2 警察庁長官または管区警察局長は、特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、警察庁または管区警察局に勤務する巡査の階級にある警察官を司法警察員に指定することができる

この改正が公訴時効の対象からの除外・延長に併せて行われたことには、理由がある。
それは、証拠物の保管との関係である。

法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会第7回会議議事録より引用、下線は筆者)

● 証拠品等の保管の問題が出ましたので,1点ちょっと申し上げたいと思いますけれども,今も警察署には証拠品というのはかなりたくさん保存している状態にあるのですけれども,例えば殺人事件なんかでは相当たくさんの証拠品を押収する。特に今,現場の資料というのが将来にわたって大きな意味を持つという捜査になっていますので,例えば事件によっては1年か2年ぐらいたった時点で千数百点の証拠品があるというような捜査本部もございます。ただ,捜査の進展によって全く犯人とか事件とかと関係がないということが判明する場合がございます。そのようなものについては留置の必要がないと判断して,司法警察員が送致前でも今の刑訴法の222条第1項で準用されております123条の1項,124条の1項の規定によって還付あるいは被害者還付を行うことができます問題は受還付人が所在不明等でいないというような場合に,還付も被害者還付もできないという事態が生じるわけでございまして,刑訴法の499条1項の還付公告の主体に司法警察員が含まれていないということから,還付公告は行えず,したがって処分ができない。つまり証拠として必要がないものについても持ち続けるという状態が今生じております
 例えばどういうケースがあるかというと,殺人事件の捜査の過程でAさんとBさんが容疑者として浮上した。Aさんの自宅について捜索,差押えを行って,例えば日記ですとかメモですとかレシートとかというものを押収した。捜査を進めていった結果,Bが犯人であるということが明確になってきて,Bが逃亡した。指名手配を打っているけれども,なかなかBが発見できないというような事態になって,捜査がすごく長引く。Aについてはシロの捜査がきちっとできて,その嫌疑が否定されるということで,Aさんの自宅から押収したものを返す,還付するという必要が出てくるわけですけれども,Aがその時点で所在不明だということで,もう返せないというケースがございます。あるいは他殺死体が発見されて,被害者の居宅について捜索差押許可状で,アパートで関連の資料を差し押さえた。
 ただ,その居宅がデリヘル嬢が多数同居しているところであって,他人のものもそのときに併せて差押えをしてきているというケースもあるのですけれども,その同居人についてはもう嫌疑はないということがはっきりして,それは返すという場合も,デリヘル嬢であるがゆえにもうそこにはいなくなってしまっている,警察の捜査との関連を嫌ってですね,というようなケースが実際にございます。したがって,事件におよそ関係のないということが明らかになった資料の保管をずっと続けるというような,例えば髪の毛が付着したブラシとか,いろんなものがありますけれども,保管を続けるというのが今の実態になっております
 公訴時効が廃止された場合には,押収物を保管する期間が理論上はずっと続くということになりますので,留置の必要がないと判断して還付ができないという場合に,そういう押収物が増加してくる可能性があるかなと思っています。この保管が非常に捜査現場にとっては過重な負担になる可能性がありますので,必要なものはやはり適正に保管していくということは当然なのですけれども,捜査上必要ない,事件には関係がないというものについては早期に処分していくということが必要になってくると思っています。こういう点について,どういう法制上ないし運用上の手当てが可能かということについて検討をしていただけるとかなり助かるということでございます。

● 今の点について,事務当局は何かお考えがありますか。

● ただいま○○委員から御指摘のあった還付公告の関係ですけれども,押収物の還付公告につきましては刑事訴訟法499条に規定してございまして,還付公告の主体が検察官とされております。しかし,ではどうして検察官とされているのかというところを見ますと,歴史的な沿革によるところが大きいと思われます。この現行刑訴の499条は,旧刑事訴訟法の560条をほぼそのまま引き継いでいるものでございます。旧刑事訴訟法のもとでは検察官が捜査の主宰者とされ,司法警察官はその補佐機関とされており,基本的に証拠物は検察官の手元に集まることとなっておりましたから,還付公告の主体を検察官としておけば足りたのではないかと思われるところです。これに対しまして,現行刑訴では,司法警察職員は第一次捜査機関として位置付けられておりまして,246条では証拠物は事件とともに送致することとされ,事件送致までは証拠物が司法警察職員の手元に置かれることとなることから,旧刑訴法のもととは事情が異なっているのではないかと考えられます。そもそも司法警察員は,現行法のもとでも押収法の還付,仮還付,被害者還付を行うことができますし,それだけでなく,危険を生じるおそれのある押収物の廃棄を行うことができるほか,没収することのできる押収物で滅失,破損のおそれがあるもの,又は保管に不便なものについては,これを売却してその代価を保管することができることとされており,押収物の処分権限が相当程度与えられているところでございます。
 還付公告というのは,還付及び被害者還付の権限があるにもかかわらず,受還付人の所在不明等によりこれらの処分を行うことができないという執行上の不都合を回避するため,これらに付随するものとして認められていると考えられることからしますと,司法警察員にも還付及び被害者還付の権限が認められている以上,その執行方法の一形態である還付公告も行うことができることとするのが自然であると考えられます。このようなことからすると,理論的には司法警察員が還付公告を行うこととすることも十分あり得るのではないかと考えております。

(引用終わり)

とはいえ、それならば単に499条1項を「検察官又は司法警察員は」とすれば足りそうである。
そうしなかったのは、そもそも同項の規定にやや疑義があったためのようである。
同項は「第七編 裁判の執行」にある規定である。
にもかかわらず、同項を根拠として捜査段階に検察官による還付公告が行われていた。
なぜ、そのようなことができるのか。
改正法が2項を新設したのは、その疑義を払拭する趣旨と思われる。

法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会第7回会議議事録より引用、下線は筆者)

● この問題を考える上での前提として,一つ質問があるのですが,499条で検察官が還付公告できるということになっているのですが,捜査段階において検察官が還付公告する場合も,この499条に基づいて還付公告をしているのでしょうか

● 御案内のように,499条は「第七編裁判の執行」に規定されている条文でございますので,捜査段階における還付公告の手続はいわばこの499条を解釈上準用する形で行われているものと理解しています。

● 準用するというのは,どのような根拠で準用しているのですか

「準用」と言うのがいいのかどうか,今の表現が適切だったかというのはございますけれども,要は執行の編の規定であっても,捜査段階もこの規定で解釈上読めるという趣旨です。

● 分かりました。その上で,司法警察員に還付公告の権限を認めることについてですが,先ほど○○幹事の御説明にもあったように,還付の権限がある以上は,その執行方法の一形態である還付公告の権限も認めてよいはずだというのは,そのとおりだと思います。その場合に何か法制上手当てをする必要があるのかどうかが次の問題になりますが,検察官による捜査段階での還付公告についても499条で認めている根拠が,もし,裁判段階の還付に関する規定が捜査段階にも準用されるからというものだとすれば,捜査段階では司法警察官にも還付権限はあるわけですから,解釈として,499条を準用する形で,司法警察員による還付公告を認めるという考え方もあり得るように思います。ただ,現在の実務はそれとは異なる解釈を採っているわけですので,立法で明確に司法警察官員も還付公告ができると定めた方が望ましいと思います。

実務上やられているのはやられている。それが499条1項との関係でどういう理屈でそうなっているのですかね。その規定の解釈で当然できるのだという考え方なのか,それとも準用なのか。準用だとすると,○○幹事の言われる可能性もあると思いますね。ただ,裁判の執行のところで検察官に限っているというのが特殊な意味を持っているとすれば,当然にはそうならないということになります,仮に準用だとしても。その辺は恐らく非常にテクニカルな問題だと思います。実質的に見て,やはりそこが抜け落ちており,非常に不都合が生じているし,もし公訴時効を廃止あるいは大幅に延長ということになれば,そこのところが実務上は,特に警察にとっては大きな負担になってくるということですので,これは恐らく公訴時効を見直しということになった場合に,それに伴う問題として,法改正によるのか解釈なのかは別として,何らかの対応をするということについてはあまり異論がないのではないかと思います。ここではその程度のまとめにして,あとは実務的な観点,それと法制的な観点で対応を考えていただくということにしてはいかがかと思うのですが,それでよろしいでしょうか。

(引用終わり)

もっとも、還付自体、短答でも出題可能性は高くない。
この機会に検察官・検察事務官と司法警察員・司法巡査の権限の差異を確認し、その一例として頭の片隅に置いておけば十分だろう。

施行日との関係について

今回の改正の特徴は、即日公布・施行された点にある。
これは、岡山県倉敷市の夫婦殺害事件の公訴時効完成を阻止するためではないかとみられている。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)附則1条

 この法律は、公布の日から施行する。以下略。

 

最大判昭33・10・15より引用、下線は筆者)

 成文の法令が一般的に国民に対し、現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることを前提要件とするものであること、またわが国においては、明治初年以来、法令の内容を一般国民の知りうべき状態に置く方法として法令公布の制度を採用し、これを法令施行の前提要件とし、そしてその公布の方法は、多年官報によることに定められて来たが、公式令廃止後も、原則としては官報によつてなされるものと解するを相当とすることは、当裁判所の判例とするところである(昭和三〇年(れ)第三号、同三二年一二月二八日大法廷判決、集一一巻一四号三、四六一頁以下参照)。

(引用終わり)

 

47ニュース(共同通信配信記事)2010/04/28 00:14 より引用、下線は筆者)

時効廃止法が成立、即日施行 被害者感情に配慮、異例の措置

 殺人罪などの公訴時効の廃止、延長を柱とする改正刑事訴訟法、改正刑法が27日、衆院本会議で採決され、与党と自民、公明両党などの賛成で可決、成立した。共産党は反対。改正は、続発する凶悪犯罪に厳しい対処を求める世論の動向や被害者感情に配慮した。

 公布には通常1週間かかるが、成立から約4時間後の午後5時半に官報の「特別号外」を発行し、異例の即日の公布・施行となった。28日午前0時に迫っていた1995年4月に起きた岡山県倉敷市の夫婦殺害事件の時効も廃止された

(引用終わり)

 

平成22年4月27日千葉法相閣議後記者会見より引用、下線は筆者)

Q:本日のうちに,うまくいけば施行ということになるかと思いますが,今夜午前零時に公訴時効を迎える事件があり,そのことを念頭に置いた措置と受け止めてよろしいのでしょうか。

A:今夜に公訴時効を迎える事件があることは,私も承知をしています。ただ,これを念頭にということではありません。なにしろ,なるべく成立をしてから公布までの間に隙間が空いたことによって時効が成立するというようなことがないようにしたいと考えていましたので,今日,成立するということになり,何とか今日中に施行となるようにということで指示をしたところです。結果的に今日時効になるものが回避をされるという結果になれば,これも一つの成果であろうと思っています。

(引用終わり)

司法試験に出題されるのは、原則として試験実施日に施行されている法令とされている。
これは、直近の改正があった場合でも同じとされる。
そして、公表されている例外は、租税法と経済法だけである。

平成22年新司法試験に関するQ&Aより引用)

Q15 出題に係る法令には,基準はありますか?

A 原則として,新司法試験が実施される日に施行されている法令に基づいて出題することとされています。

Q16 試験の近い時期に法令の改正があった場合,出題は,どの時点の法令に基づいてなされるのですか?

A 法令の改正があった場合も,原則として,試験日に施行されている法令に基づいて出題されます。

Q17 例外的取扱いをする科目はありますか?

A 例外的取扱いについては,既に下記のとおり公表されています。

1 租税法について

 各年の新司法試験における租税法については,当該年の1月1日現在において,既に公布され,かつ,当該年の新司法試験の選択科目の試験日以前に施行されていることが定まっている法令に基づいて出題する。

2 経済法について

 平成22年の新司法試験における経済法については,平成21年6月3日第171回国会において成立した私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号。平成22年1月1日施行。)による改正後の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律その他経済法分野に関する法令に基づいて出題することとなるが,課徴金の算定方法及び減免制度並びに企業結合に係る改正部分については,出題しないこととする。

(引用終わり)

※旧司法試験については、これと対応する記述がない。
しかし、同様の取扱いとなると思われる。

そうすると、今回の改正後に行われる平成22年度の新旧司法試験。
その出題対象は、改正後の刑法・刑訴法ということになる。

また、論文試験において配布される法文は、1月1日の法令に基づいている。

平成22年新司法試験に関するQ&Aより引用、下線は筆者)

Q22 改正法令等については,登載の基準はありますか?

A 原則として,平成22年1月1日現在において,既に公布され,かつ,試験日以前に施行されることが確定している法令が登載の対象となります。

(引用終わり)

従って、司法試験用法文には、改正前刑法・刑訴法の条文が掲載されている。
すなわち、法文と解答する際の準拠法令が異なることになる。
そのため、必要に応じて試験当日に別途写しが配布されるようである。

平成22年新司法試験に関するQ&Aより引用、下線は筆者)

Q23 平成22年1月2日以降に公布された法令や試験日以前に施行されることが確定していない法令については,司法試験用法文に登載されないのであれば,出題に係る法令には該当しないのですか?

A 出題に係る法令については,原則として,Q15のとおり新司法試験が実施される日に施行されている法令に基づくこととなりますので,司法試験用法文に登載する法令と取扱いが異なる場合があります。しかしながら,出題に係る法令について例外的取扱いを行うことを公表している場合には,法文も同様の取扱いとします。

Q24 試験の直前に公布・施行された法令があった場合には,法令の写しが配布されるのですか?

A 必要と認められれば,試験当日に該当法令の写しを配布する場合があります

(引用終わり)

※上記Q23のA「例外的取扱いを行うことを公表している場合」とは、Q17の租税法及び経済法の取扱いを指す。
 今回の改正については、今のところ例外的取扱いを行うことは公表されていない。

以上から、短答・論文で改正刑法・刑訴法の内容が問われ得る、ということになる。
本試験までは、もう数日しか残っていない。
受験生の立場からは、急いで対応しなければ、と思うかもしれない。
しかし、平成22年度の新旧司法試験では、公訴時効が出題される可能性は低い。

司法試験の問題は、実施日よりかなり前に作成されるはずである。
作問をするに当たっては、公訴時効の改正がされそうだ、ということは当然念頭にあるだろう。
しかし、改正が司法試験の実施日以前に成立するかどうかは、事前に予測することが困難である。
従って、改正を織り込んで作問することは、危険である。
他方、改正の影響のない出題の仕方も難しい。
そういったことからすると、今年度はとりあえず公訴時効は出さない、という判断になりやすい。
従って、受験生としては、これから慌てて改正内容を暗記する、といったことはしない方が得策である。

また、刑の時効の改正も同様に出題対象となるが、そもそもほとんど出題されない。
今年度に関しては、全く無視して構わないだろう。

他方、今回の改正のうち、還付公告に係る部分(刑訴法499条の改正)については、即日施行ではない。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)附則1条

 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二条中刑事訴訟法第四百九十九条の改正規定・・・は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する

従って、この部分は今年度の司法試験では出題されない。

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