平成22年度旧司法試験択一の感想(上)

最後の択一

平成22年度の旧司法試験短答式試験が、5月9日に行われた。
試験問題は、法務省HPで公表されている

来年度の旧司法試験は、口述試験のみ実施される。
従って、今回が旧試験最後の択一だった。

全体的な傾向は、昨年度とそれほど変わらない。
ただ、難易度は上がっている。
昨年度は非常に解き易かった。
それと比べると、今年度はかなり難しく感じたはずである。

また、新試験との比較でいうと、テクニカルな側面がかなり残っている。
今年度は、昨年度と違って、時間的余裕があまり無い。
そのため、肢の組合せ等を上手く使って、いかに効率良く解くか。
その当たりも、合否を分けるポイントとなりそうである。

憲法について

全体的に、近時の傾向に沿った出題である。
判例知識や、最も正しいものを多く含むものを選ぶ穴埋めなどである。

新判例問題としては、第3問、第5問がある。
ただ、内容自体はそれほど難しくはない。
知らなくても、何とか正解できる問題である。

第3問は、最大判平21・9・30からの出題である。
当サイト作成の「司法試験平成21年最新判例肢別問題集」でもこの部分は出題している。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より抜粋)

【憲法問題】

16:最高裁によると、「選挙権の内容の平等」、「議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等」及び「投票価値の平等」は、ほぼ同義であり、いずれも憲法の要求するところである。

17:憲法は、どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を、国会の裁量にゆだねている。

22:国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。

23:平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙(本件選挙)における参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性に関する最高裁大法廷の多数意見は、憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたこと、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ること、及び、憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていることを、いずれも本件選挙当時の参議院議員の選挙制度の仕組みが相応の合理性を有し、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえないことの根拠としている。

26:社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき、それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は、複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって、その決定は、基本的に国会の裁量にゆだねられているものであるが、人口の変動の結果、投票価値の著しい不平等状態が生じた場合には、当該議員定数配分規定は憲法に違反する。

32:平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙における参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性に関する最高裁大法廷の多数意見は、「現行の選挙制度の仕組みを維持する限り、各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは、最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり、これを行おうとすれば、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない」が、「このような見直しを行うについては、参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり、事柄の性質上課題も多く、その検討に相応の時間を要する」から、「国会において拙速な対応に陥ることのないよう慎重の上にも慎重を重ねた検討が行われることが望まれる」と判示した。

【憲法解答】

16:正しい(最大判平21・9・30)。
 「憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される」と判示した。
 「換言すれば」「すなわち」の語は、前後がほぼ同義であることを示す接続詞であるから、本肢は正しい。

17:正しい(最大判平21・9・30)。
 「憲法は、どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を国会の裁量にゆだねている」と判示した。

22:正しい(最大判平21・9・30)。
 「国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない」と判示した。

23:正しい(最大判平21・9・30)。
 「参議院議員の選挙制度の仕組みは、憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたこと、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ること、憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていること等に照らし、相応の合理性を有するものであり、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない」と判示した。

26:誤り(最大判平21・9・30)。
 「社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき、それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は、複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって、その決定は、基本的に国会の裁量にゆだねられているものである。しかしながら、人口の変動の結果、投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である」と判示した。
 本肢は下線部の要件が欠けており、著しい不平等状態が生じれば直ちに違憲となるとしているから、誤りである。

32:誤り(最大判平21・9・30)。
 「現行の選挙制度の仕組みを維持する限り、各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは、最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり、これを行おうとすれば、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては、参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり、事柄の性質上課題も多く、その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると、国会において、速やかに、投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて、適切な検討が行われることが望まれる」と判示した。
 本肢は、「拙速な対応に陥ることのないよう慎重の上にも慎重を重ねた検討」としており、速やかな検討を求める下線部とは逆の趣旨を述べているから、誤りである。

 

(本試験第3問より抜粋)

 憲法は,選挙権の( @ )の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する( A )の平等,すなわち( B )の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を( C )に国政に反映させることも要請しており,選挙制度の決定において,( D )の独自性や他の( E )などを正当に考慮することができる。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその( F )権の行使として( G )を是認し得るものである限り,( B )の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。
 ( D )議員の選挙制度の仕組みは,憲法が( H )を採用し( D )の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたこと,( I )が歴史的にも経済的,社会的にも独自の意義と実体を持つ政治的な単位としてとらえ得ること,( J )が( D )議員については( K )ごとにその( L )を改選すべきものとしていること等に照らし,国会の有する( F )権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない。そして,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる( M )につき,それをどのように選挙制度の仕組みに反映させるかは,基本的に国会の( F )にゆだねられている。しかしながら,( M )の結果,( B )の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが( N )継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の( F )権の限界を超えると判断される場合には,( O )規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。
 なお,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,( P )の定数を振り替える措置によるだけでは( Q )の大幅な縮小を図ることは困難であり,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,( D )の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,( R )を適正に反映する選挙制度が( S )の基盤であり,( B )の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに( B )の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。

穴埋めと肢別問題では、形式は異なる。
とはいえ、一度解いていれば、それなりに役には立ったはずである。

第5問は、ア、ウ、エの肢が、近時の判例からの出題である。
これについても、当サイトの肢別問題集から出題している。
ただ、若干出題がマニアック過ぎたかもしれない。
逆に言えば、今年度の本試験は、訊き方が素直だった。
補足意見や反対意見など、突っ込んだ訊き方はしていない。

(本試験第5問ア)

 日本国民である父の非嫡出子につき,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者のみが法務大臣に届け出ることにより日本国籍を取得することができるとした国籍法第3条第1項は,立法目的自体には合理的根拠は認められるものの,立法目的との間における合理的関連性は,立法当時からの内外の社会的環境の変化等によって失われ,日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課すものとなっており,憲法第14条第1項に違反する。

司法試験平成20年最新判例肢別問題集憲法第41問)

【問題】

 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認める規定の合憲性に関する最高裁大法廷判決は、上記区別について、これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は、我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており、今日においては、日本国籍の取得につき合理性を欠いた不十分な要件しか置いていないものとなっているというべきであると判示した。

【解答】

誤り(最大判平20・6・4)。
 「本件区別については、これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は、我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており、今日において、国籍法3条1項の規定は、日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課するものとなっているというべきである」と判示した。
 本肢は「不十分な要件しか置いていないもの」としており、これは藤田宙靖裁判官意見の見解であり、誤っている。
 上記意見は、「現行国籍法の基本構造を見ると、子の国籍の取得については出生時において父又は母が日本国民であることを大原則とし(2条)、日本国籍を有しない者が日本国籍を取得するのは帰化によることを原則とするが(4条)、同法3条1項に定める一定の要件を満たした者については、特に届出という手続によって国籍を取得することができることとされているものというべきである。したがって、同項が準正要件を定めているのは、準正子でありかつ同項の定めるその他の要件を満たす者についてはこれを特に国籍取得の上で優遇する趣旨なのであって、殊更に非準正子を排除しようという趣旨ではない。言い換えれば、非準正子が届出という手続によって国籍を取得できないこととなっているのは、同項があるからではなく、同法2条及び4条の必然的結果というべきなのであって、同法3条1項の準正要件があるために憲法上看過し得ない差別が生じているのも、いわば、同項の反射的効果にすぎないというべきである。それ故また、同項に準正要件が置かれていることによって違憲の結果が生じているのは、多数意見がいうように同条が「過剰な」要件を設けているからではなく、むしろいわば「不十分な」要件しか置いていないからというべきなのであって、同項の合理的解釈によって違憲状態を解消しようとするならば、それは「過剰な」部分を除くことによってではなく、「不十分な」部分を補充することによってでなければならないのである」と述べている。

(本試験第5問ウ)

 非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定める民法第900条第4号ただし書前段の規定の立法理由は,法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解され,このような立法理由にも合理的根拠があり,嫡出子・非嫡出子それぞれの相続分の定め方も,この立法理由との関連において著しく不合理であり,立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないので,この規定は,合理的理由のない差別とはいえない。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集憲法より抜粋)

【問題】

11:非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反するものでないとした最判平21・9・30においては、最高裁が違憲判決をする場合、民法900条4号ただし書前段の規定に従って行動した者に対して予期せぬ不利益を与えるおそれがあり、法的安定性を害することが著しく、違憲判断の効力を遡及させず従前の裁判等の効力を維持することの法的な根拠につき学説においても十分な議論が尽くされているとはいい難い反面、立法府の改正によれば、容易にこれらの問題や不都合を回避することができるとして、最高裁は違憲の判断をすることを差し控えるべきであると述べた補足意見がある。

12:非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反するものでないとした最判平21・9・30においては、多数意見は飽くまでも憲法適合性の判断基準時である相続発生時において本件規定が憲法14条1項に違反しないとするものであって、上記時点以降の社会情勢の変動等によりその後本件規定が違憲の状態に至った可能性を否定するものではないとする補足意見がある。

13:非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反するものでないとした最判平21・9・30においては、法律婚の尊重という立法目的が合理的であるとしても、その立法目的からみて、相続分において嫡出子と非嫡出子との間に差を設けることに合理的な関連性は認められないとする反対意見がある。

14:非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反するものでないとした最判平21・9・30においては、日本国籍の取得について定めた国籍法の規定について、同じく日本国民である父から認知された子であるにもかかわらず、準正子は国籍が取得できるのに、非準正子は国籍が取得できないとした当時の国籍法3条1項の規定を合理的な理由のない差別であって憲法14条1項に違反すると判断した最大判平20・6・4を援用し、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする規定はその創設当初から合理性を欠くものであったと述べた反対意見がある。

15:非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定が憲法14条1項に違反するものでないとした最判平21・9・30においては、民法900条4号ただし書前段の規定を違憲無効と判断したとしても、そのことによって同規定を適用した確定判決や確定審判について再審事由があるということにはならないし、本件規定が有効に存在することを前提として成立した遺産分割の調停や遺産分割の協議の効力が直ちに失われるものではなく、遺産分割の調停や協議は、当事者の思惑や譲歩など様々な事情を踏まえて成立するものであるから、本件規定が無効であることによって当然に錯誤があるということにはならないとして、法的安定性を害するおそれのあることは否定できないが、その程度は著しいものとはいえないと述べた反対意見がある。

【解答】 略。

(本試験第5問エ)

 地方公務員の管理職登用試験について,在留外国人にその資格を認めないことが,憲法に違反しないとされるためには,具体的に採用される制限の目的が自治事務の処理・執行の上で重要なものであり,かつ,この目的と手段たる当該制限との間に実質的な関連性が存することが要求され,その存在を地方公共団体の方で論証したときに限り,当該制限の合理性が肯定される。地方公務員の職務のうち,公権力行使等地方公務員となる管理職としての職務の遂行は,この基準に照らして,その制限の合理性が肯定される。

司法試験平成17年度最新判例肢別問題集憲法より抜粋)

【問題】

2:労働基準法及び地方公務員法上、普通地方公共団体は、職員に採用した在留外国人について、国籍を理由として、給与、勤務時間その他の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないものとされているが、地方公務員法24条6項に基づく給与に関する条例で定められる昇格(給料表の上位の職務の級への変更)等については、上記の勤務条件に含まれないものというべきである。従って、普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人の処遇につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではなく、そのような取扱いは、合理的な理由に基づくものである限り、憲法14条1項に違反するものでもない。

(参照条文)
●労働基準法
3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
112条 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

●地方公務員法
24条6項 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。
58条3項 労働基準法第二条 、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第五項、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条 の規定、船員法 (昭和二十二年法律第百号)第六条 中労働基準法第二条 に関する部分、第三十条、第三十七条中勤務条件に関する部分、第五十三条第一項、第八十九条から第百条まで、第百二条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条 の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。ただし書略。

4:憲法前文及び1条は、主権が国民に存することを宣言し、国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使することを明らかにしている。国民は、この国民主権の下で、憲法15条1項により、公務員を選定し、及びこれを罷免することを、国民固有の権利として保障されているのである。そして、国民主権は、国家権力である立法権・行政権・司法権を包含する統治権の行使の主体が国民であること、すなわち、統治権を行使する主体が、統治権の行使の客体である国民と同じ自国民であること(自己統治の原理)を、その内容として含んでいる。地方公共団体における自治事務の処理・執行は、法律の定める範囲内で行われるものであるが、その範囲内において、上記の自己統治の原理が、自治事務の処理・執行についても及ぶ。そして、自己統治の原理は、憲法の定める国民主権から導かれるものであるから、地方公共団体が、自己統治の原理に従い自治事務を処理・執行するという目的のため、特別永住者が一定範囲の地方公務員となることを制限する場合には、正当な目的によるものということができ、その制限が目的達成のため必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、上記制限の合憲性を肯定することができる。

6:公権力行使等地方公務員のうち、公の意思の形成に参画することによって間接的に国の統治作用に関わる公務員については、国の統治作用に関わる職務に従事するものではあるが、その関わりの程度は、間接的であり、しかも、その職務内容は広範多岐にわたり、関わりの程度も強弱様々であるから、憲法が、そのすべての公務員について、これに就任するには日本国民であることを要求していて、外国人がこれに就任することを一切認めていないと解するのは相当でなく、その職務の内容、権限と統治作用との関わり方及びその程度を個々、具体的に検討することによって、国民主権の原理に照らし、外国人に就任を認めることが許されないものと外国人に就任を認めて差支えないものとを区別する必要がある。

8:普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきであり、普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであるから、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではなく、このことは、いわゆる特別永住者にも妥当する。

【解答】 略。

今年度の憲法で最も解きにくかった問題は、第6問である。
形式だけをみると、正しいものの組合せだから、解き易そうにみえる。
一つでも誤りのある肢は、すぐ切れるからである。
しかし、結果的に誤りのある部分は、以下の4箇所だけである。

まず、5の肢の「Dにス」である。

 ( @ )事件上告審判決は,憲法第23条の保障する学問の自由には,学問的( A )の自由とその( A )結果の発表の自由が含まれるが,( B )の自由は,学問の自由と密接な関係を有するけれども,必ずしもこれに含まれるものではないとした。しかし,( C )については,憲法の趣旨と,( D )法が「( C )は,( E )の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を( B )( A )」することを目的とするとしていることとに基づいて,( C )において教授その他の研究者がその専門の( A )の結果を( B )する自由も保障されるとした。

入りそうなものは、ス(教育基本)か、セ(学校教育)である。
その後に続く「 」内の部分を規定した法律は、教育基本法か、学校教育法か。
これを、知識として知っていた。
そういう人は、少ないはずである。
直感的には、「 」内の部分は総論的なことを述べている。
だから、教育基本法が入ってもおかしくない。
他方で、その後の文脈は大学に関することを述べている。
そうすると、学校教育法でもおかしくない。
正解は、セの学校教育法である。

最大判昭38・5・22、東大ポポロ事件判例より引用、下線は筆者)

 大学については、憲法の右の趣旨と、これに沿つて学校教育法五二条が「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」することを目的とするとしていることとに基づいて、大学において教授その他の研究者がその専門の研究の結果を教授する自由は、これを保障されると解するのを相当とする。

(引用終わり)

 

学校教育法(平成19年6月27日法律第98号による改正後のもの)83条1項

 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

ここで、スを入れてしまうと、5を正解にして間違えることになる。

次に誤っているのは、1の肢の「Eにツ」である。
これは、前述の学校教育法の「 」内と、Cの段落にも登場する。

「( C )は,( E )の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を( B )( A )」

( N )事件上告審判決は,( C )は,国公立であると私立であるとを問わず,( F )の教育と( E )の( A )とを目的とする教育( A )施設であって,・・・以下略。

入りそうなものは、チ(学術)と、ツ(真理探究)である。
前記の引用部分から既に明らかであるが、正解はチの学術が入る。
また、チとツを比較すれば、チの方が正しそうだ、と判断できる。
しかし、肢に候補として挙がっているのは、ツの方である。
「真理探究の中心として」でも、間違いではなさそうにみえる。
Aに「研究」が入ると分かった上で、Cの方まで読み進めると、「真理探究の研究」となるので、不自然と気付くことは可能だ。
しかし、時間に余裕がないと、Eがここでもう一度登場することに気付かないことも多い。
そのため、時間に追われている場合、ツを誤りと断定できず、保留になってしまいがちだ。
そして、1の肢には他に誤りは含まれていない。
従って、ここを切れないと、1を正解にして間違えてしまいやすい。

3つ目の誤りは、2の肢の「Kにタ」である。
これは旭川学テ事件の判旨の部分に含まれている。

 ( J )事件上告審判決は,憲法の保障する学問の自由は,学問( A )の自由ばかりでなく,その結果を( B )する自由をも含むと解した上で,( K )の場においても,教師が( L )によって特定の意見のみを( B )することを強制されないという意味において,また,子どもの教育の本質的な要請に照らし,( B )の具体的内容及び方法につき,ある程度( M )が認められなければならないという意味においては,一定の範囲における( B )の自由が保障されるべきだとした。

入りそうなものは、ソ(普通教育)とタ(義務教育)である。
人によっては、セ(学校教育)も入りそうだ、と悩んだと思われる。
これについても、知識として暗記していた、という人は少ないだろう。

そして、普通教育と義務教育という概念は、普通教育の方が広い。
しかし、高校で行われる「高度な普通教育」を除き、ほとんど重なっている。

憲法26条2項

 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

教育基本法5条

 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3項以下略。

学校教育法

16条 保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。

17条  保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
2  保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う
3項略。

29条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。

45条 中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。

50条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

51条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
2号以下略。

 

衆院教育基本法に関する特別委員会平成18年05月31日より引用、下線は筆者)

○斉藤(鉄)委員 現行憲法も六十年続きました。これから我々がつくろうとしている改正案も、五十年、六十年続くんだと思うんです。その間、義務教育は九年というふうに固定するのはいかがなものか。本当に国民の理解を得ながら、幅広い議論をして、その可能性を残しておくということは非常に重要なことだと思います。
 それから、この義務教育に関連いたしまして、憲法二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」このように書かれております。普通教育を受けさせる義務、ここで言う普通教育というのはどういう意味でしょうか

○田中政府参考人 ここに規定しております普通教育というものは、国民全体に対して基礎的に必要とする知識を言うものでございます。

○斉藤(鉄)委員 基礎的知識とおっしゃいましたか。保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、これが義務教育と。先ほどの御答弁は、生きていく上で基礎的な知識を教えると。

○田中政府参考人 普通教育とは全国民に共通の一般的、基礎的な教育を言うものでございます。失礼しました。

○斉藤(鉄)委員 全国民共通の基礎的教育、必要な基礎的教育、それが普通教育であると。このように二つの、憲法の文章と今の御答弁を聞きますと、義務教育イコール普通教育、生きていく上で基礎的な教育ですからとなるんです。
 それでは、高等学校の役割というのは、高等学校も普通教育、普通科というのがございます。普通教育と職業教育の高等学校があるわけですけれども、高等学校の普通教育というのは義務教育ではありません。そのあたり、どうもしっくりすとんと来ないわけですけれども、この問題についてはちょっとまた議論したいと思いますが・・(以下略)。

(引用終わり)

そうすると、これはどちらでも入りうることになる。
仮に旭川学テ事件が中学の事例であると知っていても、それでは判断できない。
これでは、間違えても仕方がないだろう。
正解は、ソの普通教育である。

最大判51・5・21、旭川学テ事件判例より引用、下線は筆者)

 確かに、憲法の保障する学問の自由は、単に学問研究の自由ばかりでなく、その結果を教授する自由をも含むと解されるし、更にまた、専ら自由な学問的探求と勉学を旨とする大学教育に比してむしろ知識の伝達と能力の開発を主とする普通教育の場においても、例えば教師が公権力によつて特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において、また、子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行われなければならないという本質的要請に照らし、教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではない。

(引用終わり)

ここでタを正しいと判断すれば、2を正解にして間違える。
しかし、これはやむを得ない。
こういうときは、あっさり諦めて捨てるのが正しい。
本問では、正解するよりも、いかにタイムロスを避けるか。
そちらの方が重要である。

最後の誤りは、4の肢の「Rにハ」である。
正しくは、ノの単位認定行為が入る。
これは、富山大学事件の判旨と分かれば、判断できただろう。
ただ、これは20個ある穴の19個目である。
4の肢には、それまで誤りは入らない。
そのため、時間に追われると4を正解にして間違えてしまいやすい。

上記以外の穴は、全て正しい語句が入っている。
従って、上記以外の穴を全て埋めても、肢は切れない。
このように、第6問は、最近では珍しい典型的な捨て問だった。

第10問も、間違いやすい問題である。
この問題も、形式は正しい組合せを選ぶ問題である。
従って、一つ誤りを見つければ、その肢は切ることができる。
そして、最初のAとBについては、2行目の「独立して」の部分を見て、公務員の問題ではない。
裁判官の問題だ、と気付くことができる。
この時点で、Aにオ、Bにケは入らないから、いきなり2と3の肢を切ることができる。
同時に、ああ寺西判事補事件か、と予測できる。
これは簡単な問題だ、と受験生に思わせる。
確かに、ほとんどの穴がすんなりと埋まる。
しかし、1箇所だけ難しい部分がある。
それは、Iである。
「積極的に( I )をすること」となっている。
入りうるのは、ソ(政治的行為)とタ(政治運動)である。
意味的にはどちらも入りそうである。
4の肢をみると、「Iにタ」となっている。
結論から言えば、これは4が正解である。

最大判平10・12・1、寺西判事補事件より引用、下線は筆者)

 「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものが、これに該当すると解され、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、その行為の内容、その行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、その行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。

(引用終わり)

 

裁判所法52条
 裁判官は、在任中、左の行為をすることができない。
一  国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること
二  最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。
三  商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。

従って、Iにソが入るとして4を切れば、その時点で不正解となる。
他の穴が正確なら消去法で正解できるから、難問とまではいえない。
だが、引っかかる人もそれなりにいただろう。

上記は、近時嫌な出題とされる最も多く含むものを選ばせる問題ではない。
見た目だけで難易度を判断するのは、危険である。

最も多く含む組合せを選ぶ問題で、難問は第12問である。
KとNのどちらにもサ(政治資金規正法)が入りそうである。
結論的には、Kにサが入る。

政治資金規正法3条

 この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。
一  政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
二  特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
三  前二号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体
イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。
2  この法律において「政党」とは、政治団体のうち次の各号のいずれかに該当するものをいう
一  当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの
二  直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙若しくは当該参議院議員の通常選挙の直近において行われた参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの
3  前項各号の規定は、他の政党(第六条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定により政党である旨の届出をしたものに限る。)に所属している衆議院議員又は参議院議員が所属している政治団体については、適用しない。
3項以下略。

「政治改革立法の一つとして」「政党の公的な性格と機能」からNの方にス(政党助成法)が入ると判断できればよいが、難しい。
もっとも、ここにサを入れると、1と5の肢が正しいものを2つ含むとなってしまう。
従って、他の穴に自信があれば、Nにスが入り、Kにはサが入ると判断できたはずである。

また、第14問は、昨年出題されなかった個数問題である。
個数問題は、個数だが非常に易しいもの。
または、もうどうにもならないもの。
そのどちらかであることが多い。
しかし、本問は予備校問題のようなどっちともつかない個数問題である。
どの肢もやや細かかったり、微妙な表現がある。
そのため、出来れば取りたいが、落としても仕方が無いという問題といえる。

それから、第15問と第17問のように、やや新しい形式の出題もあった。
しかし、どちらの問題も、冷静にみれば易しい問題である。
時間に余裕が無くなってこういう問題を飛ばしてしまうと、痛手となる。

第18問は、穴の数と文章の数が対応していないことに気付くかがポイントである。

注意したいのは、第19問である。
これは、自宅でゆったり解けば簡単な問題である。
しかし、試験の現場で、時間に追われて解くと、難しい。
まず、本問は各肢に挙がっている穴の数が8個と多い。
また、穴埋め問題にしては珍しく、正しい語句の方が少ない。
肢に挙がっている候補は、誤っているものばかりである。
加えて、他の穴埋めと違って、候補が記号の付されていない語句である。
そのため、問題文の穴に記号を書き込んで視覚的に見易くする方法がとりにくい。
時間に追われて解いていると、イライラする問題である。
また、8つのうちの何個が正しいのか。
通常は、4つ程度だから、数えるまでもない。
しかし、本問では、正しいものの数を数える作業が必要になる。
かつての穴埋め並び替えほどではないが、ここで数え間違えてしまうことがある。
本問はそういう意味で、旧試験らしい問題だった。

憲法全体でみた場合、取りたい問題は、15問。
1、2、3、5、7、8、9、10、11、13、15、16、17、18、20である。
このうち、2問程度は落としたとして、13点。
残り5問(4、6、12、14、19)のうち、1問は拾うとして、14点。
憲法の目標点は、14点くらいということになる。

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