平成22年度新司法試験短答式の感想
(憲法)

平成22年度新司法試験短答式が、5月12日に行われた。
問題は、法務省HPで公表されている。

憲法について

全体の傾向は、変わっていない。
判例を基本とした知識問題ばかりである。
出題形式も、単純正誤か、肢の組合せでも全ての場合が挙がっている。
従って、肢の比較のようなテクニックは使えない。
個別の正誤を正確に判断することが求められる。
もっとも、個別の知識自体は、それほど難しくない、という印象である。

まず、第1問は、誰もが知っている典型判例を正面から訊くもので、しっかり取りたい。

第2問は、ウの肢に注意を要する。
これは一見すると、最判平11・2・26に関するものにみえる。

(最判平11・2・26より引用、下線は筆者)

 死刑確定者の拘禁の趣旨、目的、特質にかんがみれば、監獄法四六条一項に基づく死刑確定者の信書の発送の許否は、死刑確定者の心情の安定にも十分配慮して、死刑の執行に至るまでの間、社会から厳重に隔離してその身柄を確保するとともに、拘置所内の規律及び秩序が放置することができない程度に害されることがないようにするために、これを制限することが必要かつ合理的であるか否かを判断して決定すべきものであり、具体的場合における右判断は拘置所長の裁量にゆだねられているものと解すべきである。原審の適法に確定したところによれば、被上告人東京拘置所長は東京拘置所の採用している準則に基づいて右裁量権を行使して本件発信不許可処分をしたというのであるが、同準則は許否の判断を行う上での一般的な取扱いを内部的な基準として定めたものであって、具体的な信書の発送の許否は、前記のとおり、監獄法四六条一項の規定に基づき、その制限が必要かつ合理的であるか否かの判断によって決定されるものであり、本件においてもそのような判断がされたものと解される。そして、原審の適法に確定した事実関係の下においては、同被上告人のした判断に右裁量の範囲を逸脱した違法があるとはいえないから、本件発信不許可処分は適法なものというべきである。

(引用終わり)

ウの肢のように「放置できない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるときに限られる」とは判示していない。
従って、誤りだ、と判断したくなる。

しかし、上記判例は、死刑確定者による信書発送の事例であり、ウとは事案が異なる。
ウの肢は上記判例ではなく、最判平18・3・23に関するものである。

(最判平18・3・23より引用、下線は筆者)

 上告人は,昭和61年7月,東京地方裁判所において,現住建造物等放火等の罪で懲役18年の判決を受け,平成元年7月,最高裁判所が上告を棄却したことにより同判決が確定し,これに基づき,同年10月5日,熊本刑務所に収容され,同日以降,同刑務所で服役していた者である。
 上告人は,平成11年6月17日及び同月21日,参議院議員A及び衆議院議員Bあてに,「受刑者処遇の在り方の改善のための獄中からの請願書」(以下「本件請願書」という。)を送付し,また,同年10月4日付けで熊本地方検察庁あてに熊本刑務所職員等についての告訴告発状(以下「本件告訴告発状」という。)を送付した。
 上告人は,平成11年10月13日,本件請願書及び本件告訴告発状の内容についての取材,調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あての手紙(以下「本件信書」という。)の発信の許可を熊本刑務所長に求めた。
  熊本刑務所長は,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は特に必要があると認められる場合に限って許されるべきものであると解した上で,本件信書の発信については,権利救済又は不服申立て等のためのものであるとは認められず,その必要性も認められないと判断して,これを不許可とし,上告人に対し,平成11年10月15日,その旨を告知した。
 本件は,上告人が,被上告人に対し,熊本刑務所長が違法に本件信書の発信を不許可としたことによって精神的苦痛を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料を請求する事案である。

 (中略)

 監獄法46条2項の解釈上,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,その必要性が広く認められ,前記第1の要件及び範囲でのみその制限が許されると解されるところ,前記事実関係によれば,熊本刑務所長は,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は特に必要があると認められる場合に限って許されるべきものであると解した上で,本件信書の発信については,権利救済又は不服申立て等のためのものであるとは認められず,その必要性も認められないと判断して,これを不許可としたというのであるから,同刑務所長が,上告人の性向,行状,熊本刑務所内の管理,保安の状況,本件信書の内容その他の具体的事情の下で,上告人の本件信書の発信を許すことにより,同刑務所内の規律及び秩序の維持,上告人を含めた受刑者の身柄の確保,上告人を含めた受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮しないで,本件信書の発信を不許可としたことは明らかというべきである。しかも,前記事実関係によれば,本件信書は,国会議員に対して送付済みの本件請願書等の取材,調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あてのものであったというのであるから,本件信書の発信を許すことによって熊本刑務所内に上記の障害が生ずる相当のがい然性があるということができないことも明らかというべきである。そうすると,熊本刑務所長の本件信書の発信の不許可は,裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして監獄法46条2項の規定の適用上違法であるのみならず,国家賠償法1条1項の規定の適用上も違法というべきである。これと異なる原審の判断には,監獄法46条2項及び国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

(引用終わり)

よって、ウは正しい。
なお、当サイト作成の「司法試験平成18年度最新判例肢別問題集」では、上記判例を出題している。

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集憲法より抜粋)

【問題】

10:最高裁の判例によると、旧監獄法46条2項は、その文言上、特に必要があると認められる場合に限って上記信書の発受を許すものとしているようにみられるけれども、上記信書の発受の必要性は広く認められ、受刑者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該信書の内容その他の具体的事情の下で、これを許すことにより、監獄内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って、これを制限することが許されるものというべきであり、その場合においても、その制限の程度は、上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまることを定めたものと解することができるから、憲法21条、14条1項に違反しない。

(参照条文)旧監獄法46条
1項 在監者には信書を発し又は之を受くることを許す
2項 受刑者及び監置に処せられたる者には其親族に非さる者と信書の発受を為さしむることを得す但特に必要ありと認むる場合は此限に在らす


11:熊本刑務所長が、受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は特に必要があると認められる場合に限って許されるべきものであると解釈し、国会議員に対して送付済みの請願書等の取材、調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あての信書の発信について、権利救済又は不服申立て等のためのものであるとは認められず、その必要性も認められないと判断して、これを不許可としたという事案について、最高裁は、熊本刑務所長の当該信書の発信の不許可は、裁量権の範囲を逸脱し、又は裁量権を濫用したものとして監獄法46条2項の規定の適用上違法であるのみならず、国家賠償法1条1項の規定の適用上も違法というべきであると判示した。

【解答】 略。

上記平成18年判例を知らなかった場合は、ウを誤りと判断してもやむを得ないだろう。

第3問は、基本的な判例知識である。
ただ、ウの「一括して審査」の意味内容が不明瞭である。
同様の判断枠組みで、という意味なら正しいともいえなくはない。
しかし、誤りと判断しておくのが無難だろう。

第4問は、ウを正しいとした人がいたかもしれない。
牧会活動事件があるからである。
しかし、上記は簡裁事件である。
また、同判決は違法性阻却の場面を限定的に解している。
それと比べると、ウの肢はあまりに一般的である。

(牧会活動事件判決より引用、下線は筆者)

 牧会活動は社会生活上牧師の業務の一内容をなすものである。
 ・・・ところで、それが正当な業務行為として違法性を阻却するためには、業務そのものが正当であるとともに、行為そのものが正当な範囲に属することを要するところ、牧会活動は、もともとあまねくキリスト教教師(牧師)の職として公認されているところであり、かつその目的は個人の魂への配慮を通じて社会へ奉仕することにあるのであるから、それ自体は公共の福祉に沿うもので、業務そのものの正当性に疑を差しはさむ余地はない。一方、その行為が正当な牧会活動の範囲に属したかどうかは、社会共同生活の秩序と社会正義の理念に照らし、具体的実質的に評価決定すべきものであって、それが具体的諸事情に照らし、目的において相当な範囲にとどまり、手段方法において相当であるかぎり、正当な業務行為として違法性を阻却すると解すべきものである。・・・具体的牧会活動が目的において相当な範囲にとどまったか否かは、それが専ら自己を頼って来た個人の魂への配慮としてなされたものであるか否かによって決すべきものであり、その手段方法の相当性は、右憲法上の要請を踏まえた上で、その行為の性質上必要と認められる学問上慣習上の諸条件を遵守し、かつ相当の範囲を超えなかったか否か、それらのためには法益の均衡、行為の緊急性および補充性等の諸事情を比較検討することによって具体的綜合的に判定すべきものである。

(引用終わり)

従って、ウは誤りと判断すべきだろう。

第5問は、アの肢が正しいようにもみえる。
しかし、21条2項は検閲と通信の秘密を規定しているだけである。
ウは有名な判示であるから、正しいとわかる。
そうすると、翻ってアの「憲法21条2項に違反しないとされるのは・・」以下の部分は誤りとわかる。

第6問のアは、最判平18・10・3である。
上記判例は、司法試験平成18年度最新判例肢別問題集でも出題していた。

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集憲法第18問)

【問題】

 民事事件において証人となった報道関係者が、取材源に係る証言を拒絶できるかという点について、最高裁は、当該報道が公共の利益に関するものであって、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく、しかも、当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため、当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く、そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には、原則として、当該取材源に係る証言を拒絶することができると判示した。

【解答】

 正しい(最判平18・10・3)。
 「民訴法は、公正な民事裁判の実現を目的として、何人も、証人として証言をすべき義務を負い(同法190条)、一定の事由がある場合に限って例外的に証言を拒絶することができる旨定めている(同法196条、197条)。そして、同法197条1項3号は、「職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合」には、証人は、証言を拒むことができると規定している。ここにいう「職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。もっとも、ある秘密が上記の意味での職業の秘密に当たる場合においても、そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく、そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められると解すべきである。そして、保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。
 報道関係者の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ、将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり、報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので、取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして、当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは、当該報道の内容、性質、その持つ社会的な意義・価値、当該取材の態様、将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容、程度等と、当該民事事件の内容、性質、その持つ社会的な意義・価値、当該民事事件において当該証言を必要とする程度、代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。
 そして、この比較衡量にあたっては、次のような点が考慮されなければならない。
 すなわち、報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由と並んで、事実報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和44年(し)第68号同年11月26日大法廷決定・刑集23巻11号1490頁参照)。取材の自由の持つ上記のような意義に照らして考えれば、取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有するというべきである。そうすると、当該報道が公共の利益に関するものであって、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく、しかも、当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため、当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く、そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には、当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり、証人は、原則として、当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である」と判示した。

イは、レペタ事件判例だが、やや細かい。
一般人にメモを採らせず、司法記者クラブ所属報道機関の記者にだけメモを採らせた点。
これが、14条1項に違反しないかという点に関するものである。

(レペタ事件判例より引用、下線は筆者)

 本件裁判長が、各公判期日において、上告人に対してはメモを取ることを禁止しながら、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してはこれを許可していたことは、前示のとおりである。
 憲法一四条一項の規定は、各人に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であつて、それぞれの事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないと解すべきである(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五号同六〇年三月二七日大法廷判決・民集三九巻二号二四七頁等参照)とともに、報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供するものであつて、事実の報道の自由は、表現の自由を定めた憲法二一条一項の規定の保障の下にあることはいうまでもなく、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道のための取材の自由も、憲法二一条の規定の精神に照らし、十分尊重に値するものである(最高裁昭和四四年(し)第六八号同年一一月二六日大法廷決定・刑集二三巻一一号一四九〇頁)。
 そうであつてみれば、以上の趣旨が法廷警察権の行使に当たつて配慮されることがあつても、裁判の報道の重要性に照らせば当然であり、報道の公共性、ひいては報道のための取材の自由に対する配慮に基づき、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷においてメモを取ることを許可することも、合理性を欠く措置ということはできないというべきである。
 本件裁判長において執つた右の措置は、このような配慮に基づくものと思料されるから、合理性を欠くとまでいうことはできず、憲法一四条一項の規定に違反するものではない。

(引用終わり)

仮にこの点の知識が無くても、合憲の結論は知っているはずである。
そこから、推測で誤りと判断できただろう。

第7問は、論理問題である。
ただ、少しはっきりしない部分を含んでいる。
アは、明らかにパターナリズムに基づくものではない。
イウは、どうか。
各肢の説明から離れて考えると、どちらでも解釈できる。
イについては、酔っ払いが他人に迷惑をかけるから、他者加害防止も趣旨に含む。
ウについては、喫煙者を肺がん等から守るという自己加害防止の趣旨もありそうだ、等である。
肢の組合せが使えないから、これは迷う。
しかし、旧試験以来の短答の解法からすれば、これは問題文から形式的に判断すべきだろう。
そうすると、イは自己加害防止が理由として挙がっているから、1が正解。
ウは医療費抑制が理由になっているから、パターナリズムによる規制ではなく、2が正解。
そういうことになると思われる。

第8問のアは、少し驚かされる。
初めて、下級審の裁判例の趣旨を訊いてきた。
下級審の裁判例の知識まで訊いてくるのか。
そういう風にもみえる。
しかし、これは大学の自治が人事に及ぶか。
すなわち、東大ポポロ事件判例の知識を問うているにすぎない。
本肢は、存在するはずのない下級審裁判例の趣旨をいうものであるから、誤りである。
従って、下級審の裁判例の知識まで必要になった、ということではない。

(東大ポポロ事件判例より引用、下線は筆者)

 大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の目治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される

(引用終わり)

当サイトでも下級審裁判例を紹介している。
しかし、これは記憶の素材ではなく、事例処理の参考である。

なお、国立大学法人の学長人事は、学長選考会議の選考により行われる(国立大学法人法12条)。
そして、その選考に基づく申出については、文部科学大臣は原則として拒否できないと解されている。

国立大学法人法12条

 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。
2  前項の申出は、第一号に掲げる委員及び第二号に掲げる委員各同数をもって構成する会議(以下「学長選考会議」という。)の選考により行うものとする。
一  第二十条第二項第三号に掲げる者の中から同条第一項に規定する経営協議会において選出された者
二  第二十一条第二項第三号又は第四号に掲げる者の中から同条第一項に規定する教育研究評議会において選出された者
3項以下略。

 

参院文教科学委員会平成15年06月10日より引用、下線は筆者)

○仲道俊哉君 今答弁の中にもありましたけれども、文部科学大臣による学長の任命は、法人側の申出によって行われるというふうになっているわけですね。この大学側の申出は大臣の任命権を拘束するのか
 すなわち、文部科学大臣は、申出に係る人物が学長にふさわしくないものとして任命を拒否したり、別な人物を申し出るように指示したり、あるいは自己の裁量でそれ以外の者を任命するということができるのかどうか、その点についてお伺いいたします。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 通常の独立行政法人では、法人の長は大学の裁量で任命するということになっておりますのに、大臣の裁量で任命することになっているのに対しまして、国立大学の学長につきましては、大学の自主性、自律性を尊重する観点から、学長選考会議の選考によりまして国立大学法人が申出を行いまして、それに基づいて任命するということになっておるわけでございます。
 このような制度設計は、大学の自主性、自律性を尊重する観点からなされたものでございまして、文部科学大臣は大学の申出に法的に拘束されるということになろうかと思います。
 したがいまして、例えば所定の手続を経ていないという場合、あるいは申出のあった人に学長にふさわしくない著しい非行があるなど申出に明白な形式的な違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められるような場合などを除きまして拒否することはできないというふうに考えております。

○仲道俊哉君 今、先ほど私が指摘したようなことの危惧はないということで、答弁の中に形式的なという言葉がございましたが、そこのところがどういうような形式的なことでの危惧なのかはまだ一歩、もう少し分からないところがあるわけですけれども、いずれにしても大臣の任命権を拘束するものではないということなんですが、そのちょっと、形式的なことということについて、いま一度、どういうようなことで大臣を拘束するのか、そこのところをちょっと、今の答弁の中でありました形式的なことということを。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 学長の選考につきましては、法律で、学内の学長選考会議で決めたルールに基づいて、そしてそのルールに基づいてその学長選考会議が選んで、それを文部科学大臣に申出をすると、こういう手続、形になっているわけでございますけれども、いろんな事情、内紛その他あってその手続を踏んでいない、明らかに法律に決められている手続どおりになっていないといったような場合については、それをやはり、言わば拒否といいますか、ちょっと発令をそのままするということはしないということになろうかと思います。

(引用終わり)

また、イウも上記判例からの出題である。

(東大ポポロ事件判例より引用、下線は筆者)

 原判決には憲法二三条の学問の自由に関する規定の解釈、適用の誤りがあると主張する点について見るに、同条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであつて、同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは、一面において、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである。・・・(中略)
 大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の目治が認められている。この自治は、とくに・・(後略)

(引用終わり)

イは誤り、ウは正しい。
正解は、7ということになる。

第9問は、やや新しい、判例の異同を問う形式である。
もっとも、そこまで細かな差異を問うものではない。
アは、両判例の規範自体に違いがないこと。
イは、森林法事件は純粋な二分論は採用せず、「積極的」「消極的」という文言は用いたのに対し、証取法事件はその文言も使わなかったこと。
ウは、森林法が手段の必要性・合理性を否定した違憲判決、証取法事件は合憲判決であること。
これらの基本的知識があれば、正解できたはずである。

(森林法事件判例より引用、下線は筆者)

 財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。したがつて、財産権に対して加えられる規制が憲法二九条二項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものであるが、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が前示のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法二九条二項に違背するものとして、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。
 ・・・森林法一八六条が共有森林につき持分価額二分の一以下の共有者に民法二五六条一項所定の分割請求権を否定しているのは、森林法一八六条の立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することのできないことが明らかであつて、この点に関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるものであるといわなければならない。したがつて、同条は、憲法二九条二項に違反し、無効というべきであるから、共有森林につき持分価額二分の一以下の共有者についても民法二五六条一項本文の適用があるものというべきである。

(引用終わり)

(証取法事件判例より引用、下線は筆者)

 財産権は,それ自体に内在する制約がある外,その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。財産権の種類,性質等は多種多様であり,また,財産権に対する規制を必要とする社会的理由ないし目的も,社会公共の便宜の促進,経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策に基づくものから,社会生活における安全の保障や秩序の維持等を図るものまで多岐にわたるため,財産権に対する規制は,種々の態様のものがあり得る。
 このことからすれば,財産権に対する規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは,規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものである。
 ・・・(証券取引)法164条1項は証券取引市場の公平性,公正性を維持するとともにこれに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるものであるところ,その規制目的は正当であり,規制手段が必要性又は合理性に欠けることが明らかであるとはいえないのであるから,同項は,公共の福祉に適合する制限を定めたものであって,憲法29条に違反するものではない

(引用終わり)

第10問は、肢の組合せが使えそうにみえる。
しかし、4つから2つを選ぶ試行は、4×3÷2=6通りの組合せしかない。
本問は6通りの全てが挙がっているから、肢の組合せで正解を導くことはできない。
もっとも、内容的には易しい。

第11問は、第三者所有物没取事件判例の知識を問う問題である。
アは上記判例について述べており、正しい。
ウは、上記判例によって変更された最大判35・10・19について述べたものである。
イは、上記最大判35・10・19における入江俊郎反対意見である。
正解は4ということになるだろう。
若干細かい感じはする。
ただ、違憲の判例を知っていれば、イウは違和感があるはずである。
どちらかといえば誤り、と判断できたのではないか。

第12問は、行政国家現象・政党国家現象についての出題である。
今年度の旧司法試験択一の第12問と同じテーマである。
アイには、特に誤りは含まれていないと判断できる。
ウはどうか。
「立法府と行政府のすべての行為の合憲性」の部分の意味が不明瞭である。
ここで悩んだ人が多かったのではないか。
しかし、それ以前の「最高裁判所だけに違憲審査権が付与されている」の部分が誤っている。

最大判昭25・2・1より引用)

 憲法八一条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて、下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもつているものではない。

(引用終わり)

この部分だけの正誤を問えば、多くの人が正解できたはずだ。
敢えてその後に不明瞭な文章を煙幕として追加するあたりは、旧試験的なやり方である。
新試験でも、旧来のノウハウは使われている。

第13問は、肢の組合せの仕方が変わっている。
しかし、基本的には全ての組合せが挙がっている。
肢の組合せからわかることは、アイウが全部正しいということはない、ということだけである。
内容的には、ア(最高裁判例はない)とウについては基本知識である。
イは、政府見解を問うものである。
これは、やや細かい。
しかし、国事行為でないとしつつ助言と承認を要求するのは変だ。
その違和感から、誤りとすることは可能だったのではないか。

衆院外務委員会昭和49年02月20日より引用、下線は筆者)

○石原(慎太郎)委員 次に幾つか具体的な問題についてお伺いしたいと思いますが、この二、三日非常に物議をかもしております例の天皇御訪米の錯覚の問題について一問だけちょっと触れてお聞きしたいと思います。
 これは後にいろいろな方がいろいろな御質問をされると思いますので、私、一点だけお聞きしたいのですが、この問題についての外交当事者の基本的な理解についてややちょっと疑問といいますか疑念を持ちますので、それを伺いたいのですが、天皇の国事行為というのは憲法の七条に規定されておりまして、内閣の助言と承認によって行なうとございます。この内閣の助言と承認というのは、あくまでも内閣の連帯ということでございまして、一人の国務大臣の責任ということではないと思いますが、国事行為に関してはいろいろな解釈がございますけれども、通説の中に幾つかカテゴリーがありまして、いずれにしても、たとえ私的な行為であろうと、それが政治的な意味を強く持つときには内閣の承認、助言の必要を要するというのが通説でございます。もちろん天皇の外国御訪問が国事行為であるという認識でさきのヨーロッパ御訪問にも外務大臣が同道されたのだと思いますが、今回のこの問題で、日米共同声明で、その解釈に錯覚があったにしろ、それを再確認するというお話し合いの前提に、内閣の承認なり助言という形での事前の手続が必要であったのかなかったのかという点についてお伺いしたいのです。
 それは昨年天皇の御訪米が、御案内のようにウオーターゲート事件その他いろいろな問題がアメリカの社会にあるということで延期になりました、そしてウオーターゲート事件自身がいまだに解決しないまま、ますます混乱をきわめ、新しい要素も加わって、いつ解決のめどがつくかどうもわからぬという感じでございます。この内外の諸情勢に新しい要件が加わった時点で、共同声明を、ある錯覚があったにしろ、そのまま再確認されるというためには、宮内庁のお話なり閣議での話し合いが必要でなかったのか、必要がないという御判断であったのか、それとも必要が実際にないのか、その点についてお伺いしたいと思います。

○大平(正芳)国務大臣 私の理解するところでは、天皇につきまして三つのお立場があられると思うのであります。一つは、石原さんが御指摘になりました国事行為をされる立場、これはまさに内閣の助言のもとで憲法の規定に従って遂行される仕事でございます。もう一つは全く私的なお立場でございまして、それから第三のお立場は、国家の象徴としてのお立場における公的な御行為であるという三つのカテゴリーが考えられるのではないかと考えております。いわゆる外国御訪問あるいは国体への御出席等そういうものはこの第三のカテゴリーに属する、国事行為ではないという解釈を政府はとっておるわけでございます。しかし、国家の象徴としての公の行為につきましては、従来内閣が所掌いたしておりまして、宮内庁の御都合等を聞きまして内閣がその仕事に当たるということになっておるわけでございます。したがって、これに内閣の助言と承認という憲法上の要件というものは、直ちにこの第三のカテゴリーの御行為には結びつかない性質のものでないかと私は解釈いたしております。
 それから外交との関連でございますが、・・・以下略。

 (中略)

○松本(善明)委員 もう一つお聞きしておきます。先ほど外務大臣は質問に答えて、この天皇の訪米問題というのは象徴としての行為だ、したがって助言と承認についての憲法上の問題は起こらない、こう答えられました。そうすると、訪米というのは天皇の責任において行なわれるのかどうか、この点についての外務大臣の見解を伺います。

○大平(正芳)国務大臣 御訪米のことは、両陛下の私的な御行為ではないわけでございまして、象徴としてのお立場における公の行為であるというように政府は考えておりまして、いままでも閣議で取り上げて閣議決定をもちまして事を運んでおるわけでございます。それから御推測いただきたいと思います。

○松本(善明)委員 いや、問題は、私の聞いているのは、閣議決定がなされるかいなかにかかわらず、これは法律的に見て天皇の責任で行なわれることなのかどうかということです。

○大平(正芳)国務大臣 国事行為ではございませんから、内閣の助言と承認は行なわれませんけれども、象徴としての立場における重要な公的行為でございますので、閣議決定が行なわれることになる。したがって、かりに何かこれに問題が起こるとすれば、それは当然内閣がその責めに任じなければならない。そういう問題が起こらないように十分配慮しなければなりませんけれども、そういう筋道の問題であろうと考えます。

(引用終わり)

第14問は、参議院の議員定数配分規定の合憲性に関する判例を問うものである。
最大判平21・9・30が出たことから、出題は予想されていた。
ウは、その知識を問うものである。
当サイト作成の「司法試験平成21年最新判例肢別問題集」では、この点を出題している。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集憲法より抜粋)

【問題】

31:平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙(本件選挙)における参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(本件定数配分規定)の合憲性に関する最高裁大法廷の多数意見は、「本件選挙当時において、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない」としながら、本件選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差1対4.86について、「投票価値の平等という観点からは、なお大きな不平等が存する状態であり、選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にある」とした。

32:平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙における参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性に関する最高裁大法廷の多数意見は、「現行の選挙制度の仕組みを維持する限り、各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは、最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり、これを行おうとすれば、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない」が、「このような見直しを行うについては、参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり、事柄の性質上課題も多く、その検討に相応の時間を要する」から、「国会において拙速な対応に陥ることのないよう慎重の上にも慎重を重ねた検討が行われることが望まれる」と判示した。

【解答】

31:正しい(最大判平21・9・30)。
 「参議院では、平成16年大法廷判決中の指摘を受け、当面の是正措置を講ずる必要があるとともに、その後も定数較差の継続的な検証調査を進めていく必要があると認識された。本件改正は、こうした認識の下に行われたものであり、その結果、平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は、1対4.84に縮小することとなった。また、本件選挙は、本件改正の約1年2か月後に本件定数配分規定の下で施行された初めての参議院議員通常選挙であり、本件選挙時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対4.86であったところ、この較差は、本件改正前の参議院議員定数配分規定の下で施行された前回選挙当時の上記最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっていた。・・・本件選挙当時において、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない
 しかしながら、本件改正の結果によっても残ることとなった上記のような較差は、投票価値の平等という観点からは、なお大きな不平等が存する状態であり、選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない」と判示した。

32:誤り(最大判平21・9・30)。
 「現行の選挙制度の仕組みを維持する限り、各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは、最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり、これを行おうとすれば、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては、参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり、事柄の性質上課題も多く、その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると、国会において、速やかに、投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて、適切な検討が行われることが望まれる」と判示した。
 本肢は、「拙速な対応に陥ることのないよう慎重の上にも慎重を重ねた検討」としており、速やかな検討を求める下線部とは逆の趣旨を述べているから、誤りである。

今年度の旧試験択一の第3問でも、上記判例の穴埋めが出題されている。
新判例対策はしっかりやっておきたい。

第15問は政党に関する知識問題である。
ウは最新判例というにはやや古くなったが、最大判平16・1・14である。

第16問は、ほとんどサービス問題のような出題である。
こういうところでケアレスミスをしないようにしたい。

第17問のウは、ロッキード事件丸紅ルート上告審判決(最大判平7・2・22)である。
ここは、「行政指導に対し指示」という部分で若干引っかかった人もいたかもしれない。

(最大判平7・2・22より引用、下線は筆者)

 民間航空会社が運航する航空路線に就航させるべき航空機の機種の選定は、本来民間航空会社がその責任と判断において行うべき事柄であり、運輸大臣が民間航空会社に対し特定機種の選定購入を勧奨することができるとする明文の根拠規定は存在しない。しかし、一般に、行政機関は、その任務ないし所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言等をすることができ、このような行政指導は公務員の職務権限に基づく職務行為である。

 (中略)

 運輸大臣がFに対しL一〇一一型機の選定購入を勧奨する行為は、運輸大臣の職務権限に属する行為であり、内閣総理大臣が運輸大臣に対し右勧奨行為をするよう働き掛ける行為は、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示という職務権限に属する行為ということができる。

(引用終わり)

第18問は、アが最判平3・4・19
イが最判昭41・2・8
ウは苫米地事件判例である。
イは裁量論となっている点が誤りだが、気付きにくいところである。

第19問は論文の知識だけで十分解ける問題であり、確実に取りたい。

第20問は新試験では少なくなった論理問題である。
ただ、それぞれの文章の趣旨が不明瞭である。
読もうと思えば、どうとでも読める。
従って、こういう問題は直感でパッと解き、間違えても気にしない。
そういう意味では、捨て問だろう。

全体として、憲法は易しかった。
第2問、第12問、第13問、第18問、第20問以外の15問(39点)は確実に取りたい。
15問のうち何らかの理由で2問(5点)程度を落としたとして34点。
上記5問のうち、2問(4点)程度取って38点。
憲法では、そのくらいは取っておきたい。

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