平成22年度新司法試験短答式の感想
(行政法)

行政法について

これまで通り、ほとんどが知識問題である。
また、行政法は憲法より難しいという傾向も、これまでと変わらない。
憲法では、単純正誤の肢は3つであることが多い。
しかし、行政法では4つであることが多い。
一つでも間違うと部分点以外は得点できないから、これはかなり違う。
個々の問題も、行政法の方が細かいという印象だ。
従って、行政法は、憲法ほど勉強の成果が出にくい。
初学者は、まず憲法を固め、それから行政法をやる。
そういう手順の方が、トータルでは効率的である。

第21問は、法律の委任の範囲についての出題である。
最大判平21・11・18が出ていたので、出題は予想された。
もっとも、上記判例は昨年11月に出たばかりで、条文操作もやや複雑すぎる。
そのため、今年度については、上記判例自体は出題されなかったのだろう。

素材となった判例は、最判平2・2・1最判平14・1・31である。
これはおそらく、3が正解である。

まず、Bは行政裁量を重視するとしている。
従って、これは違法の主張としてそもそも不適切である。
そして、アは、銃刀法が文言上外国刀剣を除外していないことから、A。
イは、文言上は「準ずる状態」に含まれるといい得るから、C。
これが、本試験的な解法である。
多くの人は、このように解答したはずである、

もっとも、厳密に考えると、いずれもC、すなわち9が正解ではないかとも思える。
なぜなら、最判平2・2・1は文言上の理由のみでは違法としていないからである。

(最判平2・2・1より引用、下線は筆者)

 規則に定められた刀剣類の鑑定の基準をみるに、規則四条二項は、「刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行なうものとする。」とした上、同項一号に「姿、鍛え、刃文、彫り物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの」を、同項二号に「銘文が資料として価値のあるもの」を、同項三号に「ゆい緒、伝来が史料的価値のあるもの」を、同項四号に「前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの」をそれぞれ掲げており、これによると、法一四条一項の文言上は外国刀剣を除外してはいないものの、右鑑定の基準としては、日本刀であって、美術品として文化財的価値を有するものに限る旨の要件が定められていることが明らかである。
 そこで、右の要件が法の委任の趣旨を逸脱したものであるか否かをみるに、・・・規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。

(引用終わり)

単なる文理解釈を主張することは、上記判例をみる限り適切ではない。
従って、むしろ法の趣旨目的から解釈しても委任の趣旨を逸脱している。
そういう主張を積極的に行う必要がある。
実際、上記判例の反対意見は、そのような趣旨である。

(最判平2・2・1角田禮次郎、大堀誠一反対意見より引用、下線は筆者)

 法一四条一項にいう刀剣類には、文理上、外国刀剣を含むものと解される(法二条二項参照)。そして、法一四条一項に規定する登録制度の趣旨は、日本刀、外国刀剣を区別しないで、美術品として価値のある刀剣類で我が国に存するものを我が国の文化財として保存活用を図ることにあると解するのが相当である。そうだとすると、法の段階では、外国刀剣にも美術品として価値のあるものがあることを認めていることになるから、同条五項の委任に基づいて規則を定める場合にも、日本刀・外国刀剣の両者について、同項所定の事項を定めることこそ法の要請するところというべきであり、規則において外国刀剣を登録の対象から除外することを法が期待し、容認しているとは考えられない。換言すれば、登録の対象範囲というような登録制度の基本的事項については、本来、法で定めるべきものであって、登録の対象を日本刀に限るというような登録制度の基本的事項の変更に当たる事柄について、何らの指針を示すことなく規則に委任することが許されるとは考えられない。

(引用終わり)

上記の点に現場で気付いて迷い、9を選択したとしても、やむを得ない。
これは「適切」の趣旨を明確にしなかった出題側の不手際である。
よく勉強し、よく考えると不正解に至ることは、本試験ではよくある。
過去問の検討は、それを避けるために必要なことである。

第22問は、アは最判昭48・4・26
イは、後発的事情によるから撤回。
ウは最判昭53・6・16である。
これは確実に取りたい。

第23問は、行手法の知識である。
アは、14条1項。
イは、12条1項。
ウは、15条1項、10条。
エは19条1項である。
ウの列挙部分で引っかかってしまうのはやむを得ない。
それ以外は確実に取りたい。

第24問は、行政裁量に関する判例知識を問うものである。
アは、小田急高架訴訟のうち、最大判平17・12・7の本案を判断した最判平18・11・2である。
当サイトの「司法試験平成18年度最新判例肢別問題集」でも出題している。

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集行政法第6問)

【問題】

 都知事が行った都市高速鉄道に係る都市計画の変更が、鉄道の構造として周辺住民に騒音等で多大の被害を与える高架式を採用した点において違法ではないかが争われた事件において、最高裁は、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる」との基準を示した上で、結論として、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるということはできないと判断した。

【解答】

 正しい(最判平18・11・2)。
 「都市計画法は、都市計画について、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条)、都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず、当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き)、都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号)、このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって、裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である」とした上で、結論として、「本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるということはできない」と判示した。

もっとも、専門的技術的判断が不可欠としながら広範な裁量はないというのは変である。
知らなくても、誤りと判断できただろう。

イは最判平8・3・8、ウは最判平11・7・19、エは最判昭48・9・14である。
これらは、いずれも正しい。
3点を採るためには、4つ全て正確に判断する必要がある。
やや厳しかったかもしれない。

第25問は、行政指導に関する行手法の条文知識を問う問題である。
アは、35条2項、3項1号。
イは、2条6号(「処分に該当しないもの」)、32条1項。
ウは、難しい肢である。
直感的には、結論はともかく問題にはなりそうだ、という感じがする。
しかし、法の規定に基づく以上、それは当該法令を理由として行うものである。
従って、「行政指導に従わなかったことを理由として」に当たらないと解されている。
よって、本肢は正しいと判断すべきだろう。

福岡高判平13・10・30より引用、下線は筆者)

  医療法30条の7の規定による都道府県知事の中止勧告(本件勧告)の法的性質は行政指導であるが,本件処分は健康保険法43条の3第2項に基づいて行ったものであり,単に行政指導に従わなかったことを理由として行ったものではないから,行政手続法32条2項に違反しない

(引用終わり)

 

衆院厚生委員会平成10年04月28日より引用、下線は筆者)

○金田(誠)委員 勧告の性質が行政指導であるとすれば、この「勧告ヲ受ケ之二従ハザルトキ」を要件として保険医療機関の指定拒否をすることができるとするこの条項は、行政手続法三十二条二項「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」この行政手続法三十二条二項との整合性に問題を生じるのではないか、矛盾をするのではないか、こう思うわけですが、いかがなものでしょうか。

○野田(哲)政府委員 ただいまこの委員会で御審議いただいています国民健康保険法等の一部を改正する法律案の中におきましては、医療法の定める必要病床数を勘案しながら、病床過剰とされる地域における医療機関の保険取り扱いの制限を法定することとして御提案しているところでございます。
 これは、健康保険法上、医療法におけるこの勧告との関係を明確にした上で、健康保険法の観点から保険医療機関の指定の要件を設定したものでございまして、今先生が御引用になりました行政手続法三十二条第二項の問題は特段生じないものと考えております。

(引用終わり)

アイは正しく判断したいが、ウが難しい。
結果として落としてしまっても仕方がないだろう。

第26問は都市計画法の知識を問うもので、細かい。
アは、都市施設の整備に関する計画も含まれる(都市計画法4条1項)から誤りである。

都市計画法(下線は筆者)

4条1項 この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。

11条(都市施設)  都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設で必要なものを定めるものとする。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
一  道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
二  公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
三  水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
四  河川、運河その他の水路
五  学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
六  病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
七  市場、と畜場又は火葬場
八  一団地の住宅施設(一団地における五十戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
九  一団地の官公庁施設(一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
十  流通業務団地
十一  その他政令で定める施設
2項以下略。

イは、侵害留保説に立っても法律の根拠を要する場合であるから正しい。
ウは、行手法3条2項4号によって適用除外となるから正しい。
エは、都市計画法13条1項柱書から正しい。

都市計画法13条

 都市計画区域について定められる都市計画(区域外都市施設に関するものを含む。次項において同じ。)、国土形成計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、沖縄振興計画その他の国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画(当該都市について公害防止計画が定められているときは、当該公害防止計画を含む。第三項において同じ。)及び道路、河川、鉄道、港湾、空港等の施設に関する国の計画に適合するとともに、当該都市の特質を考慮して、次に掲げるところに従つて、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない。この場合においては、当該都市における自然的環境の整備又は保全に配慮しなければならない。
 (以下略)

イウは、判断できるようにしたい。
しかし、アエが細かいので、落としてもやむを得ないだろう。

第27問は行政代執行に関する出題である。
アは、そもそも物権的請求権は「行政上の義務」(行政代執行法1条)ではないから誤り。
イは、軽トラック、杭の撤去及び道路の原状回復は代替的作為義務であるから、正しい。
ウは、罰則の適用があっても、トラック等が撤去されるわけではないから、誤り。
エは、行政代執行法6条1項から誤り。
3点を取るには、4つとも正確に判断できなければならない。
やや厳しいが、できれば取りたい。

第28問は、行政強制に関する出題である。
アはすぐに誤りと判断できる。
イは、行服法2条1項により誤り。
ウは気付きにくいが、「義務の不履行がある場合に」の部分が誤っている。
取りたいが、厳しいかもしれない。

第29問は、情報公開法に関するものである。
アは、開示対象となる行政文書は「当該行政機関が保有しているもの」に限られる(情報公開法2条2項柱書)から正しい。
イは、情報公開法は、決裁、供覧等を要件としていないが、組織共用文書(2条2項「組織的に用いる」)でなければならないから、個人的なメモは対象外とされる。

東京高判平19・2・14より引用、下線は筆者)

 情報公開法は,開示の対象となる「行政文書」の範囲について,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする(情報公開法1条)という情報公開法の目的に照らし必要十分なものとするため,地方公共団体の情報公開条例が要求していることが多いとされる決裁,供覧等の手続の終了を要件とせず,業務上の必要性に基づき保有している文書であるかどうかの実質的な要件をもって規定するものとしている。Bの要件は,このような情報公開法の目的を考慮に入れて解釈すべきものであり,「組織的に用いる」とは,その作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すわなち,当該行政機関の組織において,業務上必要なものとして,利用され,又は保存されている状態のものを意味すると解するのが相当である(以下,このような状態にある文書を「組織共用文書」という。)。
 他方で,<ア>職員が単独で作成し,又は取得した文書であって,専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し,組織としての利用を予定していないもの(自己研さんのための研究資料,備忘録等),<イ>職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し,<ウ>職員の個人的な検討段階にとどまるもの(決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書等。なお,担当職員が原案の検討過程で作成する文書であっても,組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。)などは,組織的に用いるものには該当しないというべきである(以下,このような状態にある文書を「自己専用文書」という。)。
 そして,作成され,又は取得された文書が,どのような状態にあれば組織的に用いるものといえるかについては,文書の作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成し,又は取得するものであるかどうか,直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか),当該文書の利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか,他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか),保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処分できる性質の文書であるかどうか,組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)などを総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当である

(引用終わり)

よって、本肢は正しい。

ウは5条1号ハより正しい。

情報公開法5条

 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。

一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く
イ 略
ロ 略
ハ 当該個人が公務員等(かっこ書略。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

どれもそれなりに細かい。
落としてもやむを得ないだろう。

第30問は、かつて旧試験の憲法でよく出された読解問題である。
また、全ての肢の組合せ(5×4÷2=10)が挙がっているから、肢で切ることはできない。

本問をぱっとみると、最判平16・4・26の知識がないと厳しいという感じがする。
しかし、本問は、引用部分の構造に気付けば解ける。
引用部分は、「本件通知は,法16条に根拠を置く・・本件通知により・・受理されずに返却される」となっている。
アは、「法律の根拠を有しない場合であっても」が、上記と矛盾する。
エは、「関税法第70条第3項に基づき輸入を許可しないという処分をした」が、上記と矛盾する。
よって、3が正解となる。

第31問は裁量統制に関する問題である。
アは最判平18・9・4であり、誤りである。
この判例も、「司法試験平成18年度最新判例肢別問題集」で出題している。

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集行政法第2問)

【問題】

 公立小中学校等の教職員の職員団体が、教育研究集会の会場として市立中学校の学校施設を使用することを不許可とした市教育委員会の処分が裁量権を逸脱するかが争われた事件において、最高裁は、「管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる」との基準を示した上で、過去、教育研究集会の会場とされた学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったこと、教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領や文部省の是正指導に対して批判的な内容の記載が存在すること、当該処分が県教委等の教育委員会と職員団体との緊張関係と対立の激化を背景として行われたものであることを根拠として、裁量権の範囲の逸脱又は濫用はないと判断した。

【解答】

 誤り(最判平18・2・7)。
 「管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。
 ・・・過去、教育研究集会の会場とされた学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったというのであるから、抽象的には街宣活動のおそれはあったといわざるを得ず、学校施設の使用を許可した場合、その学校施設周辺で騒じょう状態が生じたり、学校教育施設としてふさわしくない混乱が生じたりする具体的なおそれが認められるときには、それを考慮して不許可とすることも学校施設管理者の裁量判断としてあり得るところである。しかしながら、本件不許可処分の時点で、本件集会について具体的な妨害の動きがあったことは認められず(なお、記録によれば、本件集会については、実際には右翼団体等による妨害行動は行われなかったことがうかがわれる。)、本件集会の予定された日は、休校日である土曜日と日曜日であり、生徒の登校は予定されていなかったことからすると、仮に妨害行動がされても、生徒に対する影響は間接的なものにとどまる可能性が高かったということができる
 被上告人の教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領や文部省の是正指導に対して批判的な内容の記載が存在することは認められるが、いずれも抽象的な表現にとどまり、本件集会において具体的にどのような討議がされるかは不明であるし、また、それらが本件集会において自主的研修の側面を排除し、又はこれを大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないのであって、本件集会をもって人事院規則14−7所定の政治的行為に当たるものということはできず、また、これまでの教育研究集会の経緯からしても、上記の点から、本件集会を学校施設で開催することにより教育上の悪影響が生ずるとする評価を合理的なものということはできない
 教育研究集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として、実験台、作業台等の教育設備や実験器具、体育用具等、多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり、学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで、本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違があることは否定できない。
 本件不許可処分は、校長が、職員会議を開いた上、支障がないとして、いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に、上記のとおり、右翼団体による妨害行動のおそれが具体的なものではなかったにもかかわらず、市教委が、過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し、自らも不許可処分をするに至ったというものであり、しかも、その処分は、県教委等の教育委員会と被上告人との緊張関係と対立の激化を背景として行われたものであった
 上記の諸点その他の前記事実関係等を考慮すると、本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。そうすると、・・・本件不許可処分が裁量権を逸脱したものであるとした原審の判断は、結論において是認することができる」と判示した。
 本肢は、判例の示した基準については正しいが、根拠・結論が誤っている。

イは、第24問でも出題された最判平18・11・2であり、正しい。
ウは、東京高判平11・3・31であり、誤っている。

(東京高判平11・3・31より引用、下線は筆者)

 行政事件訴訟法三〇条は,「行政庁の裁量処分については,裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り,裁判所は,その処分を取り消すことができる。」と定めている。ところで,法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し,当該処分をしたという場合においても,当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り,(当該処分が不正な動機に基づいていたり,処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず,若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は,直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。
 換言すれば,行政庁が処分に当たり,裁量の余地があるのに裁量の余地がないものとして一定の処分をしたという場合においても,当該処分が行政庁の権限行使の一環として行われたことに変わりはない以上,処分の取消しを求める者は,行政庁が与えられた裁景権を行使しなかったというだけでは処分の取消し事由としては十分でなく,その不行使の結果としての当該処分が,裁量権あるものとして行われたとしても実質的に裁量の範囲を超え,又は裁量権の濫用に当たることを主張,立証しなければならないというべきである。

(引用終わり)

アとウは、「判断できない」と断定しているところで違和感を感じるはずである。
知識がなくても、その辺りで誤りと判断したい。

第32問は、行政訴訟の手続を問うものである。
組合せとしては、3つの甲群に対して順に乙群の4つから一つずつ選ぶことになる。
よって、4×3×2=24通りが考えられる。
他方、選択肢は10通りしか用意されていない。
従って、本問は珍しく、肢で切ることができる。
それぞれの手続の選択も、条文と照らし合わせれば、形式的に判断できる。
迷う場合は、肢を使えばよい。
見た目は複雑だが、易しい問題である。
時間を使って確実に正解したい。

第33問は行政事件訴訟の条文知識を問うものである。
アは、14条2項から誤り(第三者であることのみでは正当な理由は認められない)。
イは、23条1項(「職権で」)により誤り。
ウは、最判昭27・1・25を引用した最判昭28・10・30により、誤り。

(最判昭27・1・25より引用、下線は筆者)

 行政処分の取消又は変更を求める訴において裁判所の判断すべきことは係争の行政処分が違法に行われたどうかの点である。行政処分の行われた後法律が改正されたからと言つて、行政庁は改正法律によつて行政処分をしたのではないから裁判所が改正後の法律によつて行政処分の当否を判断することはできない

(引用終わり)

 

(最判昭28・10・30より引用、下線は筆者)

 行政処分の取消又は変更を求める訴において、裁判所が行政処分を取り消すのは、行政処分が違法であることを確認してその効力を失わせるものであつて、弁論終結時において、裁判所が行政庁の立場に立つて、いかなる処分が正当であるかを判断するのではない。所論のように弁論終結時までの事実を参酌して当初の行政処分の当否を判断すべきものではない。(昭和二七年一月二五日第二小法廷判決、判例集六巻一号二三頁参照)。

(引用終わり)

エは、31条1項によって正しい。
やや厳しいが、なんとか4つ全部正解して3点を取りたい。

第34問は、住民監査・訴訟に関する地自法の知識を問う問題である。
アは、第5章の直接請求と異なり、住民監査請求は単独でできるから誤り。
イは242条の2第2項により誤り。
ウは242条の2第1項3号により正しい。
地自法の知識ではあるが、基本的なものであるから、これは取りたい。

第35問は、執行停止に関する出題である。
アは、執行停止には遡及効はないと解されている(最判昭29・6・22)から、誤り。
イは、直感的に正しいと判断できる。
最決平19・12・18も、社会的信用の低下等を考慮している。
ウは、25条3項から「当然に」とする点が誤りである。
エは、正しい(東京高決平15・12・25等)。

(東京高決平15・12・25より引用、下線は筆者)

 執行停止の消極要件として,「執行停止は」これにより「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」にはすることができないこととされている(行政事件訴訟法25条3項)。この趣旨は,本案判決前の暫定的措置としてなされる執行停止をする必要があるか否かについては,主として処分により相手方の受けた損害の有無及び程度によって判断すべきであるが,執行停止が公共の福祉に及ぼす影響をも考慮してなされるべきことを明らかにしたものである。その影響が重大かどうかは,処分の執行により原告が受ける損害との関係において,処分が違法であることの疎明が高く無効である可能性があるか,取り消される可能性が著しく高いにもかかわらず,原告の損害を看過してまでもなお公共の福祉に対する影響を重大としてこれを守るほどの必要があるかどうかという見地から相対的に判断すべきものである。この消極要件については,処分庁,執行等をする相手方行政庁において主張疎明すべきである。

(引用終わり)

やや細かいが、直感的に正解できる肢が多いので、取りたい。

第36問は、国賠法の知識を問う問題である。
アは、横浜地判平17・11・30最決平17・6・24により、誤り。
国又は公共団体から権限を与えられた機関も公権力性が認められるという基本知識から、判断したい。

(横浜地判平17・11・30、下線は筆者)

 建築確認処分について定めた法6条1項の規定は,建築主が同項1号から3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合においてはその計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて建築主事の確認を受けなければならない旨定めているところ,この規定は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることを確保することが,住民の生命,健康及び財産の保護等住民の福祉の増進を図る役割を広く担う地方公共団体の責務であることに由来するものであって,同項の規定に基づく建築主事による確認に関する事務は,地方公共団体の事務であり(法4条,地方自治法2条8項),同事務の帰属する行政主体は,当該建築主事が置かれた地方公共団体であるといえる。そして,法は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて,指定確認検査機関の確認を受け,確認済証の交付を受けたときは,当該確認は建築主事の確認と,当該確認済証は建築主事の確認済証とみなす旨定め(法6条の2第1項),また,指定確認検査機関が確認済証の交付をしたときはその旨を特定行政庁(建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいう。法2条36号)に報告しなければならない旨定めた(法6条の2第3項)上で,特定行政庁は,この報告を受けた場合において,指定確認検査機関の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは,当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した指定確認検査機関にその旨を通知しなければならず,この場合において,当該確認済証はその効力を失う旨定めて(同条4項),特定行政庁に対し,指定確認検査機関の確認を是正する権限を付与している。
 以上の法の定めからすると,同法は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認に関する事務を地方公共団体の事務とする前提に立った上で,指定確認検査機関をして,上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下において行わせることとしたということができる。そうすると,指定確認検査機関による確認に関する事務は,建築主事による確認の事務の場合と同様に,地方公共団体の事務であり,その事務の帰属する行政主体は,当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である(最高裁判所平成17年6月24日第二小法廷決定参照)。
 そうすると,指定確認検査機関による建築確認処分は,当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の公権力の行使であるといえるから,当該地方公共団体は,指定確認検査機関による建築確認処分に係る事務の違法それ自体を理由として,国家賠償法1条1項の「公共団体」として賠償責任を負うと解するのが相当である。

(引用終わり)

イについては、児童擁護施設の職員等に関するものであるが、最判平19・1・25がある。
この判例は、当サイトの司法試験平成19年度最新判例肢別問題集で出題していた。

司法試験平成19年度最新判例肢別問題集行政法第1問)

【問題】

 最高裁は、都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき、社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員について、組織法上の公務員ではない以上、国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当しないと判示した。

(参照条文)児童福祉法27条1項
 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
一  略
二  略
三  児童を里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
四  略

【解答】

 誤り(最判平19・1・25)。
 「法は、保護者による児童の養育監護について、国又は地方公共団体が後見的な責任を負うことを前提に、要保護児童に対して都道府県が有する権限及び責務を具体的に規定する一方で、児童養護施設の長が入所児童に対して監護、教育及び懲戒に関しその児童の福祉のため必要な措置を採ることを認めている。上記のような法の規定及び趣旨に照らせば、3号措置に基づき児童養護施設に入所した児童に対する関係では、入所後の施設における養育監護は本来都道府県が行うべき事務であり、このような児童の養育監護に当たる児童養護施設の長は、3号措置に伴い、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使するものと解される。
 したがって、都道府県による3号措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する当該施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解するのが相当である」と判示した。

この知識があれば、「公務員」に当たる場合がある、という表現は誤りではない。
そう判断できればよいが、難しいかもしれない。

ウは、国賠法1条1項は国又は公共団体の故意過失を要求していないから誤り。
エは、前掲の最決平17・6・24であり、正しい。
かなり細かく、4つ全て正解するのは難しいだろう。

第37問は、第36問に続いて国賠法の判例を問うものである。
アは、最判昭57・4・1であり、正しい。
イは、最判昭46・6・24であり、正しい。
ウは、立法不作為が国賠法上違法とならないとしており、誤り(最大判平17・9・14)。
エは、最判昭50・11・28であり、誤っている。
アイウは代表的な判例であるが、エが細かい。
「負うことはない」という断定口調から誤りと判断し、3点を取りたいところである。

第38問は、損失補償の知識を問うものである。
アは、事業損失の補償に関するもので、下級審では金沢地判平4・4・24(ただし残地所有者に関するもの)等がある。

(金沢地判平4・4・24より引用、下線は筆者)

 一般に、土地収用そのものによって直接的に損失が生じたという関係がなくとも、収用された土地においてその目的たる公共事業が展開されることにより、利用方法に制約を受けるなどして残地に関する損失をもたらす場合のあることは否定できないところ、およそ土地収用は、特定の公共事業のために行われるものであって、両者は密接不可分の関係にあるから、後者のような損失についても「土地の一部を収用し、又は使用することに因って」生じた損失ということができる
 そして、このような事業損失を補償することによって収用に至らなかった近傍第三者との間の不均衡を招くとしても、土地収用法は、収用を受けた者は原則としてこれにより生じたすべての損失について補償を受ける権利を有するとの理念、すなわち起業者と被収用者との公平をより重視する立場をとっていると見られうるから、右のような事態は法自体が許容していると考えられる。
 また、みぞ、かき、さく等の工作物について補償することを定めた法七五条は、事業損失のうちで補償されるものを特に列挙した限定的な規定と解する必然性はないし、起業利益との相殺禁止を定めた法九〇条についても、当該事業が残地の価格にもたらす影響のうち利益と損失とを明確に区別することができない場合には、これらを総合的に勘案することができるとの見解(最高裁昭和五三年オ第六一五号事件・昭和五五年四月一八日第二小法廷判決参照)をとれば、少なくともその限度では被収用者に二重の利得を与える結果となるとの批判は免れよう。
 以上のとおり、一般的に事業損失であることを理由に損失補償の対象から外すことは相当でないと判断する。

(引用終わり)

しかし、最高裁判例で一般住民に関して事業損失に対する損失補償を認めたものはない。
よって、本肢は誤りである。

イは、予防接種禍に関するもので、下級審では補償を否定した東京高判平4・12・18(原審は肯定)がある。
しかし、この点に関する最高裁判例は存在しない。
よって、本肢は誤りである。
ウは、最判昭47・5・30であり、正しい。
エは、用途地域の設定による土地利用制限については、補償は不要とされている。
よって、本肢は誤りである。
イウは正解したいが、4つ全て取るのは難しい。

第39問は行服法の知識である。
アは、39条1項から誤り。
イは、7条から正しい。
ウは、口頭で意見を述べる機会認められている(25条1項ただし書、48条)。
よって、誤り。
本問は確実に取りたい。

第40問は行政組織に関するものである。
アは、機関訴訟は法定されている場合に限られる(行訴法42条)から、誤りである。
イは、上下関係がある場合には指揮監督できるから正しい。
ウは、地自法251条の5第1項1号により正しい。

22、30、32、34、35、37、39の7問(16点)は、しっかり取りたい。
それでも、1問程度落としたとして14点。
そして、21、23、24、27、28、31、33、38、40の9問(23点)。
これらのうち、5問(13点)を取って27点。
25、26、29、36(11点)は落としてもやむを得ないだろう。
行政法では、27点は取りたい。

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