平成22年度新司法試験短答式の感想
(民法)

問題は、こちら

民法について

傾向は、概ねこれまでと同様。
単純な条文判例問題がほとんどである。
近時の旧試験のように当てはめの作業等は不要である。
従って、純粋に知識を記憶しているか。
それだけが要求されていた。
また、公法と異なり、肢の組合せの形式が多い、という点も変わらない。
内容的には、昨年度より難易度がやや上がった、という印象である。

第3問のウは消費者契約法4条1項1号からの出題である。

消費者契約法

4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一  重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
以下略。

2条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
4 略。

もっとも、この肢は判断できなくても、容易に正解できる。
消費者契約法については、今後細かい知識が要求される可能性は低い。
基本書等で関連項目として挙がっている程度を理解しておけばよいだろう。
最低限知っておくべきは、10条である。

消費者契約法10条

 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

論文でも使う機会のありそうな条文であるから、知っておきたい。

第6問は、時効中断に関する判例知識を問うものであるが、やや細かい。
アは、最判平8・9・27で誤り。
イは、最判昭50・11・21で正しい。
ウは、最判平11・4・27で正しい。
エは、最判平元・10・13で誤り。
正解は、3となる。
なお、本問は、4×3÷2=6通り全ての組合せが挙がっている。
従って、肢で切ることはできない。

第7問は、占有に関する判例知識を問うものである。
アは、最判昭53・3・6で、正しい。
イは、最判平8・11・12で、誤り。
ウは、最判平元・12・22で、誤り。
エは、最判昭35・3・1で、正しい。
正解は4となる。
本問も、肢で切ることはできない。
アは確実に判断したいが、他は迷うかもしれない。

第8問は、作為請求権に関する知識を問うものである。
アは、石に泳ぐ魚事件(最判平14・9・24)であり、差止めを認めているから、正しい。
イは、民法233条1項から誤り。
ウは、最判昭32・2・22であり、正しい。
エは、「不当に拘束」の趣旨が不明確である。
これが人身保護規則4条の顕著な違法をいうのであれば、人身保護法2条により正しい(最判昭47・9・26等参照)。
また、イオが誤りであるため、本肢は正しいと判断すべきである。

人身保護法2条

 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。
2  何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。

 

人身保護規則4条

 法第二条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。

 

(最判昭47・9・26より引用、下線は筆者)

 法律上監護権を有しない者が幼児をその監護のもとにおいてこれを拘束している場合に、監護権を有する者が人身保護法に基づいて幼児の引渡を請求するときは、両者の監護状態の実質的な当否を比較考察し、幼児の幸福に適するか否かの観点から、監護権者の監護のもとにおくことが著しく不当なものと認められないかぎり、非監護権者の拘束は権限なしにされていることが顕著であるものと認めて、監護権者の請求を認容すべきものと解するのが相当である。

(引用終わり)

オは、土地の明渡しまでは請求できない(最判平17・3・29)から、誤り。
これは、地役権の性質から判断できる。
アが正しく、オが誤りであることまでは、正確に判断したい。
その後、4か5で迷い、5を選んでしまってもやむを得ないだろう。
囲繞地通行権以外の相隣関係や、人身保護法など、従来問われていない事項が出題されている。
しかし、本問は特殊な出題とみるべきである。
今後もこのような事項が問われる可能性は低い。
従って、特別な対策は不要である。

第11問の4は、動産債権譲渡特例法からの出題である。
当該指名債権が金銭債権である場合には、同法14条によって質権設定登記ができるから、本肢は誤りとなる。

動産債権譲渡特例法14条

 第四条及び第八条の規定並びに第五条、第六条及び第九条から前条までの規定中債権の譲渡に係る部分は、法人が債権を目的として質権を設定した場合において、当該質権の設定につき債権譲渡登記ファイルに記録された質権の設定の登記(以下「質権設定登記」という。)について準用する。以下略。

 

(法務省「債権譲渡登記制度とは?」より引用、下線は筆者)

 債権譲渡登記制度は,法人がする金銭債権の譲渡や金銭債権を目的とする質権の設定について,簡易に債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。金銭債権の譲渡又は金銭債権を目的とする質権設定をしたことを第三者に対抗するためには,原則として確定日付ある証書によって債務者に対する通知を行うか,債務者の承諾を得なければなりませんが,法人が金銭債権を譲渡した場合又は金銭債権を目的とする質権設定をした場合には,債権譲渡登記所に登記をすれば,第三者にその旨を対抗することができます

(引用終わり)

もっとも、本問は、1ですぐ正解が出る。
従って、上記特例法の知識は不要だった。
動産債権譲渡特例法については、今後どの程度出題されるか不明である。
平成18年度の論文式で出題されていることもあり、無視するのは適当ではない。
とはいえ、おそらく当面の出題頻度は高くはない。
また、出題される部分も限られてくるはずである。
従って、とりあえずは、法務省HP(債権譲渡登記制度とは動産譲渡登記制度とは)の説明程度は押さえておく。
できれば、「制度のポイント」で列挙された部分は、覚えてしまいたい。
後は、基本書や講義で触れられた際に、その部分だけ確認しておく程度でよいだろう。

第12問は、共同抵当に関するものである。
共同抵当に関しては、条文・判例の細かい知識が必要になる。
また、現場で計算するという作業も必要になってくる。
自信のない人は、捨てるのも一つの選択肢である。
ただ、本問の事例は比較的単純で、それほど難しくない。
また、新試験の短答は、それほど時間に追われることはない。
じっくり検討する余裕はある。
従って、とりあえず後回しにして、余った時間でしっかり解きたい。

1は、392条1項によりAの債権につき甲乙からそれぞれ500万円が配当される。
よって、Cは甲土地の残りの500万円について配当を受けることになる。
2は、392条2項により、Cは500万円について乙土地に代位できる。
よって、CDは乙土地からそれぞれ500万円の配当を受ける。
3は、共同抵当不動産の所有者が異なるから、392条2項の適用がない(大判昭4・1・30)。
従って、Cは乙土地に対して代位ができず、配当は受けられない。
他方、Dは乙土地について1000万円全額の配当を受ける。
4も、共同抵当不動産の所有者が異なるから、392条2項の適用はない。
他方、Eは甲土地の抵当権についてAに代位できる(500条、501条)。
そして、Dは上記Eの代位した抵当権から、1000万円の配当を受けることができる(最判昭53・7・4参照)。
その結果、Cは配当を受けられないことになる。

(最判昭53・7・4より引用、下線は筆者)

 債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として順位を異にする数個の抵当権が設定されている場合において、物上保証人所有の不動産について先に競売がされ、その競落代金の交付により一番抵当権者が弁済を受けたときは、物上保証人は債務者に対して求償権を取得するとともに代位により債務者所有の不動産に対する一番抵当権を取得するが、後順位抵当権者は物上保証人に移転した右抵当権から優先して弁済を受けることができるものと解するのが、相当である。けだし、後順位抵当権者は、共同抵当の目的物のうち債務者所有の不動産の担保価値ばかりでなく、物上保証人所有の不動産の担保価値をも把握しうるものとして抵当権の設定を受けているのであり、一方、物上保証人は、自己の所有不動産に設定した後順位抵当権による負担を右後順位抵当権の設定の当初からこれを甘受しているものというべきであつて、共同抵当の目的物のうち債務者所有の不動産が先に競売された場合、又は共同抵当の目的物の全部が一括競売された場合との均衡上、物上保証人所有の不動産について先に競売がされたという偶然の事情により、物上保証人がその求償権につき債務者所有の不動産から後順位抵当権者よりも優先して弁済を受けることができ、本来予定していた後順位抵当権による負担を免れうるというのは不合理であるから、物上保証人所有の不動産が先に競売された場合においては、民法三九二条二項後段が後順位抵当権者の保護を図つている趣旨にかんがみ、物上保証人に移転した一番抵当権は後順位抵当権者の被担保債権を担保するものとなり、後順位抵当権者は、あたかも、右一番抵当権の上に民法三七二条、三〇四条一項本文の規定により物上代位をするのと同様に、その順位に従い、物上保証人の取得した一番抵当権から優先して弁済を受けることができるものと解すべきであるからである(大審院昭和一一年(オ)第一五九〇号同年一二月九日判決・民集一五巻二四号二一七二頁参照)。

(引用終わり)

結局、誤っているのは、1と4ということになる。

第26問のオは、任意後見契約法からの出題である。
同法4条によって、誤りとなる、

任意後見契約法4条

 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

任意後見制度と共に、成年後見登記制度についても、法務省HP程度の知識は押さえておきたい。

第27問は、要件事実からの出題である。
それ程難しくはないが、これまでよりも難易度は上がっている。
次第に要件事実のウェイトを上げてきている、という印象だ。
また、第7問、第19問も広い意味で要件事実からの出題である。
今後も、要件事実からの出題が増え、難易度も高くなることが予想される。
今のところは特別に対策する程ではないが、注意しておきたい。

今年度は、親族相続から6問(31から36)出題された。
過去の出題数は、平成18年度が3問。
平成19年度から平成21年度までが5問だった。
今年度は、これまでで最も出題数が多かったことになる。
また、内容面でも、基本的な勉強をしていれば取れるものが多い。
すなわち、全然やっていない人と、ある程度やった人との差が付きやすい。
旧試験時代には、多少やっても取れない問題が多かった。
そのため、ある程度勉強した程度では、全然やっていない人と差が付かなかった。
また、出題数自体も少なかった。
そのため、親族相続を捨てる、という選択肢もあった。
しかし、新試験では親族相続を捨てる、ということは危険である。
なかなか手が回らないところだが、しっかり対策をすべきである。

第32問は、イの「許可の審判があった時に成立する」が誤っている。
これに気付かないと、正解するのは難しい。

確実に取りたい問題は、27問(56点)。
1、3から5まで、10から14まで、15から29まで、31、33から35までである。
このうち4問程度(8点)落としたとして48点。
できれば取りたい問題は、7問(14点)。
2、6、7、9、12、30、32である。
このうち3問(6点)を取って、54点。
第8問と第36問は、落としてもやむを得ない。
民法では、54点は取りたい。

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