平成22年度新司法試験短答式の感想
(商法・民訴法)

問題は、こちら

商法について

出題形式は、民法とほとんど変わらない。
ただ、商法は内容が細かい傾向にある。
今年は、その傾向が更に強まっている。
制度の本質部分や、本質から推測できる知識。
そういったものは、少ない。
記憶していないとどうにもならない問題が多い。

代表的なものは、第38問の4である。

4.発行済株式の総数10万株の株式会社が単元株制度を採用する場合,1単元の株式の数は,500を超えることができない。

1単元株式数の上限を問うものである。
結論的には、これは会社法188条2項、同法施行規則34条により正しい。

会社法188条

 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
2 前項の一定の数は、法務省令で定める数を超えることはできない
3 略。

 

会社法施行規則34条

 法第百八十八条第二項 に規定する法務省令で定める数は、千及び発行済株式の総数の二百分の一に当たる数とする。

発行済株式総数が10万株の本肢では、500株となる。

この肢を判断するには、施行規則の数字を暗記している必要がある。
しかも、これは平成21年法務省令第7号(平成21年4月1日施行)による改正事項である。
改正前の規則34条は、以下のとおりである。

平成21年法務省令第7号による改正前の会社法施行規則34条

 法第百八十八条第二項に規定する法務省令で定める数は、千とする

この改正は、旧商法における規制を復活させたものである。

旧商法221条1項

 会社ハ定款ヲ以テ一定ノ数ノ株式ヲ以テ一単元ノ株式トスル旨ヲ定ムルコトヲ得但シ一単元ノ株式ノ数ハ千及発行済株式ノ総数ノ二百分ノ一ニ当ル数ヲ超ユルコトヲ得ズ

会社法立案に携わった葉玉匡美さんは、これを会社法と整合しない不合理なものとして批判していた。
自分が会社法を立案する際に、敢えて除外したルールである。
これを後から省令で復活されてはかなわない、という感じだったのだろう。

「会社法であそぼ」2009年2月 1日 (日)記事より引用)

改正案34条の単元株式数の設定について

 「発行済株式の総数の二百分の一に当たる数」

を追加する改正は、改正をなすべき実質的な意味もなければ、会社法の規定とも整合しない不合理なものです。

この改正案は、要するに

  単元株式数を設定するときには、最低200単元以上になるようにしなさい

というルールであり、旧商法にあったルールを会社法で排除したものです。

このルールは、

  発行済み株式総数は、200株以上にしなければならない
  株式の併合により、200株未満になる場合には、株式の併合をすることができない

というルールが存在する場合に、はじめて意味を持つ規定であり、

  1円出資で1株の株式会社が存在する会社法の世界で、なぜ200単元以上ないと単元株式数が設定できないのか
  種類株式発行会社で、無議決権株式等を含めた「発行済み株式の総数」を基準とすることに、何の合理性があるのか

私には、全く分かりません。

 (中略)

そもそも200単元という数自体が

 最低資本金1000万円÷1株あたりの純資産額最低5万円=200単元

という、いずれも、会社法で存在しない制度をもとに算定された数なのですから、

 会社法において、なぜ200単元という数が基準となりうるのか

という点も、問われるべきです。

また、単元株制度ができた平成13年当時の少数派株主の保護のあり方と、ブルドック事件を始め買収防衛策の採用が一般的となり、全部取得条項付種類株式や現金対価株式交換を用いたスクイーズアウトが多数行われている現在における少数派株主の保護のあり方は、根本的に変化しており、ここで200単元基準を復活させるのは、

 時代遅れ

というほかありません。

(引用終わり)

よく、「本質を理解していれば、暗記しなくても云々」と言われることがある。
しかし、会社法の本質を理解すれば施行規則34条の内容が脳裏に浮かぶ、ということはない。
本肢は、会社法の本質とも関係のない瑣末な知識である。
暗記していなければ、判断できない。
しかも本問の場合、2の肢を除き、他の肢も容易ではない。
知らなくても、消去法で簡単に正解できる、という感じではない。

本肢は象徴的であるが、その他の問題も相当に細かい。
このように、商法は多少やっても取れない問題を平気で出してくる。
今年度は特に顕著だったが、来年度以降も概ね同様の傾向が続くだろう。
だとすれば、商法に時間を投入するのは、効率的でない。
短答対策としては、時間を投入した分だけ伸びるその他の科目に注力すべきである。
民事系であれば、民法を8割〜9割程度取れるようにする。
民法の問題は基本的なものが多く、これは十分可能である。
商法に時間を回すのは、他科目がある程度飽和状態になってからで足りる。
そして、初学者の場合、そこまで勉強が進むことはあまりない。
そのため、商法については、短答対策の時間をほとんど取らない。
結果的にそうなっても、かまわないと思う。
しかし、商法を全然やらないと、全く取れないのではないか。
そういう不安もあるかもしれない。
だが、商法は5肢択一型の問題が多く、デタラメに選んでも2割弱は取れる。
(第38問のように「5つから2個」という5肢択2型の場合は、1割となる。
今年度はこの形式が7問あるから、2割より若干低い数字になる。)
また、ローの講義や課題をこなしたり、論文対策の学習の過程で得た知識がある。
そういう知識で取れる問題を、拾っていけばよい。
また、直前期には、短答模試等を受験するはずだ。
その際に出題された肢と、その関連事項くらいは、押さえるようにする。
一度自分の頭で考えているので、記憶しやすい。
それ以外の知識は、あまり気にしない。
そういうスタンスでよいと思う。
配点から考えても、例年民法が70点強。
商法は、40点弱である。
民法・商法をそれぞれ6割取ると、42+24=66点。
これに対し、民法を8割取れば、商法が3割しか取れなくても、56+12=68点取れる。
学習効率として、前者より後者の方が、達成が容易である。
商法が難しいから、民法よりも商法に時間をかけて勉強すべきだ、と指導するローなどもあるだろう。
しかし、それは適切な指導とはいえない。
もう民法は8割取れるのだから、そろそろ商法もやってみてはどうか。
このような指導であれば、適切である。

なお、本問の3の肢は、最判平19・3・8である。

(最判平19・3・8より引用、下線は筆者)

 不当利得の制度は,ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に,法律が,公平の観念に基づいて,受益者にその利得の返還義務を負担させるものである(最高裁昭和45年(オ)第540号同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。
 受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し,その後これを第三者に売却処分した場合,その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると,その物の価格が売却後に下落したり,無価値になったときには,受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが,これは公平の見地に照らして相当ではないというべきである。また,逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには,受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが,これも公平の見地に照らして相当ではなく,受けた利益を返還するという不当利得制度の本質に適合しない。
 そうすると,受益者は,法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。大審院昭和18年(オ)第521号同年12月22日判決・法律新聞4890号3頁は,以上と抵触する限度において,これを変更すべきである。
 以上によれば,上記原則と異なる解釈をすべき事情のうかがわれない本件においては,被上告人は,上告人らに対し,本件新株式の売却代金及び配当金の合計金相当額を不当利得として返還すべき義務を負う

(引用終わり)

当サイトの「司法試験平成19年度最新判例肢別問題集」でも上記判例は出題していたが、民法の不当利得の問題としてだった。

司法試験平成19年度最新判例肢別問題集民法第2問)

【問題】

 受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し、その後これを第三者に売却処分した場合、その返還すべき利益は、事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額である。

【解答】 略。

本肢をこの知識で切るというのは、難しかったかもしれない。
むしろ、「負うことはない」という断定口調から、誤りと判断する方が、実戦的だろう。

第49問のエは、最判平21・3・10からの出題であり、正しい。
これは、「司法試験平成21年最新判例肢別問題集」で出題している。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集商法第1問)

【問題】

 株式会社の取締役が会社との取引によって負担することになった債務(会社に対する取引債務)についての責任は、株主代表訴訟の対象とはなり得ない。

【解答】

 誤り(最判平21・3・10)。
 「(旧商)法267条1項にいう「取締役ノ責任」には、取締役の地位に基づく責任のほか、取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると解するのが相当である」と判示した。
 上記判例は、現行の会社法847条1項における株主代表訴訟の対象となる責任の範囲に関する解釈としても妥当すると解されているから、取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任は、同項における責任に含まれる。よって、株主代表訴訟の対象となりえないとする本肢は誤りである。

第50問のイは、持分会社にそのような公告方法を認める規定がないから、誤りである。
本肢のような例外があるのは、一般社団法人・一般財団法人(一般社団法人等)の公告方法である。

一般社団財団法人法331条1項

 一般社団法人等は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めることができる。
一  官報に掲載する方法
二  時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三  電子公告(公告方法のうち、電磁的方法により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法をいう。以下同じ。)
四  前三号に掲げるもののほか、不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として法務省令で定める方法

 

一般社団財団法人法施行規則88条1項

 法第三百三十一条第一項第四号に規定する措置として法務省令で定める方法は、当該一般社団法人等の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法とする。

誤肢の元となる知識も、細かい。

第54問と第55問は手形法に関する出題である。
第54問は、アイエの判断が比較的容易である。
肢の組合せから、それだけで正解にたどり着くことができる。
手形を一応勉強していれば、取れる問題である。
ただ、第55問は、ある程度勉強していても難しかった。
1から5まで、全部正しくみえる。
しかし、3は、福岡高判昭33・10・17であり、誤っている。

(福岡高判昭33・10・17より引用、下線は筆者)

 約束手形上の債権については手形法七七条七一条により時効の中断はその中断事由が生じた者に対してのみ効力を生ずるのであり、手形行為の特性から手形保証については民法四五七条の適用が排除され、主債務者に対する時効中断は直ちに手形保証人に対し効力を生ずるものでないと解するを相当とする。

(引用終わり)

商法については、確実に取るべきといえる問題は、ない。
できれば取りたい問題は、11問(22点)。
40から43まで、46、48、49から51まで、53、54である。
このうち、6問を取って、12点。
取れなくてもやむを得ない問題は、8問(16点)。
37から39まで、44、45、47、52、55である。
適当にマークしても1問は取れるとして、2点。
商法については、14点程度しか取れなくても、やむを得ないという感じである。

民訴法について

民訴法も、基本的には条文・判例の単純な知識問題である。
肢の組合せの形式が多いことも、他の民事系科目と同様である。
内容的には、民法よりやや難しい、という感じだ。
それでも、昨年度の民訴法と比較すると、易しくなったような印象である。
難しい肢もあるが、易しい肢も多い。
基本事項から推測すれば、判断できる肢も少なくない。
商法のように、全部の肢が細かい、ということはない。
組合せを上手く使っていけば、細かい知識がなくても解けるようになっている。

また、要件事実の問題が、民訴では出題されていない。
昨年度は、民訴から1問出題されていた。
今年度は、民法の方で出題されている。
今後、民法と民訴のどちらから出題されるのか。
少し気になるところではある。

第57問は、裁判所書記官の知識を問うているようにみえる。
しかし、この問題は、裁判所書記官に関する知識はなくても解ける。
訴状の形式的審査権が裁判長にあることは、基本知識である。
これで、イが誤りとわかる。
また、当事者照会は、その名称通り、裁判所を介さず直接当事者に照会する制度である。
これも、基本知識である。
このことから、オは誤りとわかる。
よって、3が正解である。

第67問の1は、民事訴訟規則157条2項の知識である。

民訴規則157条

 判決書には、判決をした裁判官が署名押印しなければならない。
2 合議体の裁判官が判決書に署名押印することに支障があるときは、他の裁判官が判決書にその事由を付記して署名押印しなければならない。

これ自体は、細かい。
しかし、普段の学習で判決文を読んでいれば、このような場合のあることを知っているはずである。

最判平10・12・18より引用、下線は筆者)

最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    福   田       博
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    北   川   弘   治
 裁判官根岸重治は、退官につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    福   田       博

(引用終わり)

原文に当たるクセをつけていると、こういうところで役に立つ。

確実に取りたい問題は、11問(22点)。
56、57、59、61、62、64、65、66、68、71、72である。
このうち、2問(4点)落としたとして18点。
できれば取りたい問題は、7問(14点)。
58、60、67、69、70、73、74である。
このうち、4問(8点)は取って、26点。
落としても仕方がない問題は、63の1問(2点)。
これは落としてもよい。
民訴法では、26点は取りたい。

戻る