平成22年度新旧司法試験
短答式試験の結果について

6月3日、法務省から新旧両司法試験の短答式の結果が発表された。
結果は、法務省HPに掲載されている(旧試験新試験)。

旧司法試験について

合格点は47点。
合格者数は、742人にとどまった。
事前の予測では、750人程度まで絞ることは考えにくい。
そう思っていた。
予想外に、厳しい結果だった。

以下は、択一合格者数等の推移である。

年度

受験者数

合格者数

受験者
合格率

18

30240

3820

12.6%

19

23298

2219

9.5%

20

18201

1605

8.8%

21

15218

1599

10.5%

22

13222

742

5.6%

今年度が、どれほど厳しかったかがわかる。
昨年度と比べると、合格率はほぼ半減している。
かつての最終合格率は、受験者ベースでほぼ3%だった。
平成に入ってから最も合格率の高かった平成5年は、4.02%だった。
今年度の択一合格率は、ほぼそれに匹敵する。
ここから、さらに論文で絞る。
あまりにも、厳しい試験である。

もっとも、ここを乗り切った人にとっては、論文は少し楽になる。
以下は、論文試験の合格者数等の推移である。

年度

択一
合格者数

論文
合格者数

論文
合格率

18

3820

542

14.1%

19

2219

250

11.2%

20

1605

141

8.7%

21

1599

101

6.3%

22

742

90?

12.1%

70?

9.4%

50?

6.7%

30?

4.0%

今年度の論文合格者数は不明である。
わかるのは、昨年度より少ない数字になるだろう、ということだけである。
そこで、4通りの数字を想定して合格率を算出した。

これをみると、仮に50人まで絞られても、昨年度より合格率が高いことがわかる。
従って、昨年度の合格答案レベルを維持すれば、今年度もおそらく合格できる。
書くべき事項を拾い、あてはめ用の事実はきちんと使う。
この当たり前のことを、ミスなく6科目12問きちんとこなす。
やるべきことは、これまでと変わらない。
限られた時間で、効率的に脳と手を動かす訓練をする。
その訓練を、残りの期間にいかにできるか、ということだろう。
昨年度の結果についての記事でも触れたとおり、近年はむしろ若手が受かっている。
それは、択一段階ではなく、論文段階で生じている。
今年度も、択一の合格者平均年齢は、34.96歳である。
決して、若手に有利な試験とはいえない。
昨年度も、択一段階では、合格者平均年齢は、35.10歳だった。
しかし、昨年度の論文合格者平均年齢は、29.29歳。
論文合格者数に占める大学生の割合は、27.7%である。
論文では、若手に逆転されている。
このことは、論文は知識量の勝負でないことを示している。
現場で何を書くか、どの事実がどの当てはめに対応するか。
これらを、瞬時に判断する能力。
そういった反射神経に近い能力は、若手の方が優れている。
また、細かい論点を知らない若手は、現場での迷いがむしろ少ない。
マトモに戦うと、不利になる。
直前期の訓練で、できる限りフォローしていくよりない。
そのためには、やはり答練や問題演習をたくさんこなすのがよいだろう。
答練慣れしてくると、どうしても一度見たような問題ばかりになり、受ける気がなくなる。
しかし、実際にそのような問題を時間内にきっちり書き上げられるかというと、そうでもない。
初心に帰って、演習をきちんと行うのが、最後の論文に対する有効策だと思う。

今年度の択一は、常勝者でも、かなりの人が敗れたはずである。
来年度以降、予備試験を受けるのか、ローに回るのか、それ以外の道を探るのか。
これは、自分で決めることである。
予備校のガイダンスに行けば、当然予備試験やその他の資格を勧められるはずである。
ローの説明会などに行けば、ローを勧められるだろう。
そうすると、予備試験、その他の資格やロー以外の道が、見えなくなる。
そういったものに参加する前に、自分がどうしたいのか。
考えをまとめておく必要がある。
近年、就職が厳しいといわれている。
しかし、どこの職場も、人は足りない。
雇ってもすぐ辞めるか、すぐ辞めそうだから雇わない。
特に中小の企業には、そういう所が多い。
ちゃんとした人を厳選して、限られた人件費を使いたい、というニーズがある。
それは、特別な能力というより、ちゃんと最後まで頑張ってくれる人、ということである。
途中で投げ出されるのが、一番困る。
そういう意味では、真面目に頑張って来た人は、評価されるだろう。
多くの人が、学生時代の企業イメージに縛られている。
テレビCMに出る企業、自分の使っている製品に関わる企業。
日本を支えているのは、そのような企業ばかりではない。
また、企業のHPをみると、年中求人をやっている所もある。
求人誌に掲載するのは、期間も限られ、金もかかる。
求人誌に掲載していないから、求人をやっていない、ということではない。
そういった情報を集める努力も、必要だろう。

司法試験は、理不尽な試験である。
これだけ苦しい試験に耐えて、頑張って来れたことは事実である。
同様に、どの職場も理不尽なことはある。
しかし、耐えられないということはないはずだ。
賃金が仮に安くとも、受験時代の生活と比べてどうなのか。
そういったことも、考慮に入れる必要がある。

これまで、受験勉強で情報収集をする時間がなかったかもしれない。
しかし、情報がなければ、正しい判断はできない。
一度、まとまった時間を取り、様々な情報に触れるというのも、一つの選択肢だと思う。

新司法試験について

新試験の合格点は215点。
合格者数は、5773人だった。
旧試験とは異なり、概ね予想通りの結果だった。
以下は、年度別の短答合格者数等の推移である。

年度

合格点

平均点

合格点と
平均点の差

受験者数

合格者数

受験者
合格率

18

210

232.9

22.9

2087

1684

80.6%

19

210

231.7

21.7

4597

3479

75.6%

20

230

250.7

20.7

6238

4654

74.6%

21

215

228.1

13.1

7353

5055

68.7%

22

215

230.8

15.8

8163

5773

70.7%

受験者合格率でみると、昨年度より甘め。
一昨年度と比べると、やや厳しい。
そんな結果だった。
合格点と平均点の差も、それを反映した数字になっている。
また、平均点をみると、問題自体の難易度は、例年と変わらない。
平成20年度だけが、特別に易しい問題だった、ということになる。

論文との関係でいうと、論文の1点は、短答の3.5点である(詳細は以前の記事参照)。
合格点ギリギリの人と、平均点を取った人との論文段階での得点差。
それは、15.8÷3.5≒4.51点ということになる。
また、今年度の最高点は315点である。
最高点を取った人とギリギリの人との得点差は、(315−215)÷3.5≒28.57点である。
短答では、どんなに頑張ってもこの程度しか差が付かない。
従って、とりあえずは最低ラインを超えればよし、と考えておけばよい。
なお、短答の合格者数が増加したから、最終合格者数も増えるという予測は成り立たない。
昨年度も、短答の合格者数は、増加しているからである。
合格者数を決める基準として、これまで事前公表の目安と、修了生7割というものがあった。
しかし、昨年度の記事で述べた通り、いずれも昨年度に破られている。
そうである以上、現段階で最終合格者数を予測するのは、無理がある。
ただ、3000人を達成することはないだろう。
なお、よく言われる閣議決定の「平成22年ころ」とは、厳密には平成22年を指す趣旨ではない。
これは、以前の記事で述べたが、再掲する。

「2010年、3000人」まで反故にし始めた法務省(2)より抜粋)

現在では、この「ころ」の部分はほぼ無視され、「平成22年ころ」とは平成22年を指すと思われている。
おそらくそれは、「平成22年」というキリの悪い数字に「ころ」がついている、と認識されているからだろう。
「私は30歳ころに結婚したい」というと、かなり幅があると理解される。
だが、「私は32歳ころに結婚したい」というと、その幅は狭く理解される。
それと同様の理解をされているように思われる。
しかし、平成22年は西暦に直すと2010年であり、「2010年ころ」といえば、かなり幅をもつ文言として理解できる。
実は、司法制度改革審議会においては、この「平成22年ころ」とは、概ね2010年〜2015年を指すものとされていた。
以下は、この点に関する議事録の抜粋である。

第60回司法制度改革審議会平成13年5月22日議事録より抜粋(下線は筆者)

【水原委員】 3,000人達成の時期につきましては、昨日発言いたしましたので、重複になりますけれども、もう一回お許しをいただきまして述べさせていただきます。
 原案では、2010年には3,000人とすることを目指す、というふうに時期をはっきり示しておりますけれども、昨日も申しましたとおり、3,000人の目標達成時期については、必ずしも委員間に意見の一致があったとは私は思っておりません。しかも、新たな法曹養成制度の整備状況等々を含めて考えますと、そこにはやはりある程度幅を持たせておく必要があるのではないかという意味で、確定的な目標設定ではなくて、2010年から2015年頃までの間には」という表現にしていただいた方がよろしいのではなかろうかというふうに思います。

【吉岡委員】 私も幅を持たせるということは必要だと思いますけれども、ここでは「頃」と入っているんですね。ですから、これはもう既に幅があるということではないでしょうか。

【藤田委員】 やはり、「頃」が付いていても、平成22年と言われると、そこに視線がいっちゃいますから、「平成22年以降できるだけ早い時期に」というような、ある程度の含みを持たせたような表現の方がよろしいのではないか。基本的には水原さんに賛成なんですけれども。

【吉岡委員】 ちょっと、それには反対なんです。幅を持たせるのはいいですけれども、以降というと、それまでやらなくていいということになってしまいますから、2010年には」と言うと、確かに実現の可能性を考えないといけないということになりますが、「頃」の場合は幅がありますから、それをつけておけばいいのではないかと思います。

【藤田委員】 2010年までに3,000 人達成はちょっと無理ではないかという認識が前提にあるものですから。要するに法曹の能力的レベルの低下、倫理的レベルの低下を防ぎ、社会的な需要の動向を見て段階的に増やしていくべきであるということを考えているものですから、無理のないように増やしていかないと混乱が生ずるのではないかという懸念がありますので、そういう言い方をしているわけです。前提においてちょっと吉岡委員とは認識が違うのかもしれません。

【吉岡委員】 前提というよりは、文章の読み方だと思います。

【竹下会長代理】 3,000人の達成の時期を明らかにするべきではないという御意見が、元々あったところですから、今、水原委員がおっしゃったぐらいの幅を持たせるというのはどうでしょうか。
 現在、1,000人ですから、そうすると2010年ぐらいまでと言うと、この新しい制度が発足してすぐに3倍にするという話になる。制度が発足してからというより、今から10年足らずで3倍にするというのは、やはりかなり無理があるのではないでしょうか

【吉岡委員】 その議論は、夏の集中審議のときにさんざんやりましたね。

【井上委員】 確たることは何とも言えないのですけれども、法科大学院の立ち上がり状況として、最初にあるまとまった数が立ち上がるとすれば、そこの段階で飛躍的に数が増えて、後はそれほど大きくは増えないかもしれない。その立ち上がり状況と、そこからどのぐらいのスピードで、例えば4,000人なら4,000人というところまでいくか、そこの見込みの問題だと思うのです。そこが御意見が分かれるところだと思うわけです。
 もう一つは、あくまで「目指す」ということでして、それを目指していろんな関連の制度を整備していきましょうということであるわけですが、目標なんだけれども、独り歩きしないかという御懸念がある。そこのところの感覚が人によって違うのかなと思うのですが、目標だからその辺に設定しておいて努力しましょう。できなかったら、それよりずれても仕方がなく、できるだけ早い時期に達成するように努力しましょうと、そういう姿勢でいくのか、最初から難しいのだったら、むちゃな数を掲げると、逆に拙速になっちゃう。質を考えないで、どんどん増やすということになりかねないので、もう少し後に設定しようというのか。ただ、2010年から2015年の間に」ということは、縮めて言えば、「2015年までに」というのと変わらないと思うのですけれども、姿勢としてどちらでいくのか、そういう問題だと思いますね

【吉岡委員】 2010年から2015年と言うと、それに更に「頃」と付けるのはおかしい

【井上委員】 だから、ぎりぎり言うと、2015年までにはとにかく達成しましょうと言うのに等しいのではないかと思うのです。

【佐藤会長】 やはり、早く達成したいんですけれども。

【吉岡委員】 できるだけ早く達成したい、だけれどもそれは目標だから目指すべきであると言っているわけで、5年とかそんなことをプラスするとかしないとかということは、余りこだわることではないと思いますけれども。

【木委員】 やはり、これは「頃」もあるし「目指す」もあるし、特に日本の法曹人口を増やそうということですから、これは、鳥居先生や井上先生がおられるけれども、法科大学院を設立しようと考えている人たちには、できるだけ早くそういう体制で法曹が生まれるようにという努力をお願いするわけだし、これは全くはしにも棒にも掛からぬ話が書いてあるということでもない。だから、ある種こういうものは、メッセージが社会的に何か動きを誘導していくという面もあるわけですから、私は原案のままでいいと思います。

【竹下会長代理】 おっしゃることはよく分かりますけれども、冒頭、この問題を議論したとき、昨年の春ごろから申し上げているのですが、どうも議論が先走りしているという傾向が否めないように思うのです。ですから、やはりここはちょっと地に足を付けた考え方を入れておいた方が良いのではないかという気がするのです。

【吉岡委員】 これは、含みが二重、三重に入っているんですよね。最初のところで「法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら」と書いてあるんですよ。それで、2010年ではなくて「2010年頃には」となっていて、しかも「目指すべきである」と、3段階になっているんですよ。それ以上緩めるというのは、私には意図が分かりません。

【竹下会長代理】 ですけれども、3倍にするのですよ。実際にできるのでしょうか。

【吉岡委員】 3倍にするのでも、できるとかということではなくて、法曹養成制度の整備の状況を見定めながらということですから、状況がうまくいかなければ当然延びていくわけですよ。それを「頃」というところで言っています。でないと、せっかくあの夏の暑いときに集中審議をして、3,000人合意したのは何だったんだと、私は言いたいです。

【佐藤会長】 それは、水原委員の御意見もその中に入って、「2015年まで」という御趣旨だろうとは思いますけれども。

【吉岡委員】 そんな5年のことでこだわることない。

【中坊委員】 今、我々が司法制度改革を大きく国民にアピールしていくというところにおける3,000人問題の意味を考えると、その時期をある程度特定していくということが必要なんです。確かに竹下さんのおっしゃるように地に付いていないというきらいがないわけではないけれども、同時に、今のところ我々が唯一の牽引車なんです。この審議会が発信することによって議論が初めて前へ動き出しているわけです。だから、そういう我々の置かれている立場全体を考えたときには、やはり今おっしゃるように、我々の審議会は人口問題について積極的に提案して牽引していきますよという姿勢を示しているんだから、それが今吉岡さんのおっしゃるように、余り意味が分からんものになってしまうと、牽引車たるものの役割が薄れてしまう。確かに竹下会長代理のおっしゃる趣旨はよく分かるけれども、しかし同時に、司法制度改革についてこの審議会は一体どういう位置付けにあるのかということを考え合わせたときには、確かにそういうきらいはあるけれども、同時に牽引車としての役割を果たしていくという姿勢が必要なんで、またさっきのように戻りますけれども、なるべく原案通りでいくというのがいいのではないでしょうか。

【鳥居委員】 これは2015年というと、私は80歳ですよ。とてもじゃないですけれども、私が80歳になるまで放って置くのか、という感じはあるね。

法曹養成制度の整備の状況をみて、2010年が無理なら少しずつ延ばして遅くとも2015年。
これが、司法制度改革審議会の趣旨である。

(抜粋終わり)

次に、科目(系)別の傾向をみる。
以下は、科目(系)別の平均点と最低ライン(40%)未満者の受験者に占める割合である。

年度

公法系
平均点

民事系
平均点

刑事系
平均点

公法系
最低ライン
未満割合

民事系
最低ライン
未満割合

刑事系
最低ライン
未満割合

18

58.5

101.4

73.0

1.9%

0.6%

0.1%

19

60.2

103.0

68.5

4.3%

2.1%

0.9%

20

69.7

104.8

76.2

0.7%

1.3%

0.4%

21

63.0

101.7

63.4

2.7%

2.5%

3.9%

22

71.5

96.5

62.8

0.5%

2.4%

4.5%

今年度は公法系が易しく、民事・刑事が難しかった。
公法については、平成20年度よりも高い。
他方、民事・刑事は過去最低の点数である。
民事は、商法の非常に細かい知識のせいである。
刑事は、刑法の論理問題が消え、細かい知識が増えたことが理由だろう。
足切りをみると、刑事系が高い。
これも、刑法の知識問題が増えたことが原因と思われる。
旧試験では、択一の刑法でほとんど知識が問われることはなかった。
そのことが影響している。
これは、旧試験転向者が多いという意味だけではない。
新試験向けの教材が不足しているという意味でもある。
民事系は、商法が難しかった反面、民訴が易しかった。
そのため、全体の足切りはそれほど変化がない。

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