平成22年度新司法試験の結果について(1)

2074人、25.4%

9月9日、平成22年度の新司法試験の結果が公表された(法務省HP)。
合格者数は、2074人。
受験者ベースの合格率は、2074÷8163≒25.4%だった。
合格点は、775点だった。
受験者合格率は、過去最低の数字である。

2000人の基準

今回、なぜ、このような合格者数、合格点になったのか。
昨年度の記事では、満点の5割。
すなわち、1575÷2=787.5点前後が、合格の目安となる得点ではないか。
そのような予測をした。
人数ではなく、あくまで点数で切った。
相対評価ではなく、絶対評価だ、という発想である。
今年度も、775点だから、その前後の点数である、といえなくもない。
しかし、今回の結果をよくみると、どうもそうではない感じがする。

以下は、775点前後の点数での累積受験者数である。

得点

累積受験者数

765

2263

770

2155

775

2074

780

1984

785

1886

新司法試験の合格点は、キリのいい数字で決められてきた。
5点刻みである。
そこで、上記の表も5点刻みで表示している。
そうすると、ちょうど2000人を超える点数で、切っていることがわかる。
このことから、2000人が合格者数の目安なのか、という気がしてくる。

そこで、昨年度についても、同様の目でみてみる。
昨年度の合格点は、785点だった。
その前後の累積受験者数を5点刻みで表にすると、以下のようになる。

得点 累積受験者数
775 2240
780 2140
785 2043
790 1967
795 1884

やはり、2000人をちょうど超える点数が、合格点になっている。
司法試験委員会は、従来は当初の合格者数目安を基準にしていた。
しかし、それが機能しなくなった。
そこで、今度は2000人を目安にするようになったのではないか。
そういう予測ができる。
この予測では、絶対評価ではなく、相対評価ということになる。

ただ、これまで合格者数の目安や、修了生7割(受験者合格率33%)の壁も、あっさり破られている。
この2000人の目安も、不動のものとはいえない。
とはいえ、今後は予備試験組の参入もある。
それに、2000人未満となれば、1500人近く合格した旧試験とほとんど変わらない。
何のための新試験だ、という話になる。
従って、2000人の壁は、それなりに堅いのではないか。
そういう気はする。

深刻な質の低下

もっとも、逆に考えると、2000人より多く採るのは無理だった、ということである。
それはなぜなのか。
この点を、一応考えておく必要がある。
単純に考えて、受験生の出来が悪かったからだろう。
そのことを、数字で確認してみる。

以下は、各年度の短答合格点と、総合合格点の推移である。
(なお、平成21年度以降に短答・論文間の比重が変更されている。
そのため、それより前の年度に関しては、単純に比較できない。
そこで、かっこ書で比重変更後の得点に換算したものを示した。
また、論文の平均点のかっこ書は、最低ライン未満者を含む数字である。)

年度

短答
合格点

総合
合格点

総合合格点と
短答合格点
の差

論文の
平均点

18

210(105)

915(810)

715

404.06

19

210(105)

925(820)

715

393.91

20

230(115)

940(825)

710

378.21
(372.18)

21

215(107.5)

785

677.5

367.10
(361.85)

22

215(107.5)

775

667.5

353.80
(346.10)

短答の合格点だけをみても、あまり受験生のレベルの変化はわからない。
問題の難易度が、異なるからである。
それは、短答も論文も同じではないか。
そう思うかもしれない。
しかし、短答は得点調整がない。
また、考査委員の感覚等に関係なく、正誤だけで得点が決まる。
そのため、難易度の差が、ダイレクトに合格点に反映されてしまう。
実際、各年度の短答合格点を見ても、変化を感じ取るのは難しい。

他方、論文は、得点調整がある。
また、採点は、「優秀」、「良好」、「一応の水準」、「不良」という感覚的なもので決まる(詳細は法務省資料参照)。
そのため、受験生の実力の推移を、ある程度読み取ることができる。

もっとも、最終合格は、総合得点で決まる。
従って、論文単独の合格点は無い。
ただ、総合合格点から短答合格点を差し引くことで、一応論文の合格ラインを仮定できる。
その数字をみると、一貫して下がっていることがわかる。
特に、近年の下落幅は大きい。

より重要な指標は、論文の平均点である。
得点調整後の全科目平均点、各科目平均点、各考査委員の平均点は、満点との比率において、得点調整前(素点段階)の全科目平均点と等しい(司法試験得点調整の検討参照)。
すなわち、論文の平均点は、素点段階での受験生全体の出来を、そのまま反映する数字である。
そして、得点調整は年度間の調整をしないから、年度間で比較が可能である。
これをみると、やはり一貫して下がっている。
もちろん、論文試験も年度ごとに難易度の差がある。
考査委員の構成にも、変化がある。
しかし、それだけでは、この一貫した傾向は説明できない。
やはり、受験生全体の質は、毎年のように下がっている。
少なくとも、考査委員のそのような評価が、上記の傾向に現れているといえる。
この傾向が変わらない限り、2000人を超えて合格者数が増えることは、考えにくい。
劇的な対策を採らない限り、この傾向は変わらないだろう。
そして、現在採られている対策は、主としてローの定員削減やカリキュラムの見直し程度である。
この程度では、質の低下に歯止めがかかるとは思われない。
当面は、2000人を死守するのが精一杯という感じになりそうである。

絶対評価か、相対評価かという点については、どちらでもない。
または、両方という感じだろう。
相対評価で何人と当初決めていても、あまりに出来が悪ければ、一定のライン以下の者は落とさざるを得ない。
絶対評価で何点と当初決めていても、あまりに出来が悪ければ、最低人数を確保できる点数まで下げざるを得ない。
今の司法試験委員会は、そういうあたりで揺れ動いているように感じられる。

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