最新下級審裁判例

名古屋地裁民事第8部決定平成21年09月08日

【事案】

1.本件の基本事件は,当時17歳の青少年であったA子と性交したことについて愛知県青少年保護育成条例違反の罪により逮捕,勾留,公訴提起され(以下,この事件を「本件被疑事件」ないし「本件被告事件」という。),その後,本件被告事件において無罪判決が確定した申立人が,基本事件被告である愛知県所属の警察官が違法な逮捕状請求等をし,基本事件被告である相手方所属の検察官が違法な勾留請求,公訴提起等をしたとして,愛知県及び相手方に対し,国家賠償法1条1項に基づき,連帯して,慰謝料500万円及びこれに対する無罪判決確定の日の翌日である平成19年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2.申立人は,平成18年9月26日付け勾留請求書(以下「本件勾留請求書」という。)において「被疑事実の要旨」として引用されている「司法警察員送致書記載の犯罪事実」が明らかになる司法警察員送致書の当該記載部分(以下「本件文書」という。)は,民事訴訟法(以下「法」という。)220条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」(以下,この部分を「民訴法220条3号後段」といい,これに該当する文書を「法律関係文書」という。)に該当するので,相手方には文書提出義務があると主張して,文書提出命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした。
 これに対し,相手方は,本件文書の所持を認めた上で,本件文書について,法220条3号後段の法律関係文書に該当せず,また,刑事訴訟法47条本文の訴訟に関する書類に該当し,同条ただし書の相当と認められる場合に当たらないとして文書提出義務を争い,証拠調べの必要性もない旨主張している。

3.前提事実

(1) 瀬戸警察署所属の司法警察員は,平成18年9月21日,瀬戸簡易裁判所裁判官に対し,申立人について,逮捕状請求書(以下「本件逮捕状請求書」という。)により逮捕状を請求した。
 瀬戸簡易裁判所裁判官は,同日,申立人についての逮捕状(以下「本件逮捕状」という。)を発付した。本件逮捕状記載の「被疑事実の要旨」は,「別紙逮捕状請求書のとおり」として,本件逮捕状請求書の「被疑事実の要旨」の記載をそのまま利用している。
 瀬戸警察署所属の司法巡査は,平成18年9月25日午前8時57分,本件逮捕状により申立人を逮捕した(以下「本件逮捕」という。)。

(2) 瀬戸警察署所属の司法警察員は,平成18年9月26日午前9時00分,本件被疑事件を申立人の身柄と共に名古屋地方検察庁に送致する手続を行い,名古屋地方検察庁は,同時20分,送致を受けた(以下「本件送致」という。)。
 名古屋地方検察庁所属の検察官事務取扱副検事Y(以下「Y副検事」という。)は,同日,名古屋地方裁判所裁判官に,申立人について勾留の請求(以下「本件勾留請求」という。)を行った。
 本件勾留請求書は,「被疑事実の要旨」について「司法警察員送致書記載の犯罪事実に同じ」と記載して,本件送致に係る送致書(以下「本件送致書」という。)の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)を引用している。本件送致書は,本件勾留請求の際,本件勾留請求書とともに名古屋地方裁判所裁判官に提供された。
 名古屋地方裁判所裁判官は,同日,勾留状(以下「本件勾留状」という。)を作成して,申立人を勾留する旨の決定をし,同日午後4時26分,本件勾留状の執行がされた(以下「本件勾留」という。)。

(3) Y副検事は,名古屋区検察庁の検察官として,平成18年10月5日,名古屋簡易裁判所に対し,申立人について,愛知県青少年保護育成条例違反で起訴状(以下「本件起訴状」という。)を提出して公訴を提起し,略式命令を請求した(以下「本件公訴提起」という。)。
 名古屋簡易裁判所裁判官は,同日,申立人に対し罰金40万円に処する旨の略式命令を発令し,同日,同命令が申立人に送達され,申立人は,同日,40万円を納付して釈放された。
 申立人は,同年10月10日,名古屋簡易裁判所に対し正式裁判を請求し,名古屋簡易裁判所は,平成19年5月23日,申立人の行為が淫行に当たるとはいえないとして,申立人に対し,無罪の判決を言い渡し,同年6月6日,控訴期間経過により同判決は確定した。

【判旨】

1.文書提出義務について

(1) 法律関係文書について

ア.本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)が法律関係文書に該当するかについて,検討する。

イ.まず,本件勾留請求書は,申立人の身体の自由を制約して,申立人にこれを受忍させるという相手方と申立人との間の法律関係を生じさせる文書(本件勾留状)の発付を求めるために,刑事訴訟規則(以下「刑訴規則」という。)147条により,作成を要することとされている文書であるから,相手方と申立人との間の法律関係文書に該当する(最高裁平成19年12月12日第二小法廷決定・民集61巻9号3400頁参照)。
 また,本件勾留請求に当たって,刑訴規則148条1項3号所定の資料として,検察官が裁判官に提供した書類についても,相手方と申立人との間の法律関係文書に該当する(前掲平成19年12月12日第二小法廷決定)。これは,勾留請求をするためには,刑訴規則148条1項3号により「法に定める勾留の理由が存在することを認めるべき資料」を裁判官に提供することが法令上義務付けられているので,本件勾留請求の資料として現実に本件勾留請求書に添付された書類は,本件勾留請求書と一体となって,申立人の身体の自由を制約して,申立人にこれを受忍させるという法律関係を生じさせる文書と解されるからである。

ウ(ア) 本件勾留請求書は,刑訴規則147条1項2号で勾留請求書の必要的記載事項として掲げられた「被疑事実の要旨」について,「司法警察員送致書記載の犯罪事実に同じ」と記載して,本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)を引用している。

(イ) 刑訴規則147条1項が必要的記載事項を定めているのは,勾留が被疑者の身柄を拘束するという重大な処分であることに鑑み,手続の確実性を期するとともに,請求の理由を明確にさせたものであり,必要的記載事項の一つとして同項2号の「被疑事実の要旨」の記載を要するのは,勾留請求に際して,犯罪事実を特定し,他の犯罪事実と識別が可能とし,また,逮捕前置主義との関係で逮捕状と同一の犯罪事実についての勾留請求であることを示すためである。また,同条2項は,同条1項2号の「被疑事実の要旨」の記載について,逮捕状請求書の記載と同一であるときには,前項の規定にかかわらず,その旨を勾留請求書に記載すれば足りるとしているが,これは,逮捕が逮捕状によるときには,勾留請求に当たって,刑訴規則148条1項により逮捕状請求書は必ず裁判官に提供しなければならない資料であることから,裁判官においてその内容を知ることができるため,請求者の便宜を考慮して引用を可能としたものである。

(ウ) 本件勾留請求書の「被疑事実の要旨」は,上記のとおり「司法警察員送致書記載の犯罪事実に同じ」として本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)を引用している。このような取扱いは,上記の逮捕状請求書の引用とは異なり,刑訴規則に定められたものではないが,実務上,勾留請求においては,「犯罪事実」が必ず記載される送致書(犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則2号。以下同じ。)195条)が勾留請求の資料として検察官から裁判官に提供されるため,裁判官においてその内容を知ることができることから,請求者の便宜を考慮して,かかる取扱いが事実上行われているものと考えられる。
 このような取扱いの場合,仮に引用された本件送致書の当該記載部分(本件文書)が勾留請求の資料の一部として裁判官に提供されていなければ,本件勾留請求書は「被疑事実の要旨」の記載がないものであるから,刑訴規則147条1項の要件を欠くことになる。したがって,勾留請求書の必要的記載事項を満たすためには,本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)が裁判官に提供されることが不可欠であり,その提供がなければ適法な勾留請求の要件を満たさない。その意味で,本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)は,刑訴規則148条1項3号所定の資料として現実に本件勾留請求書に添付された書類に比べても,はるかに強い本件勾留請求書との一体性が認められる。

(エ) そうすると,本件勾留請求の資料として現実に本件勾留請求書とともに名古屋地方裁判所裁判官に提供された本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)は,本件勾留請求書と一体となって,申立人の身体の自由を制約して,申立人にこれを受忍させるという法律関係を生じさせる文書に該当することは極めて明白である。

エ.相手方は,本件文書は,本件送致書の一部であり,本件送致書は,司法警察員が被疑事件を検察官に送致したことを手続上明らかにするとともに,事件送致に遺漏が無いようにする目的で作成される文書であり,司法警察員と検察官という捜査機関の内部において,事件送致の手続及び内容を明確にし,事件処理の円滑を図るために,相互の連絡用の文書として作成し,授受されるものであることは明らかであるから,文書の所持者が専ら内部の者の利用に供する目的で作成し,外部の者に開示されることが予定されていない文書(以下「内部文書」という。)であって,法律関係文書に当たらないと主張する。
 しかし,送致書は,刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)246条により,司法警察員から検察官に事件が送致される際に,犯罪捜査規範195条により作成が義務付けられている捜査書類である。司法警察職員は,警察法により設置された警察庁又は都道府県警察に所属する警察官などであるのに対し,検察官は,検察庁法により設置された検察庁に所属している検事などであるから,両者は全く別の組織に属するし,検察官は,司法警察職員が行った逮捕手続の適否や勾留の要件を独立した立場で判断すべきものであるから,制度上も一体のものであってはならないのであって,これらの間で授受される書類が内部文書であるなどという相手方の主張は到底採用できないものである。
 しかも,送致書が,勾留請求等に当たって検察官から裁判官に提出されていることは顕著な事実であり,検察官のみならず,勾留や保釈の裁判に際して記録を検討する裁判官も参照することのある,刑事手続が迅速,適正に行われることに資するための文書であって,捜査機関の枠を超えて裁判機関に提供されるものであるから,文書の所持者が専ら内部のものの利用に供する目的で作成し,外部の者に開示されることが予定されていない文書といえないことは明らかである。ましてや,本件文書については,上記ウ(ウ)に説示したとおり,勾留請求書で送致書の記載を引用する取扱いが,本件送致書の「犯罪事実」の記載部分(本件文書)を検察官が裁判官に提供して裁判官においてその内容を知ることができることを前提として許容されているのであり,本件文書は実際に名古屋地方裁判所裁判官の利用に供されたものであるから,相手方の内部文書である旨の主張は相手方自体が関与している客観的事実に反するものであり,相手方の主張は全く理由がない。

(2) 刑訴法47条について

ア.刑訴法47条は,その本文において,「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない」と定め,そのただし書において,「公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合は,この限りでない」と定めているところ,本件被疑事件については公訴提起がなされ既に無罪判決が確定しているが,本件文書は,公判期日に提出されず,公判において公開されなかった書類であるから,同条により原則として公開が禁止される「訴訟に関する書類」に当たる。

イ.同条ただし書の規定によって「訴訟に関する書類」を公にすることを相当と認めることができるか否かの判断は,当該「訴訟に関する書類」が原則として公開禁止とされていることを前提として,これを公にする目的,必要性の有無,程度,公にすることによる被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーの侵害,捜査や公判に及ぼす不当な影響等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり,当該「訴訟に関する書類」を保管する者の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。
 そして,民事訴訟の当事者が,民訴法220条3号後段の規定に基づき,上記「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても,当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重されるべきであるが,当該文書が法律関係文書に該当する場合であって,その保管者が提出を拒否したことが,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであると認められるときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解される(最高裁平成16年5月25日第三小法廷決定・民集58巻5号1135頁最高裁平成17年7月22日第二小法廷決定・民集59巻6号1837頁,前掲平成19年12月12日第二小法廷決定参照)。

ウ.そこで,本件文書の提出を拒否した相手方の判断が,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものかについて検討する。

(ア) 相手方は,基本事件において,申立人と相手方との間で,本件勾留請求の被疑事実の内容が争点となったことはなく,本件逮捕状請求書,本件逮捕状,本件勾留請求書,本件勾留状のそれぞれに記載された「被疑事実の要旨」及び本件起訴状記載の「公訴事実」が同一であることで一致しているので,既に提出された本件逮捕状請求書,本件逮捕状,本件勾留状,本件起訴状によってその内容は明らかになっているから,本件勾留請求書に「被疑事実の要旨」として記載された本件送致書の犯罪事実記載部分(本件文書)について取調べの必要性が全くないなどと主張する。
 基本事件において,申立人は,本件勾留請求時点において,申立人がA子を単に自己の性的欲望を満足させる対象として扱っているとしか認められないような性交をしたことを認めるに足りる証拠は何もなかったから,犯罪の嫌疑について相当の理由があったとはいえず,また,申立人に罪証隠滅や逃亡を疑うに足りる相当の理由もなかったなどと主張して,本件勾留請求は違法であると主張している。
 検察官の勾留請求が違法であるか否かについては,勾留請求当時において,犯罪の嫌疑について相当の理由があり,かつ,勾留の必要性が認められるかによって決せられるものである(最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁)から,検察官がいかなる犯罪の嫌疑について相当の理由があるとしたかを具体的な証拠に基づき明確に確定させておくべきことは,適正な審理を行うための最も基本的な要請であり,判決をする前提として欠くべからざるものである。
 また,一件記録によると,本件逮捕状請求書の「被疑事実の要旨」と本件勾留状の「被疑事実の要旨」の記載は必ずしも一致しておらず(「頃」が「ころ」に改められ,「いん行した」が「いん行をした」に改められている。),本件勾留状の「被疑事実の要旨」と本件起訴状の「公訴事実」の記載内容も「午後8時30分」が削除され,「自己の性欲を満足させるだけの目的で同女を相手に性交し」が「単に自己の性的欲望を満たすだけの目的で同女と性交し」に改められているなど一致していないこと,名古屋地方裁判所裁判官は,本件勾留状の「被疑事実の要旨」として,本件勾留請求書記載の「被疑事実の要旨」と全く同一の文言を記載するとは限らないものであることから,未だ明らかになっていない本件勾留請求書記載の「被疑事実の要旨」の記載が本件文書によって明らかにされる必要性は高く,他の書証の取調べ等によって代替することはできない。
 そうすると,Y副検事が相当の理由があると判断した嫌疑である本件勾留請求書記載の「被疑事実の要旨」を明らかにする本件文書の取調べは,基本事件において本件勾留請求の違法性を判断する上で,その前提となる事実を確定するために必要不可欠なものである。
 本件文書の取調べの必要性については,上記のとおり,違法性判断の前提として明確に確定しておかなければならない記載を特定するための最も基本的な文書の取調べであり,申立人は,これを確定させるために必要があることから,本件申立てをしているのであり,基本事件において,申立人が,これまで上記各文書の「被疑事実の要旨」等の記載内容を明示的に別して主張していなかったからといって,取調べの必要性が否定されるものではなく,相手方の上記主張は理由がない。

(イ) また,相手方も本件文書の提出による弊害については,抽象的にすら主張をしていないが,本件文書は,本件勾留請求の資料として現実に本件勾留請求書とともに名古屋地方裁判所裁判官に提供された本件送致書の「犯罪事実」の記載部分であるところ,本件勾留請求書自体や本件勾留状は既に提出されていること,本件被疑事実については公訴提起され無罪判決が確定していることなどからすると,本件文書の記載内容について未だ公表されていない捜査の秘密にかかわる事項が記載されているとは認められないし,本件文書は,A子の氏名等個人を特定できる記載を除くものであるから,基本事件において本件文書が開示されることによって,A子の名誉,プライバシーが侵害されることによる弊害が発生するおそれがあると認めることもできない。

(ウ) よって,基本事件の審理の前提となる事実を確定させるために必要な基本的書証に該当する本件文書について,前述のように内部文書であるなどと全く理由のない主張をしてまで頑なに提出を拒否する相手方の判断は,裁量権の範囲を逸脱し,かつこれを濫用するものであることは明らかである。

2.証拠調べの必要性について

 相手方は,上記1(2)ウ(ア)と同様の主張をして,本件文書について証拠調べの必要性がないと主張するが,本件文書が基本事件において本件勾留請求の違法性を判断するために必要不可欠な基本的書証であることは,上記1(2)ウ(ア)のとおりであり,相手方の主張は理由がない。

3.結論

 よって,本件文書は,法律関係文書として相手方が提出義務を負うものであり,本件文書について,提出を拒否した相手方の判断は,裁量権の範囲を逸脱し,かつこれを濫用するものであり,本件申立ては,理由があるからこれを認容する。

 

大阪高裁第9民事部判決平成21年09月18日

【論点】

 地方公共団体の機関として、地方自治法に規定されていない会議等(以下「法定外会議」という。)を設けることができるか。

(参照条文)地方自治法100条12項

 議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。

【判旨】

 憲法は,地方公共団体の組織及び運営に関する事項は,地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定めるとし(92条),地方公共団体には,法律の定めるところにより,その議事機関として議会を設置すると定める(93条1項)。地方自治法は,憲法のこの規定を受けて,その第二編第六章に,議会についての詳細を定めるとともに,平成20年法律第69号による改正(以下「本件改正」という)前には,普通地方公共団体は,常任委員会,議会運営委員会及び特別委員会の各委員会を設けることができるとし,かつ,各委員会の委員の構成,選任,委員会の所管事項,その審査・調査手続等を定め,委員会に関し必要な事項を条例に委任している(109条ないし111条)。憲法は,地方公共団体の組織及び運営に関する事項については法定主義をとり,本件改正前の地方自治法は委員会としては上記3種類の委員会のみを認めるに過ぎないから,これらの委員会に代わるような議案の審査及び調査を行う委員会を法律の根拠なく設けることはできないというべきである。
 ところで,普通地方公共団体の議会は,憲法がその設置を義務付け,住民から直接選出された議員によって構成される議決機関であって,意思決定機関として広範な事項についての議決権を有する(地方自治法96条)ほか,普通地方公共団体の事務処理を適正ならしめるため,その事務の執行状況を監視する(同法98条)など,広範な権能を有している。そして,時代のすうせいとともに,普通地方公共団体の扱う事務はより複雑かつ多様なものになり,地方分権の重要性が強調される近時の状況においては,議会に求められる役割も増大し,その内容は一層複雑かつ多様なものになっている。また,近時の議会の運営については,会派の活動を無視し得ず,その意見集約的機能を活用したり,そのために会派間の連絡調整を行うことは不可欠である。
 議会が議案を審査し,普通地方公共団体の事務を監視するなどの機能を十分に果たすためには,議会が必要な情報を収集し,事前に自主的な協議又は調整を行う必要性はより大きなものとなっている。そうすると,普通地方公共団体の議会が,議案の実質的な審査や議会の適正かつ効率的な運営等のため,準備的かつ調整的な活動を行う場として,法定外会議を設けることには合理的な必要性が認められ,地方自治をめぐる近時の上記状況にかんがみると,これが地方自治の本旨に反するものでも,憲法や地方自治法の趣旨に反するものでもないというべきである。本件改正は,このような法定外会議を設ける合理的な必要性があることを前提に,これを会議規則の定めるところにより設置することを明らかにしたものというべきである(地方自治法100条12項)。
 したがって,普通地方公共団体の議会が,議案の審査又は議会の運営等に関し,協議又は調整を行うための場として法定外会議を設けることができることは,本件改正前であっても同様と解すべきであり,本件法定外会議は,いずれもその設置目的及び具体的協議内容にかんがみ,議案の審査又は議会の運営等に関して協議又は調整を行うとの合理的な必要性を認めることができ,法定会議による議案の審査や調査の前段階の準備や調整等を目的として,これに代わるものではないから,いずれも設置が許容される法定外会議ということができる。

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