政府公表資料等情報

参院法務委員会平成22年06月01日

※司法試験関連のみ抜粋

○仁比聡平君 国民の人権擁護と権利実現を担う法曹の養成の問題について少しお尋ねをしたいと思います。
 司法修習生への給費制度は、資力に乏しくとも法曹資格取得の道を開いて、高度の専門性を持つ多様な法曹を養成して国民の権利実現に貢献をしてきたわけでございます。
 我が党は、平成十六年に、この給費制を貸与制に変えるというその法案には断固として反対を申し上げました。この十一月に、今年十一月に貸与制の導入が予定をされているわけですが、現状でも、例えば日弁連の調査によりますと、修習生の五三%に上る多数の方々が、平均で三百十八万円、最高では千二百万円という多額の負債を抱えて、加えて、弁護士登録後も収入の保障がない、あるいは収入が決まらないなどの理由で弁護士登録をしない方々も増えているということです。
 こうした状況は、平成十六年の法改正の当時には全く想定をされていなかったのではないか。平成十六年の当時に、この給費制を貸与制にという議論を法務省でも、あるいはこの国会でもしているわけですけれども、そのときにこんな事態を想定をしていましたかと、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(千葉景子君) 私も改めて司法制度改革、それからとりわけて今御指摘のある給費制から貸与制への転換と、こういうときの議論等を振り返ってみるわけでございますけれども、私は全く予測をされなかったということはないだろうというふうに思います。
 その当時も、逆に言えば資力の十分でない人でも法曹になる道を閉ざしてはならないということで、逆に奨学金であるとか、あるいは教育ローンとか、あるいは授業料免除制度等の支援制度を十分に整備して活用しなければいけないというふうにむしろ盛り込まれているわけですので、決して予測がされていなかったというわけではないかというふうに思います。ただ、その額がかなり大きくなっているという現状、これは私もなかなか本当に厳しいところがあるなというふうに思います。
 それから、弁護士登録をしない方が増えているという実情、就職先がなかなかないということも、これは多少予測はしていなかったことではないかなというふうに思うんですね。というのは、そのときにはやはり司法の法曹需要、これがこれから社会の中で大変大きく伸びていくんだと、こういう考え方がございました。これが現実化、なかなか顕在化しているというふうには言えないのではないかと。ただ、民間とか公官庁などで確かに少しずつ増加はしておりますけれども、その増加というのは非常に少ない、こういう現状があると、こういうことで、こういうところをより一層増やしていく。
 そして、基本的な考え方としては、法曹が社会のいろんな部分で社会を担い、そして公正なリーガルマインドを持ったそういう者が社会で活躍をすると、こういうことが大きな理念だったので、そこがなかなか進んでいないという現状はあると思いますし、そこまで進まないかなというのはちょっと予測に反している部分もあるかというふうに思います。
 こういう実情の下でこの給費制、そして貸与制の問題も考えていかなければならないというふうに思います。

○仁比聡平君 支援制度の議論が改正時にあったというのはそれはそのとおりだと思うんですけれども、ただ、ロースクールの学費やその間の生活費などが大変な負担になって、志を貫いて法曹資格を取得をしても、実際に現今の大変深刻な就職難とまで言われる事態の下でその借財を返すことすらままならないと。やっぱりこの法曹志望者の皆さんの現状をしっかりとリアルに見た見直しが私は必要だと思うんです。
 衆参の当時の附帯決議においては、統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることのないよう、また経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うことと明記をされているわけです。
 まさにこの関係機関との協議を真摯に行うべきときなのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(千葉景子君) 今、御承知のとおり、この法曹養成については、給費制、貸与制という、これに特化をするという、そういうことではございませんけれども、法曹養成に対する検証作業をさせていただいているという実情でございます。法務省と文科省、それぞれ副大臣をキャップにいたしまして検証作業を進めていると。もうできるだけ速やかにその検証の結果、問題点、こういうものを整理をさせていただいて、そして、これをさらに、大きないろんな多角的な皆さんの意見をいただきつつ方向性を定めると、こういう取組につなげていかなければいけないと考えているところでございます。
 そういう中で、法曹の人口の在り方あるいは法科大学院の在り方等も含めて、今後そこの中で、じゃ法曹人口との関係で給費制あるいは貸与制、どう位置付けるべきかと、こういうことも併せて検討をしていくものではないだろうかというふうに私は認識をいたしております。

○仁比聡平君 もう一つ数字を伺いますけれども、こうした下で、近年、法曹志願者が減少していると言われているわけです。平成二十二年の大学入試センター法科大学院適性試験の志願者数は何人でしょうか。

○国務大臣(千葉景子君) この法科大学院の適性試験ですね、志願者数、これ、大学入試センターと日弁連法務研究財団と両方でやっておりますが、大学入試センターの志願者数は八千六百五十人というふうに、二十二年度ですね、承知をしております。また、日弁連の方では七千八百十九人という数字でございます。

○仁比聡平君 その八千六百五十人という数字は、平成十五年の三万九千三百五十人と比べますとわずか二二%、約五分の一に急減しているわけです。昨年との対比でいいましても一五・九%減っているわけですね。この理由についてはもちろんよく検証も必要かもしれませんけれども、経済的な理由で法曹への道を断念する人が増えてしまうということになれば、これは我が国の司法の質と社会正義の実現が損なわれてしまうということになります。
 私は給費制を維持すべきだと思います。先ほど大臣、検証というお話があったんですけれども、今年の十一月に貸与制へ移行するという、このことが法文に規定をされているわけで、これ、私ども国会も、速やかに協議を深めて、この十一月条項を削除するということを各党よく議論をするという、そうした場を是非つくっていくべきではないかと、これは御提案を皆さんにしておきたいと思うんですけれども、少なくとも大臣、修習終了者の抱えている借財だとか、あるいは就職状況だとか、こうした法曹養成の現場をめぐる現状を検証して、その結論がしっかりと見通せるまではこの貸与制の実施は凍結する、現行の給費制を維持すると、そういう方向で検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(千葉景子君) 今、実情については、大変深刻というか、大変負担が大きい実情があるということは私も承知をいたしております。
 ただ、これは法律として成立をしていただいて、ようやく、ようやくというか、施行するという段階に至っているわけでございますので、今の施行前に凍結をするということを決めるということは適切ではないというふうに思います。
 ただ、今委員も御提起をされておりましたように、これは国会の場でも大いに議論をいただいて、確かにこれ、法曹人口の拡大ということと相まってこの貸与制という議論も出てまいりました。そして、国民の確かに権利義務を守っていく、そういう大変重い仕事に就いていただくということでございますけれども、これ反面、国民の負担の下で行われると、給費制ということになりますと、国民のそれは税金負担をお願いをするという側面もあるわけですので、十分に、この辺は国民的にそしてまた納得をいただいて、そして議論を進めていく必要があるのではないかというふうに思います。

○仁比聡平君 そもそも法曹資格は、法曹資格者の利益だとかビジネスの手段ではなくて、権利実現の担い手という高い公共性、倫理、使命を持つものだと思います。
 今の大臣の御答弁は、言わば国会の側にボールを投げておられるようにも私受け止めました。法律で決めてあることですから、国会でしっかりと議論をして、この給費制の維持のために是非力を尽くして、国民のための司法が本当に実現をしていくようなそういう時代を御一緒につくっていきたいということを呼びかけまして、質問を終わります。

 

衆院法務委員会平成22年10月22日

※司法試験関連のみ抜粋

○階猛委員 法曹養成制度について述べさせていただきたいと思います。
 お手元の資料五、六に関してですが、まず資料の五をごらんになってください。旧司法試験の出願者数及び法科大学院適性試験志願者数の推移ということでございます。
 実は、私は銀行員時代に司法試験に受かったんですが、平成十三年のときに受けておりまして、このグラフでいいますと、三万八千九百三十人受けた年であります。そこで受かった人数が、たしか千人ほどだったと思います。三万八千九百三十人受けて千人受かるということは、三%弱というような合格率だったと思います。その後、五万人まで旧司法試験はふえ、また、それとともに法科大学院制度が始まりまして、当初は、ここに何か下の方に二つグラフがありますが、これは大学入試センターと日弁連法務研究財団という二つのところで法科大学院適性試験を実施しているということで、大体両方同じ人が受けるということなので、これは単純に足し算するわけにもいかないということで、上の方の三万九千三百五十という方が大体みんなが受ける試験なので、この数字だけを注目していただければと思っております。
 この三万九千三百五十という数字も右肩下がり、そして、旧司法試験はもう廃止になることが決まっていますから、当然のことながら右肩下がりでずっと推移してきておりまして、直近で見ますと、もう旧司法試験はことしで終わりとなっておりますけれども、残りの方たち、新しい司法試験の前提となる法科大学院適性試験を受ける方が八千人程度しかいないという状況でございます。
 このようにどんどんどんどん減ってきている背景には、私も総務省にいるときにいろいろお話を伺っていますと、四重苦という問題があるというふうに聞きました。四重苦というのは何かといいますと、弁護士になるのに金がかかる、なかなか受からない、しかも、受かってから法曹になるまで修習などで時間がかかる、なっても仕事がないといったことで、志願者が減少傾向にあるんだというふうに聞きました。このことについて大臣の御認識をお聞きします。では、副大臣で結構でございます。

○小川敏夫副大臣 お答えします。
 この法曹養成制度でございますが、司法制度改革に伴って試験制度も変えたわけでございますが、やはり、初めにロースクール制度を導入したときの構想とちょっと違った現象があらわれております。
 合格者が少ない、あるいは合格率が思ったよりも少ない、あるいは、合格者三千人に法曹をふやすということも、司法試験合格者が全員法曹になるというよりも、さらに幅広い範囲で地方自治体や企業といった仕事を担当する、実際の職務を行う分野も広げて、さまざまな面で法曹に活躍していただきたいという理念もあったわけですが、これがなかなかいかなくて、司法試験合格者イコール法曹、法曹というのは、法律分野の職にしかとどまらない、いわゆる弁護士しか希望しないというような状況もありまして、当初法曹養成制度で描いた理念とはちょっと違う現象になってしまっているなということで、こうして今委員が指摘された四重苦という問題もまことに指摘のとおりというところもございますので、この法曹養成制度、しっかりと改めて検討して、よりよい形に持っていきたいというふうに思っております。

○階委員 質疑時間が終わりましたので、これで質問を終わりにしますけれども、最後の資料というのは、閣議決定された、合格者年間三千人の目標、あるいは合格率七、八割という目標、そして他学部とか社会人入学者三割以上という目標、これがどの程度達成できているかというものを数字を示したものです。これも総務省で調べたものでございますけれども、こういったところを見ましても、なかなか閣議決定で決めたことを達成するのは難しい状況です。
 抜本的な法曹養成制度の見直しが必要であるということを最後に申し上げて、私からの質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

○柴山昌彦委員 司法修習生の給費制の問題についてお伺いしたいと思います。
 司法修習生に国が給与を支給するという現行の給費制を生活資金貸与制に切りかえるという裁判所法一部改正法の施行時期について、大臣はどのように御認識でしょうか。

○柳田稔国務大臣 私としては、現段階で貸与制の実施を見直すことは考えておりません。
 ただ、国会の中でいろいろ議論が調いまして決定をされることになれば、それに従いたいと思います。

○柴山委員 副大臣、同じ認識でよろしいでしょうか。

○小川副大臣 同じ認識でございます。

○柴山委員 政務官、同じ認識でよろしいでしょうか。

○黒岩宇洋大臣政務官 大臣、副大臣と同じ認識でございます。

○柴山委員 自民党の中では、貸与制にすると裕福な世帯の方しか法曹になれないという懸念が出る一方、貧しい修習生には貸与金の返済を免除すればいいじゃないか、一律の税による給費制の維持というものには国民の理解は得られないという意見も出ているところであります。
 そこで、財務省に伺います。財務省のこの件に関する予算措置は、どのような理由で、どういう金額になっているんでしょうか。

○吉田泉大臣政務官 予算の方は、法律を前提に、つまり貸与制への移行を前提に組まれております。
 裁判所の二十二年度予算を申し上げますと、新しく始まります修習資金貸与金として二十七億円、そして従来からの給費制にかかわる分として司法修習生手当六十九億円、これは職員基本給、期末・勤勉手当等が含まれております。さらには、その方々の国家公務員共済組合負担金として七億円、これが二十二年度予算でございます。
 また、来年度、二十三年度の予算の概算要求においては、貸与金として八十九億円、手当として二億円、共済組合の負担金として一千八百万円、こういう要求が裁判所から出ております。これを前提に現在予算編成の作業を行っているところでございます。

○柴山委員 もう既に貸与制を前提とした予算を組んでいる、そして、貸与制を前提とした予算要求が来年度の分については出ているという御答弁だったかと思います。
 今、私が御答弁をすべての政務の担当の方にお伺いしたんですけれども、全員が民主党の議員さんでいらっしゃいます。
 きのうの読売新聞には、民主党は既に九月十三日の法務部門会議で給費制維持の方針を決めていながら、実は、党の上層部の了解まではとれておらず、取りまとめにはなお時間がかかるという見方が示されていたということが報道されていますけれども、給費制維持の場合にはどういう措置をとるかということを、例えば財務担当者は民主党の法務部門と打ち合わせをされたんですか、吉田さん、いかがですか。

○吉田大臣政務官 私の知る限りでは、民主党の法務部門会議から財務省に対して特別なお話は来ていないと承知しております。

○柴山委員 この問題は、自民党だけが何かもめているというような報道がちょっと散見されるんですけれども、決してそういう実態ではないということを今の質疑を通じて主張させていただきまして、時間がオーバーいたしましたので、私の質問時間を終わらせていただきます。

 

参院法務委員会平成22年10月21日

※司法試験関連のみ抜粋

○前川清成君 今朝の新聞でも若干記事が出ておりましたけれども、司法修習生の貸与制の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 二〇〇四年に法律が改正されまして、それまで司法修習生に給料が支払われておりました。私も今からおよそ二十三年前に月額十五万円の給料をいただいて、本当にあの給料は今までいただいたお金の中で一番うれしかったと、そう思っています。
 しかし、法律が改正されて、この秋に司法試験に合格しこの秋に修習生に採用される皆さん方からは生活費が貸与される、そういう制度に変わりました。五年間の施行期間を経て、この秋に施行される予定でございます。ところが、弁護士会を中心にして、貸与制が施行されてしまったならば金持ちの子供しか弁護士になれなくなってしまうというような批判が起こりました。
 そこでまず大臣に、基本的な発想として、貸与制云々どうこうの技術的なことはお伺いいたしませんが、基本的な思想として、金持ちの子供しか弁護士になれない、そんな社会についてはどのように感じておられるのか、思っておられるのか、お伺いさせていただきたいと思います。

○国務大臣(柳田稔君) 金持ちの子供しか弁護士になれない社会、どう考えてもそれはおかしいですよね。努力した人もなれるというふうになるべきだろうと。そうなるようにいろいろ考えて当時国会でお決めになったんではないかと私は思っていますけれども、まあこれも国会でお決めになることでありますが、国会でお決めになれば私としてはそれに従うと。だれも反対意見述べているわけじゃなくて、国会でお決めになれば従うという方針でございます。

○前川清成君 今大臣がおっしゃったとおり、普通の家庭に生まれた子供であっても、さらには経済的に厳しい家庭に生まれた子供であっても、努力をすれば、頑張ったら弁護士になれると、そんな社会の基盤を守ること、これは政治の大切な役割ではないかと私は思っています。何も弁護士だけを切り取って議論をするつもりもありません。医師になりたい、エンジニアになりたい、教員になりたい、あるいはプロ野球選手になりたい、この国に育つすべての子供たちがその意思と能力に応じた教育を受ける機会が保障されること、そんな社会をつくっていくこと、これは私たち民主党政権の大きな目標の一つでありますし、親の財布の重さで子供たちの未来に差があってはならない、この当たり前の正義を守っていくことも大切なことだと思っています。
 以上の基本的なスタンスを前提にお伺いしたいんですが、貸与制が施行されますと、基本額として毎月二十三万円が貸与されます。無利息で司法修習後五年間据え置かれて、十年間で分割返済することになります。すると毎月二万三千円ずつの返済になるんですが、任官五年後の裁判官、検察官にとってこの負担は重いのか、最高裁にお伺いをいたします。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) お答えいたします。
 裁判官ということで、私どもの所管ということで、裁判官についてお答えしたいと思いますが、任官五年あるいは六年といったキャリアを要する判事補の年収は七百万円前後ということでございまして、貸与金について、今委員のお話にありましたようなこういう貸与制のスキームの下で、委員御指摘の二万三千円という額を返済することが重い負担になるということはないと私どもは認識しております。

○前川清成君 私、今の大谷さんのお答えはそれで結構なんですが、ただ、私は裁判所なんで裁判官についてお答えしますという言い方には気に入りません。なぜならば、この司法修習制度を運用していくのは日弁連でも法務省でなくて、裁判所なんですから、検察官の給与水準についても、あるいは弁護士の所得についても、最高裁は当然検証した上で、毎月二万三千円だったら大丈夫ということでこの法案が提出され、施行されるんじゃないかと思っています。
 大谷さん、もう一度。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) お尋ねでございますので、それではもう少し御説明したいと思いますが、検察官につきましては、これは法務省の方からそういう重い負担になるということはない、そういう話は聞いておりません。
 それから、弁護士でございますが、弁護士につきましては、弁護士白書の二〇〇九年版というのが公刊されておりますが、これによりますと、弁護士経験五年以上十年未満、こういう人たち、弁護士のうち七五・四%の方が五百万円以上の所得を得ているというふうにこれが報告されておりまして、こういうことからしますと、基本的に返還が過大な負担になるということは言えないのではないかと、このように考えております。

○前川清成君 しかし、神ならぬ身ですから、病気になることもあれば、その他の事情で働きたくても働くことができない場合もあります。そんな場合は最高裁として苛斂誅求に及ぶのか、大谷さんにお伺いいたします。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 現在の法律の下では、裁判所法におきましてこの返還の期限の猶予、それから返還免除という規定がございます。これについてちょっと御説明をするということでよろしいでしょうか。
 まず、猶予の点ですけれども、これは法律の中で災害や傷害ということが例示されております。したがって、災害、傷害と、失礼しました、傷病といったもので返還できないというときが問題になる場合には、それに当たるかどうかを客観的な資料で見ていくということになります。
 さらに、その猶予につきましては、その他やむを得ない事由ということも猶予の事由に挙げてあるわけですが、これは法律の条文の形式から見ましても、災害、傷病に準ずるような客観的な事情によって収入を得ることができなくなった場合を想定しているものと解されるわけであります。
 したがいまして、この点は法務省も同じように解しているということでございますが、具体的に言いますと、例えば育児休暇、休業、あるいは介護と、こういった理由によって一定期間収入を得ることができないといった場合がこれに当たるのではないかと現時点では考えております。
 あと、免除はよろしいですか。

○前川清成君 分かりました。
 それで、裁判官や検察官、これは毎月、事件があってもなくても決まった金額の給料を受けることができますが、弁護士はそうではありません。売上げが落ちてしまった、生活が苦しい、特に合格者がどんどん増えて若い弁護士の皆さん方の生活が成り立たないというような声も上がっています。
 売上げが落ちて厳しい、そんなケースでもやっぱり有無を言わさず取立てに及ぶんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) これは今の時点でまだ発生していることではございませんけれども、一般論として申し上げれば、先ほど申したとおり、やむを得ない事情ということについては先ほどのような解釈が一般的だろうと思います。
 そういうことを前提としますと、弾力的にこの条項を解釈して、そして返済期限を猶予するということを広く解していくということは、この現行法の枠の中では一般論としては非常に難しいのではないかと思います。

○前川清成君 今のはちょっと意外なお答えでした。私はもっと、将来ある法曹、公共的な役割を担う法曹が一生懸命、例えば無罪の事件とか公害の事件とかあるいは消費者問題とか、これ取り組んだらお金はもうからない。公共的なことを世の中のために一生懸命やってお金がもうからなかった。その結果、裁判所から借金を取立てされる。これはいかがなのかなと。
 本当に手元にお金があるのに横着で払っていないというようなケース、それこそ税金の無駄遣いになるから厳しく取り立てろというのは分かりますが、公務員と弁護士とはそもそも収入の体系が違う、売上げがすなわち可処分所得ではないというようなことも理解した上でこれから運用されるのかどうか。
 今のような御答弁があると、与野党共にやっぱりこの貸与制って問題あるのかな、不安な気持ちを私は抑えることができないんですが、大谷さん、そうなんですか。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 弁護士が十分な一年という単位の中で収入が得られない場合があるというのは御指摘のとおりだろうと思いますが、今委員からもお話ありましたように、その理由は様々なものがあるのだろうと思います。
 その公益的な理由というような場合にその猶予ということを弾力的に解していいかと、こういう点になりますと、これはどうも現行法の枠組みを超えた立法政策的な配慮からそういうものを認めていくかという問題になるのではないか、そういう意味では、立法によってそういった救済をすることの是非を御議論いただきたいと私どもとしては考えております。

○前川清成君 私は、「その他やむを得ない理由」というふうに書かれてあって、「猶予することができる。」と、こういうふうに法律の条文があるわけですから、最高裁が責任を国会に押し付けることなく、最高裁の御判断で、世の中のために一生懸命頑張っていると、だから余りもうからない、そんな弁護士に苛斂誅求はしませんとここではっきりおっしゃっていただけるものだとあらかじめ信じていました。
 次に、じゃ、神ならぬ身ですから、死んでしまいましたと、あるいは交通事故で重篤な後遺症が残りましたと。この場合については、裁判所法六十七条の二、四項、「全部又は一部の返還を免除することができる。」と、こう書いてあるわけですけれども、この「免除することができる。」という文言も二項と同じように解釈しておられるのか。つまりは、死亡若しくは精神若しくは身体の障害、これに同列の事由が生じない限りは免除することはできないというふうにこれから運用しようとされているのか、最高裁にお尋ねをいたします。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) あくまでも将来事例が発生したときにこの問題が顕在化することになるということで、一般論としてこの段階ではお許しいただきたいわけですが、条文を比較しますと、免除の場合には限定的な事由の列挙になっております。したがいまして、ここにあるような事情が客観的に発生したと、例えば医師の診断書等によって認められる場合に免除されると、こういうことが運用だろうと思っております。

○前川清成君 裁判所というのは、あるいは法廷というのは、ある種闘いの場所でして、それは相手方代理人との闘いでもありますけれども、裁判所との闘いでもあります。
 例えばですが、私が弁護士のころに、消滅時効に掛かった債権をサラ金から二束三文で買い取って、その債権に基づいて取立訴訟を起こすという悪徳サービサーの取立て事件の被告代理人を引き受けたことがあります。当然のことですが、消滅時効を援用しますと、なりたての裁判官から和解を勧告されます。裁判官室で、先生、これ、消滅時効を援用されたら、元金は消えるけれども遅延損害金が残りますがどうしますかというようなあほなことを言われてしまいました。さらには、出会い頭の交通事故で差額分だけ和解しようとしたら、民法五百九条を御存じですかと、そんなふうに言われてしまいました。そんなときに、明らかに裁判官が間違っているときにでも御無理ごもっともというふうに言うてると、依頼者の権利を守ることはできないわけです。
 ただ、裁判所に対して司法修習生のときに借りた借金があると、そういう負い目があると弁護士や検察官は法廷で言いたいことが言えないんじゃないかと。とりわけ私のような気の小さい人間はそうなんですが、その点の精神的な負担等々をどのように考えて、そして、そういうふうな精神的な負い目が生じないように最高裁としてはどうなさろうとしているのか、最高裁にお伺いいたします。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) この貸与制についての実施の責任は裁判所が負っておりますが、もとよりこれは国の税金として貸与するということでありますので、何か裁判所に対しての負い目があるとかないとかいうことを弁護士の方が思っていただく必要は毛頭ないのだろうと思います。
 あとは、具体的な事項について、特に免除という点につきましては、二つの制度、返済の猶予と免除というのを比較すると、それを弾力的に運用するということが難しいのではないかということを今の時点で申し上げたということであります。

○前川清成君 この点、通告をしていないので誠に恐縮なんですけれども、私は、貸与制に関して延長論が出ています、しかし、最高裁からこのようなしゃくし定規な答弁があると思っていませんでした。貸与制が施行されたとしても、検察官や裁判官やあるいは弁護士の収入実態から見て毎月二万三千円は返せますよと、だから、あるいは病気になったら、けがをしたら心配しなくてもちゃんと猶予規定なり免除規定を使いますよと、どうぞ心配しないでくださいねと、こういうふうな親切な御答弁があるのかなと思っていたんですが、今のような御答弁を聞くと、昔、司法修習生として給料をもらっていた一員としてはこの貸与制の施行に関して一抹の不安を抱かざるを得ないんですが、済みません、かつて司法修習生として給料をもらっておられた小川副大臣、通告させていただいていないんですが、かのような次第でございますので、ちょっとお考えをお聞かせいただいてよろしいでしょうか。

○副大臣(小川敏夫君) 確かに、修習生の時代に給与をいただくということで生活を支えていただいて修習に専念できるということは、非常に修習生から見てもいい制度でありましたし、また、一方で、法曹になった後も借金を引きずらないので、自分の信念に、あるいは正義感に従って自由に仕事ができると。あるいは、国に負担をいただいて言わば修習を受けさせていただいた、その御恩返しに公に御奉仕したいというような気持ちもわいてくるというふうなことで、非常にいい制度であったというふうに実感しておりますが。
 ですから、そうした制度が続けば、それはそうした修習生から見れば大変にいい制度だと思っておりますが、ただ、司法制度改革で法曹制度、法曹の数をこれから、まあ私のころは年間五百人でありましたが、制度の仕組みとしては年間三千人に増えていくというような状況もございますし、また、国のため、公のために尽くす仕事が、法曹だけでなくて、様々な分野で働いていらっしゃる方もやはり様々な在り方で国のため、社会のために役立っておるわけでございますから、法曹だけがというところの意見もございますでしょうし、また大変に厳しい財政の問題というのもございます。私は理想としては維持していきたいと、維持したらいいのかなとは思っておりますが、なかなか難しい事情もあるのかなというような感想でおります。

○前川清成君 済みませんでした。
 それで、私は実はこの貸与制の問題、司法試験に合格してこれから司法修習生になる、そんな皆さん方だけを切り離して貸与制か給費制かということを議論するべきではない、そう思っていました。法曹養成制度全体を見渡した上で、金持ちの子供しか弁護士になれない、そんな社会をつくってはならない、そんな視点で議論するべきではないか。そんな視点で申し上げると、やはり気になるのは法科大学院のことであります。
 旧司法試験が終了をいたしました。来年、口述試験を残すだけになりました。新司法試験一本になりますと、新司法試験の受験資格は予備試験という例外を除いて法科大学院を修了していることになってしまいます。なぜ司法試験の受験資格に法科大学院の修了を要件とするのか。その結果として、国立の法科大学院であれば一年間に八十万円、私立であれば百三十万円、原則として三年間、大げさではなく五百万円程度の学費を用意しなければ、そもそも司法試験の受験資格さえ得られなくなってしまう。これが本当に正しいのか、この点について法務省にお尋ねしたいと思います。

○副大臣(小川敏夫君) そもそも司法制度改革の中で、法曹養成制度も司法試験制度も含めて大きな改革といいますか変更を遂げたわけでございますが、その一つの出発点としましては、それまでの司法試験制度が言わば司法試験一発で、点数さえ取れば司法試験に合格するというようなところで、言わば司法試験予備校というものでただ単に試験に受かるための知識を積み込めばいいような傾向が現れまして、結果として、本来国民の権利義務を扱う、そうした面から高い倫理性、公共性というものが求められる法曹という面にその期待にこたえないような実態が現れてきたんではないかというような反省も含めまして、そうした倫理観、人間性もよく備えた法曹をしっかりと養成していかなくてはならないと。そのために、ただ単に一発勝負の試験の点数を取るということだけでなくて、ロースクールにおいて実務とそれから倫理も、そうしたものも含めた教育を経た上で、より中身が伴った法曹を養成しようというような理念で出発したことだというふうに思っておりますが、いろいろその理念どおりに行っていないという現状もまたございます。
 また、委員が御指摘のように、経済的に苦しい人が法曹になれないということはこれはあってはならないことでございます。試験に受かった人だけでなくて、その前段階のロースクールにおいてもそうしたことがないように、言わば奨学金の手当てなどをより充実して、委員が御心配されている点がより解消されるような努力はしていきたいというふうに思っております。

○前川清成君 試験の点数で評価すること、これをまあ悪く言えば今副大臣御指摘になったとおりなんですが、しかし試験の点数だけで評価することはある種客観的であり、ある種公平でして、法科大学院が理念としたプロセスとしての選抜、これはえこひいきだったり、あるいは不公正さのにおいをどうしてもぬぐい去ることはできませんし、倫理観や人間性、これは法曹にとって極めて大事なことでしょうが、倫理観や人間性をこれは点数で評価することができません。ですから、法科大学院の在り方も私はそろそろ検証してもいいのではないかな、そんなふうに思っています。
 それと、お金がないと弁護士になれない、裁判官になれない、そんな社会を許さないためには決して予備試験のハードルを高くしてはならないんじゃないのか。そもそもなぜ予備試験というのが必要なのかと。司法試験がきっちりと機能していたら、きっちりと運用されていたならば、法曹に必要な資質というのは司法試験で判断されるわけですから、屋上屋を重ねるような予備試験がなぜ必要なのか、私は疑問に思っています。
 司法試験に合格するために法科大学院に行くのか、あるいは経済的な理由もあり独学を選ぶのか。勉強方法まで国が押し付けるのではなくて、それはそれぞれの子供たちがそれぞれの経済的な事情等を勘案して自分で判断するべきではないか。私はそう思っていますが、もし感想のようなものがあればお聞かせいただきたいと思います。

○副大臣(小川敏夫君) この法曹養成制度、当初の設計では年間三千人程度と、あるいはロースクールを修了した人の約七割前後が法曹の道を歩むというような設計でございましたが、現実の状況はまだ二千人、あるいはロースクールの修了者の合格率も最近はかなり下がって、三割前後ですか、下がってきているというような状況でございます。
 こうした法曹養成制度そのものが当初の設計と違うということの現状も踏まえまして、また委員が御指摘されたような経済的な困窮者の問題、予備試験の問題等もございますので、この段階で新たに法曹養成制度そのものを全体的に考えていく時期に来たのかなというふうに思っております。そのようなことで検討を進めていきたいと思っております。

○前川清成君 大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますが、私は司法制度改革審議会が描いた法曹養成制度に様々なひずみが生じているのではないかと思っています。司法制度基盤の整備もないままに合格者を三千人にまで一挙に引き上げてしまったならば、就職できない弁護士がちまたにあふれてしまうんじゃないのか。それでもいいのか。もしそんなことになると優秀な学生が法曹を目指さなくなってしまうのではないか。そんなことも承知の上で三千人にまで増やしていくのか。司法試験の合格者数を司法試験委員会が密室で決めるんじゃなくて、政治主導で議論をリードするべきではないかなというふうにも思っています。
 あるいは、司法制度改革は法曹人口を増員するという目標を掲げました。しかし、実際には弁護士の人口だけが増えています。裁判官や検察官の増員というのはわずかです。この委員会でも与野党一致して裁判官や検察官、もっと増やすべきだというふうな議論がありましたけれども、裁判所は適正数を確保するという官僚答弁を繰り返して今までどおりを墨守しようとしています。それでいいのか。
 あるいは、法科大学院に関しても、これまでにわずかの、数人の合格者しか出せていない法科大学院もあります。法科大学院は実務家を養成する仕組みとして適当なのか。学者が中心の法科大学院で、裁判所に行ったこともない学者が実務家を養成することができるのか。法科大学院という仕組みがもしかしたら間違っていたのではないか。法科大学院が優秀な教員を確保できているのか。入試はどうか。選抜方法に問題はないのか。さらには、今日少し議論させていただきました法科大学院の学費や司法修習生の生活費などなど、金持ちの子供しか弁護士になれないという制度ではなく、法曹養成システムがだれに対しても開かれた公正なものになっているのか。
 私は、この十年間で大きく変換した法曹養成制度、これを走りながらでも検証する、修正するべき点があれば修正する、そんな活動がそろそろ必要ではないかと、そんなふうに思っています。
 いかがでしょうか、大臣も所信の中で問題点を、様々な御意見があるところですので、文部科学省など関係機関とともに問題点を検証しつつ、必要な改善策を検討してまいりますと、こういうふうに述べておられます。結論や方向をあらかじめ示すことなく、幅広く法曹養成システムを検証するために政治主導で大臣直属の特命チームをおつくりいただいてはどうかと私は考えておりますが、大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(柳田稔君) 前川委員のお話を聞いていますと、つい、はいと言いたそうになりますけれども、お話の内容を聞いていますと、これは教育関係もいろいろと含まれているようでありますので、私の下の特命チームというよりは、やはり文部科学省との議論も必要なのかなと思います。
 先ほど小川副大臣がお話しされましたように、我々三人も検討する時期なのかなと、そんな思いを持っていますので、そういう思いで進めさせてもらえればと思っております。

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