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最高裁判所第二小法廷判決平成22年07月16日

【事案】

1.大阪市職員を組合員とする四つの互助組合が,平成5年度から同11年度まで,大阪市から支出を受けた補給金(以下「本件補給金」という。)を組合員のための企業年金保険の保険料に充てたことにつき,大阪市の住民らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,上告人らに対し,互助組合等に損害賠償請求ないし不当利得返還請求をするよう求める住民訴訟を提起したところ,大阪市の住民である被上告人らが,各互助組合から構成されるA団体の理事らは大阪市の支出権限者と共同で違法な本件補給金の支出をさせたとして,同号に基づき,上告人らに対し,理事ら及び同人らを理事とするB団体に損害賠償請求をするよう求めて共同訴訟参加の申出(以下「本件申出」という。)をしている事案。

2.認定事実

(1) 被上告人らほか4名は,平成17年11月23日,A団体の理事らが大阪市の支出権限者と共同で違法な本件補給金の支出をさせたとして,上告人らに対し,理事ら及びB団体に損害賠償請求をするよう求める訴訟(大阪地方裁判所平成17年(行ウ)第214号。以下「別件訴訟」という。)を提起し,また,被上告人らは,同日,本件申出(同庁同年(行ウ)第215号)をした。別件訴訟及び本件申出における請求の趣旨及び原因は同一である。

(2) 別件訴訟については,平成19年7月12日,適法な住民監査請求を前置しておらず不適法であるとして訴えを却下する第1審判決が言い渡され,同判決は大阪高等裁判所平成20年1月31日判決,最高裁判所同年6月24日第三小法廷決定を経て確定した。

【判旨】

 本件申出に係る当事者,請求の趣旨及び原因は,被上告人らに関する限り,別件訴訟と同一であるところ,別件訴訟において適法な住民監査請求を前置していないことを理由に訴えを却下する判決が確定しているから,本件申出はその既判力により不適法な申出として却下されるべきものである。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち被上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,第1審判決のうち本件申出を却下した部分は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却すべきである。また,本件申出は不適法でその不備を補正することができないものであるから,当裁判所は,口頭弁論を経ないで上記の判決をすることとする。

 

最高裁判所第一小法廷決定平成22年07月20日

【事案】

 不動産売買業等を営むA社は,ビル及び土地の所有権を取得し,当該ビルの賃借人らをすべて立ち退かせてビルを解体し,更地にした上で,同社が新たに建物を建築する建築条件付で土地を売却するなどして利益を上げるという事業を行っていた。A社は,上記事業の一環として,本件ビルを取得して所有していたが,同ビルには,74名の賃借人が,その立地条件等を前提に事業用に各室を賃借して,それぞれの業務を行っていた。土地家屋の売買業等を営む被告人B社の代表取締役である被告人Cは,同社の業務に関し,共犯者らと共謀の上,弁護士資格等を有さず,法定の除外事由もないのに,報酬を得る目的で,業として,A社から,本件ビルについて,上記賃借人らとの間で,賃貸借契約の合意解除に向けた契約締結交渉を行って合意解除契約を締結した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことの委託を受けて,これを受任した。被告人らは,A社から,被告人らの報酬に充てられる分と賃借人らに支払われる立ち退き料等の経費に充てられる分とを合わせた多額の金員を,その割合の明示なく一括して受領した。そして,被告人らは,本件ビルの賃借人らに対し,被告人B社が同ビルの所有者である旨虚偽の事実を申し向けるなどした上,賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら,約10か月にわたり,上記74名の賃借人関係者との間で,賃貸借契約を合意解除して賃貸人が立ち退き料の支払義務を負い,賃借人が一定期日までに部屋を明け渡す義務を負うこと等を内容とする契約の締結に応じるよう交渉して,合意解除契約を締結するなどした。

(参照条文)弁護士法

72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

77条(非弁護士との提携等の罪)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一  略
二  略
三  第七十二条の規定に違反した者
四  略

【判旨】

 所論は,A社と各賃借人との間においては,法律上の権利義務に争いや疑義が存するなどの事情はなく,被告人らが受託した業務は弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものではないから,同条違反の罪は成立しないという。
 しかしながら,被告人らは,多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を,報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ,このような業務は,賃貸借契約期間中で,現にそれぞれの業務を行っており,立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し,専ら賃貸人側の都合で,同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって,立ち退き合意の成否,立ち退きの時期,立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。そして,被告人らは,報酬を得る目的で,業として,上記のような事件に関し,賃借人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて,前記のように賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら,これを取り扱ったのであり,被告人らの行為につき弁護士法72条違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。

 

最高裁判所第三小法廷判決平成22年07月20日

【事案】

1.被上告人から熱電供給システム(以下「本件システム」という。)の製造及び設置に係る工事(以下「本件工事」という。)を請け負った上告人が,被上告人に対し,請負代金3045万円及びこれに対する平成18年12月8日からの遅延損害金の支払を求める事案である。

2.事実関係の概要

(1) 上告人は,石油類供給設備に関する工事の設計,施工等を目的とする会社であり,被上告人は,土木建築用資材その他の物品の売買,輸出入等を目的とする会社である。

(2) Aは,平成17年ころ,温泉施設「甲」の建設を計画し,同施設に本件システムを導入することを検討していた。Bは,Aから相談を受けて,上告人に本件工事を施工させることを考え,上告人との交渉を始めた。

(3) Aは,平成17年9月ころ,Bに対し,本件システムを発注した。その当時,AとBは,本件システムについて,BがCに売却した上で,AがCとの間でリース契約を締結することを予定していた。

(4) 上告人は,平成17年9月ころ,Bから,本件工事を請負代金2900万円(消費税別)で請け負ってもらえないかと打診され,上記代金額については了承したが,請負代金の支払を確保するために,Bと直接請負契約を締結するのではなく,信用のある会社を注文者として本件システムに係る取引に介在させることを求めた上,Bの求めに応じて本件工事に着手した。

(5) 被上告人は,Bから依頼を受け,平成18年3月,上告人との間で,請負代金を2900万円(消費税別)として,本件工事の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結するとともに,本件システムをBに代金3070万円(消費税別)で売り渡す旨の売買契約を締結した。
 本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書には,「支払いについて,ユーザー(甲)がリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があった。

(6) 上告人は,平成18年4月,本件工事を完成させて,本件請負契約において合意されたところに従い,本件システムをAに引き渡した。

(7) AとCとの間では,平成18年5月ころ,本件システムのリース契約が締結されないことになり,Aは,その後も,Bに対して本件システムの代金の支払をしていない。

3.原審は,上記事実関係の下で,本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものであり,上記リース契約が締結されないことになった時点で無効であることが確定したとして,上告人の請求を棄却した。

【判旨】

1.原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係によれば,AがCとの間で締結することを予定していたリース契約は,いわゆるファイナンス・リース契約であって,Aに本件システムの代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであったことは明らかである。そうすると,たとえ上記リース契約が成立せず,Aが金融の便宜を得ることができなくても,Aは,Bに対する代金支払義務を免れることはないというのが当事者の合理的意思に沿うものというべきである。加えて,上告人は,本件工事の請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を本件システムに係る取引に介在させることを求め,その結果,被上告人を注文者として本件請負契約が締結されたことをも考慮すると,上告人と被上告人との間においては,AとCとの間でリース契約が締結され,Cが振り出す手形によって請負代金が支払われることが予定されていたとしても,上記リース契約が締結されないことになった場合には,被上告人から請負代金が支払われることが当然予定されていたというべきであって,本件請負契約に基づき本件工事を完成させ,その引渡しを完了したにもかかわらず,この場合には,請負代金を受領できなくなることを上告人が了解していたとは,到底解し難い。
 したがって,本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書に前記記載があったとしても,本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,本件請負契約に基づく請負代金の支払期限が到来すると解するのが相当である。
 これと異なる原審の判断には,契約当事者の意思解釈についての経験則に反する違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

2.以上によれば,論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人のその余の主張につき,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 

最高裁判所第一小法廷判決平成22年07月22日

【事案】

 甲府簡易裁判所は,平成19年10月24日,「被告人は,平成19年9月28日午後3時46分ころ,山梨県南アルプス市鏡中條2106番地付近道路において,指定最高速度(60q毎時)を33q毎時超える93q毎時の速度で普通貨物自動車を運転して進行したものである。」との事実を認定した上,道路交通法22条1項,4条1項,118条1項1号,同法施行令1条の2,刑法18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6万円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,同年11月8日確定した。
 しかしながら,一件記録によると,本件違反場所は,自動車専用道路の指定を受けていた区間内にあるから,被告人の速度超過は,道路交通法125条1項により反則行為となると認められる。したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。しかるに,甲府区検察庁検察官事務取扱検察事務官が上記の反則行為に関する処理手続を経由しないまま公訴を提起したのであるから,甲府簡易裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず,公訴事実どおり前記事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。

【判旨】

 なお,被告人は,原略式命令確定後の平成20年8月7日に死亡していることが認められるが,非常上告制度の目的等に照らすと,このような場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。
 よって,本件非常上告は理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却する。

 

最高裁判所第一小法廷判決平成22年07月22日

【事案】

 甲府簡易裁判所は,平成19年7月11日,「被告人は,平成19年5月12日午後3時20分ころ,山梨県南アルプス市鏡中條2106番地付近道路において,指定最高速度(60q毎時)を30q毎時超える90q毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したものである。」との事実を認定した上,道路交通法22条1項,4条1項,118条1項1号,同法施行令1条の2,刑法18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6万円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,同年7月31日確定した。
 しかしながら,一件記録によると,本件違反場所は,自動車専用道路の指定を受けていた区間内にあるから,被告人の速度超過は,道路交通法125条1項により反則行為となると認められる。したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。しかるに,甲府区検察庁検察官事務取扱検察事務官が上記の反則行為に関する処理手続を経由しないまま公訴を提起したのであるから,甲府簡易裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず,公訴事実どおり前記事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。

【判旨】

 なお,被告人は,原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していないことが認められるが,非常上告制度の目的等に照らすと,このような場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。
 よって,本件非常上告は理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却する。

 

最高裁判所第一小法廷判決平成22年07月22日

【事案】

1.白山市(以下「市」という。)の市長の職にあった者がA神社(以下「本件神社」という。)の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に出席して祝辞を述べたことが,憲法上の政教分離原則及びそれに基づく憲法の諸規定(20条1項後段,3項,89条。以下「政教分離規定」という。)に違反する行為であり,その出席に伴う運転職員の手当等に係る違法な公金の支出により市が損害を受けたとして,市の住民である被上告人が,上告人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,その支出当時市長の職にあった者に上記支出相当額の損害賠償の請求をすることを求める事案である。

2.事実関係等の概要

(1) 本件神社は,全国に多数存在する白山神社の総社として市内に所在する神社であり,宗教法人である。本件神社は,古来からその存在が知られており,例年多数の初詣の参詣客が訪れるとともに,平素に訪れる参詣客等も相当多数に上っている。また,本件神社が所在する白山周辺地域については,その観光資源の保護開発及び観光諸施設の整備を目的とする財団法人B協会が設けられている。

(2) 本件神社では,鎮座2100年を記念して,平成20年10月に5日間にわたり御鎮座二千百年式年大祭(以下「本件大祭」という。)が行われることとなり,同17年,本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体として同大祭奉賛会(以下「奉賛会」という。)が発足した。奉賛会の規約では,上記の目的が掲げられたほか,事業内容として,本件大祭の斎行,本件神社の諸施設の工事等が挙げられていた。

(3) 平成17年6月,市内の一般の施設である「C」で開かれた奉賛会の発会式(以下「本件発会式」という。)に,当時市長の職にあったDは来賓として招かれ,職員の運転する公用車を使って出席し,祝辞を述べた。本件発会式の式次第は,開会の辞,会長あいさつ,来賓祝辞,役員紹介,来賓紹介,事業計画説明,宮司御礼の言葉,乾杯及びあいさつ並びに閉会の辞というものであり,関係者約120名が出席し,約40分ほどで終了した。

(4) 市の主務課長は,専決により,本件発会式への上記出席に伴う勤務に係る部分を含む上記運転職員の時間外勤務手当につき支出命令をし,当該手当の支出がされた。

3.原審は,上記事実関係等の下において次のとおり判断し,被上告人の請求を一部認容した。
 奉賛会の事業は,本件神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛する宗教活動であり,本件発会式は,上記宗教活動を遂行するために,その意思を確認し合い,奉賛会の発足と活動の開始を宣明する目的で開催されたものである。そして,その当時市長の職にあったDが本件発会式に出席して祝辞を述べた行為は,上記宗教活動につき賛同,賛助及び祝賀の趣旨を表明し,ひいては本件神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛し祝賀する趣旨を表明したものと解されるから,市長としての社会的儀礼の範囲を逸脱している。したがって,その当時市長の職にあった同人の上記行為は,その目的が宗教的意義を持ち,かつ,その効果が特定の宗教に対する援助,助長,促進になる行為であり,憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり,前記時間外勤務手当のうち上記行為に伴う部分の支出は違法である。そして,その当時市長の職にあった同人は,当該支出を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったものとして,市に対し,上記支出相当額の損害を賠償する義務を負う。

【判旨】

1.原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係等によれば,本件大祭は本件神社の鎮座2100年を記念する宗教上の祭祀であり,本件発会式は本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする奉賛会の発会に係る行事であるから,これに出席して祝辞を述べる行為が宗教とのかかわり合いを持つものであることは否定し難い。
 他方で,前記事実関係等によれば,本件神社には多数の参詣客等が訪れ,その所在する白山周辺地域につき観光資源の保護開発及び観光諸施設の整備を目的とする財団法人が設けられるなど,地元にとって,本件神社は重要な観光資源としての側面を有していたものであり,本件大祭は観光上重要な行事であったというべきである。奉賛会は,このような性質を有する行事としての本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体であり,その事業自体が観光振興的な意義を相応に有するものであって,その発会に係る行事としての本件発会式も,本件神社内ではなく,市内の一般の施設で行われ,その式次第は一般的な団体設立の式典等におけるものと変わらず,宗教的儀式を伴うものではなかったものである。そして,Dはこのような本件発会式に来賓である地元の市長として招かれ,出席して祝辞を述べたものであるところ,その祝辞の内容が,一般の儀礼的な祝辞の範囲を超えて宗教的な意味合いを有するものであったともうかがわれない。
 そうすると,当時市長の職にあったDが本件発会式に出席して祝辞を述べた行為は,市長が地元の観光振興に尽力すべき立場にあり,本件発会式が上記のような観光振興的な意義を相応に有する事業の奉賛を目的とする団体の発会に係る行事であることも踏まえ,このような団体の主催する当該発会式に来賓として招かれたのに応じて,これに対する市長としての社会的儀礼を尽くす目的で行われたものであり,宗教的色彩を帯びない儀礼的行為の範囲にとどまる態様のものであって,特定の宗教に対する援助,助長,促進になるような効果を伴うものでもなかったというべきである。したがって,これらの諸事情を総合的に考慮すれば,Dの上記行為は,宗教とのかかわり合いの程度が,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず,憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではないと解するのが相当である。
 以上の点は,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和46年(行ツ)第69号同52年7月13日判決・民集31巻4号533頁最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日判決・民集51巻4号1673頁最高裁平成19年(行ツ)第260号同22年1月20日判決・民集64巻1号登載予定等)の趣旨に徴して明らかというべきである。

2.以上によれば,これと異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。そして,前記説示によれば,上記部分に関する被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は正当であるから,上記部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。

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