政府公表資料等情報

参院法務委員会平成22年10月26日より抜粋

○若林健太君 自由民主党の若林健太でございます。この七月の参議院選挙で長野県選挙区から初当選をさせていただきました。今日は生まれて初めての質問でございます。先輩議員の皆さんの御理解をいただいてこうした機会をいただいたことをまずお礼を申し上げながら、胸をお借りして精いっぱい御質問を申し上げたいと、このように思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 二〇〇一年十一月に司法制度改革推進法が制定されて、十年歳月が経過したわけであります。現在、各制度の実施段階になってきておりまして、円滑な推進が法務行政の課せられた使命だと、このように思います。一方、実施していく中で様々な問題点等も指摘されるようになってまいりました。そういう意味では、柔軟な対応、様々な検討していく段階にも入ってきているんではないかというふうに思います。
 大臣の所信表明には、司法制度改革の推進について触れておられていまして、紛争解決の最後のよりどころとする司法は、国民にとってより身近でより利用しやすいものでなくてはならないと、このようにお話をされておられます。
 そこで、まず最初に法曹養成制度について、十一月より施行される司法修習生の給費制を貸与制にする件についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 法の施行期日が近づいてきているわけでありますが、給費制から貸与制に移行することとなった理由とそれから経緯について、まず大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思いますが。

○副大臣(小川敏夫君) 委員御指摘の司法制度改革の中で、法曹養成ということは大変大きなテーマでございました。それまで司法修習生、司法試験合格者の中で、数が少ない中で、五百人とか千人の中でやっておりましたが、司法制度改革の中で、国民がより利用しやすい司法を目指すという中で法曹も増員すると。
 で、当初の目標としましては三千人ということも予定しておったわけでございますが、そうした人数が増える中での大きな財政負担というものもございますし、あるいは、やはり社会の様々な分野、それぞれの様々な職業をお持ちの方がそれぞれの職業の中で社会に貢献しているという中で、司法、とりわけ弁護士、法曹だけが特にほかの職業の方と異なって優位な扱いを受けることはいかがかとか、様々な議論を経ました上で、各会派の御賛同をいただきましてそのような給費制から貸与制に移行するという法が成立したわけでございます。

○若林健太君 いよいよその施行時期が迫っているわけでありますが、この施行時期についてどのようにお考えになっておられるかお聞きしたいと思います。一部に施行の延期を求める声もあるようですが、それについてお聞きしたいと思います。

○副大臣(小川敏夫君) 法務省といたしましては、特に施行日が、定められた、十一月一日ですか、これにつきまして特に、各会派の御賛同をいただいて成立した法案であるというようなことも踏まえて、これを特に変更する、延期するという考えは持っておりません。

○若林健太君 法律の施行期日を前にして実は給費制の存続を求める声というのが出ておりまして、我が自由民主党の中でも様々な議論がされておられます。また、与党民主党内でも維持を求める立法の動き等があったと、こういうふうに伺っておりますが、もう既に十一月施行と、こういうことで、これについては様々な予算措置も必要になってくると、もし延期をするということになればですね、そういうことが予定されるようになるということだと思いますが、財政運営上どのような措置をとる必要が出るのか、もし延期をするとした場合ですね、そのことについて、今日、財務省から櫻井副大臣にお見えいただいていますので、お聞きしたいというふうに思います。

○副大臣(櫻井充君) 済みません、ちょっと細かい内容の通告をされていないので、もし違っていれば、あとはちょっと事務方からの答弁もお許しいただきたいと思います。
 まず、お父様に大変お世話になりまして、本当にありがとうございました。お父様も非常に真摯に答弁してくださいましたので、私もそれに倣ってでき得る限りの答弁をまずさせていただきたいと思いますが。
 その中で、財政当局としましては、まず法務省と話合いをさせていただく中で、十一月一日から貸与制を従来どおり進めさせていただきたいと思っておりました。
 今御質問があった件に関してですが、予算措置は貸与制として計上されておりますので、そういったことを組み替えなければいけないんだろうと思っております。その手続が、そうですね、この他の目的に対しての流用ということになるんだろうと思います。
 まず、立場として、今申し上げたとおり、十一月一日からきちんと実施するべきだと思っておりますので、流用については考えておりませんが、もし仮に、仮定の御質問ではありますが、そういったことになると、各項目の経費の金額について財務大臣の承認をまず得る必要性があるんだろうと、そのように認識しております。

○若林健太君 そのとおりですね。ありがとうございました。予算の修正の法律を上げるか、あるいは大臣のそうした認定が必要だと、こういうことでありますが、先日、二十二日の衆議院の法務委員会で、我が党の柴山委員の質問に対する回答として吉田大臣政務官が、その時点で、私の知る限りでは民主党の法務部門会議から財務省に対して給費制を継続するための特別なお話は来ていないと、こういうふうに御答弁をされていて、給費制維持に向けた与党としての政府との調整は行われていないと、こういう御回答がありました。
 その理解でよろしいかどうか、確認させてください。

○副大臣(櫻井充君) これは、吉田政務官が御答弁申し上げたのは、財務省として、財政当局との話合いについてでございます。ですから、済みません、与党の中の法務部門会議でどのような議論がなされていて、そして、本来であれば所管省庁が法務省ということになりますから、そちらと話合いがされているのかどうかについては私どもの知るところではなくて、繰り返しになりますが、吉田政務官が御答弁させていただいたのは、財政当局と話合いがなされていないということでございます。

○若林健太君 十一月の施行日を前にして、もし給費制を延長しようというふうにするとすれば、今のような財政当局との調整が本来必要であり、この時点に至ってその調整は与党内で一切されていなかったということが前回の答弁でも明らかになっておりますし、今のお話でも分かったと、こういうことだと思います。
 報道によりますと、給費制のこの延長について、一部に自民党が反対をしたから実は延期ができなくなったんだというような報道がありますけれども、実は与党内においてもその意見の調整はまとまっていなかったということを、今の質疑を通じて私の方で確認をさせていただきたいというふうに思います。
 しかしながら、今、給費制度について日弁連等から様々な問題点が指摘されています。貸与制に移した上で、なおもし問題点があるとすれば、制度の手直しといいますか、補完をしていく手続というのはやっぱり必要だろうと、このように思いますけれども、その件について大臣の御見解を教えていただければと思います。

○副大臣(小川敏夫君) 委員の質問の前提には、やはり経済的な支えをきちんとやらないと、経済的に苦しい方が法曹になれないとか、あるいはいい法曹が育たないというような考え方があるんだというふうに思いますが、やはりいい法曹がしっかりと育って社会に貢献してもらわなくてはいけないということでございます。
 仮に、委員の御指摘が、いったん貸与制に移行してもなお検討してみてはどうかということであると思いますが、私どもも、貸与制の法律が施行されても、やはり国会の中でそれを見直すというような法律ができれば、それは当然それに従うのがこれは法務省の職務でございます。

○若林健太君 貸与制の制度は、五年間の猶予があってその後また返済が始まっていくと、こういうことであります。是非、実際の運用の中で、必要とあれば今後の改正についての検討もということを一言申し上げさせていただきたいと思います。

 

○木庭健太郎君 新司法試験のことで一、二点だけ聞いておきます。
 まず最初に、新司法試験の合格者数。平成十四年の閣議決定、我々もいろいろその後議論しましたが、平成二十二年ごろまでには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指すということを一応決めました。しかしながら、今年の合格者は二千七十四人。上記のこの閣議決定を大幅に下回っています。その理由について説明をしていただきたいと思います。

○大臣政務官(笠浩史君) 委員が御指摘のとおり、法科大学院についてはその修了者に対してコミュニケーション能力が優れているなど一定の評価はなされておりますが、その一方で、一部の法科大学院について、入学者選抜の競争性が不十分である、あるいは新司法試験の合格率、今御指摘のとおり低迷しているというような大変今厳しい現実があるところでございまして、文部科学省としてもこうした今改善策をしっかりと取っていかなければならないということで、法務省の方とも一緒に連携をして取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
 なお、七十四校あってそのうちの二十六校が何らかの改善が必要とされていると、特にその中の十四校においては大幅な改善が必要だという調査の結果も出ておりますので、しっかりと今後対応していきたいというふうに考えております。

○木庭健太郎君 しっかり対応ということですが、じゃ、どんなふうにしてその教育の質を確保しようと本当にされているのかということを、これは文部科学省にお聞きしたいし、一つは、文科省が一定の要件を満たさない法科大学院に対して補助金は減額するというような方針もちょっと何か伝わったりしているんですよね。そうすると、何か、逆に言うと、法科大学院の統廃合みたいな問題にこれつながっていくんじゃないかなというような気もしないではないんです。ただ、これをやっていった場合、地方で一生懸命やっていくような形の、地方からの切捨てにつながりかねない面が私はあると思うんです。
 元々、この法科大学院をつくった最初の趣旨というのは、なるべく弁護士の過疎をなくそうと、地方にもそういう司法というものがきちんと恩恵を受けられるように、そういうのが司法制度改革の趣旨だったというような気もするんです。
 そういった意味では、もし地方から切捨てをするようなことがあれば、これは司法制度改革の趣旨に反する結果になりはしないかという気がするんですが、文科省からどんな考えでやるつもりでいるのか、そしてそれに対する、法務省としてどう言っていくかということを御答弁をいただきたいと思います。

○大臣政務官(笠浩史君) 今、本当に木庭委員の御指摘、しっかりと踏まえさせていただき取り組みたいと思いますが、文科省としては、あくまでまずは入学定員の自主的、自律的な見直しを促進をしていくということ、さらには教育の改善状況の、先ほど申し上げた調査を通じた教育内容や方法の改善、充実の促進を進めておるところで、今委員から御指摘のあったいわゆる国立大学法人に対する運営費交付金や私学助成の財政支援の見直し、こうしたことについてはかなりの深刻な課題を抱えている一部の法科大学院に対して、自主的な組織の見直しを促すために、促進をしていくために、そうしたことも検討をするという段階でございます。
 そして、こうしたことについて、今先生から御指摘あったようなことも含め、今後は法務省と一緒に具体的な今後の在り方の検討をするための新たな体制、フォーラムを今設ける予定で準備を進めているところでございます。

○副大臣(小川敏夫君) 確かに委員御指摘のとおり、司法制度改革のその制度設計とは違った結果で、三千人というところが二千人程度に終わっていると。ただ、これは法曹になる十分な能力がある人を切り捨てて二千人に抑えているということではなくて、なかなか法曹として認められる人が結果としてその人数にしかいかなかったんだという残念な状況でございます。
 そしてまた、その結果として、委員が御指摘のように、地方にという問題がございました。確かにこの司法界、また法曹として、地方の過疎があってはいけないのでこれをしっかりと取り組まなくてはいけないというふうに思っておりますが、ただ地方で、しかし地方だから法曹になるその質が軽くていいと、簡単でいいというわけにもいかないので、これは今の現状のロースクールの実情も踏まえて、文科省ともよく協議してこの法曹養成制度、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

○木庭健太郎君 最後に、これ質問通告していなかったんですが、小川副大臣に、先ほど答弁されておったので、要望とともに最後ちょっとお聞きしておきたいと思ったのは、やっぱり給費制の問題なんですね。
 なかなか、いろんな経過の中でこの給費制の継続というのが、いろいろ頑張って何とかしたいという気持ちはあるんですけれども、これ我々は、この給費制の問題も、廃止に、ある意味じゃ法案そのものは一回賛成した経過はあるんです。ただ、その後、やっぱり、法科大学院ができて、今から司法修習入ろうという人たちの実態を見てみると、我々が想定した以上に法科大学院含めて大変経済的に大変な事情があるということが判明してきたというのが事実であって、途中経過でおかしなことが判明したのであればこれを是正することは私はもう構わない話だと思って、何とかそういう方向もと目指しながら今頑張っている最中ではございますが、逆に言えば、法務省の側というか、これは最高裁判所の担当ということにもなるんですが、逆に言うと、法務省としても本当に給費制廃止していいのかというような議論を本当は起こしてもらいたいなと、給費制で多分卒業された小川副大臣だと思うので、何とかそんなところは考えられないのかと。
 それとともに、先ほど御答弁いただいたんですが、私たちは何とかこれ給費制にということで今後も頑張っていく決意ですが、たとえ始まったとしても、先ほど御答弁があったように、そういう提案があった場合はそれはそれで受け止めるという御答弁でよろしかったかどうか確認して、質問を終わりたいと思います。

○副大臣(小川敏夫君) 確かに私も修習生時代給費制で、大変に有意義で、またそれで、国に修習を支えていただいたので公に奉仕したいというような気持ちも芽生えたところもございますので、非常に個人的にはいい制度だったと思っております。
 一つの事実として申し上げれば、私もこの夏の参議院選挙の前には給費制を復活することを求める集会に出て積極的な発言をしたこともございますが、ただ、いろいろやはり、個人の思いとは別にしまして、やはり給費制の在り方そのものを考えるとき、例えば三千人に増やすんだから給費制は難しいといった場合に、今二千人しかいないと、じゃ、この法曹の数を二千人のままでいいのか、三千人が二千人なら財政的な負担も違うじゃないかとか、様々な要素があると思います。ですから、これから、今法曹養成制度そのものが困難な状況、困難な状況と断定していいかどうか分かりませんが、様々な問題をはらんでおりますので、その法曹養成制度全体を取り組む中で、この給費制の維持というものもしっかりと前向きに取り組んでいきたいというふうに思っております。

 

第14回司法修習委員会平成21年3月5日より抜粋

6.議事

(3)新司法修習に関する議論等

イ.修習資金貸与制施行に伴う整備について

高橋宏志委員長 それでは,もう一つの大きなテーマである,修習資金貸与制の施行に伴う整備の概要に関する問題について,まず最初に木村幹事長より,幹事会の議論の御紹介をお願いしたい。

木村光江幹事長 まず林幹事から資料41等について御説明いただき,その後に私から議論の状況を御報告したいと思う。

(資料41 修習資金貸与制の施行に伴う整備の概要(案))

 (前注)裁判所法の一部を改正する法律(平成16年法律第163号)により,司法修習生に対し給与を支給する制度に代えて,修習資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金)を国が貸与する制度(修習資金貸与制)が導入され,平成22年11月1日から施行される。
 それに伴い,修習資金の額,返還の期限その他修習資金の貸与及び返還に関して必要な事項を最高裁判所規則等で定めておく必要がある。

1.修習資金の額等(法第67条の2第2項関係)

 一の貸与単位期間(注)ごとに,次の額を貸与するものとする。

 (注)「貸与単位期間」とは,修習期間を初日から起算して1か月ごとに区分した場合の当該区分による一の期間(その期間が1か月に満たない場合は,1か月とみなす。)をいう。

(1) 基本額 23万円程度

(2) 基本額未満の額を希望する場合 18万円程度

(3) 次のいずれかの事由がある場合において,司法修習生からの申請があるとき 25万5000円程度

ア.次のいずれかに掲げる者があること。

 (ア) 配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事由にある者を含む。)又は満22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子

 (イ) 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第11条に規定する扶養親族((ア)を除く。)

イ.自ら居住するため住宅(貸間を含む。)を借り受けていること。

(4)  (3)アのいずれか及び同イの事由がある場合において,司法修習生からの申請があるとき 28万円程度

※ (1)から(4)までの要件の下に,貸与開始後の修習資金の増額又は減額ができるようにするものとする。

2.修習資金の返還期限等(法第67条の2第2項関係)

 修習期間終了後,例えば3年間程度返還を据え置き,その後10年間の年賦均等返還の方法で返還する(繰上返還も認める。)ものとする。

※ 修習資金の返還を遅滞した場合における延滞利息及び期限の利益の喪失に関する規定を設けるものとする。

3.保証人(法第67条の2第5項関係)

(1) 修習資金の貸与を受けようとする者は,連帯保証人として自然人2人(修習資金の貸与を受けようとする者に父又は母があるときは,うち1人はその父又は母)を立てなければならないものとする。

(2) (1)とは別に,例えば,独立行政法人日本学生支援機構奨学金のような機関保証を選択することができるようにすることが望ましい。

4.その他

 その他必要な規定を設けるものとする。

林道晴幹事 まず,資料41の前注に,今回このような議論をお願いする背景事情が書いてある。
 平成16年の裁判所法の一部改正によって,司法修習生に対し国から給与を支給する制度に代えて,平成22年,来年の11月1日から,司法修習生が修習に専念することを確保するための資金,これは裁判所法で「修習資金」と呼んでいるが,その修習資金を貸与する制度が導入される。この修習資金は,修習生からの貸与申請によって,修習期間中,無利息で貸与するというものであり,具体的な貸与金額や返還期限等については最高裁が定めることになっている。
 災害,けが,病気等の事情により返還が困難となったときには,返還期限を猶予する制度が設けられており,被貸与者が死亡又は精神・身体の障害によって返還できなくなったときには,返還の一部又は全部を免除するという制度も用意されている。
 それ以外の細目的事項についても最高裁が定めることになっており,私どもとしては,改正された裁判所法の委任を受けて,来年の実施に向けて,裁判所法の改正に対応する形での最高裁規則を制定する必要がある。
 最高裁判所規則自体も当委員会にお諮りしたいと思っているが,その規則を作成する前提となる重要事項について,本日,審議をお願いするところである。
 平成16年12月3日に一部改正された裁判所法の立法過程においては,一定の方向性が示されており,後ほど関係する項目のところで説明したいと思うが,かなり具体的な事項が立法段階で議論されている。その後,特段事情変更は認められないことから,貸与制の制度を作るに当たって,この方向性を尊重するのが相当であると考えている。
 また,国が修学資金として貸与する制度には,類似のものとして,矯正医官修学資金貸与制度(法務省),自衛隊貸費学生制度(防衛省),公衆衛生修学資金貸与制度(厚生労働省)がある。
 さらに,密接に関連するものとして,独立行政法人日本学生支援機構の奨学金があり,法科大学院生が奨学金として受け取っているものの大多数は,この学生支援機構の奨学金である。
 修習資金は国の債権になるので,回収という点については会計法上のスキームが適用され,納入告知書を被貸与者に渡して,被貸与者が納入告知書に現金を添えて,日本銀行の本店又は支店に納付する必要がある。したがって,民間の融資のような銀行口座等からの引き落としの方法では回収できないという制約がある。
 具体的には,国が,返済金額・返済期限を,納入告知書に納入金額・納入期限として記入し,被貸与者にその納入告知書を送付して返還を請求する。 納入告知書を受け取った元修習生は,その納入告知書に納入金額分の現金を添えて日銀の本店又は支店に提出し,納入(返済)の手続をとる。通常は,日銀の歳入代理店である市中銀行に赴くことが想定される。日銀ないしその代理店が現金を受け入れると,これを国に通知して,これによって回収が完了する。
 資料41に戻って,まず,一番重要な貸与金額の点について,平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,給費制における支給基準を参考に,1の(1)の23万円程度を基本額にして,(2)の18万円程度,(4)の28万円程度と,三段階の貸与額を設けることが想定されていた。これは当時の政府参考人の答弁の中で明確になっている。
 (1)の23万円と(2)の18万円については,特段の要件を課すことなく,貸与を希望した者にそのまま貸与することがイメージされ,一方,(4)の28万円については,扶養親族がおり,住居を賃借しているといった要件を審査した上で貸与することがイメージされていた。
 資料41は,そのような議論を踏まえ,23万円を基本金額とし,少ない金額は18万円,一番多い金額は28万円という三類型は維持した上で,23万円と28万円の中間的な類型として,(3)の25万5000円というオプションを追加している 。これは,扶養家族がいるか,あるいは住居を賃借しているか,どちらかの要件を満たしている場合を対象としており,(4)の28万円は,扶養親族がいて,かつ住居を賃借している場合を対象にしている。 現在の給費制の下で,扶養親族を有している修習生は約1割程度にとどまっているが,住居を賃借している修習生は約7割程度いることから,この中間的なオプションを用意したところである。
 なお,司法修習生本人の資力要件については,特段の要件を設けない方向で考えている。
 また,扶養加算の点について,現在の給費制の下での司法修習生の年齢構成を見ると,扶養家族として配偶者だけ,あるいは配偶者と子といった核家族の最小構成が最も多くなっているので,貸与制においてもニーズは同様と考え,まず,配偶者と子を扶養親族として掲げることにした。
 配偶者と子以外の扶養親族については,(3)のアの(イ)にあるように,給与法に規定する人的範囲と同じものにする方向で考えている。
 修習期間中に加算要件が生じることも想定されるので,これに対応できるように,1ページの最後の2行にあるように,修習開始後の修習資金の増額又は減額ができるようにするというスキームにしたいと考えている。
 次に,2ページの2,修習資金の返還期限等については,修習期間終了後,すなわち原則として貸与の終了後に,例えば3年間程度の据置期間を置いた上で,その後10年間の年賦均等返還の方法で返還することを基本にした上で,繰上返還も認める案になっている。
 平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,3年から5年の据置期間を経過した後,10年間の年賦とするということが,政府参考人から示されていたところである。 これは,法科大学院在学中に奨学金の貸与を受けていた者が,さらに修習生となって修習資金の貸与を受けることが十分考えられる,返済の負担が過重となってしまう可能性があることから,その負担を考慮したものと承知しており,資料41はそれを尊重した形になっている。
 また,年賦が提案されている背景として,国会審議における議論からは必ずしも明確ではないが,国庫金の納入スキームからすると,返還のたびに納入告知書が発行され,それを日銀の代理店に持参して現金で納付することになり,これは返還をする人にとってかなりの負担になることが推察されるので,その負担感を緩和するためであろうと考えられる。
 2ページの2のアスタリスクのところでは,返還が遅れた場合には,他の制度と同様に延滞利息がかかり,期限の利益を失うことがあるということを注意的に記載している。
 次に,3の保証人の関係であるが,類似の修学資金の貸与制度と学生支援機構の奨学金では,いずれも二人の人的保証,つまり保証人が貸与の要件となっている。したがって,修習資金についても,国の資金を扱う形になる以上,やはり二人の保証人を立てることを要件にせざるを得ないと考えており,3の(1)のような形になっている。保証人の要件については,父又は母があるときは,その保証人二人のうち一人は父又は母にしなければならないという仕切りになるかと思う。
 資料には明示していないが,保証人の要件は民法の規定によるので,弁済の資力を有することが要件になる。
 ただ,自然人の保証人を絶えず二人用意しなければならないということになると,被貸与者としては保証人が用意できない,用意しにくいということも考えられるので,日本学生支援機構の奨学金のように,機関保証というものを用意して,これを人的保証とは別に選択ができる形を提案している。
 機関保証が導入された場合には,父母等に負担をかけずに貸与を受けられるメリットがある。実際に機関保証を受けてもらうのは民間の会社を考えているところであるが,用意できるかどうかは事務局の宿題ということで,正直申し上げて交渉はかなり難航しているが,何とか用意して,少しでも借りやすくすることを考えたいと思う。
 最後に,資料には記載していないが,修習生に対しては,この貸与制への移行に伴って国から給与が支給されなくなるので,国から給与が支給されていることを基本にする共済組合への加入ができなくなる。したがって,国民健康保険,国民年金に加入することになると考えられる。
 ただし,公務災害や,第三者に修習生が損害を与えた場合の国家賠償については,従前どおりになると考えられる。

木村幹事長 引き続き,幹事会での議論の状況について説明したいと思う。
 林幹事の説明にもあったように,大きく二つの点,つまり返還の据置期間と機関保証の問題について議論された。まず据置期間の点では,できるだけ長く5年程度にすべきという意見と,制度全体を考慮すると債権管理のリスクをできるだけ抑えるのが相当であるから3年程度にすべきという意見に分かれた。
 幹事会の場では,3年程度という感触を述べる幹事が多かったように思われたので,資料41の2ページに,「例えば3年間程度」と示している。この点については委員の先生方にもいろいろと御意見がおありかと思うので,やや幅のある表現振りでお示ししているところである。
 次に,機関保証については,いわゆる事業用資金の融資における信用保証協会の保証のように,求償権を担保するための保証人を別途求めることができるというような形であれば,個人保証と別に制度を設ける必要性は乏しいのではないかという指摘もあったが,事務局での検討に当たっては求償権の保証を求められない形態での機関保証を想定しているとのことで,そうであれば,選択の幅を広げるのは望ましいのではないかというのが,幹事会全体における方向性であった。
 ただ,機関保証の担い手として想定されているのは民間の保証会社ということで,不確定要素があること等を考慮して,「機関保証を選択することができるようにすることが望ましい」といった程度の,やや控えめな表現振りになっている。
 その他の点については特段異論は出なかったので,幹事会におけるたたき台からの変更はない。

高橋委員長 資料41は三つに分かれるが,まず1の「修習資金の額等」については,なかなか当委員会で議論するのも難しいと思うので,やはり我々としては,その余の事項について,まず2の「修習資金の返還期限等」をどのように考えるべきか。
 法科大学院時代にも奨学金を借りて,司法修習のときにまた資金を受けるとすれば,多い人では1000万円近くになることが予想される。そのようなことも念頭に置いて,返還の据置期間をどう考えていくか,いかがであろうか。

吉戒修一委員 返済能力の関係で,裁判官,検察官,あるいは弁護士になった場合に,その3年後以降の収入がどの程度になるか,把握しておられるだろうか。

林幹事 裁判官,検察官については,大ざっぱなところで申し上げると,1年目で既に五百数十万円という金額になるので,仮に据置期間が5年ではなくて3年であっても十分返済は可能と考えている。問題は弁護士の収入の捉え方で,私どもが弁護士会の御協力で得たデータとして,「弁護士白書」2008年版によると,5年未満の弁護士の収入の平均は,男性で900万円程度,女性で778万円程度のようである。ただ,あくまでも5年未満の平均ということで,その内訳までは分からない。
 もう一つ,参考事項として,弁護士の場合,日弁連と単位弁護士会に会費を支払わなければいけないが,新入会員について一定期間の減額措置が実施されていると聞いている。
 まず,日弁連では,2年前の日弁連の総会で相当白熱した議論の末に会費減額措置が導入され,本来は月額1万4000円のところを,司法修習を終えてから2年未満の者は月額7000円,つまり半額にするという減額措置が決められたと聞いている。したがって,3年目には本来の金額になるということであろう。
 一方,単位弁護士会では,東京三会について,制度の変遷はあったようであるが,日弁連の関係でも減額措置がとられている現行61期以降の入会者については,司法修習を終えてから3年未満の者は月額5000円,3年以上4年未満の者は月額1万円,4年以上5年未満の者は月額1万5000円という減額措置がとられていると聞いている。5年目以降については,東弁と一弁,二弁で差があるが,東弁は月額1万8500円,一弁と二弁は月額2万0500円ということで,5年目以降は一律とのようである。
 したがって,完全な減額措置がとられているのは3年未満の者という位置付けになるかと思う。

今田幸子委員 法科大学院の期間もかなり経済的に負担がかかり,司法修習においても給与が支給されず,貸与という形でまた負担がかかるということで,法曹人養成のプロセスとして,せっかくいろいろな選抜をクリアした後で,そのキャリアを作っていくというのは経済的にかなり大変な実態なのだろうと思う。
 弁護士の会費も減額されているというのは,恐らく若い弁護士の方たちはかなり厳しい状況ということが前提にあってそういう制度が設けられているので,本来ならば,データとして,収入に関する平均収入,標準偏差ぐらいのデータを各年度ごとに見せてもらえれば,もっと正確な議論ができて,正確な提案ができると思うが,そのような傍証だけでも,若いころのキャリアはかなり厳しいのだろうということがおよそ想像がつくので,やはり返還に関しては,据置期間を一定期間設けるのが順当な判断になるであろう。
 ただ,余り長くすると,他のいろいろな制度との比較から,法曹人養成だけが何か不釣合いに恵まれている,甘やかされているというような制度になってもまずいわけであるが,でも,現状は非常に厳しいので,法曹人養成のキャリアの実態を踏まえた上で一定期間据え置く,猶予を与えるという制度を設けることが,やはり順当な判断なのではないだろうか。幹事会でも3年くらいという御意見があったようなので,私も,キャリアの実態を踏まえて,3年ぐらい据え置く案がいいのではないかという印象である。

高瀬浩造委員 恵まれていると言われることのある医師の話をすると,数年前に卒後臨床研修制度が始まって,医師免許を持っていても2年間は単独で医療ができないことになったのであるが,それまでは給与は普通出なかったのだけれども,今は給与保証がされている。そのために,年間確か1000億円くらいの国費が投入されている。
 司法修習生は貸与制に移行するのに,ほんの数年の違いで,医師に関しては,半人前で単独では医療をしないという運用になったのに,給与保証がされている。
 同じように公共的な仕事をする人たちで,養成にも非常にお金がかかっている分野であるのに,医師は非常に優遇されていて,3年目からは本物の医師になって就職すると,むしろ給料は下がってしまう。ずっと研修医をやっていたいという人がいるくらいである。
 結局,医師と法曹だけを比較して,それが世の中すべてではないけれども,片や給料は確実にもらえるようになって,かたや貸与になってしまったという印象を持っているので,私としては,3年ではなくて5年の猶予期間でもいいのではないかと思っている。 そのように優遇されてしまっている職種が世の中に存在していることを考えれば,最大限の5年というのは,非常に不当なものではないというのが私の印象である。

林幹事 あくまでも議論の参考という意味でお話しすると,公的資金による修学目的の資金の返還据置期間を設けている例は,余り多くないようである。修習資金と密接に関連する日本学生支援機構の奨学金では原則6か月の据置期間となっており,長いものとしては,農林・漁業従事者への貸付けにおける4年の返還据置期間がある。国会で3年から5年という議論がされていたのは,この4年もにらんだ上であったのかもしれない。
 もう1点,本日御欠席の翁(百合)委員から御意見を寄せていただいたので御紹介したい。翁委員は,「3年程度の期間の据置きにとどめる方がよいと考えている。理由としては,この制度を成功させるための鍵は,制度自体の信頼性,すなわち修習資金が必ず返還されることが担保される制度とすることだと思う。就職後,3年と5年で給与水準に統計的に有意な差がないのであれば,修習終了後,少しでも早い時期から返還を始める方が,修習を終えて法曹の仕事によって所得を得るようになれば,借りたお金は速やかに返還しなければならないという借り手の意識を高め,制度の信頼性につながると考える。」という御意見である。

今田委員 お医者さんとの比較も一つの視点としてあり得ると思うが,やはり他の専門職,一般的には,大学院を出て就職して,奨学金の猶予期間は6箇月,もう本当にすぐ返さなければいけないという厳しい状況が現実にある。そのように考えると,もう3年ぐらいから初期キャリアが形成されて地盤が築かれて,期待を込めてということもあるのだろうけれども,そのようなキャリアの実態を踏まえれば,やはり3年が常識的な判断ではないかという気がするので,あえてもう一度申し上げたい。

吉戒委員 日本学生支援機構の奨学金について,相当な滞納があるということも聞いているが,この制度が運用されて十数年後の話として,そのときに相当な滞納があるとすれば社会的な批判を浴びると思うので,なるべく返済意欲が希薄化しないように,短めの3年ぐらいでスタートするのが,今の社会情勢からしてもよろしいのではないかと思う。

大橋正春委員 今は司法改革の途中で,法曹人口の増加等も含めて,弁護士の業務がどうなっていくのか非常に分かりにくい段階である。人数が先に増えて仕事が後から追いかけてくるような状況の中で,3年で従来どおり自分の仕事を確立できると言えるのかどうか,少し疑問があるところである。

鎌田薫委員 大橋委員の御懸念も非常に現実味があると思うが,貸与の形をとって,しかもそれが国費の直接の貸与である制度において,日弁連の会費軽減措置よりも長く猶予期間があるというのも違和感を感じてしまうので,3年を1つの区切りにして,ただし,緊急時の返済猶予の制度で特別の事情に対応するという形の方が,世間の納得も得やすいのではないかと思う。

高橋委員長 他の日本学生支援機構等の奨学金を別にすれば,23万円で1年少し,それを10年間で返すとすれば年当たり25万円前後であろうか。ただし,他の日本学生支援機構等の奨学金返還義務を負っている人が多いということであろう。
 決め手があるわけではないが,3年という御意見と5年という御意見の両方があって,やや3年という御意見が多かったというような印象であるが,そのような取りまとめでいかがであろうか。

出席委員全員 了承

高橋委員長 もう一つの保証人に関して,こちらは余り異論はないかと思う。むしろ,引き受け手をどのように見つけるかということが大事かもしれないが,いかがであろうか。

鎌田委員 保証人のうち一人は父母でなければいけないという部分について,司法修習生はいい年をしているので父母の経済力など余り頼りにならない気もするが,何か制度上の制約があるのだろうか。

林幹事 やはり国の資金であり,我々は予算要求をしなければならないので,他の制度にある規律は横並びで入れるべきだという話になると思う。規則になるかどうかは改めて検討したいと思うが,どこかのレベルでは明確に書かざるを得ないと思っており,資料41には入れさせていただいたところである。

高橋委員長 それでは,据置期間については,先ほど,3年と5年の両方の意見があって,やや3年の意見の方が多かったと申し上げたが,そのまま表現するかどうかは事務当局と私とにお任せいただければと思う。
 その他の点では原案どおりということでよろしいか。

出席委員全員 了承

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