政府公表資料等情報

第16回司法修習委員会平成22年3月1日より抜粋

6.議事

(2)報告

 笠井幹事から,第15回委員会以降の司法修習の状況等について報告がされ,次のとおり質疑応答がされた。

大橋正春委員 新62期の二回試験の考試結果について1点お尋ねする。不合格者の中には,内容というより,手続的あるいは形式的な理由によって不合格になった者も含まれるという話を聞いているが,そのような理由で不合格になるケースを具体的に御説明願いたい。

笠井之彦幹事 答案の綴り込みの問題が上げられるので,その取扱いについて御説明する。
 二回試験の答案は,答案用紙等を綴りひもで綴り込んだ上で提出するという方式がとられている。考試終了の合図があった時点で,綴りひもが結ばれていない答案,それから綴りひもによって綴り込まれていない答案用紙は答案としての回収はされず,無効とされる扱いになっている。このような取扱いは,答案用紙の散逸を避けるとともに,終了後の答案用紙の挟み込み等を防止して試験の公正・公平の確保等を図るために必要な措置であるところ,事前に配布される「司法修習生考試応試心得」に太字で明確に記載されているほか,事務連絡文書も別に配布されており,当日も,試験の開始前,その後の綴りひもの配布時,試験終了の15分前及び5分前の4回にわたって注意するなどしており,修習生に対する周知も十分になされている。しかし,新62期においても,考試終了時に答案の綴りひもが結ばれていなかったということで答案としての提出が認められず,結果として不可の判定になった者が3名いた。

(3)意見交換

ア.現行型司法修習の終了に関する規則案について

木村光江幹事長 資料43の現行型司法修習の終了に関する最高裁判所規則案及びこれに関する幹事会の議論の状況について御説明する。
 現行型司法修習については,この修習委員会において,平成23年度採用の現行65期司法修習生の修習開始時期を,4月から7月下旬に繰り下げることを前提として,平成23年旧司法試験第二次試験(口述試験のみ)の合格者についても,平成23年7月下旬からの修習を受けさせる機会を与え,現行65期までで終了するのが相当であるとの方針が示されているところである。
 また,平成23年旧司法試験第二次試験(口述試験のみ)については,平成23年4月中旬に実施される予定であり,平成22年旧司法試験第二次試験の受験案内においても,受験生に対する周知の観点から,現行型司法修習の終了に関する上記方針に触れられた上,この口述試験の時期について記載がなされている。
 ところで,新司法試験制度の導入等に関する司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年法律第138号)においては,旧司法試験合格者(旧高等試験令による高等試験司法科試験の合格者を含む。)が新司法試験合格者とみなされることが規定されるとともに(同法附則10条),これらの旧司法試験合格者で修習生として採用された者につき,「裁判官,検察官又は弁護士としての実務に必要な能力を十全に修得させるため,必要な修習期間の伸長その他の措置を講ずることができる。」とされている(同法附則11条2項)。
 現行型司法修習は,かかる措置として実施されているものであり,司法修習生に関する規則の一部を改正する規則(平成18年最高裁判所規則第3号)において,これらの修習生の修習期間が1年4月とされるとともに(同附則4項),その司法修習につき,新修習の開始に併せて整備された罷免に関する規定を除き,改正前の司法修習生に関する規則が適用されることが規定されている(同附則5項)。
 今回,資料43としてお示しした規則案は,現行型司法修習を終了させるため,その本文において,今お話しした附則の4項及び5項を削除することとしている。この結果,本規則の施行後は,旧司法試験合格者に対する措置が存在しないことになるので,これらの者についても,新司法試験に合格したものとして,新司法試験合格者と同様に新司法修習を受けることになる。
 なお,規則案の施行日は,現在は空欄となっているが,平成23年7月下旬に現行65期司法修習が開始された後,速やかに施行することを予定している。また,現行65期については,本規則施行後も,引き続き現行型司法修習を実施できるようにするため,所要の経過措置を設けている。
 幹事会では,以上御説明したところを前提とした上で,資料43の内容を了承し,本委員会の議題とすることとした。なお,旧司法試験合格者に現行型司法修習を受ける機会を与えるため,本規則については,現行65期司法修習生への採用申込みが開始される以前に公布される必要があり,周知の期間を考えると,現行65期司法修習が開始される1年前までには制定されていることが望ましいと考えている。

高橋宏志委員長 資料43のとおり最高裁判所規則を制定すべきだということを当委員会の意見にしたいと思うがよろしいか。

出席委員全員 了承

イ.選択型実務修習の実情と課題

木村幹事長 選択型実務修習の実情については,昨年6月の幹事会及び9月の委員会で報告等がなされたところであるが,これによると,選択型実務修習が意欲のある修習生にはかなり大きな成果をもたらしており,新しい司法修習の内容として重要な役割を果たしてきたことは間違いがないと思われる。その一方で,実施後3年を経て,選択型実務修習の在り方に関しては,様々な問題点についての御指摘をいただいているところでもある。
 まず最初の論点として,選択型実務修習の在り方を考えるに当たり,その意義を確認しておくことが重要であると考えられる。
 この点については,司法修習生指導要綱(甲)において,選択型実務修習は,配属庁会等において,司法修習生の主体的な選択により,分野別実務修習の成果の深化と補完を図り,又は各自が関心を持つ法曹の活動領域における知識・技法の習得を図ることを旨として行うこととされている。そして,当委員会の「議論の取りまとめ」においては,このような課程を設ける理由として,「今後,これまで以上に多様化する法曹に対する社会のニーズに応えるためには,法曹を志す者が,法科大学院を中心とする法曹養成の全課程を通じて,法曹として共通に求められる基本的な資質,能力とともに,自らが関心を持ち,将来活動したいと考える分野・領域についての知識,技能を主体的に身に付けていくことが必要となる。自らの関心分野・領域を選択し,これに対応した知識,技能を身に付けるための教育は,第一次的には法科大学院がその役割を担うことになるが,司法修習の中核である実務修習の課程においても,各司法修習生の進路や興味関心に応じて自ら主体的に修習内容を選択,設計できるような課程を設けることが教育効果の面からも有益である。」,「新しい司法修習においては,各分野別実務修習の期間が2か月間に短縮されることや,司法修習生が増員されることから,分野別実務修習において修習する内容や密度も従来以上に司法修習生ごとに相違が生じることになると考えられるので,司法修習生ごとの個別的な修習実績を踏まえて,各自の補足したいと考える分野や興味を感じた領域に対応できる課程を設ける必要がある。」とされているところである。
 実施後3年を経て,このような本来の制度趣旨,これまでの成果を改めて確認しておくことが必要となろうかと思う。
 次に,選択型実務修習全般にわたる論点として,修習生の積極的な履修を促進するための環境整備(特にA班問題)が挙げられる。
 いわゆるA班問題については,幹事会において,11月に実施される選択型実務修習のプログラムへの応募が少ない,二回試験前の模擬裁判を避けたり,選択型実務修習の後半はホームグラウンド修習の履修が多くなる傾向があるなどの弁護士会からの指摘等が紹介された。
 このような傾向について,選択型実務修習の趣旨に照らし,是認することができるかがまず問題になろう。また,この点に関連して,選択型実務修習において,集合修習の復習等を行うことをどのように評価すべきであるかを議論すべきであるとの意見もあった。
 さらに,幹事会では,このような傾向に対し,より積極的な取組を促す方策が議論された。修習委員会として何らかのメッセージを発するべきであるとする意見や,修習生に自覚を促すとともに,ホームグランド修習の指針として活用するため,修習生に選択型実務修習全体を通じた獲得目標,到達目標等を記載した書面を作成させて指導担当弁護士に提出すべきであるとする意見,さらには,二回試験の時期等を検討すべきであるとする意見などが出された。
 また,これと関連して,ホームグラウンド修習の意義及び在り方についても議論がなされた。
 ホームグラウンド修習については,「議論の取りまとめ」によると,分野別実務修習の期間に関して指摘されている裁判修習と弁護修習のバランスの問題や民事分野と刑事分野のバランスの問題を調整するとともに,今後の弁護士業務の多様化に対応する観点から,選択型実務修習を制度的に弁護士実務に比重を置いたものとするために,その一方策として設けられたものである。その上で,選択型実務修習の期間中,最低限1週間は継続して行わなければならないこととされており,相当な理由があれば,選択型実務修習の2箇月間を通じてホームグラウンドでの弁護修習を行うこともできるとされているところである。しかしながら,ホームグラウンド修習については,事務所の受入態勢や適切な課題の確保が難しいなどの実施上の難点があることや,指導担当弁護士がその趣旨を十分理解していないことを指摘する意見もあり,また,その期間を集合修習の復習等,より直截に言えば二回試験対策に費やしている例があるとの指摘もあった。
 次に,外国での修習についてだが,「選択型実務修習の運用ガイドライン」では,現在,外国での修習は当面これを認めないとされている。外国での修習を認める場合,選択型実務修習の趣旨・目的との関係や監督の在り方等が問題となるが,幹事会においては,なおこれを可能とするような枠組みを検討すべきであるとの意見もあった。
 全国プログラムについては,前回の委員会等において,各幹事からその実情等の報告があり,若干の問題点の指摘もあったが,実際に履修した修習生や指導担当者からは,概ね肯定的な評価がなされていたものと理解している。そのような実情を前提として,幹事会においては,さらに全国プログラムの提供・履修が促進されることが望ましいということで異論を見なかった。同様に自己開拓プログラムについても,その一層の充実が望ましいと考えられるところであり,修習生が受入先を開拓するに当たり,自己開拓という建前を踏まえながらも,司法研修所や配属庁会において可能なサポートを行うことが望ましいということで異論を見なかった。
 個別修習プログラムについても,前回の委員会において,その実情につき,実務家の幹事から報告をいただいたところであり,各配属庁会の努力と工夫により,有意義なものが提供されており,基本的には,その拡充が図られるべきであるとの評価が可能であろう。
 もっとも,弁護士会提供のプログラムに関しては,まず,全ての単位会で他事務所修習が提供プログラムになっているわけではないことや大規模会と小規模会でプログラムの内容に格差があることを指摘する意見もあった。幹事会において,これらの点について議論をしたが,後者については,このような格差をひとえに問題視するのではなく,むしろ各地の実情に応じた個別修習プログラムの提供がなされることが重要であるとの意見が多数であった。
 また,具体的にどのようなプログラムの提供が望まれるのかも検討の対象であろうと考えているが,幹事会においては,基本的なレベルの深化や補完に力点を置いたプログラムを用意すべきではないかとの指摘や刑事事件に力を入れるべきであるとする意見等があった。さらに,修習生の参加がやや低調になりつつことが指摘されている模擬裁判についても,司法研修所教官である幹事から,集合修習等でも行われていることを考慮しても,広く履修されることが望ましいという意見が出された。
 なお,大規模庁会と小規模庁会の格差を解消すべきという観点から,高裁,弁連単位のプログラム提供を可能とすべきであるという考え方もあるところであるが,この点については,要件や手続等検討すべき点が多くあると思われるし,幹事会の議論の中でも,強い必要性があるとの指摘はなく,むしろ,小規模庁会は小規模庁会なりの特色をいかしたプログラムの提供に努めることが肝要であるという意見が述べられていた。
 なお,個別修習プログラムのうち,裁判所及び検察庁提供のプログラムは,概ね適切に実施されているものと考えられるが,なお議論すべき点がないかという観点から御検討願いたい。
 さらに,履修手続(申込手続)については,個別修習プログラムについて,申込時期が早すぎ,深化又は補完すべき対象が分からない時点で申込みをしなくてはならないとする意見もあった。

酒巻匡委員 「A班問題」という用語が使われると,非常に深刻な問題のように感じられるが,選択型実務修習の意義については先ほど確認されたとおりだと思う。したがって,志のある修習生の自主性に任せるということでいいと思う。修習生として送り出した法科大学院の卒業生と二回試験が終わってから会うと,A班の修習生もB班の修習生もいずれにしろ二回試験がそれなりに大変であるということで,緊張感を持って修習している。結局は個人の志の問題だと思う。
 二回試験の問題を拝見しても,基本的な学識を身につけて修習をすれば,ものすごく大変な試験というわけではない。受入先の指導担当者が,A班の修習生に対し,選択型実務修習の意義をきちんと理解した上で御指導されるのであれば,「A班問題」というように大きく取り上げるような問題にはならないのではないか。

大橋委員 選択型実務修習において裁判所及び検察庁で提供しているプログラムは,ある程度その対象が限定されているため,集合修習あるいは二回試験との連続性が非常に明らかな部分がある。ところが弁護士会では,非常に多様なプログラムを提供しているので,それに対して応募する修習生がいないということが起こりうる。提供したプログラムに応募者がいないと,プログラムを提供した担当者が徒労感をおぼえ,プログラムを提供する意欲を失ってしまうこともある。
 選択型実務修習のプログラムに応募せず,もっぱらホームグラウンド事務所で二回試験の勉強をしている修習生に,選択型実務修習の意味を理解させた上でプログラムに応募させ,実効性を持たせるためにはどういう方法があるかということを,弁護士会の担当者としてはお伺いしたい。例えば,法科大学院の場合,先端・展開科目をかなりたくさんつくっているところがあると思うが,法科大学院の学生はやはり司法試験の科目に集中したがる傾向があると思う。そういう中で法科大学院では学生に先端・展開科目を履修させるため,どういう工夫をされているのか。

今田幸子委員 「A班問題」と呼ばれるような,選択型実務修習の期間中にプログラムに応募しないで二回試験の勉強をしている修習生はかなり多いのだろうか。目につくほど多いのか,少数だが極端な人がいるのか,全般的にみんなやっているのかを教えていただかないと「A班問題」と言われてもどれほど深刻なのかよくわからない。また,修習生のほうに意欲がなくてプログラムに応募しない状態なのか,受入側のほうで準備がされていないために修習生に意欲があっても受けられない状態なのかという辺りのことを教えていただければと思う。

笠井幹事 選択型実務修習中,A班の修習生の中にはプログラムに応募せず「ホームグラウンド修習」という弁護士事務所での修習を選択する期間が若干長くなる傾向があるようだが,どの程度まで受験勉強に特化した形になっているのかという実態までは,当研修所のほうで必ずしも正確に把握できていないし,把握するのはなかなか難しいところがある。
 それが修習生の問題なのか,指導する側の問題なのかということだが,これについては両方の側面があると思う。最近の修習生については,二回試験のことを気にするという傾向が強く見られると感じており,それが二回試験に近い時期に選択型実務修習をしているA班の修習生により傾向として現れてくることは可能性としてはあり得ると思われる。

鈴木健太委員 私は,この制度立案段階で多少関与しているので,選択型実務修習の意義というのは十分わかっているつもりではある。ただ,実際に動き出してからほとんど見ていないので,実態は理解できてはいない。一つの問題として,選択型実務修習の理念というものが,分野別実務修習の深化と補完を図る,あるいは自分の足りないところを主体的に補うということであれば,ある程度分野別実務修習が済んでからでないとわからないと思う。プログラムを早い段階で固定されてしまうと,修習生もどう組んでいいかわからず,わからないまま申し込んだり,あるいはほとんど個別修習プログラムに参加せず,結果的にホームグラウンドで二回試験の勉強をしてしまうことになるのかもしれない。
 一方で,大量の修習生のプログラムをつくり上げるというのはそれなりの時間と手間がかかるので,余り遅い段階ではできないというのも,十分よくわかるところである。手続的にもう少しどうにかなるのか,あるいは一旦くみ上げても,分野別実務修習がある程度進んで自分なりの問題点に気づいたときに,多少プログラムを変更するとか,あるいは特定のプログラムに参加したいという申出が後でどの程度できるのかというところの実態がわかれば,お教え願いたい。

笠井幹事 選択型実務修習のプログラムについては,第1クールの段階で全国プログラムも個別修習プログラムも提示される。全国プログラムについては,応募や実際の受入先決定までに手続が必要になるので,1月末から3月末までのクールである第2クールの過程で応募し,それから決定手続がされることになる。
 個別修習プログラムについては,御指摘のとおり,自分がどのプログラムに応募するのが一番いいかというのは,分野別実務修習を相当程度やった時期でないとわからないということがあり,少なくとも第4クールについても,少し見ていただいた上で最終的に何に応募するかを決めてもらうというのが建前である。
 実務庁によって,修習生の人数が非常に多かったりするというような場合,若干前倒しして第3クールにやらざるを得ないというところもあるが,基本的には第4クールにおいて,できるだけ全体を見てから応募ができるように配慮している。

高橋委員長 今田委員から御指摘があった,どれぐらいの人間が二回試験対策ばかり考えているのかというところは,定量的なところはわからないが,A班・B班でやはりプログラムの応募率に差がある,先に選択型実務修習をするB班の修習生はそれなりに応募しているが,A班はどうも食いつきが悪いという現象はありそうだということでよろしいのか。

今田委員 A班とB班の二回試験の成績結果に有意な差はないとお伺いしている。そうなると,受験勉強はほとんど効果がないということであり,プログラムに応募しない修習生は,受験勉強をして,なおかつそれが成績にも反映されず,選択型実務修習という絶好の学習機会を自ら喪失し,放棄し,その経験を得なかったという非常に非合理的な愚かな選択をした人たちだということになる。だとしたら,まじめに選択型実務修習に応募して二回試験を受けて,法曹人になった人のほうがずっと得なわけだから,当委員会で議題として検討するほどの問題ではないのではないかと思う。

野辺博幹事 A班の修習生が選択型実務修習について意欲的でないというのは,実務庁の弁護士の指導担当者の意見と言ってもいいと思う。
 個人的に弁護士会を通して確認した数字であるが,例えば東弁だと,選択型実務修習中に1日でも欠席をしたことのある修習生の割合は,新61期では,26%程であったが,新62期になると33%と増えている。一弁,二弁にも調べてもらったのだが,一弁,二弁とも新61期は欠席者21%に対し,新62期になるとやはり二弁が31%,一弁だと38%にも上る。非常に大きな問題であると考えている。

高瀬浩造委員 私は,プログラムに応募せず,欠席することも含め,個人それぞれが考えた上での選択だと思ってはいるが,それによってプログラムを提供する側のモチベーションが落ちるのであれば,この問題はやはり見逃せないと思う。さらに,それが応募する側にも悪影響を与えるということが多分にあるので,このまま放置すると,A班の選択型実務修習の特に終わりの部分は,かなり空洞化してしまうと思う。
 欧米の大学院教育では,ポートフォーリオと言われる,一体何を勉強して,一体どういう研修を受けたのか,それがどういう領域なのかということを含めた一覧表のようなマトリックスが用意されていて,そこに実際何をやりましたと,あるいはちゃんと出席しましたということがレコードに残る。学生個人ごとに全部管理されていて,それがあるレベルに達していなければ,不足があると指摘を受けることになる。管理的な意味を持って,一体何を勉強して何を修習したのか,すなわち個別修習プログラムでもどういうテーマについてやったのかということを,指導官以外の誰からでも分かる状況をつくって,修習生ごとに管理するということぐらいしか今は方策がないような気がする。勉強ができていないからひたすら受験勉強をしなければいけないという人がいれば,それもだめだとは言えないと思うのだが,選択型実務修習の意義は間違いなく大事なことだと思う。実際自分が何をやっていて,何はうまくやれていないのか,やっていないのかということなどを管理して,修習生本人たちにも自覚してもらい,あるいは指導官の方々にもそのことを指摘しやすくするというようなことぐらいしか方策はないのではないかと思う。放置するとどんどん悪い方向に向かうことは目に見えているので,何らかの方策はとるべきである。

高橋委員長 先ほど大橋委員から,法科大学院でも新司法試験科目以外の科目を学生たちはあまり熱心に受講しないのではないか,それに対して法科大学院は何かいい方策を持っているのかという質問があったが,この点はいかがか。

酒巻委員 私の学校では,かなりマニアックな授業にも出る学生は,大体熱心に履修しており,ほかの成績もいいというタイプである。

鎌田薫委員 うちの法科大学院は多分,司法試験と関係ない科目を一番たくさん設置している法科大学院だと思うが,そこに人を集めるために何か工夫をしたということはない。ただし,司法試験の合格率がだんだん厳しくなったということの影響が全くないかというと,やはり初期の法科大学院生と比べれば,全く司法試験と関係ないような科目を受講する人の数は多少減っているという気はする。しかし,そういうものが顕著になってきたわけではないし,学生の動向は余りよくわからなくて,例えば弁護士だったらお金を払ってでも聞きたいというような著名な先生の授業を設置したら人が集まるかというと,必ずしもそうではなかったりする。それぞれの先輩からの口コミであったり,同期の人たちのそのときの雰囲気みたいなもので学生の動向が決まるなど,我々の予測とは違う流れがあるかもしれない。
 それともう一つは,試験に近い時期というのは,やはり試験とあまり関係ないものを避けるという傾向は少し強くなってきていると思う。例えば3年生の春と秋とを比べれば,春の方が試験と関係ないけれども自分の能力を伸ばすための科目に集まる人の数が相対的に多いということはあるように思うが,正確には動向を分析したことがないので,その程度のことしか申し上げられない。

高橋委員長 法科大学院によると思うが,法科大学院では先端・展開科目から何単位履修しなければならないという縛りがあり,履修しないと修了できない。選択型実務修習の場合は,ホームグラウンド修習があるから,そこを隠れみのにできるということであろう。先端・展開科目と称しながら法律基礎科目をやっていると,それは認証評価で必ず指摘されるので,そういう縛りも制度的にはあるということだと思う。ロースクールの学生にも試験が近い時期は,試験とあまり関係ない科目を避ける傾向があり,その点は困った問題だという意識はあるが,「A班問題」というほどの深刻な受けとり方は,法科大学院の教師はしていないだろうと思っている。
 議論を少し整理させていただくと,プログラムに応募するかは自己責任として当委員会の議題にするほどのことではないのではないという考え方もあるかと思う。
 しかし,放置しておくとどんどん悪いほうの循環が起きる可能性があり,何らかの対応策が必要であろうという御意見もあった。やや単純かもしれないが,先ほどの法科大学院の授業で言えば,先端・展開科目に出席していながら,その人の見ている教科書を見たら民法の教科書だったというのは,絶対に大学院では許されない。選択型実務修習をしていると称しながら,実際には二回試験の勉強を昼間からやっているとなると,これはやはり制度本来の趣旨から外れるという認識は,多少濃淡はあると思うが共通だと思われる。
 法科大学院の比喩を使えば,鎌田委員が御指摘されたように,3年生の後半になると,短答式の勉強というのはかなりプレッシャーになってくるので,家に帰ってから,学生によっては本来の予習・復習の時間は少し削って,そちらのほうに向けるということはあろうかと思うが,それを授業時間中にするということはまず考えられない。ところが,修習生には,どれくらいの数かはわからないが,選択型実務修習のプログラムに応募しないで二回試験の勉強をしている者がいるということであり,放置できる問題ではないということでよろしいか。

出席委員全員 (よい。)

高橋委員長 では,それを前提にして何ができるかということだが,幹事会では当委員会から修習生や指導担当者双方に対し,何らかのメッセージを出す,あるいは先ほども少し御指摘があったが,本人にもっときちんとした計画書を出させるとか,そういう話が出たということだが,この点はいかがか。

翁百合委員 二回試験の時期を再検討してはどうかという御意見があったというようにも伺っているが,それは具体的に実現可能性がある話なのかどうなのか確認させていただきたい。

笠井幹事 現在,新修習の修習期間は少なくとも1年ということになっており,修習は大体11月27日ぐらいから始まり,そこからちょうど1年後の11月26日までに二回試験まで終わって1年という形になっている。
 2月の幹事会のときにも,二回試験の時期を後ろにずらし,その前の日数をあけることができないかという御意見もいただいた。ただ,二回試験を後ろにずらすと,次の期の修習が正に始まる時期になる。次の期の修習の導入時期というのは非常に重要な時期で,司法研修所でも導入のための教育,起案をさせたり,教官が出張して講評をしたりという時期に入っているので,二回試験の時期を後にずらすというのは,難しい状況にある。
 それ以外にも二回試験前に一定の期間を与えられる方法がないかいろいろ検討したが,集合修習の日程その他との関係で,そういった余裕はない状況である。
 現在は集合修習と二回試験との間に自由研究日を一日設けているが,日程としてはそれが限度であると考えている。

高橋委員長 次に,外国での修習の可否の点はいかがか。

酒巻委員 外国での修習とは,具体的にはどんな場所でどういうことを修習するということが想定されているのか。

笠井幹事 選択型実務修習には分野別実務修習の深化・補完あるいは多様な分野への対応という目的がある。この目的を念頭に置くとき,2箇月の選択型実務修習の中で,外国に行かなければできない修習には何があるのかという,正にその点が一つの問題であると思う。
 選択型実務修習を導入する当初の議論でも,選択型実務修習の趣旨・目的にかなうような外国での修習として実際に何が考えられるかということは,相当に検討すべき点が多いとされ,それが当面は外国での修習は認めないという扱いになった大きな理由の一つであると思う。

酒井委員 司法試験に受かって,修習をして日本の法律家になるというのが前提である。外国での修習は,外国の在り方を見て,また日本の在り方を考えるという比較法的な見地から勉強するのだと思うが,そうだとすると,日本法に関するきちんとした知識がないと,ただ外国へ行ってもほとんど身にならないと思う。しかも非常に短期間行っても,恐らく何も得るところはないと思うので,修習の効果からいってもあまり必要がないのではないかという感じはする。

高瀬委員 確認だが,外国での修習については,現在,認めないというのをやめるという話なのか,積極的に外国での修習について考えようということなのかがよくわからないので御説明願いたい。個人的には,今の御意見どおり,この段階で外国で修習をすることは多分ないと思う。選択型実務修習の目的に該当するような内容のプログラムは今のところ思いつかない。
 ただ,将来的に外国での修習を永遠に認めないというのは,理不尽な感じはあるので,そういう意味で,現在,選択型実務修習を外国ですることを認めないということが足かせになって,将来的にプログラムとして選択型実務修習の目的に適したものが出てきたとしてもだめだということについては,確かに行き過ぎと思う。

笠井幹事 今の点につき,選択型実務修習を導入する当初の段階で議論があり,現時点では,外国での修習というのは当面認めないという説明の仕方をしているが,これは将来的にも一切認めないという趣旨ではない。先ほど申し上げたように,選択型実務修習の趣旨・目的にかなうような外国での修習があるかどうかということをしっかり検討した上で,必要なものがあった場合には,検討の余地があると思う。
 ただ,その場合でも,選択型実務修習中は弁護士会の会長が修習生に対する監督をするということになっており,修習生が外国で修習するに当たり,その監督がきちんとできるかどうか等といったいくつかの問題点がある。それをクリアできるかどうかも当然検討する必要があると思う。外国修習は一切認めないという趣旨ではなく,その必要性というのをさらに検討して,必要性があるとなった場合は,その時点でまた検討しましょうということで,現在に至っている。

高橋委員長 積極的な御意見もあったが,意見交換としては,当面は現状どおりということでよろしいか。

出席委員全員 (よい。)

高橋委員長 それでは,全国プログラム及び自己開拓プログラムにつき,御議論いただきたい。全国プログラムについてはおおむね肯定的な評価がなされているということである。自己開拓プログラムも,意欲のある修習生は一生懸命やっていて,それなりの成果を上げているということである。自己開拓プログラムについては,受入先が,司法修習というのはどういうもので何のために受け入れてもらうのかというところの理解が若干足りない例もないわけではないので,修習生をサポートする体制はもう少し整備してもいいのではないかということだが,自己開拓プログラムとしては,どのようなものがあげられるか。

笠井幹事 非常に多様なものがあるが,例えば企業の法務部,行政機関に行くというプログラムが結構多い。それ以外にも議院法制局や隣接法律専門職種に行くこともある。いずれにしろ,自己開拓プログラムは,法律実務と一定の関連性を持った上で,各地の指導連絡委員会で適当だと認めたものということになる。

大橋委員 「A班問題」の話に戻るが,この問題は,裁判所や検察庁提供のプログラムでは,それほど大きな問題にはなっていないという理解でよろしいか。

笠井幹事 裁判所提供のプログラムにつき,特にA班だから,B班だからというところで違いがあるというようなことは,私のほうでは聞いていない。実際,特殊部の修習については非常に人気があり,これについてはA班のほうでも応募する率が非常に高いと伺っている。

酒井委員 私は,検察庁提供の個別修習プログラムの実情をそれほど把握していないので,補完の必要があれば上野幹事から伺っていただきたいのだが,検察庁が提供するプログラムは捜査・公判が中心で,その修習中に何かほかの勉強をするというのは,事実上無理ではないかと思う。それで「A班問題」というのはあまり耳にしたことはないのだと思う。

上野友慈幹事 新62期の選択型実務修習の応募率という観点で申し上げると,結論から言うと,A班もB班も応募率はほぼ一緒である。
 検察庁が提供している個別修習プログラムのうち刑事関連施設等見学修習コースはほぼ100%に近い応募率で,A班もB班もほぼ変わらない。捜査・公判補完コースについては,比較的長期の3週間又は4週間コースと,2週間コースの2種類があるが,長期コースの4週間又は3週間コースのほうは,A班の応募率は0.73,B班の応募率は0.45ということで,むしろA班の応募率が高い状況にある。2週間コースは全く逆で,A班のほうは0.16で,B班のほうは0.38であり,いずれも応募率に満たないのが現状であるが,検察庁提供の個別修習プログラムに限って言うと,応募率の観点では今のところA班とB班にさほど差はないと理解している。
 酒井委員のほうからお話があったように,修習中はかなり多忙なため,検察の個別修習プログラム履修中にほかの勉強をする余裕はまずないと思う。

高橋委員長 弁連単位の修習プログラムの提供の可否についてはいかがか。

大橋委員 弁護士会から聞いたところによると,B班の修習生からは,ホームグラウンド修習の制度をなくして,もっと色々なプログラムに応募したいという意見がかなりあるようだ。そういう中で,地方の小単位会では提供するプログラムにどうしても限度があると伺っている。指導担当者が限られてしまうので,プログラムをつくったとしても同じ人がやることになってしまう。弁連単位の修習については,幹事会では基本的には消極的な御意見だったようだが,そこのところをもう少し御説明願いたい。

笠井幹事 大規模庁会と小規模庁会では,当然それぞれに違いがあるが,それにはいい面と悪い面とがそれぞれあり得ると思う。大規模庁会であれば大規模庁会でしかできない修習があるだろうと思うし,小規模庁会には小規模庁会,あるいはその地域の特色をいかした修習があるのだろうと思う。それをそれぞれの配属庁会に配属された修習生に体験していただき,全体的な調整については集合修習で行っていくというのが,司法修習の建前である。
 それを前提にして,北海道の例だが,釧路でやれることが少ないから札幌でやれたらどうだろうかという話もあるが,基本的には釧路の修習生であれば,釧路の特色を出したプログラム,旭川なら旭川の特色を出したプログラムがあると思うので,それを提供していただいて,修習生に応募してもらうのがまず第一だと思う。
それ以外に,さらに弁連単位等でなければやれない修習が実際にあるのかどうかという意味で,幹事会ではそこまでのものが実際にあるからやるべきだという意見にはならなかったと認識している。

酒巻委員 今御説明があったとおり,基本的に修習は昔からその修習地で行うことになっているようだが,例えば近畿弁護士連合会単位でのプログラム提供というのは,京都や奈良で修習している修習生が大阪に行って,近弁連でやるのを何か聞くというイメージなのか,それとも先ほどの大橋委員のお話だと,小規模庁だと,準備や多彩なプログラムを用意するのが困難であるので,例えば近弁連の何人かの方がまとまって,一つのコースみたいなものをつくって,それを各単位弁護士会の弁護修習の中で,共通プログラムとしてその修習地の指導担当者がその地でやるという,そういうイメージなのかがわからなかったので御説明願いたい。

笠井幹事 今酒巻委員が言われたのであれば前者のほうのイメージである。ただ,それも若干違って,例えば札幌のプログラムに釧路の修習生が参加して札幌で一緒に修習をするということをどうもイメージしているようである。
 ただ,そういうことをすると釧路の方は札幌に任せておけばいいのではないかということにもなりかねず,そこら辺のモチベーションの問題も起こりうるのではないかという話も出ていたと思う。

高橋委員長 それでは,模擬裁判についてだが,あまり修習生が応募しないということだが,この辺についてはいかがなものか。

大橋委員 模擬裁判については,選択した修習生からはいろいろな意味で勉強になり,結果としては応募してよかったという声が高い。ただ確かに,負担は非常に大きいという声もある。私が見たのは民事だが,民事だとまず記録を渡され,訴状を書き,それが終わると翌日に答弁書を書かなくてはならず,さらにその翌々日ぐらいには,今度はそれに反論をすることになる。それからさらに証人尋問の準備をすると1週間なり2週間なり,毎日夜遅くまで準備しないとできないという,かなりハードなスケジュールになっているというのが選択を躊躇させる原因ではないかという気がする。

巻之内茂幹事 東弁の司法修習委員会の場合も,正におっしゃるとおりである。負担が重いので,ことに二回試験に近い時期に模擬裁判を設定すると応募率が悪くなっている。

大橋委員 負担をある程度軽くしながら効果が上げられるような法律相談のプログラムをつくることも考えられるのではないかということもお聞きしているが,刑事について言えば,分野別実務修習で刑事弁護を担当する機会が非常に少ないのは問題である。事件そのものが少ないからということだが,実務でできないことを補うために模擬裁判をするというのは,かなり意義があるのではないかという気はする。そのような中で応募者が少なくて実施できないというのは問題である。負担を軽減しながらこの傾向を改善する方法というのは考えられるのだろうか。

本郷亮幹事 刑事の模擬裁判に関しては,ロースクール等で経験した人もいるので,あえて選択型実務修習のときに選択する人が少ないのではないかという話もあったが,実際に修習生の話を聞いてみると,ロースクールのカリキュラムに格差があって,必ずしも模擬裁判をやっているわけではないようである。
 集合修習における刑事系の模擬裁判のカリキュラムとしては,刑裁,検察,刑弁の3教官室合同でやるミニ模擬裁判がある。これは公判前整理手続から証人尋問までの手続をやるというカリキュラムだが,実際問題として,修習生の数が,新修習だと70名以上が1クラスにおり,それを3つのグループに分けて分担してやるとしても,どうしても積極的にやる人もいれば,何もやらない人もいるということで,修習生の間でも非常に格差が出てしまう。そういった意味では,選択型実務修習で模擬裁判のプログラムに応募し,積極的に手続等に関与してもらうことは,これから実務に出る人にとって必要性はかなりあるのではないかと考えている。
 模擬裁判のプログラムの履修状況に関し,A班・B班で考えると,B班のほうは比較的たくさんの修習生が選択をしていて,A班のほうが少ないという傾向があるようだ。しかもA班の模擬裁判の日程の設定の仕方が,選択型実務修習の2箇月のうちのかなり後ろのほうに設定されてしまうと,明らかに修習生の負担が大きいということは言えると思う。そう考えると,できれば模擬裁判の日程の設定で特にA班に関しては,選択型実務修習の2箇月のうちの最初のほうに設定してもらうような形で,かつ,選択型ではあるが模擬裁判に関しては半ば強制的に履修させるようにすると,修習生にとって結果としては非常に有益であろうと考えている。

高橋委員長 大橋委員からも御指摘があったが,模擬裁判自体は非常に有効な修習の方法であるから,プログラムの提供時期・内容面を含めて御検討いただきたい。
 選択型実務修習のプログラムの申込時期については,先ほども議論されたが,選択型実務修習全体について,幹事会でさらにもんでほしいことがあったら御発言をお願いしたい。

今田委員 お話を伺っていて,選択型実務修習の哲学は素晴らしいし,関係者の御努力によって,成果が上がってきていると思うが,二回試験が持つ意味が非常に大きいこと,そして日本の社会に深く根づいた選抜型の試験への過重なコミットメントを改めて感じている。
 不合格者が数パーセントであり,傾向的にも,制度は整っていき,そこでの教育効果,学習効果が上がっていけば,ますます不合格者は少なくなるだろうと思われる。ほとんどの人はよほどのことがない限りは修習で振り落とされるということはない制度になっている。にもかかわらず,二回試験にそれほど修習生が拘束され,束縛されるのは,この二回試験が,司法修習を修了し,一定の能力のある人だという判定をする習熟度テストではなく,修習過程で選抜され,社会や法曹界に出ていくときに,ある一定の意味を持つ,つまり簡単に言えば,法曹人としてのキャリア形成に決定的に意味を持つような構造がまだ持続されているのではないかと改めて思う。それがある限りは,いくらいい入れ物をつくっても,最終的な試験でより良い成績をとって,キャリアにおいてより良い選択をしたいという意欲が,どうしても色濃く残ってしまうのではないかと感じる。
 そういう意味で,二回試験が,キャリアの選択に影響しないようにできないだろうかと思う。影響がなくなれば試験勉強に励む必要がなくなり充実したプログラムがあれば,そこで勉強して,必要な能力を身につけて法曹人になっていくのではないかと思う。選択型実務修習というのは,自立型の,法曹人のキャリア形成にとって本当にいい制度で,弁護士の先生方もこれを受け入れるために大変な努力もされているにもかかわらず,何かゆがみのようなものが生じているのは非常に残念である。残念というのは,司法修習生が非合理的な選択をしているだけでなく,それを支えている構造というようなものがあるのではないかという感想を持つからである。

笠井幹事 二回試験は,基本的には法曹としてスタートラインにつくだけの知識・能力,これを備えているかどうかというところを見て合否を判定する試験であり,そこに一番大きなウェイトがある。
 今田委員が言われたように,実際に数パーセントの人しか落ちない試験であるので,普通に修習してくれば通る試験であるということは御理解いただきたい。

酒井委員 修習生にはおそらくうんといい成績で二回試験を通りたいという集団ととにかく合格したいという集団とがあって,それぞれ別々の思惑があると思うが,私の感じだと,選択型実務修習を履修しないで二回試験の勉強をするという修習生は,どちらかというと後者で,とにかく二回試験に落ちないで通りたいという人たちが多いのではないかという感じがする。本当にできる人間は最初から勉強をしているので,あえて最後の1箇月,2箇月で体調不良を理由に休んでまで勉強するということは,そんなにはないのではないかという感じはする。

翁委員 二回試験だけでなく,むしろ修習に対する姿勢とかそこでの実績とかいったものが総合的に評価されて,合否が判定されるような仕組みに変えていくことは難しいのか。

笠井幹事 修習の成績については,考試の結果とともに司法研修所長が最高裁判所の司法修習生考試委員会に報告することになっている。それらを合わせて合否の判定をすることになる。

翁委員 前者の割合をより高くすることによって,より修習生のモチベーションを高められるような工夫ができないか。

巻之内幹事 先ほど酒井委員がおっしゃっていたことに関連するが,私は,実際に修習生を預かったり,司法修習委員会を見たりしているが,必ずしも合否すれすれの人たちがプログラムに応募せずにホームグラウンドで二回試験の勉強をしているわけではなく,むしろ成績がいいぐらいの人たちが,将来の自分の成績簿を考えて勉強したいという傾向のほうが多いかもしれない。だからこそ悩みが多い。

高瀬委員 今までのお話を伺って感じるのは,二回試験は評価が公平であるが,実務修習の成績については,いろいろなところで評価を受けたものであり,均一の評価であるという保証は難しいので,それだけで評価されるのは非常に困るし,危険であるということはあるのではないかと思う。
 ただ,そうは言っても,やはり試験だけで評価ができるわけでもないので,試験以外の部分での評価はその質,精度を上げていただいて,それと試験とを対等なぐらいの比率で評価するということを,今後は考えざるを得ないと思う。
 先ほどの模擬裁判の履修状況についてのお話で驚いたのは,ロースクールも司法研修所も含めて,模擬裁判を一度も経験していない法曹関係者が登場する可能性があるということだ。私たちのような医学の関係者が見ると,全く信じられない。
 すぐに模擬裁判を必修にするということはできないかもしれないが,最終的な形としては,大変かもしれないが,やはり何らかの形で模擬裁判は,1回は経験させるようにすべきだと思う。その成績も二回試験の成績と足し算をして,それで合否判定,あるいは成績判定がされるということを将来的にはやっていただかないといけないだろうと思う。
 私の領域では,明らかに筆記試験と実習の成績を大体一対一で足し算をして成績を判定するので,どんなに筆記試験がよくても実習の態度が悪ければ,確実に成績は下位に落ちてしまう。大変だと思うができないことではないと思うので,やはりそういう方向に向かう必要があるのではないかと思う。そうすれば,試験はもちろん頑張るけれど,実習そのものに対しても真摯に対応して,そこでの経験をいかして,将来に向けるということができるようになると思う。

鎌田委員 特に個別の修習プログラムを考えると,ホームグラウンド修習との競争だと思う。ホームグラウンド修習で担当者が指導をせず,修習生に二回試験の勉強を自由にさせるのと修習プログラムを履修するのとどちらを選ぶかというような場面もないわけではないということになると,やはりホームグラウンド修習自体が,きちんとプログラムを立てて,きちんとした修習を実施し,評価をしているというふうな品質保証がないと,選択型実務修習のほうでいくら頑張ってプログラムを提供しても,むしろ易きに流れるという気がするので,ホームグラウンド修習について,きちんとしたプランをつくり,評価システムを確立よう弁護士会として努力していただく必要があると思う。

奥田正昭幹事 先ほどの高瀬委員のお話に若干誤解があるようなのでお話ししておきたい。集合修習の中で,民事系は民事裁判,刑事系は刑事裁判で,それぞれ模擬裁判は必修でやることになっている。
 本郷幹事から刑事系の模擬裁判についてお話があったが,民事の関係でも,民事裁判と民事弁護の教官がタイアップして,共同講義的な形で,争点整理手続,証人尋問,さらにその後の和解も含めた解決方法についての検討を,修習生全員が役割を分担した上で,ロールプレイング方式で実施することになっている。修習生に模擬裁判を経験させるという手当ては必ず集合修習の中ではされている。その点だけ一言申し上げる。

高橋委員長 本委員会での議論も踏まえ,選択型実務修習の課題については,さらに幹事会で御検討いただきたいと思う。

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