平成23年司法試験予備試験の出願者数と合格者数予測

出願者8971人

3月28日に、法務省は平成23年の司法試験予備試験の出願者数(PDF)を公表した。
出願者数は、8971人。
これは、平成22年旧司法試験の出願者数16088人のおよそ55.7%である。
ほぼ半減したことになる。

予備試験の出願期間は、当初平成22年12月1日から同月の14日までとされていた。
これは、旧司法試験の出願期間が例年2月上旬だったことからすれば、かなり早い時期だった。
そのため、出願しようと思ったときには出願期間が過ぎていた、という人が相当数いたようである。
このような場合、通常はチェックしなかった者が悪い、ということになる。
しかし、今回は初めてだったということで、特例的に2月16日までの再出願が認められた。

(法務省HPより引用)

平成23年司法試験予備試験の再出願受付について

 平成23年司法試験予備試験の出願につきましては,すでに受付を終了したところですが,本日(1月28日)の司法試験委員会において,平成23年2月3日から平成23年2月16日までの間,再度,出願を受け付けることとされました。願書の交付及び出願手続等については,以下のとおりです。
  なお,すでに出願されている方については,手続の必要はありません。

(引用終わり)

 

(日経新聞WEB版 2011/1/29 21:55配信記事より引用)

司法予備試験、再び受け付け 法務省「不慣れ考慮」

 法務省は29日までに、法科大学院修了者以外にも受験資格を与える司法試験の予備試験について、いったん締め切った出願を再度受け付けると発表した。2月3日からで、インターネットは9日、郵送は16日まで。

 法務省は「予備試験は初めてで、希望者が不慣れなことも考慮した」と説明している。

 同省によると、昨年12月1〜14日に受け付け、7906人が出願。しかしその後も、「例年2月だった旧試験と同じ時期だと思った」との問い合わせが約100件あった。

(引用終わり)

再出願受付前における出願者数(PDF)は、7906人だった。
従って、再出願を利用した人は、8971−7906=1065人ということになる。
受験地別にみると、以下のようになっている。

受験地

再出願
受付前

再出願
受付後

前後比
(後÷前)

札幌

211

253

1.19%

仙台

190

232

1.22%

東京

5153

5816

1.12%

名古屋

438

478

1.09%

大阪

1310

1503

1.14%

広島

190

218

1.14%

福岡

414

471

1.13%

全体的に、1割から2割程度増加している。
名古屋が少なく、札幌、仙台が多いが、それほど意味のある差とはいいにくい。
ほとんど地域差は生じていない。
そういってよいだろう。

予備試験の出願期間は、法務省HPを見たり、電話で直接問い合わせることで知ることができる。
もっとも、これは自分から積極的に動く必要がある。
ひょっとして出願期間が早いかもしれない、一応確認しておこう。
そういう意識を持てる人しか、採ることのできない行動である。

漠然と生活していて、出願期間が早いということを知ることができる機会は限られる。
予備校や、ロー、法学部のある大学などの掲示やパンフレットである。
そのため、予備校や大学等の集中する東京の方が増加率は小さいのではないか。
そう思ったが、そうでもなかった。
出願層は、予備校や、大学、ローにあまり通っていない人が多いということかもしれない。
そのような人は、やはりネットや電話で確認するほかない。
ネットや電話で確認する場合には、どの地域でも差は生じない。
地域間格差が生じなかったのは、そのためとも考えられる。
個人的には、再出願受付前の受験者と、後から出願した受験者の最終合格率に差が付くか、興味がある。
しかし、そのような数字は、公表されないだろう。

初回の予備試験の難易度は、平成16年並か

再出願を受け付けても、出願者数は8971人にとどまった。
これは、これまでの旧司法試験の出願者数を考えると、非常に少ないといえる。
以下は、合格者数が大幅減少に転じた平成18年度以降の出願者数等の推移である。
(23年度は、予備試験の数字である。)

年度

出願者数

受験者数

受験率

択一合格者数

択一合格率
(受験者ベース)

論文合格者数

論文合格率
(択一合格者ベース)

論文合格率
(受験者ベース)

18

35782

30248

84.5%

3820

12.6%

542

14.1%

1.7%

19

28016

23306

83.1%

2219

9.5%

250

11.2%

1.0%

20

21994

18203

82.7%

1605

8.8%

141

8.7%

0.7%

21

18611

15221

81.7%

1599

10.5%

101

6.3%

0.6%

22

16088

13223

82.1%

742

5.6%

52

7.0%

0.3%

23

8971

             

平成18年の35782人と比べると、8971人は、その25%、すなわち4分の1程度である。
また、前述のとおり、最後の旧試験である平成22年と比べても半分程度に過ぎない。
旧試験の終了を区切りにして撤退した人が、かなりいたのだろう。
一方で、弁護士の就職難等が報道されたため、新規参入者が少なかったと考えられる。

このことは、今年度の受験者にとっては有利となりそうだ。
具体的に、合格率を予測してみよう。

まず、受験者数については、旧試験の近時の受験率が参考になる。
おおよそ、82%くらいである。
これを利用すると、受験者数は、8971人×0.82≒7356人となる。
そして、今回は、地震の影響がある。
法務省は、仙台の受験者に受験地の変更を認めている
しかし、受験地が仙台である232人の中には、それでも受験できない人がいるだろう。
残念なことであるが、やむを得ないことである。
それが何人になるかは、予想が困難である。
ここでは、半数の116人が、受験できないと仮定する。
そうすると、予想される受験者数は、7240人となる。
その場合の受験率は、80.7%となる。

年度

出願者数

受験者数

受験率

択一合格者数

択一合格率
(受験者ベース)

論文合格者数

論文合格率
(択一合格者ベース)

論文合格率
(受験者ベース)

18

35782

30248

84.5%

3820

12.6%

542

14.1%

1.7%

19

28016

23306

83.1%

2219

9.5%

250

11.2%

1.0%

20

21994

18203

82.7%

1605

8.8%

141

8.7%

0.7%

21

18611

15221

81.7%

1599

10.5%

101

6.3%

0.6%

22

16088

13223

82.1%

742

5.6%

52

7.0%

0.3%

23

8971

7240?

80.7%?

         

択一合格者数については、手がかりになる数字が3つある。

一つは、近年の旧司法試験の択一合格率である。
予備試験は、新試験と並行して実施される試験である。
従って、平成18年度以降の旧試験に近い意味合いを持っている。
その意味では、その時期の旧試験の合格率を参考にしてもよいといえる。
もっとも、近年の旧試験は、終了を前提に合格者数を縮小させていた。
一方で受験者数減がこれに追いつかず、異常な合格率になっていた。
予備試験は、これから始まる試験であり、そのような事情はない。
しかも、旧試験は、合格すれば法曹資格を取得できた。
予備試験は、合格しても新試験の受験資格を得るだけである。
そういうことからすれば、予備試験は、近時の旧試験ほどには厳しくはないだろうと考えられる。
従って、これは最も厳しい想定の上での数字といってよい。
平成18年から平成22年までの平均合格率は、9.4%である。
これを基礎とすると、7240×0.094≒680人となる。

もう一つは、過去の旧司法試験において、出願者数が8000人前後だった頃の択一合格者数である。
これは、大体8000人くらいの規模で試験した場合、大体この程度は合格させるものだ。
そういう試験実施側の大雑把な感覚を手がかりにするものである。
過去のデータを見ると、昭和35年の出願者数が8363人である。
この年の択一合格者数は、1774人だった。
この場合、択一合格率は、1774÷7240≒24.5%となる。
感覚的には、妥当な感じを受ける。
ただ、当時の旧試験と予備試験は性質が違うので、参考程度の数字である。

3つ目は、予備試験用法文の事前の印刷部数である。
法務省の「平成23年司法試験予備試験用法文」印刷製本請負業務に係る入札広告(PDF)によれば、2000部である。
上記が公表されたのは3月31日であり、出願者数が確定した後である。
このことから、法務省は出願者数8971人を踏まえた上で、2000人前後を択一合格者として想定していると考えることができる。
なお、平成21年度の旧司法試験では、1500部であった(参照リンク)。
その年の択一合格者数は、1599人である。
それなりに、参考になる数字と思ってよいだろう。
ただ、こういうものは、通常やや多めに準備するものである。
例えば、平成21年度の新司法試験では、10600部であった(参照リンク)。
しかし、実際の受験者数は、7392人である。
(ただし、新試験の受験者数は受け控え等法務省が操作できない要素を多く含む点に留意が必要である。)
平成21年の旧司法試験は、その意味で法務省にとっても予想外に受かった年といえた。
従って、これはやや甘い数字と考えた方がよい。

そこで、やや乱暴ではあるが、上記3つの数字の平均値を採ることとする。
そうすると、(680+1774+2000)÷3≒1484人となる。
この場合、択一合格率は、1484÷7240≒20.4%となる。

年度

出願者数

受験者数

受験率

択一合格者数

択一合格率
(受験者ベース)

論文合格者数

論文合格率
(択一合格者ベース)

論文合格率
(受験者ベース)

18

35782

30248

84.5%

3820

12.6%

542

14.1%

1.7%

19

28016

23306

83.1%

2219

9.5%

250

11.2%

1.0%

20

21994

18203

82.7%

1605

8.8%

141

8.7%

0.7%

21

18611

15221

81.7%

1599

10.5%

101

6.3%

0.6%

22

16088

13223

82.1%

742

5.6%

52

7.0%

0.3%

23

8971

7240?

80.7%?

1484?

20.4%?

     

論文については、択一より予測は困難である。
近時の論文合格率と、前記の昭和35年の論文合格者数を参考にするよりない。

平成18年から平成22年までの論文合格率の平均は、9.46%である。
そうすると、1484×0.0946≒140人となる。

一方、出願者数が8363人であった昭和35年の論文合格者数は、366人である。

そこで、両者の平均値を採ると、(140+366)÷2=253人となる。
この場合の論文合格率は、短答合格者ベースで、253÷1484≒17.0%。
受験者ベースにすると、253÷7240≒3.4%となる。

年度

出願者数

受験者数

受験率

択一合格者数

択一合格率
(受験者ベース)

論文合格者数

論文合格率
(択一合格者ベース)

論文合格率
(受験者ベース)

18

35782

30248

84.5%

3820

12.6%

542

14.1%

1.7%

19

28016

23306

83.1%

2219

9.5%

250

11.2%

1.0%

20

21994

18203

82.7%

1605

8.8%

141

8.7%

0.7%

21

18611

15221

81.7%

1599

10.5%

101

6.3%

0.6%

22

16088

13223

82.1%

742

5.6%

52

7.0%

0.3%

23

8971

7240?

80.7%?

1484?

20.4%?

253?

17.0%?

3.4%?

本来は、この後に口述がある。
ただ、旧試験を見る限り、ここは落ちるとしても10人前後だろう。

以上は、相当に乱暴な予測である。
とはいえ、感覚的には何となくありそうな数字でもある。
論文の受験者ベース合格率3.4%という数字は、近時の旧試験では平成16年(3.5%)がこれに近い。
この年は、択一合格率17.1%、択一合格者ベースの論文合格率は、20.6%だった。
平成16年は、合格者が旧試験史上最多の1536人だった年である。
そう考えると、受かり易い試験といえなくもない。
もっとも、予備試験は、受かっても次にまた新試験がある。
単に受験資格を得るだけの試験としては、厳しすぎるともいえる。

予備試験は、法科大学院卒業と同程度のレベルなのだから、もう少し甘くなるのでは。
そう期待する人もいるかもしれない。
しかし、それは旧司法試験における一次試験のことを考えると、現実味のない期待である。
以下は、旧司法試験第一次試験の受験者数等の推移である。

年度

受験者数

合格者数

受験者
合格率

12

301

28

9.3%

13

296

25

8.4%

14

372

25

6.7%

15

395

30

7.6%

16

413

26

6.3%

17

354

2.3%

18

290

24

8.3%

19

310

23

7.4%

20

248

24

9.7%

21

190

16

8.4%

22

186

18

9.7%

一次試験は、大学卒業程度のレベルを問うはずである。
しかし、試験問題と合格率からすれば、普通に大学を卒業する方がはるかに易しい。
予備試験も、旧試験における一次試験に似た位置づけの制度である。
予備試験がロー卒なら誰でも受かるような試験になるということは、あり得ない。
合格レベルの基礎となるのは、ロー卒レベルかという建前論ではない。
裏街道の制度として許容できる数かどうか、という点である。

新試験では、法務省が予備試験組、ロー組別の合格率を出すようである。
そこで有意な差が出れば、問題にはなるだろう。
しかし、それはローの質の向上が必要だということになるだけである。
予備試験の合格者をどんどん増やすという方向には、ならないだろう。
予備試験に過剰な期待をするのは、危険である。

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