平成23年新司法試験・予備試験
短答式試験の感想(1)

全体について

5月15日に、新試験と予備試験の短答式試験が行われた。
(試験問題はこちら(新試験予備試験)。)
今回、新試験と予備試験の短答式は、同日・同時刻に行われた。
問題が、一部共通化されたためである。
受験生の水準を、比較しようということである。
新試験の日程で、短答が最後に回されたのも、これが原因である。

一部共通化というと、共通問題は2、3問程度というように思える。
しかし、事前の議論では、予備試験からみて8割、新試験からみて5割程度とされていた。
問題数にすると、8問から12問程度ということになる。

司法試験委員会会議第64回(平成22年3月29日)より引用、下線は筆者)

試験委員 いろいろな御意見があるかもしれないけれども,予備試験の受験者にどの程度の水準の層がいるのかといったことを測るためには,やはり新司法試験との短答式試験問題の一部共通化をしておかないと,法科大学院を修了した者と比べようがないのではないか。私は,一部共通化は必要だと思う。

 (中略)

事務局 例えば,公法系科目を例にとると,新司法試験の問題数は,40問程度であり,憲法と行政法とを区分して考えると,それぞれおおむね20問程度ずつとなっている。他方で,予備試験については,各科目いずれも10問ないし15問程度とされている。この予備試験の問題のうち,例えば,8割程度を共通化するとした場合,共通となる部分は,8問から12問程度となる。この場合,新司法試験の側から見れば,20問程度のうち半分前後が予備試験と共通の問題で,残りの半分前後が新司法試験の独自の問題ということになる。

委員長(高橋宏志) 共通化する問題の割合まで当委員会で決めるわけではないが,イメージとしては,大体そのような感じだろうということである。将来的にいつまで共通化を続けるかはともかくとして,当面は,短答式試験問題の一部共通化をしてみてはどうかと思うが,いかがか。

試験委員 方向性としては良いと思う。

試験委員 私も賛成だが,共通化した場合,当然,新司法試験と予備試験のそれぞれの短答式試験を同じ日に実施することになる。問題が漏えいしないように開始時間を調整することは,可能なのか

事務局 同じ日に新司法試験と予備試験の短答式試験を実施する場合の時間の調整については,現在検討しているが,一方の受験者から他方の受験者に問題が漏れないような形で時間割を組むことは,技術的には可能である。

 (中略)

事務局 ・・・予備試験を受験する層として社会人が想定されていることからすると,予備試験の短答式試験は,日曜日に実施するのが最も望ましいであろうと思われる。他方で,新司法試験は,従来は,水曜日,木曜日,中日を1日置いて,土曜日,日曜日という日程で組んでおり,水曜日に短答式試験,木曜日,土曜日,日曜日に論文式試験を実施している。新司法試験について従来の日程のまま,日曜日に短答式試験を実施するとすれば,新司法試験の受験者は,水曜日,木曜日,土曜日と論文式試験を受験して,最後に短答式試験を受験するという案が考えられる。

(引用終わり)

実際には、共通問題は、憲法9問、行政法10問、民法・商法・民訴法が各12問、刑法・刑訴が各10問だった。
そのため、両者の出題傾向も、重なってくることになる。
そこで、ここでは両者をまとめてとりあげることとする。

公法系について

基本的には、これまでの新試験の短答と同じ傾向である。
知識問題が多く、その多くは判例の知識である。
しかも、肢で切れない問題が多い。
単純正誤(正:1、誤:2で選ばせる問題)がその代表である。
また、組み合わせ問題も、肢で切れないように作られることが多い。
例えば、3つの正誤を問う場合、2×2×2=8通り全ての肢が用意されている。
どれか一つでも正誤を誤ると、正解に辿り着けない。
両者の違いは、部分点の余地があるか否か、というだけである。
また、憲法の方が易しく、行政法の方が難しい。
憲法は、基本知識が多いが、行政法はやや細かい。
問い方も、行政法の方が凝った訊き方を訊いてくる。
同じ単純正誤でも、憲法では、3つの正誤を問うが、行政法は4つであることが多い。
8分の1が16分の1になるから、その難易度の差は大きい

もっとも、後述のように、新試験に限っては行政法で読解系の問題が増えた。
これが今後継続する傾向となるか、注目したい。

新試験第1問は、最大判平17・1・26からの出題である。
これは、司法試験平成17年度最新判例肢別問題集で出題した。

(新試験第1問)

 東京都管理職選考受験資格確認等請求事件判決(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決,民集59巻1号128頁)に関する次のアからウまでの各記述について,当該判決の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.普通地方公共団体は,職員に採用した在留外国人について,国籍を理由として,給与等の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないが,合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。

イ.普通地方公共団体が,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任できる措置を執ることは,憲法第14条第1項に違反しない。

ウ.日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者は,居住する地方公共団体の自治の担い手であり,地方公共団体の管理職への昇任を制限するには,一般の在留外国人とは異なる理由が必要である。

 

司法試験平成17年度最新判例肢別問題集より引用)

2:労働基準法及び地方公務員法上、普通地方公共団体は、職員に採用した在留外国人について、国籍を理由として、給与、勤務時間その他の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないものとされているが、地方公務員法24条6項に基づく給与に関する条例で定められる昇格(給料表の上位の職務の級への変更)等については、上記の勤務条件に含まれないものというべきである。従って、普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人の処遇につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではなく、そのような取扱いは、合理的な理由に基づくものである限り、憲法14条1項に違反するものでもない。

(参照条文)

●労働基準法
3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
112条 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

●地方公務員法
24条6項 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。
58条3項 労働基準法第二条 、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第五項、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条 の規定、船員法 (昭和二十二年法律第百号)第六条 中労働基準法第二条 に関する部分、第三十条、第三十七条中勤務条件に関する部分、第五十三条第一項、第八十九条から第百条まで、第百二条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条 の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。ただし書略

8:普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきであり、普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであるから、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではなく、このことは、いわゆる特別永住者にも妥当する。

(引用終わり)

知っているかどうかだけで、差が付く。
しっかり事前準備をしておきたい。

新試験第4問のイは、ひっかり易い肢である。

(新試験第4問)

 衆議院議員定数不均衡訴訟判決(最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決,民集30巻3号223頁)に関する次のアからウまでの各記述について,当該判決の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.略。

イ.議員定数配分に際しては,人口比例の原則が最も重要かつ基本的な基準ではあるが,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的な目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,国会の裁量権の行使の際における考慮要素にとどまる。

ウ.略。

設問の判例は、以下の判示部分が有名である。

最大判昭51・4・14より引用、下線は筆者)

 憲法は、前記投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他にしんしやくすることのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのであり、投票価値の平等は、さきに例示した選挙制度のように明らかにこれに反するもの、その他憲法上正当な理由となりえないことが明らかな人種、信条、性別等による差別を除いては、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものと解さなければならない。

このことから、正しいと判断したくなる。
しかし、上記判示は、以下のように続いている。

最大判昭51・4・14より引用、下線は筆者)

 もつとも、このことは、平等選挙権の一要素としての投票価値の平等が、単に国会の裁量権の行使の際における考慮事項の一つであるにとどまり、憲法上の要求としての意義と価値を有しないことを意味するものではない。投票価値の平等は、常にその絶対的な形における実現を必要とするものではないけれども、国会がその裁量によつて決定した具体的な選挙制度において現実に投票価値に不平等の結果が生じている場合には、それは、国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的ないしは理由に基づく結果として合理的に是認することができるものでなければならないと解されるのであり、その限りにおいて大きな意義と効果を有するのである。それ故、国会が衆議院及び参議院それぞれについて決定した具体的選挙制度は、それが憲法上の選挙権の平等の要求に反するものでないかどうかにつき、常に各別に右の観点からする吟味と検討を免れることができないというべきである。

(引用終わり)

従って、本肢は「国会の裁量権の行使の際における考慮要素にとどまる」の部分が誤っている。
これは、普段から全文を読んでいても、うっかりするところである。
間違っても、やむを得ない気がする。

新試験第7問、予備試験第3問のウは、いわゆるメイプルソープ事件(最判平20・2・19)である。
これは、司法試験平成20年最新判例肢別問題集で出題した。

(新試験第7問、予備試験第3問のウ)

 問題となっている写真集のわいせつ性については,芸術など性的刺激を緩和させる要素の存在,問題となっている各写真の写真集に占める比重,作者に対する当該分野の評論家からの評価,その表現手法等の観点から,写真集を全体としてみて判断すべきである。

 

司法試験平成20年最新判例肢別問題集より引用、下線は引用元のまま)

【問題】

3:ある写真集が関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に当たるかを判断するにあたり、当該写真集の芸術性は性的刺激を緩和させる要素ではなく、見る者の好色的興味に対する訴求力を減じる要素である。

8:ある写真集が関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に該当するか否かを判断するにあたり、当該写真集に含まれる性器を描写した写真がカラー写真ではなく、白黒写真であることは、当該写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることについて消極的な要素であるが、当該写真集が日本語に翻訳されたものであることは、積極的要素でも消極的要素でもない。

10:写真集「MAPPLETHORPE」を日本語に翻訳したものを我が国に輸入しようとした事案につき、最高裁は、当該写真集全体に対して男性性器そのものを強調し、その描写に重きを置くものとみざるを得ない写真の占める比重は相当に高いものというべきであるが、写真集における性的刺激を緩和させる要素の存在、その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには、本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難であるとして、関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に該当しないと判示した。

 

【解答】

3:誤り(最判平20・2・19)。
 「以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在、本件各写真の本件写真集全体に占める比重、その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには、本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難といわざるを得ない」と判示した。

8:正しい(最判平20・2・19)。
 「本件各写真は、いずれも男性性器を直接的、具体的に写し、これを画面の中央に目立つように配置したものであるというのであり、当該描写の手法、当該描写が画面全体に占める比重、画面の構成などからして、いずれも性器そのものを強調し、その描写に重きを置くものとみざるを得ないというべきである。しかしながら、・・・、しかも、本件各写真は、白黒(モノクローム)の写真であり、性交等の状況を直接的に表現したものでもない。以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在、本件各写真の本件写真集全体に占める比重、その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには、本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難といわざるを得ない」と判示した。
 他方、本件写真集が日本語に翻訳されたものである点については、上記判断において積極的要素とも消極的要素ともされていない。

10:誤り(最判平20・2・19)。
 「本件各写真は、いずれも男性性器を直接的、具体的に写し、これを画面の中央に目立つように配置したものであるというのであり、当該描写の手法、当該描写が画面全体に占める比重、画面の構成などからして、いずれも性器そのものを強調し、その描写に重きを置くものとみざるを得ないというべきである。しかしながら、・・・本件写真集は、ポートレイト、花、静物、男性及び女性のヌード等の写真を幅広く収録するものであり、全体で384頁に及ぶ本件写真集のうち本件各写真(そのうち2点は他の写真の縮小版である。)が掲載されているのは19頁にすぎないというのであるから、本件写真集全体に対して本件各写真の占める比重は相当に低いものというべきであり、・・・以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在、本件各写真の本件写真集全体に占める比重、その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには、本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難といわざるを得ない。
 これらの諸点を総合すれば、本件写真集は、本件通知処分当時における一般社会の健全な社会通念に照らして、関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に該当するものとは認められないというべきである」と判示した。

(引用終わり)

上記を解いていれば、芸術性、全体に占める比重、表現手法が列挙されていたことを思い出せただろう。
しかし、それを思い出せたとしても、本肢は迷う。
なぜなら、上記判例は、考慮要素として「作者に対する当該分野の評論家からの評価」を列挙していないからである。
評論家の評価は、「芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在」における考慮要素の一つとして考慮されている。

(最判平20・2・19より引用、下線は筆者)

 メイプルソープは,肉体,性,裸体という人間の存在の根元にかかわる事象をテーマとする作品を発表し,写真による現代美術の第一人者として美術評論家から高い評価を得ていたというのであり,本件写真集は,写真芸術ないし現代美術に高い関心を有する者による購読,鑑賞を想定して,上記のような写真芸術家の主要な作品を1冊の本に収録し,その写真芸術の全体像を概観するという芸術的観点から編集し,構成したものである点に意義を有するものと認められ,本件各写真もそのような観点からその主要な作品と位置付けられた上でこれに収録されたものとみることができる。・・以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在,本件各写真の本件写真集全体に占める比重,その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには,本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難といわざるを得ない。

(引用終わり)

これを、どう考えるか。
結論的には、正しいとも誤りともいえる。
「作者に対する当該分野の評論家からの評価」を考慮している以上は、正しいじゃないか。
いや、要素の列挙の仕方として、芸術性とは異なる独立の要素として列挙するのはおかしいから、誤りだ。
(刑法の不作為犯において、同価値性を保障人的地位や作為義務の内容に含むと考える説からは、重ねて同価値性を独立の要件として列挙するのはおかしい、という議論がある。それと同じ発想である。)
どちらも成り立ちうる。
あとは、法務省次第ということになるだろう。
もっとも、「以上のような本件写真集における芸術性など性的刺激を緩和させる要素の存在,本件各写真の本件写真集全体に占める比重,その表現手法等の観点から写真集を全体としてみたときには」という判示との対比からすると、本肢の「作者に対する当該分野の評論家からの評価」部分は意図的な挿入であり、改変である。
だとすると、誤りではないかという感じはする。

こういうものは、いかに時間をロスしないようにするかに気を遣うべきである。
手持ちの知識からは、どっちもあり得るな。
そう思ったら、どちらか適当に決めて、何か印をつけて先に行く。
そして、時間が余ったら印の部分に戻り、もう少し検討してみればよい。
この肢を間違うと、設問全体の配点を取ることができない。
そのため、こだわりたくなる気持ちは、理解できる。
しかし、多くの場合、この種の問題は時間をかけても正解を確定できない。
無駄に時間を消費するのは、避けるべきである。

新試験第12問、予備試験第6問のアも、迷う肢である。

(新試験第12問、予備試験第6問)

 憲法第31条に関する次のアからウまでの各記述について,aの見解からbの見解が導き出せる場合には1を,導き出せない場合には2を選びなさい。

ア.a.憲法第31条は,文字どおり,刑罰を科する場合には,法律で定める手続によらなければならないという要求のみを規定したものである。

b.条例は地方公共団体が制定する自主立法であるから,刑罰を科する場合の手続を条例で定めることも許される。

a の方は、31条は手続の法定のみ定めた規定だ、という見解である。
b は、手続を条例で定めてもよい、とする見解である。
これは、ストレートにa→bと導き出せる関係にはない。
なぜなら、条例は法律ではないからである。
ただ、b には、「条例は地方公共団体が制定する自主立法であるから」という理由付けが付いている。
これを、どう考えるか。
厳密には、上記理由付けを踏まえても、a→bという論理には飛躍がある。
なぜなら、「自主立法であれば、法律と同視してよい」という部分が欠けているからである。
ここを重視すれば、答えは2となる。
他方、自主立法という文言は、法律と同視できるという意味も含むのだ。
そう解釈すれば、答えは1となるだろう。
これも、あとは法務省次第となる。
ただこの種の問題において、過去の傾向では別個の論点かどうかを訊いている場合がある。
その観点からは、a (法定の範囲)とb (「法律」に条例を含むか)は別個の論点である。
そうすると、両者は論理的に関連しない。
すなわち、2が答えである可能性が高い。

新試験第19問は、最大判平18・3・1からの出題である。
これは、司法試験平成18年度最新判例肢別問題集で出題している。

(新試験第19問)

 旭川市国民健康保険条例事件判決(最高裁判所平成18年3月1日大法廷判決,民集60巻2号587頁)に関する次のアからウまでの各記述について,当該判決の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア.租税は,国民に対して直接負担を求めるものであるから,課税をするに当たっては,必ず国民の同意を得なければならない。したがって,租税を創設し,改廃する場合だけでなく,課税要件と賦課及び徴収の手続についても,全て法律に基づいて定められる必要がある。

イ.憲法第84条は,直接的には,租税について法律による規律の在り方を定めるものであるが,国,地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても,その性質に応じて,法律又は法律の範囲内で制定された条例によって適正な規律がなされるべきである。

ウ.憲法第84条の定める「租税」とは,国又は地方公共団体が,その課税権に基づいて,その使用する経費に充当するために,強制的に徴収する金銭給付のことをいい,市町村が行う国民健康保険の保険料の徴収には憲法第84条の趣旨は及ばない。

 

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集より引用)

3:国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たる。

4:最高裁は、国民健康保険事業に要する経費の約3分の2は公的資金によって賄われていること、及び、国民健康保険が強制加入とされ、保険料が強制徴収されることを根拠として、市町村が行う国民健康保険の保険料には、憲法84条の規定が直接に適用されることはないと判示した。

5:最高裁の判例によると、国民健康保険税についても、憲法84条の規定は直接適用されないとの結論を採ることになる。

6:租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及び、その場合における賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなど、その規律の在り方についても、租税と異なるところはない。

7:旭川市国民健康保険条例が、国民健康保険の保険料率の算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で、旭川市長に対し、保険料率を同基準に基づいて決定して告示の方式により公示することを委任していたことについて、最高裁は、当該条例が、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定した上で、その算定に必要な費用及び収入の各見込額並びに予定収納率の推計に関する専門的及び技術的な細目にかかわる事項を、被上告人市長の合理的な選択にゆだねたものであり、また、その見込額等の推計については、国民健康保険事業特別会計の予算及び決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶものであることを根拠として、憲法84条の趣旨に反しないと判断した。

8:旭川市長が旭川市国民健康保険条例の規定に基づき平成6年度から同8年度までの各年度の国民健康保険の保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことについて、最高裁は、保険料率の決定が賦課期日後に恣意的に判断されることにより、法的安定が害されるおそれがあることを指摘しつつも、憲法84条の趣旨には反しないと判断した。

(引用終わり)

この判例は、平成19年にも出題されている。

(平成19年新試験短答式公法系第18問)

 市町村の国民健康保険条例に保険料率などの具体的規定がないことと租税法律主義を定めた憲法第84条との関係について判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年3月1日大法廷判決,民集60巻2号587頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つの組合せを,後記1から6までの中から選びなさい。

ア. この判決は,国又は地方公共団体が課税権に基づき,その経費に充てるための資金を調達する目的をもって,特別の給付に対する反対給付としてでなく,一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は,その形式のいかんにかかわらず,憲法第84条に規定する租税に当たるというべきであるとした。

イ. この判決は,国民健康保険の保険料は租税ではないから憲法第84条が直接適用されることはないが,国又は地方公共団体が賦課徴収する租税以外の公課であっても,賦課徴収の強制の度合いなどの点において租税に類似する性質を有するものについては,憲法第84条の趣旨が及ぶと解すべきであるとした。

ウ. この判決は,憲法第84条の趣旨に照らせば,市町村が行う国民健康保険の保険料についても,条例において賦課要件をどの程度明確に定めておく必要があるかは,専ら国民健康保険が強制加入とされ,保険料が強制徴収される点を考慮して決定されるべきであるとした。

エ. この判決は,保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準及び賦課総額に基づく保険料率の算定方法が賦課期日までに明らかにされているとしても,具体的な各年度の保険料率をそれぞれ各年度の賦課期日後に告示するとすれば,憲法第84条に反し,許されないこととなるとした。

この問題は、例の漏洩絡みで、知らないと解けない問題として槍玉に挙がったものである。

参院法務委員会平成19年11月08日より引用、下線は筆者)

○前川清成君 ・・一点御指摘をさせていただくと、この問題は憲法の問題であって行政法の問題ではないと、だから植村教授が作ったものではないという御答弁は、七月六日付けの答弁書の答えと矛盾をします。
 どの点が矛盾をするかといいますと、私は、どうして行政法なんかが司法試験の科目に選ばれたのですかという質問主意書を出させていただきました。それに対する政府の答弁書は、受験生の幅広い理解力を判定するため複数の法律分野にまたがる問題の出題も可能とするためだと、こういうふうにお答えになっているんです。憲法、行政法と、そういうカテゴリーを分けてきっちり区別をして問題を出すんじゃありませんよ、行政法や憲法、またがる問題についても出題するんですよ、こういうのが政府の御答弁でした。
 そして、現に今日理事会の御許可を得てお配りさせていただいていますこの十八問、これが純粋に憲法の問題なのかというと、実は地方公共団体の定める条例の保険料率に関することですから行政法にもかかわってくる、そんな問題なんです。また、植村教授は、現に行政法の勉強会と称して行政法の判決を四つ、憲法の判決を一つ紹介しています。その憲法の判決の一つがこの第十八問で問うた最高裁判所の十八年三月一日の判決なんです
 ですから、植村さんが否定していますと、いやいや、植村さんは行政法だけれどもこれは憲法ですというような御答弁は、法務省の役人にもしかしたら大臣だまされている、そんな可能性があるんじゃないかと私は思います。どうか・・大臣、私の今の発言お聞きいただいていたと思います。その上で、御自身の御判断でお答えいただきたいと思うんです。
 この十八問というのは、ただ法律の理解、考え方を問う問題ではありません。問題を読んでいただいたら分かるとおり、十八年三月一日の最高裁の判決を知っているか知らないか、それだけの問題です。点からプロセスと言っておきながら、実はこれは点からプロセスではなく、点から重箱の隅つついとる、そんな問題なんです。こんな問題を出しておいて、試験の公正さが害されていないというようなへ理屈、私はまかり通らないと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) このジュリストに最近の重要な判例百選とあって、その中から、植村元考査委員が十ぐらいを、あれはメールで送ったのかな、何か文書で送ったかということがあったわけですね。
 この十八問を見ますと、私も疑問に思ったんです、先生と同じに、これ暗記物じゃないのと。法務省のお役人にしたらこんなの暗記物じゃねえかと。そうすると、読んだか読まないか、知っていたか知っていないかが重大な、答えが合うか合わないかの境目になりますね、境になりますね。こういう問題は余り良くないなと、私は単純にそう思ったわけです
 実は私、恥ずかしながら、司法試験というのを何の勉強もしないで大学の四年のときに九百円の受験料を払って、赤れんがで払って受けに行ったことがあるんですよ。場所どこだったか覚えていません。司法試験って何だろうと思って、問題配られて、見たら、判例を知っていないと答えられないような、短答式ですよね、一次試験だから、それで私は実はその場で退席をしたんです。司法試験っていうのはこういうものかという経験だけして、問題をぱあっと見まして、十分ぐらいで退席をしたという記憶があるんですが。
 だから、これね、相変わらず、こういうのは短答式というか何というか、選択式の問題で、記憶力というか、読んだか読まないかが正誤の、何というか非常に重要な分岐点になるような問題はまあどうなのかなという疑問は持ちます

(引用終わり)

国会の議論にもかかわらず、法務省は懲りずにまた出題した。

もっとも、今年は、知識偏重を改めようという姿勢もみられる。
新試験第25問、第26問、第29問である。
これらは、いずれも最近の判例を素材にした問題であるが、知識問題ではない。
かつての判例読解問題と、ほぼ同様の問題である。
昭和後期から、平成初期にかけて、旧試験でよく出題された形式だ。
この形式の問題は、引用部分から論理で解いていかなければならない。
知識で解こうとすると、かえって間違えてしまう場合もある。
事前の知識を要しないという意味では、解き易いともいえる。
ただ、新試験では、90分で40問である。
1問に2分強くらいしか使えない。
この種の読解問題は、解くのに時間のかかる問題である。
今後この種の問題が増える場合、時間配分が重要になってくるだろう。
今のところ、この傾向が強まるかどうか、わからない。
司法試験は、旧試験時代から知識重視→論理重視→知識重視という流れできた。
また、論理重視へと動いていくのか。
注目したいところである。
それから、上記の読解問題は、全て新試験単独の問題である。
予備試験では、読解問題は出題されていない。
意図的にそのようにされているのか。
これも、今後の傾向をみていく上での注目点である。

新試験第33問も、参照条文を当てはめていけば概ね解答できる。
その意味では、読解問題に近い。
ただ、イの肢については、参照条文として挙がっていない行訴法11条1項1号の知識が必要となる。

予備試験第12問イでは、国民投票法が出題された。
これは、同法126条1項により、正しい。

国民投票法126条1項
 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認があったものとする。

国民投票制度については、総務省のHPで説明されている概略程度は押さえておきたい。

予備試験第16問のエは、川崎民商事件であり、正しい。
ただ、この判例は、「実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」の部分が有名だ。
上記部分を改変した誤りの肢だと判断してしまった人も多かったのではないか。

(予備試験第16問エ)

 所得税法による検査については,法律上,裁判官の発する令状が要件とされていないが,このことが憲法第35条に違反するかどうかが争われた事例において,最高裁判所は,強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の一つとして,憲法違反ではないという判断を下している。

 

(川崎民商事件判例より引用、下線は筆者)

 所論のうち、憲法三五条違反をいう点は、旧所得税法七〇条一〇号、六三条の規定が裁判所の令状なくして強制的に検査することを認めているのは違憲である旨の主張である。
 たしかに、旧所得税法七〇条一〇号の規定する検査拒否に対する罰則は、同法六三条所定の収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものであるが、同法六三条所定の収税官吏の検査は、もつぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であつて、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない、また、右検査の結果過少申告の事実が明らかとなり、ひいて所得税逋脱の事実の発覚にもつながるという可能性が考えられないわけではないが、そうであるからといつて、右検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。けだし、この場合の検査の範囲は、前記の目的のため必要な所得税に関する事項にかぎられており、また、その検査は、同条各号に列挙されているように、所得税の賦課徴収手続上一定の関係にある者につき、その者の事業に関する帳簿その他の物件のみを対象としているのであつて、所得税の逋脱その他の刑事責任の嫌疑を基準に右の範囲が定められているのではないからである。
 さらに、この場合の強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、同法七〇条所定の刑罰を加えることによつて、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであり、かつ、右の刑罰が行政上の義務違反に対する制裁として必ずしも軽微なものとはいえないにしても、その作用する強制の度合いは、それが検査の相手方の自由な意思をいちじるしく拘束して、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたいところである。国家財政の基本となる徴税権の適正な運用を確保し、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために収税官吏による実効性のある検査制度が欠くべからざるものであることは、何人も否定しがたいものであるところ、その目的、必要性にかんがみれば、右の程度の強制は、実効性確保の手段として、あながち不均衡、不合理なものとはいえないのである。憲法三五条一項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、前に述べた諸点を総合して判断すれば、旧所得税法七〇条一〇号、六三条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、これを憲法三五条の法意に反するものとすることはできず、前記規定を違憲であるとする所論は、理由がない

(引用終わり)

このように公法系では、百選等で判旨とされる部分以外も訊いてくる。
本肢は行政法の問題として出題されているが、憲法でも重要判例である。
この種の重要判例は、判旨だけでなく、全文に当たっておきたい。

新試験の第23問ウは、地方自治法250条の3第1項のかっこ書であり、正しい。

(新試験第23問ウ)

 市町村長を経由して,都道府県知事に対して申請を提出するよう法律が定めている場合,知事が定めるよう努めなければならない標準処理期間には,申請が知事に到達してから申請の処理に通常要する標準的な期間のほか,市町村長に到達してから知事に到達するまでの標準的な期間も含まれる。

地方自治法250条の3第1項

 国の行政機関又は都道府県の機関は、申請等が当該国の行政機関又は都道府県の機関の事務所に到達してから当該申請等に係る許認可等をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該国の行政機関又は都道府県の機関と異なる機関が当該申請等の提出先とされている場合は、併せて、当該申請等が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該国の行政機関又は都道府県の機関の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定め、かつ、これを公表するよう努めなければならない。

地方自治法247条から250条の6までは、行手法の学習と併せて一読しておきたい。

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