平成23年新司法試験・予備試験
短答式試験の感想(2)

民法について

従来の新試験の傾向から、変化はない。
内容は、かつての旧試験と比較して基本的なものばかりである。
条文と判例を知っているかどうか。
それだけの問題がほとんどだった。
実力者であれば、9割程度は取ってくる。
7割に満たなかった人は、勉強不足である。

新試験第3問、予備試験第2問のオは、少し迷った人もいたかもしれない。

(新試験第3問、予備試験第2問のオ)

 無権代理人が本人所有の土地に抵当権を設定したため,本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した後死亡し,無権代理人が本人を相続したとしても,無権代理行為は,有効とならない。

これは、最判平10・7・17である。
この判例は、「本人が追認拒絶した後に本人を相続した無権代理人は追認拒絶の効果を援用できる」部分だけを記憶している人が多い。
そのため、本肢の抹消登記請求訴訟をもって本人の追認拒絶と考えてよいのか。
そのような疑問が生じうる。
しかし、上記判例は、その点についても判示している。

(最判平10・7・17より引用、下線は筆者)

 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法一一三条一項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。このように解すると、本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで法律効果に相違が生ずることになるが、本人の追認拒絶の有無によって右の相違を生ずることはやむを得ないところであり、相続した無権代理人が本人の追認拒絶の効果を主張することがそれ自体信義則に反するものであるということはできない。
 これを本件について見ると、Eは、被上告人らに対し本件各登記の抹消登記手続を求める本訴を提起したから、Fの無権代理行為について追認を拒絶したものというべく、これにより、Fがした無権代理行為はEに対し効力を生じないことに確定したといわなければならない。そうすると、その後に上告人らがEを相続したからといって、既にEがした追認拒絶の効果に影響はなく、Fによる本件無権代理行為が当然に有効になるものではない。

(引用終わり)

民法では、判例全文に当たる余裕はあまりない。
これは、知らなかったとしてもやむを得ないだろう。
もっとも、知らなくても、抹消登記請求は無権代理行為と正面から抵触する行為である。
そのこと自体が追認拒絶の意思表示と考えてもよさそうだな、というところから、解答したいところである。

新試験第13問のアは、平成15年改正前は正しかった。

(新試験第13問ア)

 指名債権を質権の目的とする場合において,その債権に証書があるときは,証書を交付しなければ質権設定の効力は生じない。

 

(平成15年改正前の民法363条、原文はカナ表記)

 債権を以て質権の目的と為す場合に於いて其債権の証書あるときは質権の設定は其証書の交付を為すに因りて其効力を生ず。

しかし、平成15年改正後は、誤りとなった。

(現行民法363条)

 債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。

古いテキストや問題集では、上記が反映されていない場合があるので、注意を要する。

新試験第14問2は、最判平17・2・22である。

(新試験第14問2)

 動産売買の先取特権者は,物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

これは、司法試験平成17年度最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成17年度最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

2:動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

【解答】

2:誤り(最判平17・2・22)。

 「民法304条1項ただし書は、先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ、この規定は、抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については、物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると、動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である」と判示した。

これは、短答対策だけでなく、論文対策としても重要な判例である。

商法について

これも例年の新試験と同様の傾向である。
会社法からの出題が、メインとなった。
新試験では、19問中15問が会社法。
予備試験では、15問中12問が会社法である。
ほぼ会社法の条文、判例の出題で占められている。
その中でも、条文が8割、2割程度が判例という感じである。
問題の中身は、条文判例そのままで、紛れのあるものはほとんどない。
まさに、知っていれば解けるし、知らなければ解けない。
それだけの問題だった。

論理問題は、新試験第46問予備試験第23問と、新試験第53問だけである。

(新試験第46問、予備試験第23問)

 監査役に関する次のアからオまでの各規律のうち,監査役の独立性確保を目的としないものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.監査役の任期は,定款の定めによって短縮することができないとの規律
イ.監査役会設置会社において,取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには,監査役会の同意を得なければならないとの規律
ウ.補欠の監査役を選任することができるとの規律
エ.監査役を辞任した者は,辞任後最初に招集される株主総会に出席して,辞任した旨及びその理由を述べることができるとの規律
オ.監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行うとの規律

1.アイ  2.アエ  3.イオ  4.ウエ  5.ウオ

補欠は欠員回避の目的だけであるし、過半数は会議体の通常の決議要件だから、5(ウオ)が答えとわかる。
これは、現場で容易に判断できるから、確実に取りたい。

(新試験第53問)

 交互計算に組み入れた債権を譲渡することができないことは,第三者が交互計算契約の成立を知っていたかどうかにかかわらず,第三者に対抗することができるとの見解がある。次のアからオまでの各記述のうち,この見解の論拠又はそれと親和性を有するものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.交互計算は,第三者に対する公示手段を有しない。
イ.当事者の意思に基づいて差押禁止財産を作ることは,許容すべきではない。
ウ.交互計算に組み入れた債権を譲渡することができないのは,その債権が交互計算の下における取引により生じたことの当然の結果である。
エ.交互計算に組み入れた債権については,当事者間に譲渡禁止の特約があると考えられる。
オ.第三者の保護は,債権者代位権に基づいて交互計算契約を解除する方法によって図ることができる。

1.アウ   2.アエ   3.イエ   4.イオ   5.ウオ

これは、交互計算がどういうものか知らなくても解ける。
要は、善意悪意と無関係な譲渡禁止の対抗を正当化する肢を探せばよいだけである。
アは、公示がないのに対抗を許せば取引安全を害するという主張である。
このことは、公示があれば悪意擬制できる(善意でも対抗させてよい)、というような議論から連想できる。
従って、親和性がない。
イは、譲渡禁止特約と差押・転付命令の論点を連想すべきである。
差押禁止財産を許容すべきでないというのは、譲渡禁止を貫徹すべきでないという主張である。
そうすると、本肢は譲渡禁止に否定的なものであるから、親和性がないとわかる。
ウは、譲渡禁止は当然の結果と言っている。
当然の結果なのだから、主観に左右されないはずだ。
従って、親和性がある。
エは、譲渡禁止という点では、一見親和性がありそうにみえる。
しかし、譲渡禁止特約は、善意無重過失の第三者には対抗できない。
従って、第三者の主観を問わないとすることとは、親和性がない。
オは、譲渡禁止を対抗させても不都合がないとするから、親和性がある。
以上から、正解は5(ウオ)ということになるだろう。
これも、何とか取りたいところである。

昨年は、極端に細かい知識が問われた。
今年は、そこまで極端に難しいわけではない。
とはいえ、民法と比較すると、細かい知識が問われている。
学習効率として、民法の方を優先すべきであるという点は、変わっていない。
もっとも、新試験と予備試験では、民法と商法の問題数及び配点の比率が異なる。
新試験の場合、民法の方が、商法より出題数及び配点が多い。
今年でいえば、民法36問に対して、商法19問。
配点は、民法74点に対し、商法38点である。
民法は、商法の倍近い比重がある。
従って、民法重視の要素がより強い。
民法を8割程度拾えるようになってから、商法の知識を学習するという感じで構わない。
他方、予備試験は、民法も商法も15問ずつ。
配点も、30点ずつである。
従って、商法をあまりに軽視するのは危険ということになる。
また、新試験の短答で足切りになるのは、下2割から3割程度である。
商法を落としても、その分他科目を取れば、足切りになることはない。
他方、予備試験は、不明な点は多いものの、新試験より厳しくなることは確実だ。
従って、商法を落としても大丈夫、という状況にはない。
このように、新試験と予備試験とでは、異なる点がある。
新試験では、民法重視、商法軽視で構わない。
しかし、予備試験では、両方確実に取れるように固めていく。
逆に予備試験に受かってしまえば、新試験の短答は楽にクリアできるだろう。

民訴法について

民訴法も、例年の新試験の傾向と大きな変化はない。
条文、判例の知識を、そのまま訊く問題がほとんどである。
民法ほど基本的でもないが、商法ほど細かくもない。
ちょうど、中間くらいである。
これは、今後も続きそうである。
例年とやや違うのは、要件事実を正面から訊く問題が出なかったことである。
これまでは、民法で出題されなければ、民訴の方で出題されていた。
今年は、民法でも民訴でも、出題されていない。
もっとも、今のところ、これは一時的なものとみた方がよさそうである。
来年以降は、出題される可能性が十分あるだろう。

新試験第58問の5は、奇妙な肢である。

(新試験第58問の5)

 独立当事者参加の申出が時機に後れた攻撃防御方法として却下されることはない。

語尾が「ことはない」となっている。
このような場合、ほとんど誤りだというのが、受験テクニックである。
法の解釈適用において、一切の例外を許さないということは、ほとんどないからである。
しかし、本問はそれの当てはまらない珍しいケースである。
攻撃防御方法とは、請求の趣旨(攻撃)又はこれに対する答弁(防御)を根拠付けるものである。
独立当事者参加の申出が、これに当たらないことは明らかだ。
だとすると、「攻撃防御方法として」却下される余地はない。
従って、これは正しく、正解肢となると思われる。
ただ、このような肢の作り方は珍しい。
本肢は、実質上「独立当事者参加の申出は、攻撃防御方法ではない」という肢と同じである。
そんなことを訊いてどうするのか、という感じがする。
もしかすると、語尾だけで判断するというテクニックに対する対策なのかもしれない。
「○○ことはない」「○○の余地はない」とし、そもそも概念上○○となりようがないから正しい、とする出題手法である。
例えば、「新司法試験の受験生が200億円以上の負債を負ったとしても、大会社になることはない」。
「熊である甲は、人であるAを殺すつもりで石を投げたところ、隣にいた犬であるBに当たり、Bは死亡した。この場合、甲に殺人未遂罪が成立する余地はない。」というような肢である。
こういう肢は、どうしても変な肢になる。
頻繁には出しにくいという気もする。
とはいえ、いきなり本試験で出されると、意外と引っかかってしまうかもしれない。
本肢でも、変だと思いつつ語尾を重視して誤りとした人はいたのではないか。
新しい問い方として今後増えてくるのか、一応注意はしておきたい。

新試験第61問、予備試験第35問の5は、条文知識であるが、やや注意を要する。

(新試験第61問、予備試験第35問の5)

 当事者が法人である場合において,訴状にその代表者の記載があるかどうかは,訴状審査の対象となる。

(民訴法133条)

 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2  訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び原因

133条だけをみると、代表者は入っていないようにみえる。
しかし、37条がある。

(民訴法37条、下線は筆者)

 この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する

よって、本肢は正しい。

新試験第63問、予備試験第38問は、一見論理問題のようにもみえる。
しかし、単に最判昭46・6・29最判昭55・2・7、を訊いているだけである。

(新試験第63問、予備試験第38問)

 Xは,Aから甲土地を買ったと主張して,甲土地を占有しているYに対し,所有権に基づき甲土地の明渡しを求める訴えを提起したところ,Yは,Aが甲土地を所有していたことは認めるが,Aから甲土地を買ったのはXではなくBであると主張した。Yからこれ以外の主張がなかった場合における次のア及びイの裁判所の判決に関する後記1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。

ア.裁判所は,証拠調べの結果,Aから甲土地を買ったのはXではなくCであったとの事実を認定して,Xの請求を棄却する判決をした。

イ.裁判所は,証拠調べの結果,XはAから甲土地を買った後にこれをCに売ったとの事実を認定して,Xの請求を棄却する判決をした。

1.ア及びイの判決は,いずれも弁論主義に反する。
2.アの判決は弁論主義に反しないが,イの判決は弁論主義に反する。
3.アの判決は弁論主義に反するが,イの判決は弁論主義に反しない。
4.ア及びイの判決は,いずれも弁論主義に反しない。

(最判昭46・6・29より引用、下線は筆者)

 被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もつて右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によつて主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもつぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかつたためであつて、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。

(引用終わり)

(最判昭55・2・7より引用、下線は筆者)

 相続による特定財産の取得を主張する者は、(1) 被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実及び (2) 自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実の二つを主張立証すれば足り、(1)の事実が肯認される以上、その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかつたこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実もなかつたことまで主張立証する責任はなく、これら後者の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。これを本件についてみると、上告人らにおいて、FがGから本件土地を買い受けてその所有権を取得し、Fの死亡により上告人らがFの相続人としてこれを共同相続したと主張したのに対し、被上告人は、前記のとおり、右上告人らの所有権取得を争う理由としては、単に右土地を買い受けたのはFではなくEであると主張するにとどまつているのであるから(このような主張は、Fの所有権取得の主張事実に対する積極否認にすぎない。)、原審が証拠調の結果Gから本件土地を買い受けてその所有権を取得したのはFであつてEではないと認定する以上、上告人らがFの相続人としてその遺産を共同相続したことに争いのない本件においては、上告人らの請求は当然認容されてしかるべき筋合である。しかるに、原審は、前記のとおり、被上告人が原審の口頭弁論において抗弁として主張しないEがFから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。

(引用終わり)

本問で、アは否認の場合であり、イは抗弁の場合である。
従って、2が正解となる。

新試験の第68問の1及び2は、最決平17・10・14である。
これは、司法試験平成17年度最新判例肢別問題集で出題した。

(新試験第68問)

 Aは,Y会社で工員として勤務していたが,工場で就業中に事故に遭って死亡した。Aの遺族であるXは,Y会社を被告として損害賠償を求める訴えを提起したが,事故の状況を立証するため,国の機関である労働基準監督署において保管されている調査報告書の提出を求める文書提出命令の申立てを検討している。この事例に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを2個選びなさい。

1.労働基準監督官が作成した調査報告書にY会社やその関係者の私人の秘密に関する記載があったとしても,これは公務員の職務上の秘密には当たらないので,国には同報告書を提出する義務がある。

2.労働基準監督官が作成した調査報告書中の調査担当者の意見が公務員の職務上の秘密に当たり,かつ,これが提出されると公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在する場合には,国には同報告書を提出する義務はない。

3.裁判所は,Xが提出を求めている調査報告書が,公務員の職務上の秘密に関する文書か否か,又はその提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるか否かの判断をするため必要があると認めるときは,文書の所持者である国にその提示をさせることができる。

4.調査報告書について文書提出命令が出された場合,Y会社は,証拠調べの必要性がないことを理由として,即時抗告をすることができる。

 

司法試験平成17年度最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

4:民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」とは、公務員の所掌事務に属する秘密に限られ、公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密は含まない。

(参照条文)民事訴訟法220条
 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一  略
二  略
三  略
四  前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 略
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ以下略

5:民訴法220条4号ロにいう「その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」とは、単に文書の性格から公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要である。

【解答】

4:誤り(最判平17・10・14)。

 「民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」とは、公務員が職務上知り得た非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいうと解すべきである(最高裁昭和48年(あ)第2716号同52年12月19日第二小法廷決定・刑集31巻7号1053頁、最高裁昭和51年(あ)第1581号同53年5月31日第一小法廷決定・刑集32巻3号457頁参照)。そして、上記「公務員の職務上の秘密」には、公務員の所掌事務に属する秘密だけでなく、公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって、それが本案事件において公にされることにより、私人との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれると解すべきである」と判示した。

5:正しい(最判平17・10・14)。

 「民訴法220条4号ロにいう「その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」とは、単に文書の性格から公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要であると解すべきである」と判示した。

(引用終わり)

なお、3は民訴法223条6項、4は、最決平12・12・14である。

(民訴法223条6項)

 裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。

(最決平12・12・14より引用、下線は筆者)

 文書提出命令は、ある事実を立証しようとする当事者が自ら証拠を提出する代わりに、裁判所の命令により文書の所持者にその提出を求めるものであり、文書提出命令が発せられた場合には、これに従わない所持者は、文書の記載に関する相手方の主張を真実と認められるなどの不利益を受け、あるいは過料の制裁を受けることがある。そこで、民訴法二二三条四項は、文書提出命令の申立てについての決定に対しては、申立人とその名あて人である所持者との間で文書提出義務の存否について争う機会を付与したものと解される。また、文書提出命令は、文書の所持者に対してその提出を命ずるとともに、当該文書の証拠申出を採用する証拠決定の性質を併せ持つものであるが、文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されない最高裁平成一一年(許)第二〇号同一二年三月一〇日第一小法廷決定・民集五四巻三号一〇七三頁参照)。そうすると、文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は、抗告の利益を有せず、本案事件の当事者であっても、即時抗告をすることができないと解するのが相当である。

(引用終わり)

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