平成23年新司法試験・予備試験
短答式試験の感想(4)

刑訴法について

基本的には、例年どおりの傾向である。
条文判例の知識が主であるが、出題形式は、他の科目と比べて凝っている。
また、マイナー分野からの出題も多い。

新試験第22問は、告訴を問うものであるが、細かい。

(新試験第22問)

 次の【事例】中の(ア)から(オ)までの下線部分につき,告訴として有効となる場合には1を,無効となる場合には2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。

【事例】

 V(平成6年12月5日生,15歳)は,平成22年2月1日,インターネット上で名誉を毀損される被害を受け,すぐに,この被害を母親であるAに告げた。その際,Vは,Aに,この被害を捜査機関に申告する意思及び犯人の処罰を求める意思がないことを告げた。それにもかかわらず,(ア)同月2日,Aは,司法警察員Xに対し,Vが受けた被害を申告して犯人の処罰を求め,この内容を記載した告訴調書を作成してもらった。その後の捜査により,同月10日,犯人がAとVの知人である甲であると判明し,その日のうちに,Aも司法警察員Xから甲が犯人であることを聞いた。そして,その日のうちに,Aは,Vに,犯人が甲である旨を伝えた。その後,Aは,甲から謝罪を受けたため,同年7月20日,前記告訴を取り消した。しかし,(イ)Vは,犯人が甲であると知った後,次第に甲を処罰してもらいたいという気持ちが高まっていったことから,同年7月31日,知人の司法巡査Yに,口頭で,Vが受けた被害を申告して甲の処罰を求めた。これに対し,司法巡査Yは,Vに,H警察署長を務める司法警察員Z宛てに告訴状を提出するように求めた。その後,Vは,司法巡査Yに対して被害を申告して甲の処罰を求めたこと及び司法警察員Z宛てに告訴状を提出するように求められたことをAに伝えた。そのため,(ウ)Aは,再度,考えを改め,同年8月5日,司法警察員Z宛てに,Vが受けた被害を申告して甲の処罰を求める旨の告訴状を提出した。さらに,(エ)Vも,同年8月20日,司法警察員Z宛てに,Vが受けた被害を申告して甲の処罰を求める旨の告訴状を提出した。その後,Vの父親であるBは,同年9月1日に初めてVが甲から名誉毀損の被害を負わされたことを知った。そして,(オ)Bは,同月2日,司法警察員Z宛てに,Vが受けた被害を申告して甲の処罰を求める旨の告訴状を提出した。なお,甲にVを被害者とする名誉毀損罪が成立することに争いはないものとする。

一読して、飛ばしたという人も、結構いたのではないか。

まず、アは、231条1項により有効である。
1項には、2項ただし書のような制限がないから、Vの処罰意思は問題とならない。

(刑訴法231条)

 被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。

2  被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。

イは、司法巡査に対するものであるから、無効である。

(刑訴法241条1項、下線は筆者)

 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。

ウは、237条2項により無効である。

(刑訴法237条2項)

 告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。

エは、少し悩むが、無効と考えるべきだろう。
まず、Aの告訴取消しは、Vの告訴権には影響しない(東京高判昭31・6・19)。
従って、237条2項によって告訴が無効となることはない。
しかし、ここで文章中にいちいち日付がついていることに気をつけなければならない。
すなわち、告訴期間を検討する必要がある。

(刑訴法235条1項)

 親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。

一  刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴

二  刑法第二百三十二条第二項 の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条 の罪につきその使節が行う告訴

名誉毀損罪は刑法230条の罪であるが、明示的ではないもののVは外国の使節ではないだろう。
従って、235条1項2号の適用除外には当たらない。
Vが犯人を知った日は、2月10日である。
そうすると、その6か月後である8月10日に、告訴期間が到来する。
従って、8月20日にされたエは告訴期間経過後の告訴として無効となる。
もっとも、ここで少し気になるのは、本問で犯行は終了しているかということである。
なぜなら、犯行継続中は、告訴期間が起算されないからである。

最決昭45・12・17より引用)

 刑訴法二三五条一項にいう「犯人を知つた日」とは、犯罪行為終了後の日を指すものであり、告訴権者が犯罪の継続中に犯人を知つたとしても、その日を親告罪における告訴の起算日とすることはできない。

(引用終わり)

本問で、甲がインターネット上から名誉毀損となる情報を削除したという記述はない。
そうすると、いまだ犯行は継続中なのではないか、という疑問も生じる。
もっとも、甲は謝罪している以上、そのまま名誉毀損の情報を残しているとは考えにくい。
おそらく、ここまで深読みする必要はなく、素直に告訴期間経過を認めてよいのだろう。

オは、被害者本人の告訴期間経過にかかわらず、法定代理人は告訴ができるか、という点が問われている。
(この出題意図からも、エは無効と考えるのが妥当である。)
これは、最決昭28・5・29があり、有効である。

(最決昭28・5・29より引用、下線は筆者)

 本件が親告罪であつて本件各告訴が犯罪のあつた時から六ケ月を過ぎていることは所論のとおりであるが、本件の告訴は被害者の各法定代理人から為されており、各法定代理人が強姦の事実を知つたのは、いずれも告訴の前日であることが記録上明らかである、そして法定代理人の告訴権は独立して行使できるのであるからその固有権であると解すべきである、従つて本件各告訴は告訴期間を徒過したものではなく原判決には所論のような違法はない。

(引用終わり)

解答としては、12221ということになるだろう。
解くためには、細かい知識を要する。
しかも、3点を取るには、全肢正解しなければならない。
思わず捨ててしまった、という人がいても理解できる。
もっとも、新試験の短答において、告訴は頻出事項である。

(平成18年第22問)

 告訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア. 未成年者を被害者とする強制わいせつについては,その法定代理人である親も告訴をすることができる。

イ. 告訴は,必ず告訴状を提出して行わなければならないので,検察官が,強姦の被害者から,その被害事実に加えて犯人を厳重に処罰してほしい旨録取した供述調書を作成しただけでは,告訴としての効力は認められない。

ウ. 告訴は,公訴の提起があるまでいつでも取り消すことができる。

エ. 親告罪の告訴は,一部の例外を除き,犯人を知った日から6か月を経過したときは,これをすることができない。この例外は極めて限定されており,強姦罪等の性犯罪は含まれない。

オ. 親告罪の告訴を取り消した者は,更に告訴をすることができない。

1. アエ   2. イオ   3. ウア   4. エイ   5. オウ

 

(平成19年第21問)

 後記【文章】は,捜査の端緒について述べたものである。これを読んで,次の【小問1】及び【小問2】に答えなさい。

【小問1】

 【文章】中の@からDまでの( )内に入る適切な語句を後記【語句群】から一つずつ選び出し,@からDの順に並べた場合,正しいものは,後記【小問1の選択肢群】の1から6までのうちどれか。なお,同じ数字の( )内には同じ語句が入るものとする。

【小問2】

 【文章】中の(ア)から(オ)までの下線部分の各記述のうち,正しいものの組合せは,後記【小問2の選択肢群】の1から5までのうちどれか。

【文章】

  刑事訴訟法第189条第2項は,「司法警察職員は,(@)があると思料するときは,犯人及び証拠を捜査するものとする。」と定めている。この(@)があると思料するに至った原因を捜査の端緒という。刑事訴訟法は,捜査の端緒として,現行犯逮捕,(A),告訴,告発,請求及び自首を挙げているが,捜査の端緒をこれらに制限しているわけではなく,被害者又は第三者の申告,警察官職務執行法第2条第1項の定める(B)のほか,新聞,雑誌,投書など,いやしくも(@)に関係ありと認められる事由がある限り,(ア)広く社会の諸事象から捜査の端緒を得ることが許される
 そのうちの(A)とは,人の死亡が(@)に起因するかどうかを判断するため,五官の作用により死体の状況を見分する処分をいい,捜査前の処分であって,捜査そのものではない。(イ)これを行うに当たっては,令状なくして住居内の捜索・検証にわたる処分は行えないものの,死因の確認のためには,注射器を用いて体内から血液を採取したり,腹部等を切開することもできる。また,刑事訴訟法第229条第1項において,「変死者又は変死の疑のある死体があるときは,その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は,(A)をしなければならない。」とされているが,検察官は,いわゆる代行(A)として(C)に(A)させることもできる。
 次に,告訴とは,(@)の被害者その他一定の者が,捜査機関に対して,(@)事実を申告し,その訴追を求める意思表示である。告訴の方式については,告訴の受理権者である(D)にしなければならず,(ウ)一定の親告罪で定められている告訴期間との関係で,その告訴がなされた日付を特定する必要があるため,口頭による告訴は認められておらず,書面でしなければならないとされている。また,(エ)告訴は,被害者の訴追を求める意思表示を確認する必要があるため,被害者本人が告訴しなければならず,被害者の代理人により告訴をすることはできない。なお,(オ)被害者が死亡するなどして親告罪について告訴をすることができる者がない場合には,検察官は,利害関係人の申立てにより告訴をすることができる者を指定することができる

【語句群】

a. 職務質問   b. 事件   c. 医師   d. 任意同行
e. 司法巡査   f. 検視   g. 検察事務官又は司法警察員   h. 解剖
i. 検察官又は司法警察員   j. 犯罪

【小問1の選択肢群】

1. jfagi   2. bfage   3. bhdce
4. jhdci   5. jfaci   6. bhdge

【小問2の選択肢群】

1. アウ   2. アオ   3. イエ   4. ウエ   5. イオ

 

(平成20年第23問)

 告訴の効力に関する次のアからエまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア. Vは,自己の所有する自転車が損壊されたとして,甲を器物損壊の罪で告訴した。捜査の結果,真犯人は乙であり,甲は事件と無関係であることが判明した。この場合,Vの告訴の効力は乙に対して及ぶ。

イ. V1は,月刊誌に自己の名誉を毀損する記事が掲載されたとして,同月刊誌の編集責任者甲を名誉毀損の罪で告訴した。捜査の結果,甲に,前記記事によるV1及びその愛人V2に対する名誉毀損の事実が認められた場合,V1の告訴の効力は,甲のV2に対する名誉毀損の事実にも及ぶ。

ウ. Vは,甲から住居侵入及びこれと科刑上一罪の関係にある強制わいせつの被害を受けたが,甲を住居侵入の罪に限定して告訴した。この場合,Vの告訴の効力は,強制わいせつの事実には及ばない。

エ. Vは,自宅から自己の所有する宝石が盗まれたとして,親族でない甲を窃盗の罪で告訴した。捜査の結果,甲がVの別居中の弟乙とともに窃盗に及んだことが判明した場合,Vの告訴の効力は,乙に対しても及ぶ。

1. アウ   2. アエ   3. イウ   4. イエ   5. ウエ

 

(平成21年第21問イ)

 強姦の罪により害を被った者は,犯人を知った日から6か月を経過するまでは,告訴をすることができるが,第一回の公判期日までこれを取り消すことができる。

(同第29問オ)

 検察官は,被害者から告訴のあった窃盗事件について,公訴を提起し,又はこれを提起しない処分をしたときは,速やかにその旨を告訴人に通知しなければならず,また,公訴を提起しない処分をした場合において,告訴人の請求があるときは,速やかに告訴人にその理由を告げなければならない。

出るとわかっている事項であるから、細かいと感じてもフォローしておくべきである。
なお、本問は予備試験と共通にはなっていない。
しかし、今後予備試験でも告訴の細かい知識を訊いてくる可能性は十分ある。
予備試験の受験生も、十分準備をしておきたい。

新試験第23問は、なにか実務的なことを訊いているようにもみえる。

(新試験第23問)

 次の【弁解録取書の記載内容】は,殺人を被疑事実とする逮捕状に基づいて司法警察員により逮捕された被疑者甲野太郎の事件に関し,H警察署司法警察員Xが,被疑者の弁解を聴取して作成した弁解録取書の記載内容の抜粋である。この弁解録取書に記載された@からDまでの司法警察員Xの措置に関する後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。

【弁解録取書の記載内容】

 本籍,住居,職業,氏名,生年月日欄(省略)

 本職は,平成23年2月3日午前10時10分ころ,H警察署において,上記の者に対し,@逮捕状記載の犯罪事実の要旨及びA弁護人を選任することができる旨を告げるとともに,

B1 引き続き勾留を請求された場合において貧困等の事由により自ら弁護人を選任することができないときは,裁判官に対して弁護人を請求できる旨

2 裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨

3 その資力が基準額以上であるときは,あらかじめ,弁護士会に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨

を教示し,さらに,弁護人又は弁護人となろうとする弁護士と接見したいことを申し出れば,直ちにその旨をこれらの者に連絡する旨を告げた上,C弁解の機会を与えたところ,任意次のとおり供述した。

1 私がVさんを殺したことは間違いありません。

2 弁護人をお願いできる権利があることは聞きました。お金がないので,国選でお願いします。

 甲 野 太 郎 指印

 以上のとおりD録取して読み聞かせた上,閲覧させたところ,誤りのないことを申し立て,各葉の欄外に指印した上,末尾に署名・指印した。

 前 同 日    司法警察員署名押印欄(省略)

【記述】

ア.@につき,刑事訴訟法の規定上,司法警察員Xは,直ちに犯罪事実の要旨を告げるように求められている。

イ.Aにつき,刑事訴訟法の規定上,司法警察員Xは,弁護人を選任することができる旨を告げるように求められている。

ウ.Bにつき,刑事訴訟法の規定上,司法警察員Xは,Bの1から3までの事項を教示するように求められていない。

エ.Cにつき,刑事訴訟法の規定上,司法警察員Xは,被疑者甲野太郎に,弁解の機会を与えるように求められていない。

オ.Dにつき,刑事訴訟法の規定上,司法警察員Xは,弁解録取書を作成して,これを読み聞かせた上で,閲覧させることが求められている。

1.0個   2.1個   3.2個   4.3個   5.4個   6.5個

しかし実際には、203条1項3項の知識を訊いているだけである。

(刑訴法203条、下線は筆者)

1項 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

3項 司法警察員は、第三十七条の二第一項に規定する事件について第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

正しいのは、アイの二つで、正解は3となる。
個数問題ではあるが、取りたい問題である。
なお、3項は、平成16年改正事項である。

(刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第六十二号)1条11項)

 第二百三条第二項の次に次の一項を加える。   

 司法警察員は、第三十七条の二第一項に規定する事件について第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

新試験第24問のアは、最決平19・2・8であり、誤りである。
これは、司法試験平成19年度最新判例肢別問題集で出題した。

(新試験第24問ア)

 人の住居に対する捜索差押許可状の効力は,令状呈示後に同住居に搬入された物品には及ばないから,甲に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,捜索場所を甲方居室,差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき,警察官が甲立会いの下に同人方居室を捜索中,甲宛てに届き,甲が受領した宅配便の荷物について,警察官は,甲の承諾を得ることなくこれを開封して中身を確認することはできない。

司法試験平成19年度最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

1:被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に、被疑者あてに配達され同人が受領した荷物について同許可状に基づき捜索することができるかについて、最高裁は、上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばないとして、これを否定した。

【解答】

1:誤り(最決平19・2・8)。
 「警察官が、被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき、捜索場所を被告人方居室等、差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき、被告人立会いの下に上記居室を捜索中、宅配便の配達員によって被告人あてに配達され、被告人が受領した荷物について、警察官において、これを開封したところ、中から覚せい剤が発見されたため、被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し、逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は、上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが、警察官は、このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である」と判示した。

(引用終わり)

新試験第25問、予備試験第17問のオは、直感で正しいと判断した人が多かっただろう。

(新試験第25問、予備試験第17問)

 次の【事例】に関する検察官の処理について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

【事例】

 甲は,平成22年4月1日午前9時50分,H県I市内において,司法警察員から職務質問を受けた際,所持品の検査に応じ,「窃盗の目的でVの邸宅に侵入するのに使用するため,ガラス切りを隠して携帯していた」旨を述べてガラス切りを所携のバッグから取り出したものの,住居については,一切答えなかった。そこで,司法警察員は,甲の住居が明らかでない上,甲に軽犯罪法違反(同法第1条第3号違反)に該当する「正当な理由がなくてガラス切りを隠して携帯していた」事実が認められたことから,同日午前10時,同事実により甲を現行犯逮捕した。その後の捜査により,甲が窃盗を行っていたことも判明したものの,依然として,甲の住居は判明しなかった。司法警察員は,同月3日午前9時30分,甲の身柄とともに軽犯罪法違反及び窃盗の両事実をH区検察庁検察官に送致する手続をした。その後,検察官は,同日午前10時30分,送致された甲を受け取った。

【記述】

アからエまで略。

オ.検察官は,平成22年4月3日,軽犯罪法違反の事実のみならず窃盗の事実も併せて甲を公判請求する場合,簡易裁判所ではなく地方裁判所に対して行うこともできる。

(参照条文)軽犯罪法

第1条左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。

一,二(略)

三 正当な理由がなくて合かぎ,のみ,ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

四〜三十四(略)

(参照条文)裁判所法

第24条 地方裁判所は,次の事項について裁判権を有する。

一(略)

二 第16条第4号の罪及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審

三,四(略)

第33条 簡易裁判所は,次の事項について第一審の裁判権を有する。

一(略)

二 罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条,第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟

2,3 (略)

しかし、正確な条文操作は、案外複雑である。

軽犯罪法違反の罪の法定刑は、拘留又は科料である。
これは、罰金以下の刑である。

(刑法、下線は筆者)

9条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

10条1項 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。

よって、地裁には事物管轄がない(裁判所法24条2号)。
従って、軽犯罪法違反の罪単独だと、地裁には起訴できない。
では、窃盗を併せるとどうか。
他方、窃盗罪には懲役刑があるから、地裁に事物管轄がある。
両罪は、同じ甲が犯した罪であるから、関連事件である。

(刑訴法9条1項、下線は筆者)

 数個の事件は、左の場合に関連するものとする。
一  一人が数罪を犯したとき。
二  数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。
三  数人が通謀して各別に罪を犯したとき。

この場合、地裁は両罪を併せて管轄できる。

(刑訴法3条1項)

 事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

以上から、両罪併せれば地裁に起訴できることがわかった。
もっとも、オの肢は「簡易裁判所ではなく地方裁判所に対して行うこともできる」とする。
つまり、簡裁にも管轄があるという記述と読める。
では、両罪を簡裁に併せて起訴できるのか。
軽犯罪法違反の罪については、簡裁に事物管轄がある(裁判所法33条2号)。
では、窃盗罪はどうか。
ここで、33条2号に窃盗罪が該当するか、迷うことになる。
窃盗罪の参照条文がないので、何条だったか、選択刑で罰金があったか、覚えていないとわからない。
実際には、窃盗罪は235条であり、罰金を選択できる。

(刑法235条)

 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

従って、簡裁にも事物管轄があるから、「もできる」の部分も正しい。
なお、窃盗罪の罰金刑は、平成18年改正事項である。

(刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)1条、下線は筆者)

 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。

  第十八条第六項を次のように改める。

 6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当

  する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)と

  する。

  第十八条第七項及び第八項を削る。

  第九十五条第一項中「又は禁錮」を「若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」に改める。

  第二百十一条第一項中「五十万円」を「百万円」に改める。

  第二百三十五条中「懲役」の下に「又は五十万円以下の罰金」を加える

もっとも、これを覚えていなくても、実は新試験受験者は、窃盗罪の法定刑を参照できる。
新試験第12問に、参照条文として235条が挙がっているからである。
予備試験受験者は、第12問が共通問題でないために、参照できない。
わざとやったわけではないだろうが、微妙に不公平になっている。
とはいえ、ここまで考えて本肢を判断した人はほとんどいないだろう。
影響は、ないといって良いと思われる。

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