平成23年新司法試験論文式
公法系第2問の感想と参考答案

問題は、こちら

 

全体について

行政法は、詳細な誘導があるのが特徴である。
これに従えば、ほぼそのまま答案構成になる。
今年度の場合、以下のようになる。

第1.設問1

 法、施行規則、それから通達の関係する規定と、それらの規定が原告適格を判断する上で持つ意味を明らかにしながら、X1とX2それぞれの原告適格の有無を検討する。

第2.設問2(1)

 国土交通大臣がAに同意書を取り直すように求め続けた場合に、Aが何らかの訴えを起こすことができるかについて、最も可能性のある訴えを検討して、具体的に挙げる。

第3.設問2(2)

 地元の同意のプロセスに重大な瑕疵があった場合、国土交通大臣は、本件許可を取り消すことができるかにつき、以下の手順で検討する。

1.施行規則第12条は、許可の基準として地元の同意とは規定していないが、そもそも、この条文に定められた基準以外の理由で、許可を拒否できるかについて、関係法令をよく検討して解答する。

2.地元の同意と定めているのは、国土交通省の通達の方であるが、このような通達に定められたことを理由にして、許可を拒否してよいかについて、問題となっている通達の法的な性格をはっきりと説明するようにしてまとめる。

3.国土交通大臣が本件許可の申請に際して地元自治会の同意を得ておくように求める行政手法の意義と問題点をまとめ、その上で、疑惑が事実であると仮定して、国土交通大臣は、Aに対してどこまでの指導、処分といった措置を執ることができるのか、執り得る措置の範囲ないし限界についても綿密に検討する。

4.仮に、地元自治会の同意がない場合に、国土交通大臣が申請に対して不許可処分をする余地が多かれ少なかれあるという考え方を採ると、一度許可をした後で許可を取り消す処分もできることになるか。

第4.設問3

 以下の各点を簡潔にまとめる。

1.規定の骨子

2.条例の問題点

以上

配点をみると、設問1が35点、設問2(1)が15点、(2)が35点、設問3が15点であるとわかる。
設問1と設問2(2)が、メインである。
そして、設問2(2)では、上記構成の3の部分が「綿密に」とあるから、メインである。
事前にそのあたりの比重を確認してから、書き出すべきである。
紙幅にすると、概ね設問1と設問2(2)が、それぞれ2ページ強。
設問2(1)と設問3は、それぞれ1ページ程度という感じだろう。
本問は、全体的に書きたいことが多い。
しかし、上記の紙幅を考えると、うまくまとめないと書けない。
構成段階で、そのことを意識できるかが、一つのポイントである。

第三者の原告適格がまた出た

設問1は、処分の相手方以外の者の原告適格である。
参照すべき判例は、最判平21・10・15である。

最判平21・10・15より引用、下線は筆者)

 行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
 そして、処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項、最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。

 上記の見地に立って、被上告人らが本件許可の取消しを求める原告適格を有するか否かについて判断する。

 一般的に、場外施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、その設置、運営により、直ちに周辺住民等の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、その財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定し難いところである。そして、このような生活環境に関する利益は、基本的には公益に属する利益というべきであって、法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず、当然に、法が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない。

 位置基準は、場外施設が医療施設等から相当の距離を有し、当該場外施設において車券の発売等の営業が行われた場合に文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを、その設置許可要件の一つとして定めるものである。場外施設が設置、運営されることに伴う上記の支障は、基本的には、その周辺に所在する医療施設等を利用する児童、生徒、患者等の不特定多数者に生じ得るものであって、かつ、それらの支障を除去することは、心身共に健康な青少年の育成や公衆衛生の向上及び増進といった公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。そして、当該場外施設の設置、運営に伴う上記の支障が著しいものといえるか否かは、単に個々の医療施設等に着目して判断されるべきものではなく、当該場外施設の設置予定地及びその周辺の地域的特性、文教施設の種類・学区やその分布状況、医療施設の規模・診療科目やその分布状況、当該場外施設が設置、運営された場合に予想される周辺環境への影響等の事情をも考慮し、長期的観点に立って総合的に判断されるべき事柄である。規則が、場外施設の設置許可申請書に、敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図のほか、場外施設を中心とする交通の状況図及び場外施設の配置図を添付することを義務付けたのも、このような公益的見地からする総合的判断を行う上での基礎資料を提出させることにより、上記の判断をより的確に行うことができるようにするところに重要な意義があるものと解される。
 このように、法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

 もっとも、場外施設は、多数の来場者が参集することによってその周辺に享楽的な雰囲気や喧噪といった環境をもたらすものであるから、位置基準は、そのような環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障について、特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして、その支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。したがって、仮に当該場外施設が設置、運営されることに伴い、その周辺に所在する特定の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合には、当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。
 このように、位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして、このような見地から、当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たっては、当該場外施設が設置、運営された場合にその規模、周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して、当該医療施設等が上記のような区域に所在しているか否かを、当該場外施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと解するのが相当である。
 なお、原審は、場外施設の設置許可申請書に、敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図等を添付すべきことを義務付ける定めがあることを一つの根拠として、上記地域において医療等の事業を営む者一般に上記の原告適格を肯定している。確かに、上記見取図は、これに記載された個々の医療施設等に前記のような業務上の支障が生ずるか否かを審査する際の資料の一つとなり得るものではあるが、場外施設の設置、運営が周辺の医療施設等に対して及ぼす影響はその周辺の地理的状況等に応じて一様ではなく、上記の定めが上記地域において医療等の事業を営むすべての者の利益を個別的利益としても保護する趣旨を含むとまでは解し難いのであるから、このような地理的状況等を一切問題とすることなく、これらの者すべてに一律に上記の原告適格が認められるとすることはできないものというべきである。

 これを本件について見ると、本件敷地の周辺において医療施設を開設する被上告人らのうち、被上告人X5は、本件敷地の周辺から約800m離れた場所に医療施設を開設する者であり、本件敷地周辺の地理的状況等にかんがみると、当該医療施設が本件施設の設置、運営により保健衛生上著しい支障を来すおそれがあると位置的に認められる区域内に所在しているとは認められないから、同被上告人は、位置基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有しないと解される。これに対し、その余の被上告人X2、同X3及び同X4(以下、併せて「被上告人X2ら3名」という。)は、いずれも本件敷地の周辺から約120mないし200m離れた場所に医療施設を開設する者であり、前記の考慮要素を勘案することなく上記の原告適格を有するか否かを的確に判断することは困難というべきである。

(引用終わり)

これは競艇ではなく、競輪の事例であるが、類似の規定であり、参照できる。
競艇の方の事例としては、東京地判平18・12・20名古屋地決平18・7・20などがある。
もっとも、これらはモーターボート競走法の一部を改正する法律(平成19年法律第16号)による改正前の事案である。
上記改正前は、法には場外販売場についての規定がなく、省令による大臣の設置確認という制度になっていた。
そのため、法に規定のない省令の適法性自体も論点であった。
また、設置確認は事実行為であって処分性を欠くのではないかという論点もあった。
しかし、上記改正後は、法に許可制度が規定されたため、上記論点は解消されている。
参照するに当たっては、その辺りに注意する必要がある。
また、上記裁判例は、原告適格について、周辺住民と文教・医療施設運営者の区別という点は判示されていない。
従って、本問で参照に適するのは、前記の最高裁判例の方である。

司法試験平成21年最新判例ノートでは、前記判例について、以下のようなコメントをした。

司法試験平成21年最新判例ノートより引用)

 原告適格は極めて重要な論点の一つであるが、論文では平成21年度に出題されてしまっているので、しばらくの間は正面から問われる可能性は低い。一方短答では判例の見解が正誤問題として問われる可能性がある。判旨は長文であるが、位置基準の規定の趣旨から周辺居住者及び一般事業者と医療施設等の開設者とを区別している点がポイントである。

(引用終わり)

原告適格は、重要基本論点である。
しかし、同様に重要な訴訟要件である処分性と比べて、出し方が限られている。
処分性は、公権力性や直接的効果という点だけでなく、公定力との関係で先行後行処分の違法性の承継や、排他的管轄など、様々な問い方が可能である。
これに対し、処分の相手方以外の原告適格は、どうしても小田急高架訴訟判例の当てはめになる。
実際、本問でも、そういう出題になっている。
そのため、それほど頻繁には出せないのではないかと思っていた。
しかし、一年置いてすぐに出してきた。
上記の前半の出題可能性についての部分は、はずれてしまったことになる。

もっとも、後半のポイント部分は、本問でそのまま出題されている。
短答向けの知識として覚えていた、という人は役に立ったはずである。
結論だけでも、どうやらX1は肯定、X2は否定でよさそうだ、という安心感を持てる。

本問で注意すべきは、紙幅との関係である。
本問は、設問が実質上4つある。
それなりに、書くべきことは多い。
これが、同じく処分の相手方以外の者の原告適格が問われた平成21年とは異なる点である。
平成21年の場合は、原告適格を書く設問1で、4ページくらい使っても大丈夫だった。
しかし、本問では2ページ強にまとめる必要がある。
例えば、前記判例の引用部分は、スペースを含めないで3380字ある。
答案の1行を25文字とすると、約135行、135÷23≒6ページにもなる。
従って、判例のような詳細な書き方は、物理的にできない。
法令を一つ一つ検討するのではなく、結論に直結するものだけ、コンパクトに書くべきである。
後日、出題趣旨等では、「当てはめが淡白」「より詳細に法令を検討すべき」などと書かれるかもしれない。
しかし、答案の紙幅上それは不可能な要求である。

もう一つのポイントは、通達をどうするか、という点である。
これは普段、あまり考えたことがない論点である。
こういう場合、誰もが知っている基本部分を落とさないことが重要だ。
すなわち、通達は法規の性質を有しないということである。
だとすれば、通達を根拠に原告適格を肯定することはできない、というのが基本的な筋となる。
これを答案上示せたかどうかが、評価を分けるだろう。
検討段階では、さらに進んで、一定程度考慮する余地はないかも考える必要がある。
ある法令の解釈・運用指針としての通達が、その法令の解釈運用として適切であるとする。
だとすれば、そのような解釈運用を可能にする法令には、当該通達の趣旨が含まれているはずである。
そう考えれば、当該法令には、通達の保護しようとする利益を保護しようとする趣旨が含まれる。
従って、法令自体の趣旨目的を考慮するに当たり、通達を一定程度考慮できる。
このような理解は、十分可能である。
もっとも、本問の場合、後記のとおり、基準を充足してもなお許可しないことができるという裁量の1つの考慮要素として、自治会の同意が要求されているに過ぎない。
そして、裁量の根拠となる「許可をすることができる」という文言には、直接上記要素を読み取る手がかりは全く無い。
従って、通達の存在を考えても、法及び施行規則が当然に地元住民の利益を保護する趣旨を含むと解するのは難しい。
結局、通達を根拠にX2の原告適格を認めることはできない、ということになりそうである。

なお、X1との関係で、法科大学院が文教施設に当たるか、気になった人もいたかもしれない。
通達の定義規定には、法科大学院が列挙されていないからである。
しかし、法科大学院は、大学院の一つ(専門職大学院)であり、大学に置かれる組織である。

学校教育法

97条 大学には、大学院を置くことができる。

99条2項 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。

 

法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条1号、下線は筆者)

 法科大学院(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。以下同じ。)において、法曹の養成のための中核的な教育機関として、各法科大学院の創意をもって、入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い、少人数による密度の高い授業により、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力(弁論の能力を含む。次条第三項において同じ。)並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施し、その上で厳格な成績評価及び修了の認定を行うこと。

従って、定義規定のうち「大学」に含まれる。
しかし、上記の条文は、問題文に挙がっていない。
現場で迷っても、無理はないところがある。
不親切な出題だったといえる。

差止めが本筋にみえるが

設問2(1)は、訴訟選択を問う問題である。
これから行われる取消措置を回避したいのであるから、差止めだろう。
多くの人が、そう思ったはずである。
初学者であれば、取消措置の差止めを本筋とし、要求措置の取消訴訟を対立候補に挙げる。
そして、要求措置に処分性がないとか、要求措置の有効性は取消措置の要件でないから実効性がないとして退ける。
そういう構成でも、やむを得なかったと思う。

ただ、実際に差止めの要件を充たすか考えてみると、難しいと気付く。
工事未着工であり、回復困難な損害が生じるとはいいにくいからである。
そこで、他に本筋がないか、考えてみる。
要求措置から取消措置までを一連の処分とみて、要求措置の取消しと取消措置の執行停止なども思いつくかもしれない。
しかし、さすがに一連の処分とみるのは無理があるし、仮の救済は考えるなとあるから、執行停止を絡めるのはおかしい。
そこまで考えて、合意書の再提出義務の不存在確認という手段に気がつくかどうか。
これが、一つのポイントとなる。
実質的当事者訴訟は、本筋にならない場合が多い。
しかし、本問では、これが本筋となる。
義務不存在確認の訴えについては、長野勤評事件がある。
できれば、これとの事案の違いについても指摘したい。

本設問は、書こうと思えば色々なことが書ける。
しかし、配点からして、ここは1ページ程度しか書けない。
極端にコンパクトな書き方を、心がけるべきである。
差止めの要件については、論証などせずに、いきなり当てはめる。
各措置の処分性も、書かない。
訴訟要件充足の見込みと、実効性の結論だけを、ストレートに書いていくべきである。

設問2(2)が最大の難関

本問で最も苦労するのが、設問2(2)である。
規則の基準には、地元住民の同意を読み込めるような規定がない。
通達は、法令の解釈運用の指針でしかないはずである。
だとしたら、法令にない基準を勝手に決めることはできないのじゃないか。
これが、多くの人が現場で思う疑問だろう。
しかし、この通達は仮想のものではなく、現行のものである。
そう簡単に、違法だと断定することはできない。
しかも、通達が違法無効だと考えると、その後の誘導に繋げることができない。
不許可の理由にもならないし、取消しもできない、全部ダメ、という結論で終わってしまう。
この結論では、評価を落とすはずだ。
現場で、ここまでは多くの人が判断できたはずである。

では、どうやってここを突破すればよいのか。
ここで、もう一度条文を見直すと、下記の部分に気付く。

(法5条2項、下線は筆者)

 国土交通大臣は,前項の許可の申請があつたときは,申請に係る施設の位置,構造及び設備が国土交通省令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる

「することができる」ということは、しなくてもよい、ということである。
そうか、基準を充足しても、許可しない場合があり得るのか。
ここに気付けるかどうかが、本設問の分かれ目である。
すなわち、基準を充足しても、大臣の判断で許可しないことができる。
その考慮要素が、通達に示されている。
すなわち、自治会の同意がないことを理由に、許可しないことができるのである。
これで、上記の疑問の部分を突破できる。
なお、上記文言どおり効果裁量を認めてよいかは、一つの論点である。
これは、設置許可の法的性質とも関係する。
この点、前記東京地判平18・12・20は、設置確認を講学上の特許とする。

東京地判平18・12・20より引用、下線は筆者)

 @本件施行規則によると,8条1項に定める確認は,設置者の確認申請に対し,設置者が設けようとする場外発売場の位置,構造及び設備が本件告示が示す基準に適合するものであるという事実を国土交通大臣が確認するという純然たる事実行為として規定されており,また,本件施行規則には,運輸大臣又は国土交通大臣の確認を受けない場合には場外発売場の設置それ自体が禁止される旨を定める明文の規定はないこと,Aしかし,前示のとおり,勝舟投票券をどのような場所においてどのような施設を設置してどのような方法によって販売するかは,本来勝舟投票券を販売しようとする者が自由に決め得ることではなく,モーターボート競争法又はその委任を受けた本件施行規則において定められた方法に従って行われるべきものであり,同法又はその委任を受けた本件施行規則において定められた方法に従った場合にのみ,勝舟投票券を販売することが可能となるところ,本件施行規則8条1項は,設置者が設けようとする場外発売場の位置,構造及び設備が本件告示が示す基準に適合するものであることについて運輸大臣又は国土交通大臣の確認を受けなければならないと定めているから,運輸大臣又は国土交通大臣の確認を受けずに場外発売場を設置することは,モーターボート競争法がおよそ許容しないことであり,また,前示のとおり,本件施行規則8条1項の運用として場外発売場の設置が事実上国土交通大臣の許可を要するものとされているから,明文の規定がなくとも,本件施行規則8条1項に定める確認を受けなければ,場外発売場を設置することはできないものとされていること,B前記認定事実のとおり,同項の運用として場外発売場の設置が事実上国土交通大臣の許可を要するものとされていることは,場外発売場を設置しようとする者において十分に認識しているところであること,C施行者が同項に定める確認を受けずに設置された場外発売場において勝舟投票券を発売することを前提として開催する競走はモーターボート競走法に反するものということができ,その場合には,国土交通大臣は,当該施行者に対し,同法22条の11に基づき,当該場外発売場における勝舟投票券の発売の禁止を命ずることができ,また,同法23条1項に基づき,競走の開催を停止し,又は制限すべき旨を命ずることができるものと解され,国土交通大臣がそのような命令を発した場合には,それによって結果的には本件施行規則8条1項に定める確認を受けずに設置された場外発売場における勝舟投票券の発売が阻止されることとなることを総合すれば,同項に定める確認は,原則的に禁止された場外発売場の設置を例外的に解除するという法律効果を有する,いわゆる許可(講学上の特許)に当たると解するのが相当である。

(引用終わり)

しかし、上記はかっこ書部分が誤りである。
「原則的に禁止された場外発売場の設置を例外的に解除するという法律効果を有するものは、講学上の特許である」という肢があれば、多くの受験生が自信を持って×をつけるだろう。
原則的禁止の解除は、特許ではなく、許可だからである。
特許とは、新たに特別の権利を付与するものである。
(確かに、場外での投票券販売権という独占的地位を付与するものと理解して、特許と解する余地もないではない。
しかし、そうであるとしても上記は理由付けを誤っている。)
よって、上記裁判例は、かっこ書を削除すべきである。
実際、上級審である東京高判平20・4・17では、明示の改めではないが、引用にあたりかっこ書を削除し、さりげなく訂正している。

東京高判平20・4・17より引用、下線は筆者)

 当裁判所も,本件施行規則8条1項に定める国土交通大臣の確認は,行政事件訴訟法3条2項に規定する「行政庁の処分」に該当すると判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」欄の第3の2(原判決17頁3行目から35頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する
 すなわち,モーターボート競争法が昭和32年の改正より競争場の設置については運輸大臣(現在では国土交通大臣)の許可を要するものに改正されたことに伴い,同法が場外発売場の設置に関する事項をモーターボート競争法施行規則に委任するに当たっては,将来,同法施行規則において場外発売場の設置を認めることとする場合には,場外発売場の設置については運輸大臣の許可又はこれに準ずる処分を要するものとして規定するものとして委任する趣旨に改正されたものと認めるのが相当であり,場外発売場を設置しようとする者はその設置しようとする場外発売場が国土交通大臣の定める基準に適合するものであることについて国土交通大臣の確認を受けなければならない旨を定める本件施行規則8条1項は,国土交通大臣に対し,原則として禁じられた場外発売場の設置について,例外的に禁止を解除してこれを許容する権限を付与したものであり,その確認は場外発売場の原則禁止を例外的に解除するいわゆる許可の性質を有するものと解される。

(引用終わり)

予備校等では、上記東京地裁の判示をそのまま参照し、本問の許可も特許であると解説するものがあるようである。
不適切であり、注意を要する。
本問の許可を講学上も許可であると解すると、効果裁量が認められないのではと思える。
しかし、通常許可に効果裁量を認めないのは、許可制の多くが消極規制だからである。
(憲法の目的2分論が、もともとは行政法概念だったことを想起すべきである。)
公営ギャンブルは積極目的を含んでいるから、通常とは異なって、許可であっても裁量を肯定しうると考えればよいだろう。

次にぶつかる壁は、下記の誘導にどう乗るか、という点である。

(問題文より引用、下線は筆者)

職員:通達の中身について言いますと,地元の同意を重視している点は,自治体の職員としてはとてもよく理解できます。ただ,許可の取消しという措置まで執ることができるのかと問われると,自信を持って答えられないのです。

弁護士:法律家から見ますと,地元の同意を重視する行政手法には,問題点もありますね。国土交通大臣が本件許可の申請に際して地元自治会の同意を得ておくように求める行政手法の意義と問題点を,まとめておきましょう。その上で,疑惑が事実であると仮定して,国土交通大臣は,Aに対してどこまでの指導,処分といった措置を執ることができるのか,執り得る措置の範囲ないし限界についても綿密に検討しておきます。

(引用終わり)

意義は、住民自治に資するとか、どうとでも言える。
問題点の方は、どう考えればいいのか。
住民の意思を尊重するのは良いことだ、何が問題なんだ。
そういう発想でいると、前に進まない。
相手方である事業者の側の立場にたって、考えてみるべきである。
そうすると、今回のように後になって同意の有無が蒸し返され、取り消されてはたまらない、ということになる。
すなわち、法的安定性が害される、ということになる。
これが、問題点だろう。
ここで、ある程度勉強が進んでいれば、受益的処分の職権取消しの論点を思い出すはずである。
法的安定性を考慮してもなお取り消すべき特別の公益上の理由がある場合だけ、取消しできるとするのが通説である。
これを思い出せば、なるほど、職権取消しの論点に誘導しているな、と気付くことができる。
あとは、当てはめである。

本設問については、詳細なヒントがある。
しかし、そこから具体的にどういう中身を書くべきかは、すぐには出てこない。
現場で条文を読む力と、ある程度の論点の知識が要る。
本設問は、実力に応じて答案の中身に差が付きやすい問題だったといえる。

これまでの設問をヒントにできるか

設問3は、立法提案をさせるものである。
これ自体は、新しい。
しかし、中身は、大したものではない。
配点からして、1ページ程度しか書けないからである。
考えうるものを、箇条書きにすれば足りる。
立法技術的な知識は、何ら問われていないといってよい。

もっとも、現場では、何を書いたらよいのか、迷ったはずである。
しかし、こういう漠然とした出題の場合、その前の設問がヒントになっている。
これは、旧司法試験以来の傾向である。
設問1の原告適格を考えてみる。
環境を享受する利益は、一般公益だろう。
そうすると、違法があっても住民が抗告訴訟を起こすのは難しい。
そこで、客観訴訟としての住民訴訟を構想することが考えられる。
このことは、最判平21・10・15もヒントになる。

最判平21・10・15より引用、下線は筆者)

 周辺環境調和基準は、場外施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置が周辺環境と調和したものであることをその設置許可要件の一つとして定めるものである。同基準は、場外施設の規模が周辺に所在する建物とそぐわないほど大規模なものであったり、いたずらに射幸心をあおる外観を呈しているなどの場合に、当該場外施設の設置を不許可とする旨を定めたものであって、良好な風俗環境を一般的に保護し、都市環境の悪化を防止するという公益的見地に立脚した規定と解される。同基準が、場外施設周辺の居住環境との調和を求める趣旨を含む規定であると解したとしても、そのような観点からする規制は、基本的に、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序ある整備を図るという一般的公益を保護する見地からする規制というべきである。また、「周辺環境と調和したもの」という文言自体、甚だ漠然とした定めであって、位置基準が上記のように限定的要件を明確に定めているのと比較して、そこから、場外施設の周辺に居住する者等の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難といわざるを得ない
 したがって、被上告人らは、周辺環境調和基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有するということはできないというべきである。

(引用終わり)

この点は、司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

7:経済産業大臣がした本件許可の取消訴訟において、最高裁は、場外施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置が周辺環境と調和したものであるという基準(周辺環境調和基準)は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、多数の来場者が参集することによるその周辺における享楽的な雰囲気や喧噪といった環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、周辺環境調和基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解され、このような見地から、当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たっては、当該場外施設が設置、運営された場合にその規模、周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して、当該医療施設等が上記のような区域に所在しているか否かを、当該場外施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと判示した。

【解答】

7:誤り(最判平21・10・15)。

 「場外施設は、多数の来場者が参集することによってその周辺に享楽的な雰囲気や喧噪といった環境をもたらすものであるから、位置基準は、そのような環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障について、特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして、その支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。したがって、仮に当該場外施設が設置、運営されることに伴い、その周辺に所在する特定の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合には、当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。

 このように、位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして、このような見地から、当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たっては、当該場外施設が設置、運営された場合にその規模、周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して、当該医療施設等が上記のような区域に所在しているか否かを、当該場外施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと解するのが相当である。

 ・・・次に、周辺環境調和基準は、場外施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置が周辺環境と調和したものであることをその設置許可要件の一つとして定めるものである。同基準は、場外施設の規模が周辺に所在する建物とそぐわないほど大規模なものであったり、いたずらに射幸心をあおる外観を呈しているなどの場合に、当該場外施設の設置を不許可とする旨を定めたものであって、良好な風俗環境を一般的に保護し、都市環境の悪化を防止するという公益的見地に立脚した規定と解される。同基準が、場外施設周辺の居住環境との調和を求める趣旨を含む規定であると解したとしても、そのような観点からする規制は、基本的に、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序ある整備を図るという一般的公益を保護する見地からする規制というべきである。また、「周辺環境と調和したもの」という文言自体、甚だ漠然とした定めであって、位置基準が上記のように限定的要件を明確に定めているのと比較して、そこから、場外施設の周辺に居住する者等の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難といわざるを得ない

 したがって、被上告人らは、周辺環境調和基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有するということはできないというべきである」と判示した。

 本肢は、医療施設等の開設者の原告適格を周辺環境調和基準を根拠に認めるものとしているから、誤っている。

(引用終わり)

短答向けに上記を知っていた人は、これを思い出したのではないか。

それから、設問2との関係では、自治会の同意としている点が後日の紛争原因となっている。
端的に、住民投票制度を導入した方が、手続的にも安定するのではないか。
また、同意書の要求が厳格に過ぎるという発想からは、公聴会や意見公募といった手続で代えるということもありうるだろう。
規則や通達で基準が定まるところの不明確性を考えて、条例で明確な基準を立てるということも考えられる。
そういった点をいくつか書けば足りるだろう。

問題点としては、上記に対応して簡単に書けばよい。
また、一応条例と法律の関係が問題になるから、その点も触れたい。
ただ、論証するような紙幅はない。
趣旨目的を異にするから問題ない、と簡単に書いてよいだろう。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.行訴法9条1項にいう法律上の利益を有する者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分に関する法令が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含む場合には、このような利益も上記法律上保護された利益に当たる。そして、処分の相手方以外の者について上記の判断をするに当たっては、同条2項所定の要素を考慮すべきである(小田急線高架訴訟判例参照)。

2(1)X1につき、法5条2項を受けた施行規則12条は、1項1号において、「位置は、文教上・・著しい支障をきたすおそれのない場所であること」としている。
 上記が単に文教施設の利用者の平穏確保の趣旨にとどまるなら、それは不特定多数者の一般的公益にすぎない。しかし、上記基準は、文教施設運営者の健全な運営の確保の趣旨をも含む。混雑・騒音等で文教施設の運営が阻害されれば、単なる利用者とは比較にならない重大な損失を被るからである。これは不特定多数者の一般的公益にとどまらず、当該文教施設運営者の個別的利益である。

(2)本問で、Aの計画どおり本件施設が設置された場合を考えると、以下のとおりSの健全な運営が害されるおそれがある。

ア.Q地、S及びP駅の位置関係並びに本件施設の開場時間及び退場者が集中する時間からすれば、来場者による県道の混雑によってSの学生の通学に支障が生じるおそれがある。

イ.Q地とSは約400メートルしか離れていないから、騒音等がSにも届く可能性は否定できない。また、P駅を利用する多数の来場者の喧騒が県道に面するSに及ぶことは予想できる。これらは、Sにおける授業等に支障となるおそれがある。

ウ.1年間に350日と、ほぼ通年で開場することからすれば、上記支障は恒常的に生じることになる。

(3)本件許可により、ほぼAの計画どおりに本件施設の設置がされると考えられる。従って、上記Sの健全な運営が害されるおそれは、本件許可により必然的に生じる。よって、Sを運営するX1は、本件訴訟につき原告適格を有する。

3(1)X2は、Q地から200メートルという至近に居住している。確かに、騒音、混雑、享楽的雰囲気等の環境変化により近隣住民が不快に感じることは予想できる。しかし、一般に良好な環境の享受は抽象的利益に過ぎず、当然に法律上保護された利益とはいえない。また。法及び施行規則には、上記の近隣住民の利益が害される場合に許可を許さないとする直接の規定は見当たらないから、法及び施行規則によって特に保護されたものということもできない。

(2)もっとも、X2は自治会Rの構成員である。資料3の関係通達によれば、運用上自治会の同意が許可の要件となっている。上記通達が、自治会構成員の個別的利益を保護する趣旨を含むと解する余地がないではない。
 しかし、一般に通達は行政組織内部の命令にすぎず、法規の性質を有しない以上、通達に反する処分であっても通達違反のみを理由としてその効力が妨げられるものではない(墓地埋葬法通達事件判例参照)。従って、上記通達違反自体は本件許可の違法を基礎付けるものでないから、上記通達の趣旨を考慮して原告適格を基礎付けることはできない。

(3)以上から、X2には本件訴訟の原告適格は認められない。

第2.設問2(1)

1.取消措置を回避する直接的手段として、取消措置の差止めの訴えがある。また、取消措置は同意書の再提出懈怠を理由とするから、同意書の再提出義務の不存在を確認する訴え(実質的当事者訴訟)もありうる。

2.前者の差止めの訴えは、訴訟要件として重大な損害を生ずるおそれ(行訴法37条の4第1項)を要する。本問では、いまだ工事に着手しておらず、処分による損害の現状回復又は金銭賠償による補てんが可能であるから、上記要件を満たさないと判断される可能性が高い(同条2項参照)。また、本案の勝訴要件も厳格であり(同条4項)、実効性に疑問がある。

3.他方、後者の確認の訴えは、要求措置の反復という現在の紛争の抜本的解決に有効適切であるから、確認の利益が認められ、差止め訴訟のような厳格な勝訴要件もなく、勝訴すれば行政庁に対する拘束力がある(行訴法41条1項、33条1項)ことから、実効性もある。なお、長野勤評事件判例は義務不存在確認の訴えにつき厳格な訴訟要件を要求したが、これは具体的紛争が生じる以前に実質的な差止めの訴えとしてされた事案である。本問では、現に要求措置の反復という具体的紛争が存在し、取消措置回避は当該紛争解決の付随的結果であるといえるから、上記判例は妥当しない。

4.以上から、最も適法とされる見込みが高く、かつ実効的な訴えは、同意書の再提出義務の不存在を確認する訴えである。

第3.設問2(2)

1.取消措置は、本件許可が同意書を欠くものだったことを理由とする。しかし、施行規則12条は、地元の同意を基準としない。法令に規定されない理由で許可を拒否できるのか。

(1)場外発売場設置の許可は、刑法187条の富くじ発売等を適法とするものである。このような一般的禁止を解除する講学上の許可は、一般に、本来的自由の回復であるから要件を充足する以上は必ず許可しなければならない、すなわち、効果裁量を否定すべきと解されている。もっとも、公営賭博は事業、観光振興や財政改善というすぐれて政策的な性質を有する(法1条参照)。従って、公営賭博に係る許可には、法令上の基準とは異なる政策判断に基づいた裁量を肯定できる。従って、法5条2項の「許可をすることができる」とは、字義どおり効果裁量を認めるものと解すべきである。

(2)よって、法令に規定されない理由により許可を拒否できる。

2.もっとも、考慮すべきでない理由により拒否をすれば、裁量逸脱濫用となりうる。そこで、地元の同意を考慮することの是非を検討する。地元の同意の考慮は、資料3の関係通達に基づくが、通達は法規の性質を有しない。あくまで法の趣旨目的から考慮事由として許されるかを検討すべきである。
 前記のとおり、公営賭博はすぐれて政策的性質を有し、また、本来射幸心を煽り、善良な風俗に反するとして禁止されるものであるから、一種の禁忌施設に当たる点も考慮すれば、地元住民の理解の有無は、正当な考慮事由である。
 よって、地元の同意を欠くことを理由として許可を拒否することは許される。

3(1)上記のように、地元の同意を求めることには、公営賭博の性質上一定の意義がある。その反面、資料3の関係通達によれば、自治会等の同意がなければ事実上許可がされない運用となっている。しかし、議会の議決と異なり、自治会等の同意の有無については、その招集手続き、定足数、議決要件その他の同意の有効性に係る事項が明確でなく、また、その事実関係を確認する資料の保管も必ずしも十分でないことから、後日争いとなることが少なくない。これを絶対的要件とした場合、後日争いが生じたときに事業者の地位の安定が害されるという問題もある。

(2)上記を踏まえると、本件許可につき同意書に係る疑惑が事実であったとしても、直ちにAに対する許可を取り消すことは適切を欠くといえる。まずは、有効な同意書の取り直しを求める行政指導をすべきである(要求措置)。上記指導には法的拘束力はないから、Aが従わなければ同様の指導を反復するよりない。

(3)Aが上記指導に従わないことを明らかにした場合、もはや指導の継続は適切でない。では、すすんで取消措置をなしうるか。
 法4条6項、5条4項は、施設の位置、構造及び設備の基準不適合以外の原因による取消しを認めていない。しかし、当初から要件を欠く行政行為はその存立の基礎を欠く以上、処分庁は明文がなくとも当該行政行為を取り消すことができる(職権取消し)。裁量的に許可すべきでない事実を看過した場合も、同様に解しうる。もっとも、既になされた許可により生じた法律関係の安定性を考慮する必要があるから、法的安定性を犠牲にしてもなお取消しを要すると認めるに足りる事情のあることを要する。
 本問では、工事は未着手であり、取消しによりAに重大な損失が生じるとまでは認められない。他方、同意書に係る瑕疵の重大性の評価は国土交通大臣の裁量判断によらざるを得ないが、禁忌施設に対する近時の住民の拒否反応からすれば、瑕疵を重視した大臣の判断が明らかに不合理とまではいえない。以上からすれば、Aの法的安定性を犠牲にしてもなお取消しを要すると認めるべき事情がある。
 よって、取消措置は適法である。

(4)なお、上記のとおり、取消措置を適法に行う余地がある以上、取消措置を執る可能性を示しながら要求措置を執り続けることは違法ではない。

第4.設問3

1.規定の骨子

(1)環境概念の不明確性に鑑み、事業者の予測可能性を確保するため、条例において明確かつ客観的な許可基準を設ける。

(2)環境に係る利益の一般性を踏まえ、違法に許可がされた場合、個々の住民の主観的利益を要しない民衆訴訟の提起を可能とする。

(3)住民及び事業者の利害調整のため、公聴会、意見公募手続等の手続きを整備する。

(4)住民意思をより適切に反映させるため、住民投票制度を導入する。

2.問題点

(1)基準の明確性・客観性の要求は、柔軟な運用を困難にする。

(2)民衆訴訟は、事業者の訴訟リスクを増大させる。

(3)住民と事業者の対立が激化すると、公聴会や意見公募手続等は形式的なものとなり、実効性を失うおそれがある。

(4)住民投票の導入は、かえって実質的議論の場を失わせ、利害調整を困難にするおそれがある。

(5)なお、法との抵触(憲法94条違反)については、趣旨目的を異にするから問題は少ないと解される(徳島市公安条例事件判例参照)。

以上

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