TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(2)

第1回外国弁護士制度研究会(平成20年6月6日)より抜粋(下線は当サイトによる)

渡邊英夫(法務省大臣官房司法法制部部付検事)幹事
 では,幹事の渡邊のほうから資料2につきまして御説明したいと思います。本日,法務省のほうから御説明しますのは,我が国における外国弁護士受入制度の概要,現状,あるいは諸外国における外国弁護士受入制度の現状といった点でございます。
 資料に沿って御説明いたします。
 まず,お手元の資料2−1−(1)「外国法事務弁護士制度について」と題するものを御覧ください。
 こちらに記載していますとおり,制度の基本は,「外国の弁護士となる資格を有する者が,その資格を根拠として新たに資格試験等を課されることなく,我が国において外国法に関する一定の法律事務を取り扱うことができることとする制度」というものでございます。
 若干補足して御説明いたしますと,弁護士法第72条によりまして,我が国におきましては,弁護士または弁護士法人以外の方が他人の法律事務を取り扱うことは原則的に禁止されております。その違反行為につきましては,罰則の対象とされております。したがいまして,外国の弁護士となる資格を有する方々が我が国において外国法に関する一定の法律事務を取り扱うことができることとする制度,これは弁護士法の例外と,そのように位置付けられると思います。
 このように,我が国における外国弁護士受入制度につきましては,弁護士法の特例となるものでございまして,外国の弁護士となる資格を有する方々が,所定の要件を満たした場合に,これは外国法事務弁護士という言い方をしますけれども,外国法事務弁護士として一定の範囲の法律事務を取り扱うことを許容する制度,このように御理解いただければと思います。この我が国における外国弁護士受入制度につきましては,「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(外弁法)」に規定されております。この法律は,昭和62年4月1日から施行されております。
 なお,これから御説明します内容につきましては,日本の弁護士,あるいは弁護士法人につきましては,単に弁護士ないしは弁護士法人という言い方をさせていただきます。また,外国で弁護士となっていらっしゃる方々につきましては,外国弁護士という言い方をさせていただきます。他方,先ほど申し上げたいわゆる外弁法において外国法事務弁護士という資格を与えられた方々,この方々を外国法事務弁護士,こういった使い分けをして御説明したいと思いますので,その点,御留意いただければと思います。
 続けますが,外国法事務弁護士とは一体何かと申し上げますと,外弁法では,いわゆる2段階方式というものを採用しております。この2段階方式とは何かと申し上げますと,まずは外国の弁護士となる資格を有する方が,法務大臣の承認を受けた場合に,外国法事務弁護士となる資格を有することになります。そして,外国法事務弁護士となる資格を有することとなった方が,日弁連に備えております外国法事務弁護士名簿に登録を受けた場合に外国法事務弁護士となります。そういった2段階の手続を経まして外国法事務弁護士となった方々が一定の範囲の法律事務を取り扱うことができると,このような仕組みになってございます。
 今申し上げました法務大臣の承認でございますけれども,この資料2−1−(1)の下のほう,「法務省」という四角の枠があって,「法務大臣の承認」,「(要件)」というところを御覧ください。これらの要件を満たした方々につきましては法務大臣の承認を得ることができると,このようになっております。
 外国弁護士となる資格を有することがまず必要とされていることは当然のこととして,その次に記載されております「職務経験(3年)」について若干御説明したいと思います。これは,外国弁護士となる資格を取得された後,3年以上,資格取得国において外国弁護士として職務を行った経験を必要とするものです。
 ・・このような要件を満たした方々が法務大臣の承認を受け,外国法事務弁護士となる資格を有することとなります。そのような資格を取得された方は,今度は,日弁連に登録の請求をすることになります。その登録の請求をされた方につきましては,日弁連の中の外国法事務弁護士登録審査会というところで登録審査がされて,その審査を経た方が先ほど申し上げた名簿に登録をされて,外国法事務弁護士となることとなります。
 先ほど,外国法事務弁護士は一定の範囲の法律事務を取り扱うことができると申し上げました。そこで,次に,その取り扱うことのできる法律事務の範囲について御説明したいと思います。資料の2−1−(2)を御覧ください。
 先ほども申し上げましたが,弁護士法第72条により,弁護士あるいは弁護士法人以外の方々は法律事務を取り扱うことが原則的に禁止されております。その我が国における法律事務のイメージがこの大きな四角の枠でございます。この法律事務につきましては,日本国法に関する法律事務と外国法に関する法律事務の2つに大きく分けることができます。
 外国法事務弁護士が取り扱うことのできる法律事務の範囲はといいますと,外国法に関する法律事務のうち,ここの大きな枠の中に着色してあります部分,緑色,青色,黄色がございますが,この部分が外国法事務弁護士が取り扱うことのできる法律事務の範囲ということになっております。順に御説明いたします。
 外弁法では,外国法のことを原資格国法というものと,それ以外の特定外国法というもので概念しております。原資格国法は何かと申し上げますと,先ほど,外国法事務弁護士となるためには法務大臣の承認が必要と申し上げましたが,その承認の申請をする際に申請した,外国弁護士となる資格を取得したその資格取得国における法のことを原資格国法という言い方をしております。
 外国弁護士となる資格を取得されている方が,法務大臣の承認を受けて,日弁連で登録をされた場合には,この原資格国法に関する法律事務を取り扱うことができるようになります。逆に,それ以外の特定外国法に関する法律事務につきましては,取扱いが原則的に禁止されております。
 この原資格国法に関する法律事務についてさらに御説明いたします。今,申し上げましたとおり,外国法事務弁護士といいますのは,原資格国法に関する法律事務を原則的に取り扱うことができると,これが外弁法の仕組みでございますが,一方で,原資格国法に関する法律事務であっても,日本法についての知識が十分でないと適切な法律事務を行えない分野,こういったものも中には類型としてございます。これにつきましては,緑色の四角の右に記載してございますが,例外的に取扱いができないこととされております。このうち,イメージがわきやすいものとしましては,例えば,刑事に関する事件における弁護人としての活動などは,原資格国法に関する法律事務であっても,取扱いは認められておりません。
 他方,原資格国法に関する法律事務として取り扱うことができるものであっても,外国法のみの知識に基づいて事案を処理すると,その適正を欠くおそれがあるというものにつきましては,さらに要件を加重して取扱いを認めております。この濃い緑色のところに記載しているものでございます。このような法律事務につきましては,弁護士との共同遂行または弁護士の書面による助言を得て,その原資格国法に関する法律事務を取り扱うことができることとされております。例えば,国内所在の不動産に関する権利あるいは工業所有権もそうですが,これらの権利の得喪・変更を目的とするけれども,それが主たる目的でない法律事件についての代理などがこれに当たります。また,親族関係に関する法律事件,当事者として日本国民が含まれるものですが,これについての代理等につきましても,弁護士との共同遂行などが必要となってきます。
 以上が,外国法事務弁護士が取り扱うことのできる原資格国法に関する法律事務でございます。
 ・・このほかに,外国法事務弁護士であっても,国際仲裁事件の代理であるとか,あるいは外国法共同事業といいまして,外国法事務弁護士と弁護士あるいは弁護士法人が組合契約その他の継続的な契約によって共同して行う事業であって,法律事務を行うことを目的とするものにつきましては,例外的にその取扱いが認められております。

 次に,外弁法の改正経緯等について御説明いたします。資料2−2を御覧ください。
 先ほども申し上げましたとおり,我が国における外国弁護士受入制度は昭和62年に始まりましたが,この資料にありますとおり,内外の諸情勢を踏まえまして,弁護士と外国法事務弁護士との特定共同事業の許容でありますとか,あるいは承認の要件になります職務経験要件の緩和などといった点につきまして,累次の改正が行われてきました
 直近のもので申し上げますと,我が国の司法制度改革の一環としてされたものでございます。3ページ目を御覧ください。3ページ目の下のほう,「平成15年7月 外弁法一部改正」とありますが,平成15年7月に成立しました「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律」によりまして,弁護士と外国法事務弁護士の提携・共同を積極的に推進すべく所要の改正が行われました。その内容につきましては,この3ページに記載されているとおりですが,主たるものとしましては,外国法事務弁護士による弁護士の雇用の解禁でございますとか,あるいは外国法事務弁護士と弁護士との共同事業等に関する規制の緩和などの措置が講じられました。
 このように累次の改正が行われてきたわけでございますが,今なお日米規制改革イニシアチブ等において外国法事務弁護士の専門職法人の設立解禁等の要望がございます。4ページの一番上を御覧ください。
 日米規制改革イニシアチブ6年目の対話における対日要望でございますが,こちらに4点記載していますとおり,専門職法人及び支所設置の容認,外国法事務弁護士に対する最低資格基準の見直しでありますとか,あるいは弁護士に対するインターナショナル・リーガル・パートナーシップとの自由な提携の容認,仲裁及び裁判外紛争解決手続の推進といった対日要望がされました。このような要望に対しましては,日本のほうから,平成19年6月6日付け日米両首脳への第6回報告におきまして,次のように答えております。「外国法事務弁護士の専門職法人の設立に関し,外国法事務弁護士代表者からの要望を受け次第,外国法事務弁護士が弁護士専門職法人と同じ根拠に基づき,また,同じ利益を享受できる専門職法人を組織することを容認する関係法令の改正に向けた措置をとることを視野に入れて日弁連と協議を行う。」と,このように回答してございます。
 その後の経緯でございますが,一番下のほうの「外国法事務弁護士等からの要望」というところを御覧ください。今申し上げた日本側の正式な回答を踏まえまして,平成19年の10月5日付けで,在日米国商工会議所法律サービス委員会共同議長,外国法事務弁護士の任意団体でございますが,外国法事務弁護士協会のコーディネーター,あるいは渥美法律事務所渥美弁護士から,別途,書簡で要望が寄せられております。
 さらに,同じ年の10月30日には,在日米国商工会議所会頭等が大臣を往訪した際,外国法事務弁護士関係では「法人化によらない支店の設置」に関する要望があったものと承知しております。
 このような経緯を踏まえまして,今回の外国弁護士制度研究会設置に向けた日弁連との協議が始まりました。その後,・・平成20年3月25日閣議決定されました規制改革推進のための3か年計画(改定)におきまして,国民が利用しやすい司法制度を実現すべく,このように述べております。「今後増加すると見込まれる国際的な法的需要に適切に対応する観点から,外国法事務弁護士(外弁)事務所についても日本弁護士と同様の位置付けで法人化を認めるべきであるとの指摘があることを踏まえ,今後の我が国における国際的な法的需要の動向や外弁の登録数,外弁と日本弁護士(法人を含む)との外国法共同事業の実態等も考慮しつつ,外弁事務所の法人化について検討を行い,結論を得る。」とされております。
 以上が外弁法の改正経緯等でございます。

 次に,我が国における外国法事務弁護士の現状について御説明いたします。資料の2−3−(1)を御覧ください。こちらに記載していますデータは平成14年から本年5月末現在のものでございますが,承認者数という欄を御覧いただきますと,平成14年からは概ね40名前後の方々が法務大臣の承認を受けております。そして,本年5月末日現在で,現登録者数は272名となっております。下のグラフを御覧ください。黒色の線グラフは現登録者数を示したものでございますけれども,現登録者数は着実に増加しております。したがいまして,我が国への定着が長くなっている傾向にあるかと思います。
 次に,資料2−3−(2)を御覧ください。この表の一番左,1とあるところを御覧ください。原資格国別の外国法事務弁護士の現登録者数でございます。これは今年の5月末現在のものですが,一番多いのがアメリカ合衆国で160名でございます。全体の272名でみますと,約59%を占めております。アメリカ合衆国の中で最も多いのがJのニューヨーク州の86名でございます。次いで@のカリフォルニア州の34名が目立っております。次に多いのが連合王国でございまして,45名の方々が登録されております。3番目が中華人民共和国で24名の方,そのほか4番目のオーストラリア,以降,最後の16番目のブラジル連邦共和国の方々が現在登録されているということです。
 さらに,資料2−3−(3)を御覧ください。現在登録されています外国法事務弁護士の方々あるいはその所属事務所が我が国においてどのように分布しているかを示したものでございます。東京都につきましては254名となっておりまして,最も多うございます。これは全体に占める割合で申し上げますと93%を占めております。事務所につきましては東京都が112ありまして,これも全体の87%を占めております。次いで多いのが大阪府でございまして,外国法事務弁護士として登録されている方は9名,全体の3.3%でございます。事務所につきましては8あります。これも全体の6.2%を占めております。
 最後に,資料2−4を御覧ください。これまで我が国における外国弁護士受入制度について御説明しましたが,この資料は,主要国における外国弁護士受入制度の概要を示したものでございます。まず初めにアメリカ合衆国でございますが,合衆国は連邦国家ですけれども,そのうちの22州が外国弁護士受入制度を導入しておりません。他方,そのほかの28州及びコロンビア特別区におきましては,外国弁護士受入制度を導入しておりますが,例えば職務経験要件のところを御覧いただきますと,大体3年から5年の職務経験を要求しておりますし,なおかつその職務経験といいますのは,その申請直前のものを要求していることが分かります。
 次に,欧州につきまして御説明いたしますと,まずフランスを御覧いただきますと,外国弁護士受入制度を導入しておりません。他方,連合王国あるいはドイツが外国弁護士受入制度を導入しておりますが,先ほど申し上げたような職務経験要件というものを求めておりません。
 さらに,中国につきましては,外国弁護士受入制度を導入しておりますが,職務経験要件というものを求めております。その内容はこちらに記載してあるとおりです。ほかにも,この表には記載ございませんが,香港やシンガポールにつきましては,外国弁護士が事務所を設置して資格取得国の法に関する法律事務を行うことができることとされているようでございます。
 以上が法務省からの説明でございました。

第2回外国弁護士制度研究会(平成20年6月20日)より抜粋(下線は当サイトによる)

出井幹事
 出井から日弁連の資料を説明いたします。
 ・・資料5−1を御覧ください。「外国弁護士受入制度」を論ずる際の枠組みというものでございます。このTのところに3つ書いてあります。1が資格の相互承認,2がリミテッド・ライセンス,3がフル・ライセンスと3つに分けて書いております。この3つは,より広く受け入れるかどうかという観点からしますと,必ずしもその順番というわけではないのですが,大きく言うと,1,資格の相互承認というのが一番広く受け入れている,つまり規制が非常に緩いということかと思います。それで,リミテッド・ライセンス,フル・ライセンスの順になっておりますが,一見しますとフル・ライセンスが一番広く受け入れているようにも見えますが,そうではなくて,これは単純な比較はできないのですが,リミテッド・ライセンスの方が外国弁護士の受入れについてはよりリベラルであるという評価ができるかと思います。以下,順次説明いたします。
 まず,資格の相互承認ですが,外国の弁護士相当職資格をもって内国の弁護士と同等の資格とみなして同等の業務を認めると,こういうやり方が一つあります。しかし,このやり方をとっている国は,世界では非常に少ない。かつ,特定の域内に限られている。例えばEUですね。これは世界的にはあまり採られていない枠組みであるというふうに考えていいと思います。
 次にリミテッド・ライセンスですが,これは外国の弁護士相当職資格者に一定の要件のもとで限定的な法律事務取扱を認めるという制度枠組みでございます。例としては日本の外国法事務弁護士制度,それから米国の一部の州でとられているForeign Law Consultant制度ということになるかと思います。「ここで一定の要件の下で」と書きましたが,重要なのは,試験なしでというところです。試験を設けている国もあるかもしれませんが,多くは試験なしでというところが重要なところです。職務経験の要件とか一定の要件はありますが,試験はなしというところが重要な要素です。
 それから,3番目のフル・ライセンス。これはAB2つに分けて書いておりますが,Bが簡単なのでBから申し上げますと,外国の弁護士相当資格者に,内国の弁護士の法曹試験受験資格を与えるというもので,これは要するにきちんとその国の司法試験を通れ,という話であります。日本もそうですが,司法試験には受験資格というのがございます。その受験資格を,例えば外国の法曹資格を持っていればその国のロースクール3年間の過程は全部経なくていいとか,そういう面で若干の緩和はあるということです。それがBの法制です。それからAは,外国の弁護士相当職資格者に,簡易な適性試験等で内国の弁護士資格を与える。内国の人とは別の試験でやるということでございます。ここで「簡易な」というふうに書きましたが,「簡易な」というのが実際上簡易かというのは,これはいろいろ考え方が実際にはあります。かつ,その国の内国言語でということになりますので,実際には言語の壁,それからある程度その国の法律を勉強していなければいけないということで,実際にこれが簡易かというと,実は逆に非常に難しい試験になっているという面はあるかと思います。ですから,「簡易な」というのは括弧書きということになります。
 このAの簡易な適性試験でという例としましては,フランスがそういう制度を採っております。ただし,実際にはフランスでもやはりこの試験は,フランス語の問題もあって難しいというふうに言われております。Bについては,これは多くの国がこういう法制を採っておりまして,例えば米国でもかなりの州で外国の法曹資格者に受験資格を与えて,ニューヨークのBar Examを受けられるということになっております。
 以上が制度枠組みの概観でございますが,2点留保しておきたいと思います。1点目は,このフル・ライセンスのBですけれども,前回御指摘があったように,そもそもその国の法曹資格を直接,ストレートに取るのがどれだけ簡単なのかという問題があるかと思います。そこから本当は比較しないといけないのですが,しかしその比較は実際にはなかなか難しい。といいますのは,その国の法曹人口あるいは司法試験政策がどうなっているのか,それから,我々がアメリカのBar Examを受けるときもそうですが,やはり言語の問題というのがある。日本語では受けられないという問題がございます。特に日本人にとっては言葉の壁というのは非常に大きいので,そのあたりの比較がなかなか難しい。この3のBで果たして日本の外国法事務弁護士制度に比べてどうなのかということの比較は一概にはできないと思います。
 それからもう一つ,*印で,資格制度がないところではそもそも「外国弁護士受入れ」ということが問題とならないというふうに書きました。これは,多くの国でそうですし,日本もそうなのですが,法律事務の取扱いを業として行うのは弁護士しかできないという法制を採っている国が多いわけです。しかし,そういう法制を採っていない国もあります。そういう法制を採っていない国では,そもそもだれでも法律事務をできるわけですから,外国弁護士を受入れる云々という問題は起こりません。例として適切かどうかは分かりませんが,連合王国においては,訴訟手続及び一定の不動産契約以外はだれでも業として法律事務ができるということになっておりますので,そういう場面では外国弁護士であろうがどういう資格であろうが,あるいは資格がない人でもできるということでございますので,そもそもこういう問題は起こらないということです。・・弁護士法72条の問題,その範囲の問題はまさにそこにかかってくることであるわけですが,この研究会は,弁護士法72条の範囲自体を議論する研究会ではございませんので,そこはそういう問題があるということだけ指摘しておきたいと思います。
 以上,枠組みの問題としましては,資格の相互承認というのは,これは世界的には非常に少ないのでちょっとはずしまして,リミテッド・ライセンスとフル・ライセンスというこの2つの仕組みを見たいと思います。それで,どちらがリベラルかといえば,このリミテッド・ライセンス,すなわち試験なしで,一定の職務経験等の要件は課すとしても,試験なしで資格を認める,限定的な資格を認める,限定的ではあるけれども試験なしで認める,この法制の方が,フル・ライセンス,フルで認めるけれども試験を課す,こちらよりも全般的にはリベラルであるという評価を私どもはしております。ここはもしかしたら評価は分かれるところかもしれません。
 以上が概観で枠組みの問題でございます。

 次に,リミテッド・ライセンスの中で,諸外国の比較がどうなっているのかということを見たいと思います。
 Uのリミテッド・ライセンス制度の中での比較のところです。1,主要国の「外観」となっておりますが,すみません,これoutlookではなくて,overviewの方ですので,「外」の字を「概」に直してください。失礼しました。
 5−2の表を御覧ください。先ほど説明申し上げましたとおり,連合王国はそもそも訴訟以外の業務は弁護士でなくても可能ということなので,比較の対象から外したいと思います。それからフランスですけれども,フランスは一番左の欄,外弁受入制度あり,なしで書いてありますけれども,フランスはなしでございます。なしですが,ただし特別な試験によりフル・ライセンスを与える制度ありということです。先ほど申し上げたリミテッド・ライセンスとフル・ライセンスの区別ということになります。見方によっては試験によりフル・ライセンスを与えるからこちらの方がリベラルではないかという見方もあるかもしれませんが,そこは先ほど申し上げたとおり,実際のオペレーションとしては,リミテッド・ライセンスの方がリベラルな取扱いであると考えております。リミテッド・ライセンスではありませんので,フランスも一応比較の対象から外します。
 そうすると,米国,中国,ドイツということになります。これらを比較する場合には幾つかのチェックポイントがあるわけです。1つ目が資格要件,職務経験年数等の資格要件が1つ。それから2番目が資格国,第三国法というふうにこの表では示しておりますが,第三国というのはどういう意味かというと,その外国弁護士の資格国,日本の弁護士だと日本の日本法,アメリカの弁護士だとアメリカの自分の州の法ということになりますが,それを資格国法といいます。内国法でもなく資格国法でもない第三国法を扱えるかどうかという問題が第2のチェックポイントです。それから第3のチェックポイントが,内国弁護士との共同事業を認められるか,及び内国弁護士の雇用を認められるかどうかという,そういう組織体制の問題が第3のチェックポイントでございます。そのあたりのチェックポイントをまとめたのがこの5−2の表ということになります。
 これを見ていただくと,日本とアメリカを比較しますと職務経験要件は,両方ともありなのですが,日本の場合は期間3年で職務経験地も第三国の経験も可ということになっておりますが,米国の場合は,ニューヨーク,ミシガン,テキサス,カリフォルニア,オハイオ等々ずっと書いてありますが,多くのところでこの申請直前何年間という要件が課されております。年数も概して日本より多いということになっているということが特徴的だと思います。この申請直前の職務経験を課すというのは,日本にはない要件であり,かなり厳しい要件,少なくとも日本に比べれば相対的には厳しい要件であるということになります。
 それから,第三国法を扱えるかどうかですけれども,日本においては書面による助言を受けて可米国においては多くの州で不可,カリフォルニア州を含めて不可です。それから,原則不可ですが一定の場合助言を受けて可というのが7州,それから可能なのがニューヨーク,ワシントンDC等5州と,多数は不可でございます。
 それから,共同事業,雇用については,米国は制限なしという理解です。日本では,外国法共同事業という形で届出をもって可能,雇用も届出をもって可能ということになっております。中国とそれからドイツについては下に書いてあるとおりで,前回,中国の共同事業について法務省から出されたペーパーでは可能であるかのように書かれておりましたが,これやはり後で法務省からも御説明いただくかと思いますが,基本的にはできないという理解でございます。
 こう見ますと,アメリカは非常に職務経験の要件,それから第三国法を扱えるかどうかということについては,日本よりは相対的に見て厳しいということになるかと思います。ドイツですけれども,職務経験要件についてはドイツは不要ですから,日本よりもそこはリベラル。しかし,第三国法については不可ですから,こちらは日本の方がリベラルということになります。一長一短ということになるかと思いますが,ドイツにつきましては,5−5の下條委員の論稿の最後にも書かれているとおり,ページでいうと75ページ,日本のドイツ化ということで書かれておりますが,英米の事務所がドイツの弁護士業界を席巻してしまっているのではないか,そういう評価もあるところです。
 以上が比較ですけれども,そのほかのチェックポイントとして,レジュメの方に戻っていただいて,(4)内国弁護士の資格者団体に加入するかどうかという問題もございます。日本では,外国法事務弁護士は,外国特別会員として弁護士会に加入していただかないといけないということになっております。かつ一定限度で弁護士会の自治にも参加してもらうということで,要するに仲間になっていただくということになるのですね。これに対して米国ではそういう制度は採っておりません。ドイツでも確かそうだったと思います。それが第4のチェックポイントです。
 第5,最後は透明性ですけれども,この透明性というのはGATSの条項で要求されていることで,やはりいろいろな規制は透明でかつ明確でなければならないということです。この点は,日本は法律規則でかなりはっきりと条件等が定められておりますので,特に透明性の点で問題があるということはないというふうに認識しております。これに対して,透明性についてアメリカの一部の州等では分かりにくいという批判があるということも聞いております。そのあたりは評価の問題ですので,ここでは透明性という問題があるということだけを指摘しておきます。
 今私のほうで説明申し上げましたが,特に各国の制度の比較は,先ほど紹介した資料5−5の中の大塲論稿の中に分かりやすく解説されておりますので,そちらを御覧ください。ただ,2003年の時点での情報ですので,例えば,米国の状況はアップデートしなければいけません。資料5−2の表はそれをアップデートしたものでございます。外国弁護士を受け入れている州も若干増えているようです。
 最後に,相互主義の問題というふうに書きました。今,先ほどリミテッド・ライセンスの制度の中で日本と米国を比較いたしましたが,米国の5−2の表をもう一度見てください。先ほど職務経験要件とか第三国法を扱えるかということをいろいろ説明しましたが,御存じのとおり米国は合衆国,連邦制を採っておりますので,外国弁護士を受入れている州もあれば受入れていない州もあるということです。現在のところ,私どもの確認では,28州及びコロンビア特別区に外国弁護士受入制度あり,それに対して22州はなしということで,40%ぐらいの州では受入制度がないということでございます。大塲論稿にも指摘されておりますが,相互主義の観点,両国同じように外国弁護士を受入れる,お互いに受入れていくという観点からしますと不十分であるという評価がなされているところでございます。ただし,相互主義といいましても,米国はWTOの加盟国でございますので,条約・法律上は相互主義の適用はありません,したがって,アメリカで認められていなくても,日本は最恵国待遇でアメリカの弁護士を受入れなければいけない,そういう義務を負っているということでございます。したがって,今私が申し上げた相互主義の問題というのは,条約・法律上の問題ではなく実質的な問題というふうにお考えください。また,公平のために申し上げておきますが,アメリカは22州受け入れなしということですが,日本が取引が多いカリフォルニアとかニューヨークとかワシントンDC,そのあたりは大体受入れているということは申し上げておきたいと思います。

 以上,諸外国の外国弁護士受入制度を概観いたしました。ここから若干評価にわたってしまうかもしれませんが,諸外国における外国弁護士受入制度に比べて,我が国の外国弁護士受入制度は相当進んだものである,リベラルなものである,少なくとも諸外国に比肩して特に閉鎖的であるとか,そういうことはないということは言っていいかと思います。もう一度繰り返しますが,無試験でリミテッド・ライセンスを認めているということ。それから共同経営,雇用も認めているということ。それからさらに,日本の弁護士会への加入も認めてさらに自治への参加も認めているということ。それから透明性の点でも規則等は明確であるということ。そのあたりのことを紹介しておきたいと思います。最後に,日本は単一国でございますので,ある県では受入れるけれどもある県では受入れないということはございません。この点も実質的な相互主義の問題として指摘申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。

渡邊幹事
 ・・本日は,弁護士法人制度の概略について御説明いたします。
 弁護士法人制度は,平成13年6月に弁護士法の一部が改正されて導入された制度でございまして,翌平成14年の4月1日から施行されております。
 前回も御説明しましたが,我が国において他人の法律事務を取扱うことができるのは弁護士または弁護士法人ということになっており,それ以外の者が他人の法律事務を取扱うことは原則的に禁止されています。したがいまして,弁護士法人制度ができる前は,自然人である弁護士のみが他人の法律事務を取扱うことができました。弁護士法人制度のまず一番重要なところは,自然人である弁護士ではなくて,法人自体がその権利義務の主体として他人の法律事務を取扱うことを許容する制度だというふうに御理解いただければと思います。
 では,弁護士法人が一体どういうイメージなのかと言いますと,・・ 我が国における弁護士法人は,会社法を御存じであれば,会社法上の合名会社のようなものをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。法人を設立するに当たって出資をした社員同士が強い人的信頼関係によって結びついています。そして,出資をした社員各自が業務執行権限,業務執行権限といいますのは,業務の意思決定及びその執行ですね,そういった業務執行権限を持っておりまして,しかも,その社員各自が対外的な代表権を持っている,そういったイメージでございます。今申し上げている社員というのは,一般の企業でいうところの社員,従業員とは若干趣が違いまして,株式会社でいうところの株主であったり,あるいは取締役会であったり代表取締役で,いわゆる経営陣と,そのようなイメージをお持ちいただければと思います。
 先ほど申し上げましたとおり,法人自体が他人の法律事務を取扱うという仕組みを採り,しかもその社員各自が法人の業務を執行し,対外的に代表するということでございます。そういった観点からいたしますと,社員が実質的に法人業務を遂行していくことになりますので,その社員資格は弁護士に限定されております。
 次に,法人自体が権利義務の主体になるということになりますと,その業務のメインとなるのは,依頼者から依頼を受けて行う法律事務ということになります。その際,例えば,弁護士法人側に落ち度があったために依頼者側に損害が生じてしまった場合が考えられますが,そういった場合,その弁護士法人が,依頼者あるいは他の債権者に対して負う債務については,法人制度を採る以上は,法人自体がその財産をもって責任を負う,そういう仕組みになっております。しかしながら他方,弁護士法人の財産には限りがありますので,その依頼者等の債権者の利益を保護するために,経営陣である社員が弁護士法人と連帯して無限責任を負う,そういう仕組みを採っております。
 また,弁護士法上は,自然人である弁護士は,いかなる名義をもってしても2個以上の法律事務所を設けることができないという,いわゆる複数事務所の設置が禁じられております。他方,弁護士法人は,複数事務所の設置が許容されております。したがって,例えば,東京に主たる事務所を構えた弁護士法人は,大阪であるとか名古屋であるとか,福岡といったところに,支店に相当する従たる事務所を設けることができることになります。これは,弁護士法人の大きな特徴となってございます。

 ・・次に,資料の7について御説明いたします。資料7−1,7−2,7−3,7−4につきましては,当時の外弁法改正時の外弁研の報告書でありますとか,当時の立法担当者による説明でございます。・・本日は,ポイントのみを指摘させていただきます。
 資料7−1の一番初めの外国弁護士問題研究会報告書,平成5年9月30日付のものでございますが,この10ページを御覧ください。「第3 弁護士制度及び外国弁護士受入制度の在り方に関する研究・検討結果(提言)とございまして,「1 総論」の(1)を御覧ください。本研究会の基本的立場ということで,「本研究会が弁護士制度及び外国弁護士受入制度の在り方について調査・研究・検討することとなったのは,米国及びECからの規制緩和の要望が一つの契機であったことは否定し得ないが」とあり,次が重要だと思いますが,「基本的には,我が国の主体性に基づいて,弁護士業務を取り巻く国際的な環境の変化やそれに呼応する今後の我が国における弁護士活動の在り方等の視点から,この問題を検討することが必要である」と,こういった大きな視点が提示されております。
 次に,資料の7−3,外国弁護士問題研究会報告書,これは平成9年10月30日付けのものでございます。この中でも,先ほどと同様,視点のようなものが示されている部分がございます。13ページを御覧ください。13ページの真ん中あたり,「3 弁護士業務を取り巻く内外の動向」の(1)を御覧ください。ちょっと読み上げますと,「世界経済のグローバル化・ボーダーレス化の一層の進展は,個々の社会・経済活動とそれに伴う法律事務の国際化を進展させ,自国法だけではなく外国法が直接適用されるなどして渉外関係が生ずるケースは必然的に増大し,企業活動の領域を中心として言わば国際的に複雑な法的状況が発生・展開している。これに伴い,当然ながら,外国法に関する法律事務に対するニーズは高まっている。」との指摘があります。
 その次のページを御覧ください。14ページの真ん中よりちょっと上,「ところで」とありますけれども,ここをちょっとまた読み上げますと,「前記のとおり,現在,我が国の外国弁護士受入制度に関しては,経済団体連合会・米国政府・欧州連合・在日米国商工会議所・在日欧州ビジネス協会等から」,以下中略しますが,「規制緩和の要望を受けている。このような規制緩和の要望の声が強いこと,特に外国法事務弁護士に対して,ユーザーの立場である経済団体連合会・在日米国商工会議所・在日欧州ビジネス協会から規制緩和要望があることは,我が国の現行制度が,社会経済の変遷の中で,外国法に関する外国法事務弁護士による法律事務へのニーズに対して十分にこたえ得ていなくなりつつあるのではないかということをうかがわせる」とあります。
 次いで,(3)を御覧ください。「このような弁護士業務を取り巻く内外の諸情勢,特に規制緩和要望を踏まえ,我が国外国弁護士受入制度をより拡充することは」,以下が重要だと思いますが,「これをユーザーの立場から見れば,その必要とする外国法に関する法律サービスの提供を受ける選択肢が広がり,その結果として,内外の多様化したニーズに応じた良質な外国法に関する法律サービスが受け得ることを可能にするものと考えられる」とあります。要すれば,ユーザーの立場から見たときに,質の高い法律サービスがどのように提供されるかと,そういった観点が1つの視点になるのではないかと思われます。
 他方で,これはちょっと抽象的ではあるのですが,15ページの上の方を御覧いただきますと,「ただし」とありまして,「外国弁護士受入制度は,弁護士制度の一環として位置付けられるものであり,弁護士制度・司法制度と関連するのであって,この点については,十分に意を払う必要がある。」。つまり,これは我が国における弁護士制度の根幹にかかわる問題でございますので,そういった観点からの視点も当然のことながら必要になると,こういったような観点からの検討も必要なのではないかというように思われます。
 簡単ではございますが,法務省側からの説明は以上でございます。

越純一郎(バンクタイシニアアドバイザー,事業再生実務家協会常務理事)委員
 とりあえず教えていただいた中で出てきた単語でいうと,大きなものは2つか3つあるのだなと思いました。1つは「依頼者保護」という単語がありました。あるいは「ユーザーの便宜」とかいうのでしょうか,これが1つだと思いました。
 2つ目は,外国看護師が日本へ入って来る場合に「日本の看護師の職域の保護」という言い方がされていますが,それと同様に、「日本の弁護士の職域の保護」をどう考えるかという,そんなようなことが2つ目だと思いました。この2つ目はさらに2つに割って,その「職域の保護の問題」と,「ウィンブルドン現象」みたいな「空洞化問題」という,2つの問題に分けてもいいのかもしれません。
 看護師さんと違うのは,やはり日本の弁護士の方々それぞれ質が高いですから,多分,多少外人の方が入ってこられても平気なのではないかなと思う点ですね。アメリカでは良い弁護士はものすごく不足していますけれども,会社の中にさえ弁護士の資格を持っている人がいっぱいいるくらい,弁護士の人数は多いです。弁護士と会計士と両方持っている方もいっぱいいるし,率直に言いまして能力的にはちょっと「あれっ」と思うような方々がいっぱいいるくらい,人数は多いのです。日本はそうではないですから,ちょっとぐらい外弁の人数が増えても大丈夫なのではないかと。
 ただ,そうなりますと,先ほど言いました「依頼者保護」,「ユーザーの便宜」ということにフォーカスして良いように思いました。
 全体像が分かっていない私が具体的なことを言うのは適切ではないかもしれませんが,日本には「直近要件」というのはないのは,僕はどうかと思います。看護師さんとか医者の世界でも生涯教育というようなことがあります。技術は進歩します。医学は進歩します。そうすると免許の更新性が論議されたりするぐらいですから,例えば10年前にはちょっとプラクティスしたことがあるけれども,この10年間ほかの仕事をしていたという人が日本で堂々とやっていただくというのはどうかな,と思います。これはもう外弁だけではなくて,日本の弁護士さんそのものにも同じ問題があると思うのですね。私はユーザーとして申し上げてよろしいのであれば,やはりしっかりした質の高い先生にお願いしたいですから,「直近要件」は僕はやはり欲しいと思いました。
 もう一つは,これはちょっと言いにくいことですけれども,例えばアメリカならアメリカの弁護士の資格しかお持ちでない方でも,日本でずっとやっていらっしゃれば,商法から会社法からよく知っていらっしゃるのですよ。英語でちゃんと説明できるのですね。実際のビジネスの場では,例えば日本にいるアメリカ人の,例えばメリルリンチならメリルリンチのアメリカ人の方は,英語が不十分な日本人の弁護士よりも,英語が全く問題ない同国人の外弁の方から話していただいたほうが分かりやすいということも現実にはあるところが,その外弁の方は日本の資格は持っていらっしゃらないということの中で,本当はあってはならないことと言わなければいけないかもしれませんが,日本の会社法のかなりのところまで外弁の方がアドバイスしているという現象は現場にはあります。その場に日本人の普通の弁護士もいたではないかとか,何とか形は付けますけれども,そういうような実態の中で,やはりユーザー側からすれば,ふたを開けてみたら,「この外弁の方は,日本に何年も住んでいるし,日本の会社法をよく知っていらっしゃる方だけれども,ちょっと抜けているところもあって,間違ったアドバイスを私が受けてしまった」とか,「とんでもない契約書を作ってしまう」などという,そこの不安はやはり嫌ですね。だから,やはりきちんとした資格を持ったきちんとした弁護士さんにお世話になりたいというふうに思います。
 少し長くなりました。

ロバート・グロンディン(ホワイト・アンド・ケース外国法事務弁護士事務所)氏
 ・・国際仲裁ADRのところをちょっとだけ触れたいのですが,・・今いろいろ調べているのですけれども,・・相変わらず低いJCAA(※当サイト注:the Japan Commercial Arbitration Association 日本商事仲裁協会)の件数というのは,それはみんなのための1つの残念なところなのですね。この10年間,15年間,日本商事仲裁がもうルールの現代化,発展させて,非常に世界的な仲裁のエキスパートの目で見る立派なものになっているにもかかわらず,件数が増えない。一時増えたのですけれども,2003年,04年は20件ほどまで増えたのですが,今また逆戻りして1桁,では,日本はそういうのは好まないのではないかという結論とも言う人はいますが,ただやはりICC(※当サイト注:International Chamber of Commerce 国際商業会議所)等のほかの機関の統計を見ていますと,その中に日本の会社が結構入っているのですね。ですから,必ずしも日本の会社が仲裁が嫌だということではない。もっと広げるべきなのだけれども,何かJCAAは成長しない。その1つの理由は,昔の批判の文献が結構まだ残っているのですね。余り文献がないからこそ,日本の仲裁がどうなっているかというのは,世界的にみんな調べるときにそういう悪口ばかり出てくるので,15年前なのだけれどもそれも信用されてしまうのですよね。最も今,私も評議委員の委員でもやっている,一所懸命協力しているつもりなのですが,幾つかの細かい点で,日本に対するイメージがこれというきれいな形になっていないというのもまだ残っているということがありまして,そこはやはり直すべきではないかと思います。
 1つはやはり,一番悪口を言われているのが,その代理人の選択の自由が世界的な原則なのですね。どちらかというと,ほかの国では,弁護士でなくても代理人として自由に選択できるのですよ。エンジニアだったらこれが適任でという,お客さんが決めればそれは自由ですので。それもまずまず日本は絶対できないのですね。昔はやはり外国の弁護士を選択した場合はこれ非常に難しい,弁護士を付けなければいけない等々いろいろな追加コスト等がありまして,嫌だったというのも結構あります。
 その中で,大分よく是正されているのですけれども,1つ不思議に残されているのは,ちょっと今の外弁法であいまいに残っているのが,日本の会社と日本の会社の間の紛争で,JCAAの仲裁と条項が合意されている場合に,これの案件が準拠法が海外であると。その場合は外国法事務弁護士単独で受けることができるかどうかというのは,会社としてできないというふうに見られるものが多い。JCAAもそういう意見なのですが,極めて変なのですね。準拠法が外国法ですから,何でまた弁護士を付けなくてはいかんというふうに,若干そこから1つ変に見られている
 もう一つは,今,世界的なベストプラクティスの中に,紛争条項の中にどうするかというのは,ウェディングケーキというような考え方あるのですよ。要するに,2,3段階で紛争処理のプロセスを得るということで,そのミディエーションが,話し合い,階層な上層部の話し合い,それがうまくまとまらないとミディエーションをやり,そのミディエーションが成立しない場合は,やっとやっと3段階目として仲裁に足を踏み入れるということが結構ありますので,またあとはイギリスでディスピュートボードとかいろいろな手段が最近増えていますので,その中で,では,同じようなものを日本でやろうとすると,このADRにおいて,ADRの段階で外国法事務弁護士が参加できるかどうかというのは非常にあいまいなのですね。そうすると,では,全体が日本で行わない方がいいのではないかという結果になりがちなのですね。そこはもっと仲裁権,ADRを包括的に考えて,これが外国法が準拠法の場合等のその会社の選択自由を考えるべく,そうするともうちょっと発展が図れるのではないかとは個人的に思います。

下條正浩(日本弁護士連合会外国弁護士及び国際業務委員会委員)
 ・・若干いろいろちょっと文句も言っておきたいですけれども,・・仲裁なのですね。仲裁も,ニューヨーク何かは日本の弁護士が行っても仲裁代理できると思うのですけれども,ただ,それが51の州地域全部にわたってそうかというと,多分違う州の方が多いのではないかと思うのですね。ですから,日本の弁護士がある州に行って仲裁代理をすれば,それはunauthorized practice of lawに当たるかもしれないという非常に不安があるわけですね。ですから,そういうことについてはもう全州どこに行っても日本の弁護士が仲裁代理できるようにしていただきたいと思います。そういうことは州ごとに決めてもらってもよく分からないわけですから,いちいちその州で仲裁をやるときに,その州の弁護士に私が行って国際仲裁の代理をやってもいいかとか,そんなことで何百万もかかるオピニオンをもらわないといけないことになっている。ぜひ,その辺は明確なルールとして,連邦でもってどこの州でも仲裁代理はできるんだということを明確にしていただきたいと,そういうふうに思います。

グロンディン氏
 残念ながら連邦法の対象外ですからできません。それは州レベルの法律が優先で,連邦政府は一切できません,それは。

下條委員
 でもこれは国際コマースの問題だからできるのではないですか

グロンディン氏
 伝統としては,それが弁護士の法律管理等が全部州政府がもとの最高裁の…。

下條委員
 でも,WTO,GATSの問題になっている以上,やはりそれはコマースの問題ではないのですか

グロンディン氏
 いや,留保されたものというか,アメリカの連邦制上の問題としては,これが留保されてしまいましたというのは言わざるを得ない。強い伝統ですから,なかなかそれが変わりようもない状況ではあります。

(参考)米国統治の仕組み(在日米国大使館)(下線は当サイトによる)

連邦・州・地方政府の相互関係

 合衆国憲法は、連邦政府の構成と権限を定めているだけでなく、州政府に関する一般的な規定も含んでいる。各州もまた、それぞれ独自の憲法を持ち、その中に、その州内の地方政府に関する規定が含まれている。地方政府には、市、郡、町、学校区、そして地域の天然資源や交通網などを管理する特別目的区(special-purpose district)などがある。

 連邦政府の権限と責任は、合衆国憲法で明確に付与されているものに限定されている。憲法で定められた権限には、州間の通商の規制、国防への支出、貨幣の鋳造、移住や帰化の規制、諸外国との条約締結などが含まれる。

 しかし、時の経過とともに、憲法は状況の変化に適応するような解釈や修正が行われ、それに伴い、連邦政府が行使する権限も変わってきた。連邦政府は州政府と協力し、連邦政府が補助金を出して州政府が執行・運営する形の法律や事業を創り出している。教育、社会福祉、住宅・栄養補助、国土保全、運輸、緊急対応は、連邦資金を用い、連邦政府の指針に従って州がサービスを提供する、主要な分野である。

 こうした仕組みにより、連邦政府は州に対する影響力を得ている。例えば、連邦政府は1970年代、エネルギー消費を削減するため、幹線道路の制限速度を低くしたいと考えた。そして単に法定制限速度を下げるのではなく、自発的に制限速度を低くしない州に対しては、道路事業の補助金を停止すると圧力をかけた。連邦政府の補助金を受けるには、多くの場合、州も事業資金を一部負担する必要がある。

 地方政府は、その州の憲法に基づいて設置される。州政府の制定する政策が連邦法に抵触してはいけないのと同様に、地方政府は、州の憲法や法令が作る法制環境に従属する。

 

(参照条文)アメリカ合衆国憲法1条8節(出所:在日米国大使館)(下線は当サイトによる)

The Congress shall have power to lay and collect taxes, duties, imposts and excises, to pay the debts and provide for the common defense and general welfare of the United States; but all duties, imposts and excises shall be uniform throughout the United States;

To borrow money on the credit of the United States;

To regulate commerce with foreign nations, and among the several states, and with the Indian tribes;

To establish a uniform rule of naturalization, and uniform laws on the subject of bankruptcies throughout the United States;

To coin money, regulate the value thereof, and of foreign coin, and fix the standard of weights and measures;

To provide for the punishment of counterfeiting the securities and current coin of the United States;

To establish post offices and post roads;

To promote the progress of science and useful arts, by securing for limited times to authors and inventors the exclusive right to their respective writings and discoveries;

To constitute tribunals inferior to the Supreme Court;

To define and punish piracies and felonies committed on the high seas, and offenses against the law of nations;

To declare war, grant letters of marque and reprisal, and make rules concerning captures on land and water;

To raise and support armies, but no appropriation of money to that use shall be for a longer term than two years;

To provide and maintain a navy;

To make rules for the government and regulation of the land and naval forces;

To provide for calling forth the militia to execute the laws of the union, suppress insurrections and repel invasions;

To provide for organizing, arming, and disciplining, the militia, and for governing such part of them as may be employed in the service of the United States, reserving to the states respectively, the appointment of the officers, and the authority of training the militia according to the discipline prescribed by Congress;

To exercise exclusive legislation in all cases whatsoever, over such District (not exceeding ten miles square) as may, by cession of particular states, and the acceptance of Congress, become the seat of the government of the United States, and to exercise like authority over all places purchased by the consent of the legislature of the state in which the same shall be, for the erection of forts, magazines, arsenals, dockyards, and other needful buildings;--And

To make all laws which shall be necessary and proper for carrying into execution the foregoing powers, and all other powers vested by this Constitution in the government of the United States, or in any department or officer thereof.

 

(邦訳)

 連邦議会は、つぎの権限を有する。合衆国の債務を弁済し、共同の防衛および一般の福祉に備えるために、租税、関税、輸入税および消費税を賦課し、徴収する権限。但し、すべての関税、輸入税および消費税は、合衆国全土で均一でなければならない。

 合衆国の信用において金銭を借り入れる権限。

 諸外国との通商、各州間の通商およびインディアン部族との通商を規制する権限。

 統一的な帰化に関する規則、および合衆国全土に適用される統一的な破産に関する法律を制定する権限。

 貨幣を鋳造し、その価格および外国貨幣の価格を規制する権限、ならびに度量衝の基準を定める権限。

 合衆国の証券および通貨の偽造に対する罰則を定める権限。

 郵便局を設置し、郵便道路を建設する権限。

 著作者および発明者に対し、一定期間その著作および発明に関する独占的権利を保障することにより、学術および有益な技芸の進歩を促進する権限。

 最高裁判所の下に下位裁判所を組織する権限。

 公海上で犯された海賊行為および重罪行為ならびに国際法に違反する犯罪を定義し、これを処罰する権限。

 戦争を宣言し、船舶捕獲免許状*を授与し、陸上および海上における捕獲に関する規則を設ける権限。

 *国家が私船に海賊行為をすることを認める許可状。1856 年のパリ宣言で禁止。

 陸軍を編成し、これを維持する権限。但し、この目的のためにする歳出の承認は、2 年を超える期間にわたってはならない。

 海軍を創設し、これを維持する権限。

 陸海軍の統帥および規律に関する規則を定める権限。

 連邦の法律を執行し、反乱を鎮圧し、侵略を撃退するために、民兵団を召集する規定を設ける権限。

 民兵団の編制、武装および規律に関する定めを設ける権限、ならびに合衆国の軍務に服する民兵団の統帥に関する定めを設ける権限。但し、民兵団の将校の任命および連邦議会の定める軍律に従って民兵団を訓練する権限は、各州に留保される。

 特定の州から割譲され、かつ、連邦議会が受領することにより合衆国政府の所在地となる地区(但し、10 マイル平方を超えてはならない)に対して、いかなる事項についても専属的な立法権を行使する権限、および要塞、武器庫、造兵廠、造船所その他必要な建造物を建設するために、それが所在する州の立法部の同意を得て購入した土地のすべてに対し、同様の権利を行使する権限。

 上記の権限およびこの憲法により合衆国政府またはその部門もしくは官吏に付与された他のすべての権限を行使するために、必要かつ適切なすべての法律を制定する権限。

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