TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(3)

第3回外国弁護士制度研究会(平成20年7月17日)より抜粋(下線は当サイトによる)

濱本幸也(外務省サービス貿易室首席事務官)氏
 ・・若干,前提めいたことを申し上げますと,サービス貿易におきましては,GATSという協定がWTOの下でございます。厳密な意味での法的な拘束力を持った約束内容,これは結局,物とかと同じでして,各国WTOの下で特定の約束をしていくということになっておりまして,そういう意味で,厳密な意味での法的な拘束力を持った約束というのは,94年にウルグアイラウンドが終わりまして,それを受けた各国の約束というのが今存在するということでございます。
 他方におきまして,これは10年以上前の話でございまして,その間,各国交渉を行っているわけでございまして,その交渉の過程でどのようなものを各国が出しているかということも含めて,あえて御説明させていただいたほうが,最近の事情がよく反映されているかと思っております。
 それから,あともう一つは,前回の配布資料で御説明された中で,幾つか各国の制度を見るに当たってポイントがあるという御趣旨の御説明があったやに理解しております。1つは,例えばそもそも外弁制度があるか。それから,外弁として認めるに当たって職務経験が必要かどうか。それから3つ目に,第三国法を扱うことができるか。さらには,共同事業や現地弁護士を雇用することができるか等のポイントがあるというお話があったと理解しております。その観点から,GATSの下での各国の約束協定には膨大な量があるわけですが,あえてやや絞った形でまとめさせていただいております。
 ・・そもそもサービス貿易で約束をするに当たって,どのような形で約束をしていくかということでございます。モードと業界用語で呼んでおりますが,4つに分けて,それぞれ自分の国は,例えば外国法事務弁護士については約束します,約束しません,約束するとしてどういう条件をつけますということを国際約束の形にしていく,条約の形にしていくということでございます。
 4つモードがあると申し上げましたが,順番に・・申し上げさせていただきますと,第1モードというのは,サービス提供者と消費者がそれぞれ別の国にいる。外国法事務弁護士の例で申し上げますと,外国法の弁護士がサービス提供者なわけですが,それから消費者,例えば相談を依頼する人というのが別の国にいるケースが第1でございます。
 それから,第2モードというのは,消費者のほうが国境を越えていく。すなわち,日本の,相談を受けたい人というのが,例えばアメリカに出かけていって,アメリカの弁護士の方のサービスを受けるというのが第2のモードでございます。
 やや各国の状況を先取りして申し上げますと,この第1と第2のモードについては,主要国各国とも基本的に約束をしている。約束をしているというのは,基本的に何も制限をつけずに,第1,第2モードに係る外国法事務を許可しているというのが現状でございます。
 それから,ちょっとここから先が各国の対応が分かれるところでございますが,第3モードというのは,これは拠点設置と呼んでいますが,具体的には投資を念頭に置いていただければと思います。例えば,アメリカのローファームが,日本に例えば支店なり,事務所なりを設置して,外国法事務というサービスを日本にいる人に提供するような場合があればこれに該当します。
 それから,第4モードというのが,これは自然人の移動と呼んでおりまして,これはサービス提供者たる個人,すなわち外国法事務弁護士,アメリカ人の方であればアメリカ人の弁護士の方が日本にやってきて,日本においてサービス提供を行う。これは人の移動を伴うものということになっております。この第4モードについても各国,人の移動がどうしても伴うものですから,今度は入国管理行政等の影響があって,必ずしも積極的に開けているというわけではないと理解しております。
 という状況でございますので,各国の対応が一番分かれるのは,この拠点設置を通じた第3モードということだけちょっと頭の片隅に置いていただきまして,・・ここから先は,アメリカがGATSという国際約束のもとでの約束,あるいは約束にしようと思っていることの内容でございます。
 基本的に,先ほど申し上げたとおり,投資・拠点設置を通じた第3モードの対応が分かれるわけでございますが,アメリカの国内においても約束状況というのは分かれておりまして,具体的には24州が許可をするということを国際的に約束しているか,あるいは約束する用意があるということを言っている。約半分だということでございます。
 ただし,それにも条件がいろいろ付いておりまして,ざっと見た限り,例えば拠点を日本の弁護士事務所が設置して,外国法事務をアメリカにおいて提供したいといった場合に,アメリカの弁護士の雇用はおおむねできる。他方で,第三国法,例えばイギリスなり,ECなり,中米でもどこでもいいですが,それに関する法律の取扱いができるかというと,この24州の中でも8州はできない,やらせることはできないという約束の内容になっている。それから,例外的ですが,1州だけは現地のアメリカの弁護士の方とのパートナーというのはできないという約束の内容になっております。
 それから,前回の御議論でも,果たしてどれだけ職務経験を要求するか,すなわちアメリカに入ってくる前にどれだけ日本において活動をしていなければならなかったかということにつきまして,アメリカの国内でも対応が違っているという御説明があったかと記憶しております。基本的に現状とアメリカの約束内容というのは一致していると思っております。ただ,ノースカロライナとか,テキサスとか,前回いただいた資料では,例えば直近5年のうちに,5年ないしは3年,それぞれ日本で活動しなければならないという,その年数が若干違う。当然のことながら,国際約束で約束したこと以上の緩和した条件で受入れるというのは許容されるわけでございまして,その逆はできないという状況でございます。したがいまして,今現在は,約束の内容よりは,実態では自由化が少し進んでいる州がノースカロライナ,テキサス等であるということかと理解しております。
 余りこれを一個ずつやりますと時間をお取りしてしまいますので,そのほか,カナダ,豪州,これも基本的にアメリカと似たような約束の仕方,すなわち外国法事務の弁護士に限って,どのようなことができて,どのようなことができないかということを細かく約束しているという状況でございます。
 それから,ECにつきましては,もちろんECの中でも相当,フランス,イギリス,ドイツ等で対応が違うわけでございますが,ものすごく大ざっぱにまとめますと,外国法事務弁護士について特化した約束をしているというよりは,むしろEC国内での弁護士登録をした者について約束をしているというのが現状でございます。
 それから,中国につきましては,・・基本的に約束はしているものの,限定的な範囲で営利活動ができるに過ぎない。そして,その上で,例えば代表者は一定期間中国に滞在している必要がある,ないしは実務経験が2年ないしは3年必要という形で約束をしているというのが現状でございます。
 余りお時間をお取りしますと恐縮でございますので,ものすごくざっと御説明しますと,各国のWTOの場における約束とオファーはこういう状況になっているということでございます。失礼しました。

下條正浩(日本弁護士連合会外国弁護士及び国際業務委員会委員)委員
 1点ちょっと補足したいと思います。先ほど第3モードを説明されたときに,アメリカの法律事務所が日本に支店を設けるというふうに仰ったのですけれども,日本の外国弁護士に関する特別措置法については,あくまでも個人ベースなのです。ですから,外国の資格を有する個人の弁護士が,日本に外国法事務弁護士となる資格の承認を申請するという個人ベースになっておりますので,法律事務所が支店を設けるという形にはなっておりません。
 ただ,外国法事務弁護士は所属事業体の事務所名を名乗ることができるとされておりますので,そういう意味では,実質的には非常に支店には近いのですけれども,あくまでも個人ベースで外国法事務弁護士を認めているという点です。
 これは,今の中国を御覧いただくと,中国は外国弁護士事務所について代理店として拠点設置を認めるという形を採っていますけども,その点で日本と中国は認め方に非常に大きな差があるということを申し上げたいと思います。

濱本氏
 ・・仰られるとおりでございまして,他国の約束状況ないしはオファーの状況について長々と御説明してしまいましたが,日本自身の約束とオファーが今どうなっているかということについて,申し上げませんでした。
 日本の約束とオファーは,当然のことながら,今の国内法を反映しておりまして,外国法事務弁護士の第3モードについても,サービス提供は自然人によらなければならないという限定をつけておりまして,そういう意味では法人による約束,法人によるサービス提供というのは約束していません。
 逆に言えば,それがまさに,今週末からWTO閣僚会合がございますが,これに至る過程において,数か国からなぜ約束ができないのか,日本の弁護士については,自然人のみならず法人でもサービス提供はできるようになったではないかという指摘を受けているというのが現状でございます。

下條委員
 1点,濱本さんに確認したいと思います。前回,グロンディンさんのときに国際仲裁の代理が問題になりましたが,私の理解するところでは,日本は国際仲裁代理について約束表に書いてきちんと約束しているにもかかわらず,アメリカのほうはそういう約束は何もないという理解なのですけど,それでよろしいでしょうか。

濱本氏
 日本について,国際仲裁への代理は可能と約束しているという状況は仰るとおりでございます。アメリカにつきましては,州によって相当書き方が違うものですから,確認をさせていただければと思います。すみません。

 

第4回外国弁護士制度研究会(平成20年9月4日)より抜粋(下線は当サイトによる)

伊藤眞(早稲田大学大学院教授)座長
 ・・前回の会議の折に,国際仲裁につきまして,下條委員から米国の約束表には何も記載されていないようだというような趣旨の御発言がございましたが,その件につきまして,外務省の濱本さんに若干御説明をお願いできればと存じます。どうぞよろしく。

濱本氏
 ごく手短に補足をさせていただきます。先般,下條先生から御下問いただきました国際仲裁のGATS,サービス貿易に関する一般協定での扱いでございますが,我が国については追加的な約束という形で国際仲裁への代理が許可されるということを明記しております
 これに対して,アメリカが既に行っている約束及び約束をしようと表明している内容のいずれにつきましても,国際仲裁については明記されていないというのが事実関係でございます。

下條委員
 そうなりますとどうなるかということですけれども,各州はいずれもアンオーソライド・プラクティス・オブ・ローを禁止するという規定を持っておりますので,私ども日本弁護士がその州に行って国際仲裁の代理をする場合,果たしてそのことがアンオーソライド・プラクティス・オブ・ローに当たるかどうかという問題になります。御存じのように,各州は判例法の国ですから,一々膨大な判例のリサーチをしてもらわないと分からないという非常に困った状態になるわけです。
 ですから,よく弁護士としては,合弁契約とか何でもよいのですけれども,そういう契約に仲裁条項を入れるわけです。果たしてアメリカのある州においてそういう仲裁条項を入れたときに,私ども日本弁護士がその州に行ってその州を仲裁地とする国際仲裁代理に従事できるかどうか,それは分からないという非常に不確定な状況にある。そういうことを一言申し上げておきたいと思います。

 (中略)

渥美博夫(渥美総合法律事務所・外国法共同事業)氏
 ・・これは,我々の調査能力というのはそれほど大したものではないのですが,米国,英国,ドイツを比べてというか,そこで情報を取って,外国人弁護士だけで,あるいはその国で我が国の外国法事務弁護士に当たるような外弁だけの特別な法人があるかというところを確認したのですが,そういうものはないのではないかなと思います。だから,そういうことで余り外国弁護士だけの法人を作るというのは,それほど合理的でもないような気がするわけです。

下條委員
 ・・外国法事務弁護士のみからなる外弁法人・・については私どもは,例のサービス貿易一般協定17条の内国民待遇の関係からこれは認めざるを得ないのではないのかと考えており,そこからこの研究会が始まったところであります。
 しかし,・・外国にそのような外国法事務弁護士に相当する者,そういう者のみからなる法人というのはない,アメリカにもイギリスにもドイツにもないということなので,これは私にとって非常に意外でした。というのは,今回のこの研究会が始まったのは,日米規制緩和でアメリカが「外弁法人を認めろ」ということを要求してきたことから始まっているからですにもかかわらず,アメリカにそのような制度がないということを聞いて,何か先ほどの国際仲裁の話ではないですけれども,またかという感じがいたします
 以上です。

(参照条文)世界貿易機関を設立するマラケシュ協定付属書一B サービスの貿易に関する一般協定17条1項

 加盟国は、その約束表に記載した分野において、かつ、当該約束表に定める条件及び制限に従い、サービスの提供に影響を及ぼすすべての措置に関し、他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し、自国の同種のサービス及びサービス提供者に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

渥美氏
 我々には外国の制度についての十分な調査能力がないので,一応調べた範囲ではそういうことだということを御理解いただきたいのと,恐らく同じ法人の形態であっても,アメリカから見て外国弁護士に当たる人たちは全員,100%,同じ形態,法人としては同じフォーマットなのですが,社員というかエクイティ・ホルダーとして100%入ってもよいというものはあるのかもしれません。

越純一郎(バンクタイシニアアドバイザー,事業再生実務家協会常務理事)委員
 ・・例えばビッグバンをイギリスの金融界が行ったときに,「空洞化現象」,「ウィンブルドン現象」と言われたものが起って,現在イギリスで活動している証券会社はすべて外資系になってしまったのですね。名前は昔の名前のままでも,実はドイチェバンクの子会社であるとか,イギリスの純血の証券会社というのは消滅したわけです。また,ドイツにおいては,むしろ外国の大手の法律事務所が,ドイツの弁護士のアリーナをドミネートしているという,そういうような現象をどう思うかという点があると思うのです。
 ・・大分前のことですが,行革臨調を行ったときに確かに自由化,開放ということが謳われたのですが,私が事務局から内々に入手した資料で読む限りは,イギリスのビッグバンのようにやってしまったら開放し過ぎてしまい,イギリス独自の伝統的なイギリス生まれの証券会社は消滅した。ゼロになったということが「良いことなのか,悪いことなのか」ということについて,行革臨調では議論をしていないようなのですね。ですから,私,その座長の方に,有名な方ですけれども,ちょっと文句を申し上げたことがあります。

 

第6回外国弁護士制度研究会(平成20年10月21日)より抜粋(下線及び※の挿入部分は当サイトによる)

濱本幸也(外務省サービス貿易室首席事務官)氏
 整理していただいた紙に「国際的な観点から」と書いていただいていまして,先ほどから国際的な観点というのは何なのかなと思っておるところでございます。大きく分けて,パッと今の段階で私の頭で思い付くのは,国際的な観点からと言ったときには,一つは恐らく国際的な比較として他国の制度がどうなっているのか,それに比べて日本の制度がどうなのかという議論と,恐らく二つ目としまして,外交交渉の場でどうかということがあるのかなと思っております。
 一つ目の国際的な比較の面から申し上げますと,これは先般来法人化を含め,あるいは法人化のみならず,特定の太平洋を挟んだ国の自由化が必ずしも十分でないとかいう御意見があったかと思います。
 実際,どこの国も完全に自由になっているというところはほとんどないということかとは思います。(※しかし、)同時に米国に関して見ましても,90年代のウルグアイ・ラウンドが終結したとき,手元の資料をざっと数えますと,外国法事務弁護士について自由化していた州の数は16,それが現在のオファーといいましょうか,まだ約束の形にはなっていませんが,開ける用意があると言っているのが24であり,数は1.5倍にはなっているということでございます。
 そういう意味では,全体的な流れとしてサービス一般については自由化が進んでおり,外弁制度についてもその例外ではないということが言えるのではないか,これがまず第1点でございます。
 それから,第2点目で,では外交交渉の場でどうなのだということを恐縮ながらやや若干私見も含めて申し上げさせていただきますと,抽象的には外交交渉というのは国益を最大化するためにやっていると認識しております。
 では何が国益だというと,それは広く,例えばこの外弁の利用者になる国民の方々,あるいは,日本人の弁護士の方々,はたまた日本人の外弁の方々を含め,さまざまな利害がそこには入ってくる。必ずしもそういうものから遊離して外交交渉というのが成り立つということではないと理解しています。
 経済の面でも死活的な利益があって譲れない,あるいは妥協の余地が極めて限られているという分野は一部の農産品を含めてあるというのが現実でございますが,そのような極めて妥協の余地が少ない話でない以上,それは実務をやっている人間としましては,やや視点が狭いかもしれませんけれども,相手国とのパッケージを作るときに利用できる事項が多ければパッケージは作りやすい
 外交交渉というのはゼロサムゲームのためにやっているというよりはプラスサムを目指して,お互いの利益になるのは何かということでやるわけですから,そのときにパッケージになり得る要素というのは多いほうが助かるという面は確かにございます。
 それから事実関係で最後に付け足させていただきますけれども,中川委員御指摘のとおり,アメリカからは政府間の要望として外弁の法人化ということは言われており,またEUからも言われており,さらにはここでは名前は出しませんが,WTOの場等でもほかの国からもそのような要望を受けたということが事実関係としてあるというのが現状でございます。

 

第9回外国弁護士制度研究会(平成21年1月22日)より抜粋(下線及び※注は当サイトによる)

高中正彦(弁護士)
 私だけなのかもしれませんが,法曹以外の委員に申し上げておきたいのですが,私ども弁護士というのは不思議な存在でして,公益性をかなり重視しているところがあります。プロフェッション論と言われているものです。これが余り過度になると依頼者の利益を無視するという批判もいただいているところですが,我々がお酒を飲んでいる席においても,「おい,この仕事はもうかるぞ。」という話は余りいたしません。医者が金もうけの話を声高にしないのと一緒です。金もうけということに関していうと,積極的に日本の弁護士は話をしたがらないという性癖があります。「これはもうかる」というような話は余りしない,こういう風土の中で,B法人をどうするかという問いがあります。
 最近,「猿でもできる弁護士業」とか,「72条を撤廃して,20兆円の法務があるから,これを一般に開放しろ。」という大変元気のいい某弁護士の広告が出ておりましたが,残念ながら私はあの考えにはくみすることはできない。私はかねて尊敬している吉川精一弁護士がいらっしゃいまして,弁護士の産業化ということに対して,強い警鐘を鳴らしておられて論文も多数お書きになっている。実態は私も知りませんがアメリカの弁護士の一部,あるいは欧米の弁護士の一部に,弁護士を単なる「産業」と考える層がいる。「弁護士の産業化」に対して,吉川先生は大変危惧の念をお漏らしになっていますが,私はこれにシンパシーを覚えている者の一人です。

 次に,現行の弁護士法人制度に対する影響です。・・B法人(※弁護士及び外国法事務弁護士が共に社員となり日本法及び外国法に関する法律事務を取扱業務とする法人。)を認めますと,やがては今の弁護士法人の社員資格を外国法事務弁護士法人に開放しないという理屈はどうやって立てるのだろうか。今はございません。弁護士法人についての弁護士法改正をこの研究会が提案する必要はあるのかといえば,恐らくそれはないという取りまとめになるのは私も十分に理解しているところではありますが,次のステップとして,アメリカないしはヨーロッパから,開放要求として,日本の弁護士法人について社員資格を外国法事務弁護士に開放せよという要求があったときに,これに抗する理由は果たしてあるのか,こういう問題提起をさせていただきたい。
 弁護士法・・72条は,法律事務を弁護士が独占する,その代わり弁護士には大変高い責務を課されるわけです。そして,72条但書は,他の法律に別段の定めがあれば適用されない。つまり,弁護士による法律事務独占を上回る価値があれば,立法政策で除外するとなっております。そういう中で,このB法人について,我が国の国際化に伴う利用者の利便性の向上,我が国弁護士の海外進出の促進という理由などによって適用除外として果たしてよいのかどうかについても議論を頂だいしたい。
 それから,専門職法人は,すべて社員資格を限定しておりますが,B法人を容認すると,余計な取り越し苦労と言われればそれまでですけれども,司法書士法人や行政書士法人などについても社員資格を一般に開放せよという話になりはしまいかということが問題になりそうです。特に,司法書士法人に関して言うと,簡裁訴訟代理権を有する認定司法書士があり,弁護士の職務内容と一部重なり合う。最近の情勢を見ますと,簡裁の訴訟代理の割合は,とうとう司法書士が弁護士を超えたというところまでいっています。ますますこれは増えてくるだろうと思います。
 こういう状況の中で,法曹人口が大幅に増えてまいります。司法書士法人について,社員資格の限定をはずして弁護士にも社員資格を認めるという法案を出したとき,すんなりと通るとは思えません。恐らくそういうオープンな社員資格にして,「弁護士さんがどんどん進出してきてもオーケーですよ。」ということにはならないのではないか。社員資格を当該専門職に限定するポリシーは,今後も維持していくべきなのかどうか。それとも外国法事務弁護士法人に限定した部分開放ということで説明が付くのかどうかという問題提起をさせていただきます。
 最後に,権限外法律事務の規制についてです。恐らく日本法を扱える外国法事務弁護士法人を認めたとしても,外国法事務弁護士が日本法を扱えないということに関して,「撤廃せよ。」という議論にはならないだろうと思いますが,しかし撤廃してもよいのかどうかという根本的な議論もあるだろうと思います。
 もう一つは,行為規制の在り方です。外国法共同事業では,不当関与の禁止というのがあります。それから,雇用には,違法な職務命令の禁止というのがあります。日本の弁護士を外国法事務弁護士が雇用している場合に,その雇っている日本の弁護士に対して不当な業務命令をしてはいけないという行為規制があり ます。
 それでは,法人の場合にはどういう規制があるのだろうか。法人の場合,会社に例えると役員会があります。そういう席で,ある一定の業務の可否,あるいは法人としての方向性を探るときに,日本法の事務が出てきた。そのときに,外国法事務弁護士たる社員はもちろん発言をしないのでしょうけれども,不当関与の禁止というのは一体どういうふうに貫いたらよいのか,なかなか具体的なシチュエーションが見えてこないと思うのです。そこで役員会から退場することはないのでしょうけれども,恐らく黙ってしまうということで,日本の弁護士社員だけが方針の決定権を持つのだろうと思いますが,そういう在り方でいいのか,ほかの在り方があるのかどうか。これも弁護士委員以外の先生方からお話を是非聞いてみたいと思います。

 

外国弁護士制度研究会報告書(平成21年12月24日)より抜粋(下線は当サイトによる)

第4.提言

 ・・我が国の社会経済の複雑多様化,急速な国際化に伴い,求められる法律事務の内容は,一国の特定の法分野に関するものにとどまらず,複数の法分野が複雑に絡みあうもの,高度の専門性が求められる法分野に関するもの,複数の国の法が関わるものなど,複雑多様化,専門化,国際化する傾向が著しい。
 このように複雑多様化,専門化,国際化する法律事務の需要に的確に対応して質の高い法律事務を提供していくためには,法律事務の担い手である弁護士及び外国法事務弁護士が,その専門性を遺憾なく発揮できるよう,多様な組織形態で活動することのできる環境を確保することが不可欠である。
 ところが,現行制度では,弁護士は,組合組織又は法人組織(弁護士法人)によって法律事務を提供することが可能であるが,外国法事務弁護士は,法人組織によって法律事務を提供することが許されていない。また,弁護士と外国法事務弁護士とが提携・協働関係を構築する必要性は,近時ますます高まっているが,現行制度では,弁護士と外国法事務弁護士が組合組織によって共同して法律事務を提供することができる(外国法共同事業)ものの,法人組織によって共同して法律事務を提供することが許されていない。
 このように,現行制度は,弁護士及び外国法事務弁護士の自由な活動環境を確保する観点からは,なお不十分であり,その制度的基盤を整備するため,新たに,外国法事務弁護士が法人組織により法律事務を提供することができるようにする制度(A法人制度)を導入するとともに,弁護士及び外国法事務弁護士が共同して法人組織により法律事務を提供することができるようにする制度(B法人制度)を導入する必要がある。このような制度的基盤を整備することは,我が国の弁護士の育成に資するのみならず,海外の優秀な外国弁護士の確保にも資することとなり,ひいては,提供する法律事務の更なる質の向上にもつながることとなる。
 他方で,これらの法人が不適切な内容の法律事務を提供して依頼者に不測の損害を与えるようなことがあっては,無資格者が法律事務を提供することを禁止して国民の法律生活の公正かつ円滑な営みと法律秩序を維持しようとした弁護士法第72条の趣旨にもとることにもなりかねないのであって,このような事態が発生することを未然に防止するため,所要の弊害防止措置を講ずる必要があることはいうまでもない。
 このような検討の結果,本研究会は,A法人制度及びB法人制度については,いずれも,法律事務の需要の複雑多様化,専門化,国際化により的確に対応することができるようにするため,これを創設する必要があるが,弁護士法第72条の法意,これを前提とした現行の弁護士制度及び外国法事務弁護士制度の在り様等を踏まえて,それぞれ以下に述べる措置を講ずるものとするほか,現行の弁護士法による弁護士法人と同様の規律とすべきであるとの結論に至った。

1.A法人制度について

(1) 業務の範囲

ア.A法人は,個人の外国法事務弁護士と同様に,@社員である外国法事務弁護士の原資格国法及び指定法に関する法律事務を取り扱うことができるものとするとともに,Aそれ以外の外国法に関する法律事務についても,当該外国法に関する知識・能力が制度的に担保された一定の者(外弁法第5条の2第1項各号に掲げる者。以下「当該外国法に係る有資格者」という。)の書面による助言を受けてする場合に限り,これを取り扱うことができるものとする。

イ.A法人は,外国法に関する法律事務のうち,例えば,国内の裁判所における訴訟代理等,我が国の国益上又は公益上,外国法事務弁護士のみが社員となるA法人に取り扱わせることが相当でないと認められる法律事務については,これを取り扱うことができないものとする。

ウ.A法人は,外国法に関する法律事務のうち,例えば,親族関係に関する法律事件でその当事者として日本国民が含まれるものについての代理等,外国法事務弁護士である社員のみによって遂行させることが相当でないと認められる法律事務については,個人の外国法事務弁護士と同様に,弁護士と共同し,又は弁護士の書面による助言を受けて行わなければならないものとする。

(2) 業務執行権限等

 A法人の社員は,その原資格国法及び指定法に関する法律事務の取扱いについて,A法人の意思決定を行い,各自が内部的執行をし,及びA法人を代表するものとする。
 これに加えて,A法人の社員は,その原資格国法及び指定法以外の外国法に関する法律事務についても,当該外国法に係る有資格者の書面による助言を受けてする場合に限り,A法人の意思決定を行い,各自が内部的執行をし,及びA法人を代表するものとする。
 また,A法人は,弁護士法人の場合と同様に,特定の事件について業務を担当する社員を指定することができるものとした上,当該指定がされた事件については,当該指定を受けた社員のみがA法人の意思決定を行い,内部的執行をし,及びA法人を代表するものとする。

(3) 社員の法人債権者に対する責任

 A法人の債務については,弁護士法人の場合と同様に,A法人の財産をもってその債務を完済することができないとき等は,各社員は,A法人の債権者に対して直接かつ無限の連帯責任を負うものとする。
 もっとも,A法人が特定の事件について業務を担当する社員を指定し,依頼者に対しその旨を書面により通知した場合には,弁護士法人と同様に,当該指定がされた事件に関し依頼者に対して負担することとなったA法人の債務については,当該指定を受けた社員のみが当該依頼者に対し直接かつ無限の連帯責任を負うものとする。

(4) 弁護士の雇用及び外国法共同事業

ア.A法人は,個人の外国法事務弁護士の場合と同様に,@弁護士を雇用すること及びA弁護士又は弁護士法人との間で共同事業を行うことができるものとする。

イ.もっとも,外国法事務弁護士である社員が雇用形態等を利用して,A法人の使用人である弁護士又は共同事業の相手方である弁護士若しくは弁護士法人を介して日本法に関する法律事務を取り扱うおそれがある。
 このような弊害が発生することを未然に防止するため,@個人の外国法事務弁護士が弁護士を雇用する場合及びA個人の外国法事務弁護士が弁護士又は弁護士法人との間で共同事業を行う場合と同様に,外国法事務弁護士である社員が,使用人である弁護士が個人事件として受任した日本法に関する法律事務の取扱いについて不当な関与をすることを禁止する等の規制を設けるものとする。

(5) 事務所に係る規制

ア.A法人は,複数の事務所を設けることができるものとする。

イ.A法人は,弁護士法人の例に倣い,その事務所に,当該事務所の所在する地域の弁護士会の外国特別会員である社員を常駐させなければならないものとする。

※ 社員である外国法事務弁護士は外国特別会員とされている。

ウ.弁護士法人の従たる法律事務所における社員の常駐義務については,当該法律事務所の所在する地域の弁護士会が許可したときにその義務を解除する例外的措置が講ぜられている(弁護士法第30条の17ただし書)が,A法人の従たる事務所における社員の常駐義務については,そのような例外的措置を講じないものとする。

※ 弁護士法人については,その法律事務所に,当該法律事務所の所在する地域の弁護士会の会員である社員を常駐させなければならないこととされている。
 もっとも,弁護士法人の従たる法律事務所については,いわゆる弁護士過疎地域における日本法に関する法律事務の需要に対応する等の公益的活動の基盤となることも期待されることから,一定の場合に,当該地域の弁護士会の許可を条件として,社員が常駐しない従たる法律事務所を設けることが特に認められている。
 外国法に関する法律事務のみを取扱業務とするA法人については,このような例外的措置を講ずる必要性が認められない。

(6) 業務遂行時の資格表示義務等

 A法人の社員は,A法人の機関としてA法人の業務を遂行するに当たり,個人の外国法事務弁護士として業務を遂行する場合と同様に,原資格国の国名を付して外国法事務弁護士の名称を使用しなければならないものとする等の規制を設けるものとする。

※ 依頼者において,外国法事務弁護士である社員の権限内容を誤解し,そのことによって不測の損害を被るおそれがあることから,本措置を提言するものである。

(7) 非弁提携の禁止

 A法人については,弁護士法人と同様に,@弁護士法第72条等に違反する者から事件の周旋を受ける行為及びA弁護士法第72条等に違反する者に自己の名義を利用させる行為をそれぞれ禁止し,その違反行為に対して罰則を設けるものとする。

2.B法人制度について

(1) 業務執行権限等

ア.B法人の業務については,原則として,全社員が,B法人の意思決定を行い,各自が内部的執行をし,及びB法人を代表するものとする。

イ.B法人の日本法に関する法律事務の取扱いについては,弁護士である社員のみが意思決定を行い,その各自が内部的執行をし,及びB法人を代表するものとする。

ウ.なお,B法人の外国法に関する法律事務の取扱いに係る外国法事務弁護士である社員の権限等については,A法人の場合と同様の措置を講ずるものとする。

(2) 社員又は使用人である弁護士に対する不当関与の禁止に関する規制

 B法人については,外国法事務弁護士である社員が,社員又は使用人である弁護士を介して日本法に関する法律事務を取り扱うおそれがある。
 このような弊害が発生することを未然に防止するため,@個人の外国法事務弁護士が弁護士を雇用する場合及びA個人の外国法事務弁護士が弁護士又は弁護士法人との間で外国法共同事業を行う場合と同様に,B法人の日本法に関する法律事務について弁護士である社員が行う意思決定,内部的執行及び代表行為に不当な関与をすることを禁止する等の規制を設けるものとする。

(3) 事務所に係る規制

ア.B法人は,複数の事務所を設けることができるものとする。

イ.B法人は,弁護士法人の例に倣い,その事務所に,当該事務所の所在する地域の弁護士会の会員又は外国特別会員である社員を常駐させなければならないものとする。ただし,その従たる事務所については,弁護士法人の場合と同様に,当該事務所の所在する地域の弁護士会が許可したときは,この限りでないものとする。

※1 常駐させなければならない社員は,会員である弁護士であるか,外国特別会員である外国法事務弁護士であるかを問わない。
※2 本措置を講ずるものとする場合には,弁護士である社員が常駐しない事務所も存在し得ることとなる。当該事務所に常駐する外国法事務弁護士である社員が,日本法に関する法律事務について意思決定を行い,内部的執行をし,及びB法人を代表することが許されないことは,前記(1)イから明らかであり,一般的に,当該事務所において日本法に関する法律事務が取り扱われることはないものと思われるが,当該事務所における業務の適正を確保するため,更なる措置を講ずるものとするかどうかについては,B法人が複数の事務所を設けることを許容する一方で,その事務所に,当該事務所の所在する地域の弁護士会の会員又は外国特別会員である社員を常駐させなければならないものとした趣旨,弁護士及び外国法事務弁護士の業務の実情,他の法制例等を踏まえつつ,十分な検討を加えることを要望する。

(4) その他,B法人の社員資格が外国法事務弁護士にも付与されることから,そのこととの関係で,必要に応じて,A法人と同様の規律を設けるものとする。

3.他の類型の法人への移行及び合併

 弁護士法人,A法人及びB法人は,それぞれ,他の類型の法人に移行し,又は他の法人と合併することができるよう,所要の規定を整備すべきである。
 この整備に当たっては,これらの法人が法律事務の需要に迅速かつ的確に対応することができるようにするため,可能な限り柔軟な制度設計をすることが望ましい。

4.A法人及びB法人の監督

(1) A法人及びB法人は,弁護士会及び日本弁護士連合会の監督を受けるものとする。

(2) これらの機関による監督の実効性を確保するため,A法人及びB法人は,弁護士法人と同様に,成立したときは,成立の日から2週間以内に,登記事項証明書及び定款の写しを添えて,その旨を所属弁護士会及び日本弁護士連合会に届け出なければならないものとする等の措置を講ずるものとする。

(3) なお,日本弁護士連合会及び弁護士会は,A法人及びB法人に対する指導・監督の実効性を確保するため,懲戒の在り方を含めた指導・監督の在り方について十分な検討を行うべきである。この検討に当たっては,弁護士法人及び外国法共同事業の例を踏まえて,日本弁護士連合会の会則・会規等において,法人及びその社員に対する調査権限を付与するとともに,これらの者に対し,当該調査への協力を義務付ける等の措置を講ずることが望ましい。

第5.終わりに

 本研究会は,法務省が,本提言の趣旨に沿って,日本弁護士連合会と協議の上,速やかに所要の措置を講ずることを要望する。
 また,日本弁護士連合会においても,弁護士及び外国法事務弁護士に対する指導・監督権限が付与された本旨にのっとり,A法人及びB法人を含めた指導・監督の実効性を確保するための方策について,引き続き,真摯に検討していくことを要望する。

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