平成23年度新司法試験の結果について(4)

年齢構成

以下は、合格者の平均年齢の推移である。

年度

短答
合格者

短答
前年比

論文
合格者

論文
前年比

短答論文
の年齢差

18

29.92

---

28.87

---

1.05

19

30.16

+0.24

29.20

+0.33

0.96

20

30.36

+0.20

28.98

−0.22

1.38

21

30.4

+0.04

28.84

−0.14

1.56

22

30.8

+0.4

29.07

+0.23

1.73

23

30.7

−0.1

28.50

−0.57

2.20

受控え又は不合格となった者は、再受験時には1つ歳をとる。
従って、再受験者が多いと、平均年齢の増加が1に近くなる。
平成22年までは、緩やかながら、増加傾向だった。
それが、今年はわずかながら減少している。
これは、5年以内という受験期間制限の影響。
すなわち、平成17年度修了生の退場によるものと思われる。
このような期間制限を前提にすれば、今後も年齢の上昇はなさそうにも思える。
旧試験では、再受験者の滞留により、合格者年齢が上昇していった。
受験に歳月を費やすということは、合格後の活躍期間を縮減させる。
そこで、何とか若手を合格させたい。
そのために導入されたのが、旧司法試験では丙案(合格枠制)であった。
これが、新試験における三振制・期間制限となって引き継がれた。
丙案導入時の議論において、既にその原型が現れている。

衆院法務委員会平成元年11月22日より引用、下線は筆者)

○井嶋政府委員 司法試験制度は委員御承知のとおり法曹三者の後継者を選抜いたします事実上唯一の試験でございまして、国家試験の中でも最難関の試験であるというふうに言われておるわけでございますけれども、近年、この試験が非常に異常な状況を呈してまいっておりまして、平均受験回数が六回以上、合格者の平均年齢が二十八・九一歳というようなことに象徴されますように、司法試験の受験を目指す者にとって非常に過酷な試験になっておるという現状があるわけでございます。そういったことから、法曹の後継者を実務家として修練する機会と申しますか、開始する機会が非常に遅くなってきているということもございます。そのような結果、定年制を持ってキャリアシステムで進んでまいります判事、検事につきましては、給源としての問題も非常に出てまいっておるという面もございます。そういったことで、本来法曹三者がバランスよく採用される、登用されるという姿であるべき司法試験が異常な形になってまいっておりますために、そのバランスよく採るという点においても一つの破綻を来しておるということがあるわけでございます。
 そういったところから、法務省といたしましても、まず司法試験の現状を改めて、より多くの人がより早く合格できるような試験制度に改めて、若くて優秀な人たちが司法試験に魅力を感じて受けてもらえるようなものにしたいという観点で改革の提言を行ったわけでございます。そして昨年十二月から一昨日まで十一回、法曹三者協議会でこの問題について討議を重ねてまいりました。その間におきまして、司法試験の抱えております現状と問題点をそれぞれ資料に基づいて分析、検討いたしまして、協議を行ってまいったわけでございます。まだ認識の程度あるいは質において必ずしも全部が一致したというわけではございませんけれども、少なくとも共通項といたしまして、現状の試験を改革する必要性があるという点におきましては認識が大体まとまった。そこで、ではこれからはいかにすべきかということを審議するために、提案者でございますので、法務省としてのたたき台をお示ししようということで、一昨日、司法試験制度改革の基本構想というものを提出したわけでございます。
 それで、今申しましたような経緯でございますので、改革の基本的構想というのは、まさに現在の司法試験に比べまして、より多くの者がより短期間に合格し得るような試験とするということを目途といたしまして、次のような改革の具体的内容を提言いたしました。
 まず、制度上の改革でございます。
 一つは、甲案と申しておりますけれども、司法試験第二次試験におきまして、初めて受験した年から五年以内に限って受験することができる。これは一つの受験資格の制限という方向の改革でございます。したがって、五年以内に連続いたしますと五回受けられる、しかしそれ以上は受けられません、こういう形にする案がまず甲案でございます。
 しかし、それだけで打ち切ってしまいますと、法曹というものは必ずしも若いときだけでなくて、いろいろな社会経験を積んだ後に法曹を目指して司法試験を受ける方も現実におられますし、またそういった方々のキャリアも法曹にとって重要であるというような観点もございますから、これを単に一律に当初から五年連続五回でおしまいだということでは酷であるということで、復活制というものを設けまして、五年引き続いてやって失敗されましたら五年間はお休みいただきます、五年お休みいただきましたら前と同じように、原則と同じように、さらにまた五年間連続受けていただけます、こういうような制度にいたしまして、いわゆる社会経験をされた方で改めて司法試験を目指そうという方にも道を開くということを考えたわけでございます。
 それから、乙案と申しますのは、そういった五年以内連続五回という受験制限の考え方を一応原則といたしまして、合格者数の八割ぐらいに当たるものをそういった五回以内の方々から選ぶ、しかし、現実に現行制度では制限をしておらないわけでございますから、そういった方も将来ともあるだろう、そういうことのために、残りの二割ぐらいの合格者の数につきましては、引き続き六回、七回、十回と受けておられる方の中からでも採るようにしよう、そのぐらいの枠をその方々に提供しよう、ただし、もちろん合格最低点はいわゆる八割の方の合格最低点と同じものにする、こういう考え方が乙案でございます。
 丙案は、これは逆にと申しますか、発想を変えておりまして、現在五百名ばかり採っておるわけでございますけれども、現在の姿をそのまま維持いたしましょう、したがって受験回数制限も一切いたしません、その方々で大体七割くらいを採らしていただきましょう、残りの三割につきまして、今度は受験回数三回以下の方々についてこの枠でもって合格の判定をさせていただきましょう、こういう考え方を示しておるわけでございます。

(引用終わり)

 

参院法務委員会平成14年11月21日より引用、下線は筆者)

○荒木清寛君 新しい司法試験につきましては、五年間に三回という受験回数制限が定められております。このような回数制限はどういう理由に基づくのか、お聞きをしたいと思います。
 ちなみに、私もホームページを運営をしておりますけれども、書き込みがありまして、このちょっと概略を紹介させていただきますと、「ロースクール法案について要望があります。受験回数制限については、ぜひとも法案から削除していただきたいのです。受験生の滞留を防ぐことが理由の一つのようですが、そんな理由で職業選択の自由を侵害してもいいのでしょうか。三回で合格できなかった人間は、価値ある法的サービスを提供できないとでも言うのでしょうか。もし、一回落選したら、二度と議員に立候補できないという法案が出来たとしたら、誰もがおかしいと思うのではないでしょうか。それと同じ事だと思います。これからの日本は、失敗してもやる気さえあればまたチャンスがあるという、懐の深い許容性を持った社会にしていかなければならないと思います。」と。匿名の方ですけれども、そういう志している方かなと思うんですよね。
 したがいまして、どういう理由に基づく制限であって、指摘をされているようなそういう職業選択の自由との関係で問題がないのか、合理的なのかどうか。これは推進本部の方にお尋ねいたします。

○政府参考人(山崎潮君) 現行の司法試験が、大量でかつ長期間に滞留しているということによる種々の弊害というものが指摘されております。
 大きな指摘は二つございまして、一つは、やっぱり長年受験勉強ばかりに青春を費やすということになると、やっぱり人間的な成長がなかなかうまくいかないと。要するに、受験技術のみに走ってしまう、こういう人格的なものの弊害。それから、やはり長年そこへ集中する、受験生が司法試験浪人となるわけでございますので、社会的損失が大きいということ。それから、人生の選択をあるところでした方がいいのではないかというような、そういうようないろいろな論点が挙げられております。
 そこで、私どもは、このような弊害がそのまま新司法試験に受け継がれるという場合には、法科大学院修了後もまた長期間にわたって受験予備校に通学するというような事態が生じてしまうおそれがあります。こういう事態はやはり避けなければならない、新しい法曹養成制度の趣旨が損なわれるおそれがあるということから導入をしたものでございます。
 これは、改革審の意見書でも、三回程度の受験回数制限を課すべきであるという結論でございましたけれども、私どもは、その辺を、受験者の諸般の事情を考えまして、隔年受験ですね、毎年受けなくとも、そういう余地も残すということから、五年の間に三回ということを設けたわけでございます。
 先ほど、メールの書き込みがあったということでございますけれども、それでは、じゃ、そこで、五年で三回のパスを失ったら一切もうチャレンジができないのかというと、そうではございません。そうなりますと、そこで全部一切できないということになると、やっぱりかなりいろんな疑義が生じてくる可能性がございます。
 そこで、私どもの法案では、その五年後に新しい受験資格を取って受ける場合には、例えば新しい受験資格というのは、もう一度別のロースクールに行って卒業するというのもあるかもしれませんし、予備試験に合格して受験資格を得るという二つのルートがございますけれども、その場合には、またそこから五年の間に三回というチャレンジを認めているわけでございまして、そういう意味では私どもは合理性があるというふうに考えておりまして、いったんそこで切るのは、そこでやはり自分が本当にこれに向いているのかどうかということを冷静に考えてもらう、そういう機会にするということでございます。

(引用終わり)

数字をみると、確かに合格者年齢を一定水準に抑えている。
今のところ、これは機能しているようにみえる。
しかし、最終合格年齢が、28、29歳くらいになっている。
上記引用のとおり、旧試験では28歳でも高すぎると指摘されていた。
また、新試験構想段階では、24、25歳を想定していた。

参院法務委員会平成13年11月06日より引用、下線は筆者)

○佐々木知子君 続いて、法科大学院を修了するための要件として、法学部出身者と他学部出身者とを区別せず、三年の在学期間を原則とすべきであるとの意見もあると聞いております。しかしながら、法科大学院に入学する学生の多くは、実際のところは法学部の出身者であろうと思われるわけです。その場合、学部で四年、大学院でさらに三年、合わせて七年間法律を学ぶということになるわけですね。これでは法曹となるまでの年月が余りに長くなってしまい、多くの有為な若者が法曹を目指すことをちゅうちょしてしまうのではないか。それとともに、頭のやわらかいときに余りにも法律法律と詰め込むことによって、実際は何も融通のきかない頭のかたい若者を育てる結果になってしまうのではないかということを私は非常に憂慮しているものでございますが、法科大学院の在学期間について、法務大臣の見解を求めます。

○国務大臣(森山眞弓君) 法科大学院におきましては、必ずしもいわゆる法学部の出身者だけを頭に置いているわけではございませんで、いろいろな分野の勉強をした若者が法曹を志してもらいたいという気持ちがあるわけでございます。
 司法制度改革審議会意見では、法科大学院における標準修業年限を三年とし、法学既修者、つまり法学部等で法律を勉強した者については、短縮型として二年での修了を認めるべきであるというふうにもおっしゃっているわけでございます。
 また、その教育内容については、厳格な成績評価及び修了認定を不可欠の前提としておりまして、修了者のうち相当程度の者が新司法試験に合格できるように充実したものとするべきであるということも言っております。
 そうしますと、司法試験合格時の年齢はおよそ二十四、五歳ということになろうかと推定されるわけでございますが、一方、現行の司法試験の合格者は、その平均受験期間がおよそ四年から五年となっておりますので、合格時の平均年齢がおよそ二十六、七歳ということが現実でございます。したがいまして、法科大学院制度導入後において、現行制度に比べて法曹資格を取得するまでの期間が長くなるとは必ずしも言えないかと思います。

(引用終わり)

そういう意味では、当初の想定どおりというわけではない。
しかも、来年からは今年の予備試験合格者が参入してくる。
今のところ、法務省は予備試験受験者の年齢情報を公表していない。
ただ、ロー生よりは高齢である可能性が高いだろう。
このことが、新試験の平均年齢を押し上げる可能性がある。
また、期間制限を使い切った者で、ローに再入学するものが出てくるだろう。
これは、ロー生の平均年齢を高める要因になる。
従って、今後平均年齢が低下に向かう可能性は、低いといえる。

それから、毎年、短答合格者より論文合格者の方が若い。
この傾向は、旧試験以来ずっと変わっていない。
これは、短答と論文の質的差異による。
このことは、司法試験平成22年出題趣旨の読み方(憲法)の教材説明でも示したとおりである。

司法試験平成22年出題趣旨の読み方(憲法)販売ページ「本教材をご利用頂くに当たっての注意点等について」より引用)

第42回法科大学院特別委員会における配布資料の中に、「平成22年新司法試験受験状況」というものがあります。
それをみると、新試験の受験回数ごとの短答、論文の合格率がわかります。
短答については、以下のとおりです。

受験回数1回:67.0%
受験回数2回:71.8%
受験回数3回:83.9%

受験回数が増えれば、合格率が上がっていきます。
これは、自然なことです。
受験回数が増えるほど、勉強時間も増えるからです。
短答は、勉強時間さえ確保すれば、順当に成績が伸びる試験だということになります。
では、論文はどうでしょうか。
短答合格者ベースの合格率は、以下のようになっています。

受験回数1回:42.7%
受験回数2回:30.5%
受験回数3回:25.2%

短答とは、逆になっていることがわかります。
これは、不思議なことです。
論文は、勉強時間が増えると、かえって受かりにくくなっています。
がむしゃらに勉強すれば受かるという試験ではない、ということです。
正しい勉強をすれば、勉強量は少なくても受かります。
しかし、間違った勉強をすれば、かえって受かりにくくなるのです。
すなわち、勉強の方向性が正しくなければなりません。
そのためには、早い段階で、本試験が要求しているものとは何か、それを知っておく必要があります。
ですから、できる限り早く、本試験問題を検討し、出題趣旨、採点実感等に関する意見、考査委員ヒアリング等を分析して、勉強の方向性を間違わないようにすることが必要です。

(引用終わり)

短答は、勉強量が増えれば、受かり易くなる。
論文は、勉強量が増えても、受かり易くなるわけではない。
受験回数が増えれば、当然その分余計に歳をとる。
すなわち、論文は歳をとった者が受かりにくい。
これが、論文で若年化が生じるメカニズムである。
前々回の記事で、受かりにくい者は、何度受けても受かりにくいことを示した。
上記のことは、これとも符合する事実である。

短答論文の年齢差の推移をみると、一定の傾向がある。
平成19年以降、徐々に差が開いてきている。
今年は、初めて2を超えた。
その原因は、よくわからない。
上記の要素が、強まってきたということなのだろう。
出題趣旨等の分析が、ますます必要になってきている。

選択科目別合格率

以下は、選択科目別の短答・論文合格率等をまとめたものである。

科目

短答
受験者数

短答
合格者数

短答
合格率

倒産

2134

1570

73.5%

租税

551

349

63.3%

経済

887

580

65.3%

知財

1149

694

60.4%

労働

2658

1711

64.3%

環境

522

292

55.9%

国公

127

61

48.0%

国私

693

397

57.2%

 

科目

論文
受験者数

論文
合格者数

論文
合格率

倒産

1570

609

38.7%

租税

349

112

32.0%

経済

580

216

37.2%

知財

694

244

35.1%

労働

1711

625

36.5%

環境

292

94

32.1%

国公

61

22

36.0%

国私

397

141

35.5%

どの科目を選択するか。
そのことと、短答・論文の合格率。
直感的には、そんなに関係なさそうに思える。
しかし、実際には意外と差が付いている。
特に、短答の合格率に顕著な差が生じている。
トップの倒産と、最下位の国公の差は、25.5%にも達する。
当然だが、短答では、どの科目選択者も同じ問題を解く。
選択科目の難易度とは、全然関係がない。
すなわち、実力者に倒産選択者が多く、国公はその逆である。
これは、今年だけなのだろうか。
以下は、年別の合格率の推移である。
ただし、平成18年については、短答受験者ベースの数字がない。
そのため、この部分は、「---」表記とした。

短答合格率
(受験者ベース)

科目

18

19

20

21

22

23

倒産

---

81.2%

80.4%

76.0%

78.2%

73.5%

租税

---

70.7%

73.3%

68.6%

70.1%

63.3%

経済

---

76.6%

71.6%

66.9%

70.4%

65.3%

知財

---

73.3%

74.2%

67.4%

71.1%

60.4%

労働

---

76.8%

75.0%

68.4%

70.9%

64.3%

環境

---

68.9%

63.6%

58.4%

62.8%

55.9%

国公

---

70.6%

60.1%

52.2%

59.2%

48.0%

国私

---

66.8%

69.6%

60.8%

62.0%

57.2%

 

論文合格率
(短答合格者ベース)

科目

18

19

20

21

22

23

倒産

60.7%

53.6%

44.8%

42.1%

36.8%

38.7%

租税

64.7%

59.8%

44.2%

41.1%

32.3%

32.0%

経済

62.6%

52.7%

43.6%

39.0%

34.9%

37.2%

知財

58.2%

53.0%

43.9%

40.5%

36.0%

35.1%

労働

59.2%

52.9%

44.0%

40.4%

36.8%

36.5%

環境

60.5%

56.0%

48.3%

35.1%

34.4%

32.1%

国公

58.0%

46.1%

46.1%

38.5%

34.4%

36.0%

国私

56.2%

48.5%

42.5%

37.9%

33.4%

35.5%

どの科目も、年を追うごとに数字が下がっている。
これは、全体の合格率が下がっているためである。
そのため、パッと見たときの比較がしにくい。
そこで、各年の平均値を取り、まとめたものが、下の表である。

科目

短答合格率
の平均値

論文合格率
の平均値

倒産

77.8%

46.1%

租税

69.2%

45.6%

経済

70.1%

45.0%

知財

69.2%

44.4%

労働

71.0%

44.9%

環境

61.9%

44.4%

国公

58.0%

43.1%

国私

63.2%

42.3%

短答、論文共に、倒産法の合格率が高いことがわかる。
一方で、国際公法は、短答、論文共に合格率が低い。
環境や国際私法も、同様に低めの数字になっている。
また、その差は、短答では顕著であるが、論文ではそれ程でもない。
これを前記の各年ごとの数字と照らし合わせると、毎年そうなっている。
すなわち、ほぼ一貫した傾向ということができる。

なぜ、倒産法がこれほどまでに高い数字になっているのか。
他方、なぜ国際公法、国際私法、環境法が低い数字になっているのか。
今のところ、はっきりしたことはわからない。
ただ、科目別足切り状況で示したとおり、倒産法は例年足切りが多い。
(今年は、例外的に少なかった。)
他方で、国際公法、国際私法は一貫して足切りが少ない。
すなわち、足切りの数をみると、逆の傾向のようにもみえる。
この辺りのすっきりした説明は、まだ見出せない。
とはいえ、上記の傾向があることは確かである。
特に、短答での差は、顕著である。
選択をする際には、一応念頭に置いてみるとよい。

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