最新下級審裁判例

福岡高裁第3民事部判決平成22年03月25日

【判旨】

 行訴法4条の「公法上の法律関係に関する確認の訴え」・・は,確認の対象となり得るものが形式的には無限定であることから,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するため,その利益があることが訴訟要件として要求される。このような趣旨からすれば,確認の利益は,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合に認められるべきものである(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。・・そして,第三者の権利であっても,控訴人と被控訴人との間で現在それを確定することが控訴人の法律的地位の危険,不安を除去するのに適切であるときは確認の利益があるといえる。
 最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁は,訴訟の形式をいわゆる無名抗告訴訟と解した上でのものとも考えられ,公法上の法律関係に関する確認の訴え・・に当然に妥当するものではない。そして,行訴法4条による公法上の法律関係に関する確認の訴えにおける確認の利益は,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するための要件であり,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合には,これを認めることができるというべきであって,確認の訴えによらなければ事後的に回復不可能な損害を被ることまでは要しないと解すべきである。

 

横浜地裁第1民事部判決平成21年08月26日

【判旨】

1.行訴法は,違法な行政権の行使による侵害からの原告の権利利益の救済を図ることを目的とする司法作用を主要な規律の対象としているのに対し,行審法1条1項においては「国民の権利利益の救済」のほかに「行政の適正な運営を確保すること」を法律の目的とすることが規定されている点に特徴がある。
 行審法は,職権により,適当と認める者を参考人として陳述させることができること,書類その他の物件の所持人に対し,その物件の提出を求め,かつ,その提出された物件を留め置くことができること,必要な場所につき,検証することができること,審査請求人又は参加人を審尋することができることを定めている(同法27条ないし30条)。これが職権証拠調べを許容することは明らかであるが,さらに,これを超えて当事者の主張しない事実を職権で取り上げてその存否を調べること,つまり職権探知主義まで認めている趣旨かどうかは明らかではない。しかし,行政不服審査は,なお,行政過程における争訟であって,私人の権利利益の救済とともに行政の適正な運営の確保をも目的とするものであることをも考慮すると,行審法も職権探知を認めていると解すべきである(訴願法当時のものとして,最高裁昭和29年10月14日第一小法廷判決・民集8巻10号1858頁参照)。
 この点,原告は,行審法が,職権によって行政処分の違法・不当性に関するあらゆる事項を調査することができることを認めていると解することは,同法43条1項の規定の趣旨にも矛盾すること,すなわち,同項は「裁決は,関係行政庁を拘束する。」と定めているが,この裁決の拘束力について,学説・判例は,同一の理由若しくは資料に基づいて,同一人に対し同一の行為をすることを禁ずる趣旨にすぎないから,行政庁が別の理由若しくは資料に基づいて処分をすることを妨げるものではないとしていると解していること,しかし,行審法が,職権によって行政処分の違法・不当性に関するあらゆる事項の調査を許しているのならば,このような迂遠な方法を定める必要はないはずであること,したがって,行審法の規定が,審査庁に自ら直接決定する権限を与えることなく,単に「拘束する」との文言にとどめているのは,行政事件訴訟における裁判と同じく,不服申立適格者の権利救済に必要な範囲内にだけ補充的に職権探知を認める趣旨であることを主張する。
 しかしながら,行審法43条1項は,処分庁が同一事情の下では同一理由に基づく同一内容の処分をすることができないという反復禁止効を規定したものと解すべきところ,同項の規定が,審査庁が直接決定するものとなっていないのは,同一事情の下で異なる理由に基づく同一内容の処分をする可能性があるからである。
 したがって,同項の規定をもって職権探知が制限されると解することはできず,原告の上記主張は採用することができない。

2.行審法41条1項が「裁決は,書面で行ない,かつ,理由を附し・・・なければならない。」と規定しているのは,審査機関の判断を慎重ならしめるとともに,裁決が審査機関の恣意に流れることのないように,その公正を保障するためと解される。したがって,その理由としては,審査請求人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明らかにしなければならない。
 もっとも,裁決に付記すべき理由の記載の程度は,事案の内容に応じて相対的に定まるものであって,必ずしも,裁決庁の意思決定の内容・過程が詳細にわたって明らかにされなければならないものではない。

3.行政手続法3条1項15号は,審査請求に対する行政庁の裁決について,同法第2章から第4章までの規定の適用を明示に排除している。したがって,同法第3章中の13条が規定する,不利益処分についての聴聞・弁明の機会付与等は,審査請求に対する行政庁の裁決に適用がない。その趣旨は,審査請求に対する行政庁の裁決は事後救済の手続としてされるものであるから,これに対し,行政手続法所定の事前手続の規定を適用することは屋上屋を重ねることになり,したがって,これを避けるため,適用排除の規定がされたものと解される。

4(1)行審法43条1項は,「裁決は,関係行政庁を拘束する。」と規定している。同規定により,関係行政庁は裁決の内容を実現すべく義務付けられ,処分の取消し又は撤廃の裁決があった場合には,同一事情の下で,同一内容の処分を繰り返すことが許されなくなる(反復禁止効)。
 裁決の拘束力の性質・根拠は,@審査請求人の権利救済のためには処分が取り消されただけでは十分でなく,消極的には,再び同一の過誤が将来の行政庁の行為において繰り返されないことが必要であり,積極的には,取り消された行為と直接関連して生じた違法状態を除去する必要があること,A行政内部において,ある意思が既に批判,修正された場合には,それ以前の元の意思について行政外部に対する独立の存在,行動を許すべきでないこと,B行政不服審査制度が,行政権が行政監督的方法をもって広義の行政機関内部の意思を統制する目的に奉仕する手段としての側面をもって設けられていること,Cしたがって,審査請求の対象となった原処分庁により別に裁決に対する抗争手段を認めることは,上記の行政上の統制を破る自壊作用を肯定することにほかならないことから,裁決によって,直接に裁決の趣旨に沿うべき行為義務を行政庁に負わせようとしているものであるとされている。

(2)行審法43条2項は,「申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され,又は申請を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消されたときは,処分庁は,裁決の趣旨に従い,改めて申請に対する処分をしなければならない。」と規定している。
 申請を認容した処分に係る同項の趣旨は,以下のとおりである。
 すなわち,申請を認容した処分を審査庁が手続上の違法を理由として取り消したものである場合においては,処分庁が裁決の趣旨に従って再度適法に手続を行えば,申請を認容する処分をする余地が残されている。すなわち,この場合は申請者に再度の処分を受ける法律上の利益(やり直しの利益)が認められているのであるから,処分庁に「改めて申請に対する処分をしなければならない」と義務付けているのである。
 これに対し,行審法43条2項には,申請を認容した処分を審査庁が実体上の違法を理由として取り消した場合の規定がない。これは,認容処分が実体的な理由で取り消された場合は,裁決の拘束力の関係上,再度やり直しても認容処分のなされる見込みはない(すなわち,申請者にやり直しの利益が認められない)ので,一般に,このことをあえて法律によって強制するまでの必要はないと考えられるからであるとされている(行審法43条2項と同旨の行訴法33条3項につき,杉本良吉「行政事件訴訟法の解説」(法曹会)113頁参照)。
 以上のことから,同項は,申請を認容した処分につき裁決が処分を手続上の違法を理由として取り消したものである場合には,処分庁は裁決の趣旨に従って改めて申請に対する処分をすべきものとしたと解される。
 なお,申請を認容した処分が実体的な理由で取り消されたときにおいても,取消判決の形成力によって,初めから当該処分がなかったことになり,申請はいまだ行政庁の判断を受けないままの状態で存続していることになるのであるから,処分庁は改めて応答行為である処分をしなければならないと解されるが,新たな処分を要せず,当然に終了するとする学説もある。

5.行訴法22条所定の訴訟参加は「訴訟の結果により権利を害される第三者」について認められるところ,当該第三者は,取消判決の形成力によって直接利益を侵害される第三者や,取消判決の拘束力によって新たな処分がなされることを通して自己の権利を害される第三者を含むものと解される。また,「害される権利」とは,厳格な意味における権利に限らず,法律上保護された利益も含まれていると解される。

6.行訴法7条,民訴法42条に基づく補助参加が許されるのは,補助参加申出人が訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,また,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が補助参加申出人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。

 

京都地裁第1民事部判決平成22年03月08日

【事案】

1.被告は,平成10年6月8日から平成15年1月31日まで(実質は平成14年12月末日まで)原告の嘱託社員であり,平成12年1月から退職するまで中国上海に駐在していた。原告は,被告が,この駐在中,原告の中国における事業責任者としての地位にありながら,次の3つの行為をし,これらが雇用契約上の債務不履行に該当すると主張して,これに基づく損害賠償及び商事法定利率による遅延損害金を請求する。

@ 売却先からの注文がないのに商品である金粉を原告本社に出荷させ,上海の倉庫に在庫して放置して,前記金粉が錆びて価値を失わせた行為(以下「本件金粉在庫行為」という。)

A 原告と取引先であるA貿易有限公司(以下「A」という。)との間の合意によってAから原告に対して支払われるものとして被告が受領した現金の一部を原告本社に送金するのを怠った行為(以下「本件送金懈怠行為」という。)

B 原告がAを介して大連B貿易有限公司(以下「大連B」という。)に販売した商品の売掛金について,原告本社,Aのいずれの了解も得ずに,大連Bに対しこれを免除した行為(以下「本件売掛金免除行為」という。)

 被告は,被告が本件金粉在庫行為,本件送金懈怠行為及び本件売掛金免除行為(以下これらをまとめて「本件各行為」という。)の当時,原告の中国における事業責任者としての地位にあったことを争い,本件各行為についてもそれぞれ争うほか,原告の請求について商事消滅時効が成立しているとの抗弁を主張する。

2.前提事実

(1) 原告は,捺染用顔料樹脂等の製造販売を業とする株式会社である。被告は,平成10年6月8日から平成15年1月31日まで(実質は平成14年12月末日まで)原告の嘱託社員であり,平成12年1月から退職するまで中国上海に駐在していた。
 原告代表者は,当時営業部長ないし副社長であって,被告の上司として中国における事業を職掌していた(以下原告代表者を時期にかかわらず「C副社長」という。)。また,原告の従業員Dは,平成6年10月ころから,原告の中国事業を担当し,被告が退職した後はその業務を引き継いだ。

(2) 原告は,かつて,中国への商品の輸出について,名古屋市に所在していた商社であるB株式会社を窓口としていた。そして,同社は,その関連会社である上海所在の上海B貿易有限公司に商品を販売し,更に上海B貿易有限公司が,中国国内各地に存在する関連会社の大連B等の各B貿易有限公司(以下「Bグループ各社」という。)に商品を販売し,そこから末端のユーザーに商品が流れるようになっていた。
 しかし,平成11年12月ころ,前記B株式会社が倒産し,更に上海B貿易有限公司にも問題が生じたため,上海B貿易有限公司の営業がAに譲渡され,その後,原告は,中国の外貿を通じてAに商品を販売し,Aが中国国内のBグループ各社に商品を売却するようになった。

(3) さらに,平成12年12月ころには,Aにおける売掛金の管理にも問題が生じたため,原告の中国事務所が,Aの売掛金の実質的な管理をするようになり,被告が同事務所のリーダーという立場でその業務を担当することになった。

(4) 被告は,原告に対し,平成21年3月19日の本件弁論準備手続において,商事消滅時効を援用するとの意思表示をした。

3.商事消滅時効の成否に係る当事者の主張

(1) 被告の主張

ア.原告と被告との間の雇用契約は,被告会社の行為として商行為であると推定されるので,その債務不履行に基づく損害賠償請求権については商法522条が適用され,その消滅時効期間は5年である。そして,本訴請求債権の時効の起算点は,遅くとも原告と被告との間の雇用契約が終了した平成15年1月31日であり,本訴が提起された平成20年7月1日より前に時効期間が経過しているから,被告は,この時効を援用する。

イ.原告が下記で指摘する最高裁判例は,国が負う安全配慮義務に関し会計法30条の適用の是非が問題となった事案であり,本件とは事案を異にする。また,私企業における雇用契約から信義則上生じる安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権について,民法168条の適用を受ける旨を判示する裁判例もあるが,これらはじん肺事件のような特殊な安全配慮義務違反に関する損害賠償請求権についてのものであり,本件とは事案を異にする。

(2)原告の主張

 株式会社が使用人との間で締結する雇用契約については,商法522条は適用されないものというべきである。商法522条は,会社と雇用契約関係にある従業員が安全配慮義務違反に基づいて損害賠償を請求する場合(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)のように,商人が行った行為であっても適用されない場合があるところ,本件の損害賠償請求権は,雇用契約の本来の給付義務である労務の提供をしなかったことに基づく損害賠償請求ではなく,労務提供に際して付随的に会社に損害を与えないようにすべき義務の違反があったことに基づく損害賠償請求であって,前記の最高裁判例等と同様に,商人の取引について早期の権利義務関係の確定を図る必要があるとの同条の趣旨が妥当しないし,本件のような従業員の不適切な業務の執行は,ある程度の期間を経過して初めて発覚するものも少なくないから,本件の損害賠償請求権の消滅時効については,商法522条を適用せず,その期間は民法167条に基づいて10年とすべきである。

【判旨】

1.株式会社とその従業員との間の雇用契約は,会社がその事業のためにする行為であるから,商行為である(会社法5条)。そして,商行為によって生じた債権は,5年間の短期消滅時効が定められている(商法522条)。そこで,本件で原告が請求する雇用契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求権が,商法522条の「商行為によって生じた債権」といえるかについて,検討する。
 商行為である契約上の債務の不履行に基づく損害賠償請求権は,通常はその債務がその態様を変じたにすぎないものであるから,商法522条の「商行為によって生じた債権」に該当するというべきであるが,その債務不履行責任が,株式会社の取締役の会社に対する損害賠償責任のように,法によってその内容が加重された特殊な責任である,あるいは,商人である使用者の被用者に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任のように,本体的給付から離れた付随的義務を原因とする責任であるなど,契約上の債務が単に態様を変じたにすぎないということができず,商事取引における迅速決済の要請が妥当しない場合には,前記の「商行為によって生じた債権」に該当しないものと解するのが相当である(最高裁昭和47年5月25日第一小法廷判決・裁判集民事106号153頁最高裁平成6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号441頁最高裁平成20年1月28日第二小法廷判決・民集62巻1号128頁参照)。

2.これを本件についてみると,本訴請求に係る債務不履行責任は,雇用契約における被用者の本体的給付義務である労務の提供がないという単純な不履行に基づくものではないものの,労務の提供の内容ないし方法に関する注意義務違反を原因とするものであって,本体的給付から離れた付随的義務を原因とするものということはできない。また,商事取引における迅速決済の要請についても,例えば商人間の売買取引における債権債務関係のような場合と比較すれば,会社における雇用契約についてその要請の程度が異なるということはできるけれども,会社にとって,雇用契約に基づく債権債務関係を他の債権債務と同様に迅速に決済する要請がないとはいえない。原告は,本件のような従業員の不適切な業務の執行による債務不履行は,ある程度の期間を経過して初めて発覚するものも少なくないなどとも指摘するが,会社における従業員の労務の提供については,取締役の任務懈怠行為とは異なり,会社がその内容を適切に管理して把握すべきものであるから,このような指摘は当を得ない。
 そうすると,本訴請求に係る債務不履行責任は,商行為である雇用契約上の債務がその態様を変じたにすぎないものとして,商法522条の「商行為によって生じた債権」に該当するものというべきであるから,同条により,その消滅時効期間は5年となる。そして,本訴請求債権の時効の起算点は,遅くとも原告と被告との間の雇用契約が終了した平成15年1月31日であり,本訴が提起された平成20年7月1日より前に時効期間が経過しているから,本訴請求債権についてはいずれも時効が成立する。

3.以上によれば,被告の商事消滅時効の抗弁に理由があるから,本訴請求の請求原因の成否にかかわらず,原告の請求はいずれも理由がなく,棄却する。

 

東京地裁民事第47部判決平成22年10月21日

【判旨】

 人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,その氏名を他人に冒用されたり,みだりにその容ぼう等を撮影されたり,自己の容ぼう等が撮影された写真をみだりに公表されたりしない権利を有する(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁同昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁同平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照。)。
 また,芸能人やスポーツ選手等の著名人については,その氏名,肖像が商品に付されたり,他の事業者のために広告に使用されたり,出版物に掲載されたりした場合に,大衆が当該著名人に対して抱く関心や好感,憧憬等の感情のゆえに,当該商品や出版物の販売促進に有益な効果,すなわち顧客吸引力を生じることは,一般によく知られているところである。このように,著名人の氏名,肖像は,顧客誘引力を有し,経済的利益,価値を生み出すものであるということができるのであり,著名人は,人格権に由来する権利として,このような経済的利益,価値を排他的に支配する権利(以下「パブリシティ権」という。)を有すると解するのが相当である。
 他方,著名人は,その著名性ゆえに,必然的に,著名人としての活動やそれに関連する事項が,一般人よりも社会の正当な関心事の対象となりやすいものである。そのため,著名人は,その著名人としての活動等が雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されることについて,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という観点から,これを容認しなければならない場合があるといえる。そして,そのような紹介記事等を掲載した雑誌等の販売に当たって当該芸能人等の顧客吸引力が反映される場合があるとしても,上記の観点から,著名人はこれを容認せざるを得ない場合がある。
 以上の点を考慮すると,著名人の氏名,肖像を使用する行為が当該著名人のパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該著名人の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断するのが相当である。なお,上記の基準は,出版等につき顧客吸引力の利用以外の目的がわずかでもあれば,「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害とされることがないことを意味するものではなく,顧客吸引力の利用以外の目的があったとしても,そのほとんどの目的が著名人の氏名,肖像による顧客吸引力を利用するものであるような場合においては,上記の事情を総合的に判断した結果,「専ら」顧客吸引力の利用を目的とするものであるとしてパブリシティ権侵害とされることがあり得るというべきである。

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