司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等の改正について

実質改正なし

11月18日に、法務省は司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等(更新)という情報を公表している。
しかし、ぱっと見ただけでは、何がどう改正されたのかわからない。
どれも、ほとんど変更されている部分はない。

新司法試験は、旧司法試験の終了に伴い、「司法試験」と表記されるようになった。
今回の改正は、基本的にはこの点の名称変更をしただけである。
例えば、問題数及び点数等に関するものをみると、以下のとおりになっている。

司法試験における問題数及び点数等について(改正後のもの)より引用、下線は筆者)

司法試験における問題数及び点数等について

平成17年11月8日司法試験委員会決定
改正平成22年7月14日
改正平成23年11月9日

第1.短答式試験の問題数及び点数

1.公法系科目

 40問程度とし,100点満点とする。

2.民事系科目

 75問程度とし,150点満点とする。

3.刑事系科目

 40問ないし50問程度とし,100点満点とする。

第2.論文式試験

1.問題数

 公法系科目,刑事系科目及び選択科目については,いずれも問題数を2問とし,民事系科目については,問題数を3問とする。

2.問題別配点等

 公法系科目及び刑事系科目については,各科目それぞれ,問題1問につき100点配点の計200点満点とする。
 民事系科目については,問題1問につき100点配点の計300点満点とする。
 選択科目については,いずれの科目についても,2問で計100点満点とする。

(引用終わり)

 

(新司法試験における問題数及び点数等について(改正前のもの)より引用、下線は筆者)

新司法試験における問題数及び点数等について

平成17年11月8日司法試験委員会決定
改正平成22年7月14日

第1.短答式試験の問題数及び点数

1.公法系科目

 40問程度とし,100点満点とする。

2.民事系科目

 75問程度とし,150点満点とする。

3.刑事系科目

 40問ないし50問程度とし,100点満点とする。

第2.論文式試験

1.問題数

 公法系科目,刑事系科目及び選択科目については,いずれも問題数を2問とし,民事系科目については,問題数を3問とする。

2.問題別配点等

 公法系科目及び刑事系科目については,各科目それぞれ,問題1問につき100点配点の計200点満点とする。
 民事系科目については,問題1問につき100点配点の計300点満点とする。
 選択科目については,いずれの科目についても,2問で計100点満点とする。

(引用終わり)

表題以外は、一字一句変わっていない。
その他の決定についても、ほぼ同様である。

若干、名称変更以外の要素を含むのは、採点及び成績評価等に関するものである。
まず、冒頭部分で、今後の見直しに係る部分が削られている。

(新司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について(改正前のもの)より引用、下線は筆者)

平成22年11月17日新司法試験考査委員会議申合せ事項

 新司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準については,以下のとおりとする。ただし,この実施方法・基準については,新司法試験本試験の実施結果を踏まえて,適宜,見直しを行うものとする

(引用終わり)

 

司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について(改正後のもの)より引用、下線は筆者)

平成23年11月17日司法試験考査委員会議申合せ事項

 司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準については,以下のとおりとする。

(引用終わり)

この採点及び成績評価等に関しては、短答・論文の比重の変更が行われたことがある。
今後は、当分そのような変更をするつもりはないという趣旨なのか。
それとも、適宜見直すことがあり得るのは当然であるとして、削ったのか。
それはよくわからない。
とはいえ、これまでの勉強に大幅な見直しを迫るような変更がされる可能性は非常に低い。
そこまで、神経質になることもないだろう。

もう一箇所は、足切りの計算方法に関する部分である。
これは、単なる不適切な表記の訂正である。
改正前は、以下のようになっていた。

(新司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について(改正前のもの)より引用、下線は筆者)

2.論文式試験における最低ライン

 最低ラインは,各科目の満点の25%点とする。
 なお,最低ラインに達しているかの判定は,各問ごとに考査委員が採点した素点により次の算式で求めた1科目の点数により行う。

 算式=(問1を採点した考査委員の素点の平均点)+(問2を採点した考査委員の素点の平均点)

(引用終わり)

これでは、民事系の場合に問3が考慮されないことになってしまう。
かつては、民事系も大大問と通常の大問の2問だったから、これでよかった。
しかし、その後、大大問形式は廃止され、大問3つの形式となった。
本来は、そのときに、ここは改正されるべきだった。
それが、見落とされていた。
そこで、今回、以下のように改正されている。

司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について(改正後のもの)より引用、下線は筆者)

2.論文式試験における最低ライン

 最低ラインは,各科目の満点の25%点とする。
 なお,最低ラインに達しているかの判定は,各問ごとに考査委員が採点した素点により次の算式で求めた1科目の点数により行う。

公法系科目,刑事系科目及び選択科目

 算式=(問1を採点した考査委員の素点の平均点)+(問2を採点した考査委員の素点の平均点)

民事系科目

 算式=(問1を採点した考査委員の素点の平均点)+(問2を採点した考査委員の素点の平均点)+(問3を採点した考査委員の素点の平均点)

(引用終わり)

もちろん、この改正の前も、民事系の足切りは同様の計算方法で行われていた。
問3を除外して計算していたわけではない。
従って、この点も実質的な改正ではない。

それから、視覚障害の受験者に対する配慮につき若干の変更がある。

(視覚障害の受験者に対する配慮について(改正前のもの)より引用、下線は筆者)

平成18年11月17日新司法試験考査委員会議申合せ事項

 視覚障害の受験者に対しては,点字による出題が予定されているが,下記の事項については,点字による表記が不可能又は点字による表記によっては正解を導き出すことが困難若しくは不可能となることから,出題に関し各項目に応じて配慮することが望ましい。

 記

1.同音異義語

 点字においては,漢字を用いず,点字表記の単語のみでは同音異義語の区別ができないため,書かれている具体的な漢字を識別できない限り,正解を導き出すことが困難な問題は,出題を避けるか若しくは記載されている漢字に注釈を付けた上で出題することが望ましい

2.表,グラフ,図面及び地図

 複雑なものは,触図化が不可能な上,簡易なものであっても,立体的に表示してある図面は識別が困難。
 視覚と違い,触覚から得られる情報量は非常に少ないため,全体像を把握するのに相当な時間が必要。
 形式や内容によっては,触図化しないで文章化して表現する方法もある。

3.挿絵及び写真

 点字化は不可能。
 挿絵や写真については,必要な内容を文章化して表現する方法もある。

4.文字の強調(網掛け,傍線及び書体の違い)

 説明書きがなければ,識別が不可能。

5.色で識別するもの

 色の識別は不可能であり,「青は何を示す。赤は何を示す。」などの設問は解答できない。

6.中点

 視覚的に中点を捉えることができないため,中点によって,いくつかの単語が並列されていることが認識しがたく,中点を多用した文章は理解が困難。

7.参照条文の位置

 設問の末尾に参照条文がある場合は,参照条文の有無を認識できるように,点字表記において配慮する。

8.出題形式

 出題形式(穴埋め問題など)によっては視覚障害者に大きな負担となり得ることについても念頭に置いた上で,全体の出題を構成することが望ましい。

(引用終わり)

 

視覚障害の受験者に対する配慮について(改正後のもの)より引用、下線は筆者)

平成23年11月17日司法試験考査委員会議申合せ事項

 視視覚障害の受験者に対しては,点字による出題が予定されているが,下記の事項については,点字による表記が困難若しくは不可能又は点字による表記によっては正解を導き出すことが困難若しくは不可能となることから,出題に関し各項目に応じて配慮することが望ましい。

 記

1.同音異義語

 点字においては,漢字を用いず,点字表記の単語のみでは同音異義語の区別ができないため,書かれている具体的な漢字を識別できない限り,正解を導き出すことが困難な問題は,出題を避けるか又は記載されている漢字に注釈を付けた上で出題する

2.表,グラフ,図面及び地図

 複雑なものは,触図化が不可能な上,簡易なものであっても,立体的に表示してある図面は識別が困難。
 視覚と違い,触覚から得られる情報量は非常に少ないため,全体像を把握するのに相当な時間が必要。
 形式や内容によっては,触図化しないで文章化して表現する方法もある。

3.挿絵及び写真

 点字化は不可能。
 挿絵や写真については,必要な内容を文章化して表現する方法もある。

4.文字の強調(網掛け,傍線及び書体の違い)

 説明書きがなければ,識別が不可能。

5.色で識別するもの

 色の識別は不可能であり,「青は何を示す。赤は何を示す。」などの設問は解答できない。

6.参照条文の位置

 設問の末尾に参照条文がある場合は,参照条文の有無を認識できるように,点字表記において配慮する。

7.出題形式

 出題形式(穴埋め問題など)によっては視覚障害者に大きな負担となり得ることについても念頭に置いた上で,全体の出題を構成することが望ましい。

(引用終わり)

まず、冒頭部分である。
ここでは、表記が不可能な場合に加えて、困難な場合が追加されている。
その後の各項には、点字表記が不可能とまではいえないものも含まれているからだろう。
これは、内容の変更というより、表現ぶりの訂正という感じである。
第1項には、二つの変更点がある。
まず、「若しくは」が、「又は」に変更されている。
意味は変わらないが、法制的に正しい表記法に訂正したものである。
(「若しくは」は、「又は」で接続される部分においてさらに選択的記載をする場合に用いる用語である。)
もう一つは、一応実質的な変更を含んでいる。
「出題することが望ましい」から、「出題する」となっている。
義務化された、ということである。
同音異義語を識別できないと正解し難い問題。
以前は、望ましくないが、注釈なしでも出題してよい、ということになっていた。
今回は、出すなら漢字に注釈をつけなければならなくなった。
当然といえば、当然である。
その他では、中点に関する記述が削除されている。
これは、ちょっと理由はわからない。

多くの受験生にとって、ここは自分には関係ないと思うだろう。
しかし、出題には上記のような制約があるということ。
これは、一応知っておきたい。
同音異義語を使ったひっかけなどは、まず出ないということである。
例えば、平成17年度の旧司法試験の択一では、法務省の変換ミスによる誤記があった。

平成17年度旧司法試験短答式憲法より引用、下線は筆者)

第10問

 次のアからオまでの記述は,内閣の組織と権能に関するものであるが,そのうち誤っているものを組み合わせたものはどれか。

ア及びイ 略。

ウ 閣議決定は全員一致によるが,それは憲法第66条第3項を根拠にするものであり,多数決による意思決定は憲法上認められない。そのことは,内閣総理大臣が任意に国務大臣を罷免できるとする憲法第68条第2項の規定からも明らかである。したがって,閣議決定は様式行為ではないが,大臣全員の署名が必要とされる。

以下略。

 

第19問

 次の文章は,予算と決算に関する教授と学生の問答である。学生AからEの説明のうち,正しいものを組み合わせたものはどれか。

 (中略)

学生D 決算とは,一会計年度における,国家の現実の収入・支出の実績を示す確定的係数を内容とする国家行為の一形式です。なお,決算は,予算とは異なり,法規範性を持たないと解されています。

以下略。

(引用終わり)

 

平成17年度司法試験第二次試験短答式試験における試験問題の誤記及びその取扱いについてより引用、下線は筆者)

司法試験考査委員会議は,平成17年度司法試験第二次試験短答式試験第10問(憲法)及び第19問(憲法)について,下記のとおりの取扱いとすることを決定しました。
 
 今年度の短答式試験問題中,第10問のウの記述中の「様式行為」は「要式行為」の誤記であること,また,第19問の学生Dの記述中の「確定的係数」は「確定的計数」の誤記であることが,試験終了後に判明しました。
 しかし,いずれの問題についても,当該誤記は正解選択に影響しないと認められることから,当初から正解と予定していた選択肢を解答したものについて得点を与える通常の取扱いとすることといたしました。
 
 試験問題に誤記があったことを心からお詫び申し上げますとともに,今後,二度とこのようなことがないよう遺漏なきを期してまいります。

(引用終わり)

現場でこれをみて、「同音異義語のひっかけで誤りではないか」などと迷う人もいるかもしれない。
しかし、上記制約を知っていれば、そのような問題はまず出せないと気付く。
漢字に注釈を付せば、問題として成立しなくなるからである。
ちょっとしたことであるが、知っておくと現場で余計な悩みを持たずに済む。

以上が、今回の改正による変更点である。
結論的には、受験生に関係のある変更は、ないといってよい。
これまでどおり、勉強を続けていこう。

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