最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

1.平成18年法律第69号(以下「改正法」という。)による改正後の薬事法(以下「新薬事法」という。)の施行に伴い制定された平成21年厚生労働省令第10号(薬事法施行規則等の一部を改正する省令。平成21年2月6日公布,同年6月1日施行。以下「改正省令」という。その施行前に,平成21年厚生労働省令第114号(改正省令の一部を改正する省令。同年5月29日公布・施行。以下「再改正省令」という。)により,附則に経過措置が追加されている。)により,薬事法施行規則に,薬局開設者又は店舗販売業者が当該薬局又は店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売又は授与(以下「郵便等販売」という。改正省令による改正後の薬事法施行規則(以下「新施行規則」という。)1条2項7号参照)を行う場合は第一類医薬品及び第二類医薬品(以下「第一類・第二類医薬品」と総称する。)の販売又は授与は行わない旨の規定並びに第一類・第二類医薬品の販売又は授与及び情報提供は有資格者の対面により行う旨の規定(15条の4第1項1号(142条において準用する場合を含む。),159条の14,159条の15第1項1号,159条の16第1号並びに159条の17第1号及び同条2号。以下「本件各規定」と総称する。)が設けられたことについて,医薬品のインターネットによる通信販売(以下「インターネット販売」という。)を行う事業者である原告らが,改正省令は,新薬事法の委任の範囲外の規制を定めるものであって違法であり,インターネット販売について過大な規制を定めるものであって憲法22条1項に違反し,制定手続も瑕疵があって違法であり,無効である等として,@原告らが第一類・第二類医薬品につき郵便等販売をすることができる権利(地位)の確認(以下「本件地位確認の訴え」という。)及びA改正省令中の薬事法施行規則に本件各規定を加える改正規定(以下「本件改正規定」という。)が無効であることの確認(以下「本件無効確認の訴え」という。)を求めるとともに,予備的に,B本件改正規定の取消し(以下「本件取消しの訴え」という。)を求めている事案(上記@及びAは単純併合の請求,上記Bは同各請求の予備的請求)である(なお,以下,本件各規定における第一類・第二類医薬品の郵便等販売に係る上記内容の規制を「本件規制」という。)。

2.関係法令の定め

(1) 新薬事法及び改正法附則

ア.新薬事法

(ア) 一般用医薬品の区分

 一般用医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)は,次のように区分する(36条の3第1項)。

@ 第一類医薬品 (a)その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの及び(b)その製造販売の承認の申請に際して14条8項1号に該当するとされた医薬品(既に製造販売の承認を与えられている医薬品と,有効成分,分量,用法,用量,効能,効果等が明らかに異なるとされた医薬品)であって当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの(同項1号)

A 第二類医薬品 その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第一類医薬品を除く。)であって厚生労働大臣が指定するもの(同項2号)

B 第三類医薬品 第一類・第二類医薬品以外の一般用医薬品(同項3号)

(イ) 一般用医薬品の販売に従事する者

 薬局開設者,店舗販売業者又は配置販売業者は,厚生労働省令で定めるところにより,一般用医薬品につき,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に定める者に販売させ,又は授与させなければならない(36条の5)。

@ 第一類医薬品  薬剤師(同条1号)

A 第二類医薬品及び第三類医薬品  薬剤師又は登録販売者(同条2号)

(ウ) 情報提供等(薬局開設者又は店舗販売業者)

@ 薬局開設者又は店舗販売業者は,その薬局又は店舗において第一類医薬品を販売し,又は授与する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師をして,厚生労働省令で定める事項を記載した書面を用いて,その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない(36条の6第1項)。

A 薬局開設者又は店舗販売業者は,その薬局又は店舗において第二類医薬品を販売し,又は授与する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者をして,その適正な使用のために必要な情報を提供させるよう努めなければならない(同条2項)。

B 薬局開設者又は店舗販売業者は,その薬局若しくは店舗において一般用医薬品を購入し,若しくは譲り受けようとする者又はその薬局若しくは店舗において一般用医薬品を購入し,若しくは譲り受けた者若しくはこれらの者によって購入され,若しくは譲り受けられた一般用医薬品を使用する者から相談があった場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者をして,その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない(同条3項)。

C 上記@の規定は,医薬品を購入し,又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には,適用しない(同条4項)。

(エ) 情報提供等(配置販売業者)

@ 配置販売業者は,その業務に係る都道府県の区域において第一類医薬品を配置する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の配置販売に従事する薬剤師をして,厚生労働省令で定める事項を記載した書面を用いて,その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない(36条の6第5項において読み替えて準用する同条1項)。

A 配置販売業者は,その業務に係る都道府県の区域において第二類医薬品を配置する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の配置販売に従事する薬剤師又は登録販売者をして,その適正な使用のために必要な情報を提供させるよう努めなければならない(36条の6第5項において読み替えて準用する同条2項)。

B 配置販売業者は,配置販売によって一般用医薬品を購入し,若しくは譲り受けようとする者又は配置した一般用医薬品を使用する者から相談があった場合には,厚生労働省令で定めるところにより,医薬品の配置販売に従事する薬剤師又は登録販売者をして,その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない(36条の6第5項において読み替えて準用する同条3項)。

C 上記@の規定は,医薬品を購入し,又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には,適用しない(36条の6第5項において準用する同条4項)。

イ.改正法附則(経過措置)

(ア) 一般販売業に関する経過措置

@ 改正法の施行の際現に改正法による改正前の薬事法(以下「旧薬事法」という。)26条1項の一般販売業の許可を受けている者(以下「既存一般販売業者」という。)については,改正法の施行の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日(平成24年5月31日)までの間は,新薬事法26条1項の店舗販売業の許可を受けないでも,引き続き既存一般販売業者に係る業務を行うことができる(改正法附則2条前段)。

A 上記@の規定により引き続きその業務を行う既存一般販売業者については,その者を新薬事法26条1項の店舗販売業の許可を受けた者とみなして,前記ア(イ)及び(ウ)の規定を適用する(改正法附則3条)。

(イ) 配置販売業に関する経過措置

@ 改正法の施行の際現に旧薬事法30条1項の配置販売業の許可を受けている者(以下「既存配置販売業者」という。)については,新薬事法30条1項の配置販売業の許可を受けないでも,引き続き既存配置販売業者に係る業務を行うことができる。この場合において,旧薬事法30条1項の規定は,薬事法24条2項の許可の更新については,なおその効力を有する(改正法附則10条)。

A 上記@の規定により引き続き業務を行う既存配置販売業者については,その者を新薬事法30条1項の配置販売業の許可を受けた者とみなして,前記ア(イ)及び(エ)の規定を適用する。この場合において,同(イ)A並びに(エ)A及びBの規定中「登録販売者」とあるのは,「既存配置販売業者の配置員」とする(改正法附則11条1項)。

(ウ) 特例販売業に関する経過措置

 改正法の施行の際現に旧薬事法35条の特例販売業の許可を受けている者は,当分の間,従前の例により引き続き当該許可に係る業務を行うことができる(改正法附則14条)。

(2) 新施行規則及び改正省令附則

ア.新施行規則

(ア) 郵便等販売の方法等

 薬局開設者は,郵便等販売を行う場合は,次に掲げるところにより行わなければならない(15条の4第1項)。

@ 第三類医薬品以外の医薬品を販売し,又は授与しないこと(同項1号)。

A (略)(同項2号,3号)

(イ) 店舗販売業者については,上記(ア)の規定を準用する(142条)。

(ウ) 薬剤師又は登録販売者による医薬品の販売等

@ 薬局開設者,店舗販売業者又は配置販売業者は,前記(1)ア(イ)の規定により,第一類医薬品については,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に,自ら又はその管理及び指導の下で登録販売者若しくは一般従事者をして,当該薬局若しくは店舗又は当該区域における医薬品を配置する場所(医薬品を配置する居宅その他の場所をいう。)(以下「当該薬局等」という。)において,対面で販売させ,又は授与させなければならない(159条の14第1項)。

A 薬局開設者,店舗販売業者又は配置販売業者は,前記(1)ア(イ)の規定により,第二類医薬品又は第三類医薬品については,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に,自ら又はその管理及び指導の下で一般従事者をして,当該薬局等において,対面で販売させ,又は授与させなければならない。ただし,薬局開設者又は店舗販売業者が第三類医薬品を販売し,又は授与する場合であって,郵便等販売を行う場合は,この限りでない(同条2項)。

(エ) 一般用医薬品に係る情報提供の方法等

@ 薬局開設者又は店舗販売業者は,前記(1)ア(ウ)@の規定による情報の提供を,次に掲げる方法により,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に行わせなければならない(159条の15第1項)。

a 当該薬局又は店舗内の情報提供を行う場所において,対面で行わせること(同項1号)。

b 医薬品を購入し,又は譲り受けようとする者における当該医薬品の使用が適正なものであること又は不適正なものとならないことを確認するための質問又は説明を行わせること(同項2号)。

A 前記(1)ア(ウ)@の厚生労働省令で定める事項は,次のとおりとする(同条2項)。

a 当該医薬品の名称(同項1号)

b 当該医薬品の有効成分の名称及びその分量(同項2号)

c 当該医薬品の用法及び用量(同項3号)

d 当該医薬品の効能又は効果(同項4号)

e 当該医薬品に係る使用上の注意のうち,保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項(同項5号)

f その他当該医薬品を販売し,又は授与する薬剤師がその適正な使用のために必要と判断する事項(同項6号)

(オ) 薬局開設者又は店舗販売業者は,前記(1)ア(ウ)Aの規定による情報の提供を,次に掲げる方法により,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に行わせるよう努めなければならない(159条の16)。

@ 当該薬局又は店舗内の情報提供を行う場所において,対面で行わせること(同条1号)。

A 医薬品を購入し,又は譲り受けようとする者における当該医薬品の使用が適正なものであること又は不適正なものとならないことを確認するための質問又は説明を行わせること(同条2号)。

B 上記(エ)Aに掲げる事項について説明を行わせること(同条3号)。

(カ) 薬局開設者又は店舗販売業者は,前記(1)ア(ウ)Bの規定による情報の提供を,次に掲げる方法により,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に行わせなければならない(159条の17)。

@ 第一類医薬品の情報の提供については,当該薬局又は店舗内の情報提供を行う場所において,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に対面で行わせること(同条1号)。

A 第二類医薬品又は第三類医薬品の情報の提供については,当該薬局又は店舗内の情報提供を行う場所において,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に対面で行わせること(同条2号)。

B 医薬品の使用に当たり保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項について,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に説明を行わせること(同条3号)。

イ.改正省令附則(郵便等販売に関する経過措置)

 次の(ア)ないし(カ)の経過措置の規定は,いずれも,再改正省令によって改正省令の制定後・施行前に同省令の附則に加えられたものである。

(ア) 店舗販売業者が,薬局及び店舗販売業の店舗が存しない離島に居住する者に対して郵便等販売を行う場合においては,平成23年5月31日までの間は,前記ア(イ)において準用する同(ア)の規定の適用については,同(ア)@の規定中「第三類医薬品」とあるのは,「第二類医薬品又は第三類医薬品」とする(改正省令附則23条2項)。

(イ) 上記(ア)に規定する場合において,薬局開設者又は店舗販売業者は,同(ア)の規定により医薬品を販売し,又は授与したときは,遅滞なく,その販売又は授与の相手方の氏名,住所,連絡先及び当該医薬品の名称その他必要な事項を記載した記録を作成し,その作成の日から3年間保存しなければならない(改正省令附則23条3項)。

(ウ) 薬局開設者又は店舗販売業者が,上記(ア)の規定により第二類医薬品の郵便等販売を行う場合においては,平成23年5月31日までの間は,前記ア(ウ)Aの規定の適用については,同Aただし書の規定中「第三類医薬品」とあるのは「第二類医薬品又は第三類医薬品」とし,前記ア(オ)の規定の適用については,同(オ)@の規定中「当該薬局又は店舗10内の情報提供を行う場所において,対面で」とあるのは「電話その他の方法により」とする(改正省令附則26条)。

(エ) 薬局開設者又は店舗販売業者に,薬局及び店舗販売業の店舗が存しない離島に居住する者であって,その薬局若しくは店舗において第二類医薬品若しくは第三類医薬品を購入し,若しくは譲り受けようとするもの又はその薬局若しくは店舗において第二類医薬品若しくは第三類医薬品を購入し,若しくは譲り受けたもの若しくはこれらの者によって購入され,若しくは譲り受けられた第二類医薬品若しくは第三類医薬品を使用するものから相談があった場合においては,平成23年5月31日までの間は,前記ア(カ)の規定の適用については,同(カ)Aの規定中「当該薬局又は店舗内の情報提供を行う場所において,医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に対面で」とあるのは,「医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に電話その他の方法により」とする(改正省令附則27条)。

(オ) 既存一般販売業者又は既存薬種商等(店舗販売業の許可を受けた者を含む。以下同じ。)が,この省令の施行前に当該既存一般販売業者又は既存薬種商等から購入し,又は譲り受けた第二類医薬品をこの省令の施行の際現に継続して使用していると認められる者に対して,当該医薬品と同一の医薬品の郵便等販売を行う場合(当該店舗の薬剤師又は登録販売者が電話その他の方法により当該医薬品を購入し,又は譲り受ける者から前記(1)ア(ウ)Aの規定による情報の提供を要しない旨の意思を確認し,かつ,同規定による情報の提供を行う必要がないと判断した場合に限る。)においては,平成23年5月31日までの間は,前記ア(イ)において準用する同(ア)の規定の適用については,同(ア)@の規定中「第三類医薬品」とあるのは,「第二類医薬品又は第三類医薬品」とする(改正省令附則28条2項)。

(カ) 既存一般販売業者又は既存薬種商等は,上記(オ)の規定により医薬品を販売し,又は授与したときは,遅滞なく,その販売又は授与の相手方の氏名,住所,連絡先及び当該医薬品の名称その他必要な事項を記載した記録を作成し,その作成の日から3年間保存しなければならない(改正省令附則28条3項)。

3.前提事実

(1) 当事者

ア.原告P1株式会社(以下「原告P1」という。)は,医薬品その他の各種商品の販売,通信販売業等を目的とする株式会社であり,旧薬事法26条1項の一般販売業の許可を得た医薬品の既存一般販売業者(改正法附則2条)である。
 原告P1は,改正法の施行前,同原告のインターネットサイトを通じて,医薬品,健康食品,日用品等を販売していた。

イ.原告有限会社P2(以下「原告P2」という。)は,医薬品その他の各種商品の販売等を目的とする特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律3条2項)であり,旧薬事法26条1項の一般販売業の許可を得た医薬品の既存一般販売業者(改正法附則2条)である。
 原告P2は,改正法の施行前,P3というインターネットサイト内に開設した同原告のウェブページを通じて,医薬品,化粧品,健康食品等を販売していた。

(2) 改正法による薬事法の改正に至る経緯

ア.厚生労働大臣の諮問機関である厚生科学審議会は,平成16年4月,厚生労働大臣から,医薬品のリスク等の程度に応じて,専門家が関与し,適切な情報提供等がされる実効性のある制度を構築するための医薬品販売の在り方全般の見直しについて諮問を受け,その調査審議を行うため,同審議会の下に,関係各界の専門家・有識者等を委員とし,厚生労働省担当官らを事務局とする「医薬品販売制度改正検討部会」(以下「検討部会」という。)を設置した。厚生科学審議会は,検討部会において,同年5月14日から平成17年12月15日までの約1年半余にわたり,23回の部会を開催して検討を行い,また,平成16年10月に検討部会の下に設置された関係各界の専門家等を委員とする「医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会」(以下「専門委員会」という。)が平成16年10月22日から平成17年11月14日までに12回の委員会を開催して行った検討の結果も踏まえ,同年12月15日,検討部会の検討結果として「医薬品販売制度改正検討部会報告書」(以下「検討部会報告書」という。)を取りまとめ,厚生労働大臣に報告するとともに,公表した。

イ.上記アの報告を受けて,厚生労働省において,同報告書の内容を踏まえ,薬事法の一部を改正する法律案(改正法の法律案。以下「改正法案」という。)の立案作業が行われ,平成18年3月7日,閣議決定を経て第164回国会に改正法案が提出され,同国会における審議を経て,同年6月8日に修正なく可決成立した。

ウ.平成18年6月14日,改正法が平成18年法律第69号として公布され,その後の政令による施行期日の定めにより平成21年6月1日から改正法が施行され,これにより,薬事法に36条の3,36条の5,36条の6等の規定が新設された。

(3) 改正省令による薬事法施行規則の改正に至る経緯

ア.平成20年2月1日,一般用医薬品のリスクの程度に応じて,専門家が関与し,販売時の情報提供等が適切に行われる等,国民からみて分かりやすく,かつ,実効性のある販売制度を構築することにより,医薬品の適切な選択及び適正な使用に資することを目的とする改正法の趣旨に照らし,平成21年中の施行が予定されている新薬事法において規定された販売の体制や環境の整備を図るために必要な省令等の制定に当たって必要な事項を検討するため,関係各界の専門家・有識者等を構成員とし,厚生労働省担当官らを事務局とする「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」(以下「第一次検討会」という。)が設けられることとされた。

イ.第一次検討会は,平成20年2月8日から同年7月4日までの約半年にわたり8回の検討会を開催し,同日,省令(薬事法施行規則)の改正の在り方等に関する第一次検討会の検討結果として,「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会報告書」(以下「第一次検討会報告書」という。)を取りまとめ,厚生労働大臣に報告するとともに,公表した。

ウ.上記イの報告を受けて,厚生労働省において,同報告書の内容を踏まえ,薬事法施行規則等の一部を改正する省令案(改正省令の省令案。以下「改正省令案」という。)の立案作業が行われ,厚生労働省は,平成20年9月17日,「「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見の募集について」との表題で改正省令案の概要を示し,これに対する意見公募手続(パブリックコメント)を行った。

エ.厚生労働省は,上記ウの意見募集を経て,同ウの改正省令案の立案作業を進め,平成21年2月6日,その意見公募手続の結果等を公表した。

オ.平成21年2月6日,改正省令(薬事法施行規則等の一部を改正する省令)が平成21年厚生労働省令第10号として公布され,同年6月1日(改正法の施行日)から施行され,これにより,薬事法施行規則に本件各規定が新設された。

(4) 新薬事法並びに改正省令及び再改正省令の施行に至る経緯

ア.平成21年2月13日,改正法の全面施行を同年6月1日に控え,新制度の下,国民が医薬品を適切に選択し,かつ,適正に使用することができる環境づくりのために国民的議論を行うことを目的として,厚生労働大臣の指示により,関係各界の専門家・有識者等を構成員とする「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」(以下「第二次検討会」という。)が設けられることとされた。

イ.第二次検討会は,平成21年2月24日から同年5月22日までの間に7回の検討会を開催するなどして,改正法に基づく医薬品の新販売制度の円滑な施行のための方策を検討した。

ウ.上記イの検討の結果等を踏まえ,厚生労働省において,改正省令の一部を改正する省令案(再改正省令の省令案。以下「再改正省令案」という。)の立案作業が行われ,平成21年5月12日,厚生労働省は,「「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」に関する意見の募集について」との表題で再改正省令案の概要を示し,同月18日を締切日として,これに対する意見公募手続(パブリックコメント)を行い,再改正省令案の立案作業を進めた。

エ.平成21年5月29日,再改正省令(改正省令の一部を改正する省令)が平成21年厚生労働省令第114号として公布され,改正法及び改正省令の施行に先立ち同日から施行され,これにより,改正省令附則に前記2(2)イ(ア)ないし(カ)の郵便等販売に関する経過措置の規定等が加えられた。

オ.平成21年6月1日,改正法及び改正省令が施行された。

(5) 本件訴訟の提起原告らは,平成21年5月25日,本件訴えを提起した。

4.争点

(1) 本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えの適法性(本案前の争点)

(2) 本件改正規定の適法性・憲法適合性(本案の争点)

ア.委任命令としての適法性

イ.本件規制の憲法適合性

ウ.省令制定手続の適法性

(次回へ続く)

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