最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【判旨】

4.争点(2)イ(本件規制の憲法適合性)について

(1) 職業活動としての営業は,本質的に社会的かつ経済的な活動であって,その性質上,社会的相互関連性が大きいものであるから,憲法22条1項において保障される営業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,殊にいわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,同項の規定においても,特に「公共の福祉に反しない限り」という留保が明記されている。このように,営業は,それ自身のうちに何らかの制約の必要性が内在する社会的かつ経済的な活動であるところ,その種類,性質,内容,社会的意義や影響が極めて多種多様であるため,その規制を要求する社会的理由ないし目的も千差万別で,その重要性も区々にわたり,これに対応して,現実に営業の自由に加えられる制限としての規制措置も,それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるので,当該規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは,これを一律に論ずることができず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される営業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして,上記のような検討と考量をするのは,第一次的には立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の権限と責務であり,その憲法適合性の司法審査に当たっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については,上記立法機関の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り,立法政策上の問題としてこれを尊重すべきであるが,その合理的裁量の範囲については,事の性質上おのずから広狭があり得るのであって,裁判所は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして,これを決すべきものといわなければならない(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)。

(2) 改正法及び改正省令の規定内容並びに改正法案に係る衆参両院の本会議における各院厚生労働委員会の審議結果の報告(事案6(5)キ及び同コ)及び厚生労働大臣の趣旨説明の内容(事案6(5)イ)等によれば,本件規制の目的は,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保し,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止することであると認められる(被告の主張に係るセルフメディケーションの進展を踏まえた医薬品に関する適切な情報の提供による知識の普及等の要素も,究極的には上記の目的に収れんされる事柄であると解される。)。そして,事案6(2)ウのとおり,一般用医薬品の副作用被害の事例が死亡等の重大な結果をもたらした事例を含めて多数発生していること,同クのとおり,一般用医薬品を起因物質とする中毒の相談が多数あることに加え,改正法案の国会審議並びに同法案及び改正省令の立案の過程において,薬害被害者の団体や消費者団体等から薬害・副作用被害の防止のための販売方法及び情報提供に係る規制の強化を求める強い要望が寄せられていたこと(国会審議におけるP11のP44参考人の意見陳述(事案6(5)オ(ウ))及び複数の議員の質問中の意見(同エ(ア),カ(イ)),検討部会におけるP11のP12委員の意見(事案6(3)イ),同団体の他の役員の講義中の意見(同ケ)及び他の薬害被害者団体の役員の意見陳述(同タ)並びにP17連盟の意見陳述人の意見陳述(同ウ),第一次検討会におけるP11のP12委員(同(6)オ)及びP56会のP57委員(同オ)の意見,薬害被害者団体等からの要望書及びP15等からの声明書(同ス)等)を併せ考慮すれば,この規制の目的は公共の福祉に合致するものであるということができる。

(3)ア.そこで,上記規制目的のために採られた規制手段としての本件規制の性質についてみるに,本件規制は,薬局又は店舗販売業といった一般用医薬品の販売を行う業態が許可制になっていることを前提として,薬局又は店舗販売業の許可を得た者による第一類・第二類医薬品の販売において有資格者による対面での販売及び情報提供を義務付け,これに伴い,その販売方法から郵便等販売を除外するもので,それ自体としては,狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するものではなく,営業活動の態様に対する規制の範疇に属するものであると解される。
 原告らは,インターネット販売による医薬品販売業という職業を想定すべきであり,本件規制は,そのような職業の選択に関する制限である旨主張する(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(以下「原告ら主張イ」という。)(ア)a及びb)が,改正法及び改正省令の施行の前後を通じて,薬事法及びその関係法令(以下「薬事法令」という。)によれば,郵便等販売をすることができるのは薬局又は店舗販売業の許可を得ている者に限られている(新施行規則15条の4,142条参照)のであり,店舗を有しないインターネット販売専業の医薬品販売業といった営業形態は薬事法令上認められておらず,医薬品のインターネット販売という営業については,薬局又は店舗販売業の許可を得た者が一般用医薬品の郵便等販売を行うという薬事法令上認められている場合の販売方法の一態様として位置付けられているところ,薬局又は店舗販売業の許可を得た者は郵便等販売が認められなくなっても通常の販売方法による医薬品の販売ができなくなるわけではないから,本件規制は,その法的性質としては,営業活動の態様に対する規制であると解するのが相当である。原告らは,本件規制は,前掲最高裁昭和50年4月30日大法廷判決が職業選択の自由そのものに対する規制であるとした適正配置規制以上の規制であり,職業選択の自由そのものに対する規制と解すべきであると主張するが,上記最高裁判決の事例は,許可を得られないことにより薬局としての営業が全くできない場合であるのに対し,本件規制の場合は,薬局又は店舗において全区分の一般用医薬品を販売することが可能であり,上記のとおり,薬事法令上,インターネット販売は郵便等販売という販売方法の一態様であってそれ自体が独立した職業と位置付けられているものではないことからすれば,本件規制は上記最高裁判決の場合とは事例を異にし,同判決の適正配置規制以上の規制であるということもできない。
 もっとも,各種商品のインターネット販売を主要な事業内容とする業者が,医薬品のインターネット販売を目的として店舗販売業の許可を受け,医薬品の販売方法として,実際には通常の店舗における販売を行わず,専ら郵便等販売の一態様としてのインターネット販売を行っている場合に,当該業者としては,事実上,医薬品の販売に係る営業活動そのものを制限される結果となることを考慮すると,上記のとおり本件規制はその法的性質としては営業活動の態様に対する規制ではあるものの,上記の業態の業者に関する限り,当該規制の事実上の効果としては,規制の強度において比較的強いものということができる。

イ.そして,本件規制の目的は,上記(2)のとおり,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保することにより,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止することであるところ,本件規制は,この目的のために,上記アのとおり,副作用の危険性が相対的に高い第一類・第二類医薬品について,薬局又は店舗販売業の許可を得た者によるこれらの医薬品の販売において有資格者の対面による販売及び情報提供を義務付け,これに伴い,その販売方法から郵便等販売を除外するものであって,規制の目的との関係においては,これと直接の関連性を有する規制の方法であるというべきである。
 他方,本件規制は,自由な営業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的・警察的な目的による規制措置であり,また,その規制の方法は,第三類医薬品の販売についてはその販売方法から郵便等販売を除外していないものの,第一類・第二類医薬品の販売に関する限り,例外を許さない一律の制限を内容とするものであることなどによれば,規制の強度において比較的強いものということができる。

ウ.そこで,本件規制の憲法適合性の判断においては,前記(1)の観点から,本件規制の上記ア及びイのような性質を前提として,本件規制を規制手段とした前記(1)の立法機関の判断がその合理的裁量の範囲を超えるものであるか否かを検討する必要があるところ,その検討に際して代替的な規制手段との対比を考慮するに当たっては,本件規制の規制内容が前示のとおり一般用医薬品の副作用による健康被害(薬害)の防止という国民の生命・身体の安全に直結する事柄であり,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用が確保されない結果としてひとたび副作用による健康被害(薬害)が発生すればその被害者に償うことのできない重大な損害が発生する危険性が高いことを踏まえて検討すべきものと解するのが相当であり,以下,このような見地から,本件規制の憲法適合性について検討する。

(4)ア(ア) 新施行規則中の本件各規定による本件規制の内容は,薬局開設者又は店舗販売業者による一般用医薬品の販売における情報提供(医薬品の適正な使用のために必要な情報の提供)及び販売の方法に関して,(あ)@159条の15において,薬剤師が第一類医薬品を販売する際には,書面を用いて対面で情報提供を行う義務を負うものとされ,A159条の16において,薬剤師又は登録販売者が第二類医薬品を販売する際には,対面で情報提供を行う努力義務を負うものとされ,B159条の17において,購入者等からの相談に応じ,第一類医薬品については薬剤師が,第二類及び第三類医薬品については薬剤師又は登録販売者が情報提供を行う義務を負うものとされ,(い)159条の14において,第一類医薬品については薬剤師,第二類医薬品及び第三類医薬品(第三類医薬品の郵便等販売を行う場合を除く。)については薬剤師又は登録販売者が,当該薬局又は店舗において対面で販売する義務を負うものとされ(ただし,薬剤師は,第一類医薬品を自ら販売するほか,その指導及び管理の下で登録販売者又は一般従事者に販売させることもでき,薬剤師又は登録販売者は,第二類医薬品及び第三類医薬品を自ら販売するほか,その指導及び管理の下で一般従事者に販売させることもできる。),これらの規制に伴う帰結として,(う)15条の4において,一般用医薬品の郵便等販売を行う場合は,第一類医薬品又は第二類医薬品の販売を行わないこと等とされており,このように,一般用医薬品の販売に当たっては,第三類医薬品の販売の場合を除き,対面による情報提供の義務又は努力義務が課され,第三類医薬品の郵便等販売の場合を除き,対面による販売が義務付けられ,また,すべての一般用医薬品について相談応需義務が課されることになる。

(イ) 改正省令により新施行規則に本件各規定が加えられた経緯については,前記3(3)イ(う)及び(え)並びに同(4)エのとおり,@厚生科学審議会の審議結果である検討部会報告書には,医薬品の販売については,対面販売が原則であることから,情報通信技術を活用した医薬品の販売には慎重に対応すべきであるとした上,第一類医薬品については,対面販売とすべきであり,情報通信技術を用いた販売を認めることは適当ではない旨,第三類医薬品については,一定の要件で通信販売を認めざるを得ない旨記載され,各区分の医薬品のいずれについて対面販売を義務付け,その結果として販売方法から郵便等販売を除外するかが,法令改正の対象事項として掲記される一方で,第二類医薬品についてはその結論が留保されており,検討部会では,薬害被害者団体の委員を含む多数の委員及び薬害被害者団体の役員である講師により,副作用による健康阻害の防止の観点から,一般用医薬品について有資格者の対面による販売及び情報提供を行うのが原則であり,対面によらないインターネット販売を認めることには消極である旨の意見が述べられていた(前記3(4)エ(b)@)こと,A国会審議でも,質疑において議員から同様の意見が述べられ(事案6(5)エ(イ)),P11のP44参考人から,インターネット販売の規制について政省令で定めるべきである旨の意見陳述がされ(同オ(ウ)),参考人であるP10部会長からも,質疑において対面販売が望ましいとの見解の表明がされ(同(エ)),厚生労働省の医薬食品局長からは,医薬品の販売における対面販売の重要性を強調した上,インターネット販売について検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要である旨の答弁(同エ(イ),ケ)や,指定第二類医薬品についてオーバー・ザ・カウンターを義務付けるべきではないかとの質問に対し,法案成立後に検討する旨の答弁がされ(同エ(ア)),厚生労働大臣からも,第一類医薬品のインターネット販売を制限すべきではないかとの質問に対し,法改正後については,改正後の薬事法において,第一類医薬品を販売する場合には,省令で定めるところにより,薬剤師が所要の情報提供をしなければならないものとされていて,これに基づき対面販売により情報提供することを求めるという方向性になっており,その定めの違反は行政処分による強制力のある取締りの対象となり,従来は通知に基づく行政指導がされてきたインターネット販売はその取締りの対象となる旨の答弁(同カ(ウ))や,指定第二類医薬品についても,医薬食品局長と同旨の法案成立後に関係者の意見を詰めていきたい旨の答弁がされているところ,前記3(3)イ(あ)の趣旨説明を踏まえたこれらの答弁及び説明・意見に対し,特に異論が出たことは認められず,改正法案が原案どおり可決されたこと,Bその後の第一次検討会においても,当初は,第三類医薬品も含めてインターネット販売を全面的に禁止すべきとの意見もあったところ(事案6(6)エ,オ),P11のP12委員(同オ)及びP56会のP57委員(同オ)から,第一類・第二類医薬品について通信販売を禁止すべきとの意見が述べられており,第一次検討会報告書には,医薬品の販売に当たって専門家が対面によって情報提供することが原則であることから,販売時の情報提供に情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきであり,第一類医薬品については,情報通信技術を活用した情報提供による販売は適当ではなく,登録販売者制度の導入に伴い,時間帯にかかわらず専門家が対面により確実に情報提供が行われる体制を求めるべきで,テレビ電話を活用した販売も一定の猶予期間後は廃止すべきであって,通信販売も,情報通信技術を活用する場合は,販売時に情報提供を対面で行うことが困難であることから,販売時の情報提供に関する規定がない第三類医薬品を販売することを認めることが適当であり,販売時の情報提供を行うことが努力義務となっている第二類医薬品については,販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り,販売することを認めることは適当ではない旨記載されており(事案6(6)ケ),その意味については,事務局から,上記の場合に対面の原則を担保できる方法は現在のところないが,何かアイディアがあれば個別に判断していく趣旨である旨の説明があったこと(同ク)に照らすと,新施行規則中の本件各規定は,これらの改正法及び改正省令の立案過程における厚生科学審議会(検討部会),国会審議及び第一次検討会での議論において,一般用医薬品の販売方法の規制に関しては,一定の範囲で医薬品の区分に応じた郵便等販売の制限につき法案成立後に行政立法によって規制内容の具体化を図ることとされ,特に副作用の危険の高い第一類医薬品について有資格者の対面による情報提供及び販売を義務付けてその販売方法から郵便等販売を除外すべきことを明記した上で第二類医薬品については結論を留保した検討部会報告書の審議結果を基礎としつつ,その後の国会審議及び第一次検討会での議論において,薬害被害者団体や消費者団体の関係者等から,一般用医薬品の副作用被害のリスクへの強い懸念と現在の本邦における消費者一般の副作用に関する意識・認識の実情等を踏まえて広範囲の医薬品につき通信販売の禁止を求める意見が強く主張されたこと等を踏まえ,最終的には,比較的副作用の危険が少ない第三類医薬品を除いて,相応に副作用の危険のある第二類医薬品についても,有資格者の対面による情報提供の努力義務及び対面による販売の義務を課し,その帰結として,その販売方法から郵便等販売を除外することとされたものと解される。

(ウ) そして,改正省令により新施行規則に本件各規定が設けられ,上記(ア)の内容の本件規制が定められた実質的な理由については,@事案6(2)ウのとおり,一般用医薬品の副作用による健康被害は,重大な結果を伴うもの(死亡事例など)を含めて現に多数生じており(原告らは,一般用医薬品については副作用が発生してもそれほど深刻なものではなく,副作用のリスクは決して大きくはないと主張する(原告ら主張イ(ウ)b)が,事案6(2)ウの認定に係る死亡事例を含む重篤又は中等度の症例及びそのリスクの深刻さ並びに報告件数の多さを看過し,客観的状況に係る認識の欠如を示すものであり,失当である。),その中には薬剤師等の有資格者から十分な情報提供が行われていれば防止することが可能であったものが相当数含まれていること(原告らは,販売段階での情報提供があっても発症が避けられない副作用も多い旨主張し(原告ら主張イ(ウ)b),その例として甲第114号証(医薬品・医療用具等安全性情報)及び第115号証(重篤副作用疾患別対応マニュアル・間質性肺炎)を提出するが,そのような副作用でも,適切な情報提供が行われることによって,早期に対応を採ることができ,副作用を軽微なものにとどめることができるのであるから(事案6(3)イのP14委員(大学医学部教授・薬剤部長)の発言参照),原告らが主張するような副作用についても販売時の適切な情報提供の必要性は失われない。),A他方,検討部会におけるP17連盟の意見陳述人の発言(同ウ)のとおり,事案6(2)オの調査結果にみられるように,消費者一般に一般用医薬品の副作用の危険性に関する意識・認識が十分でない傾向が我が国の現在の実情であるとされており(P15のP16委員(事案6(3)キ)の発言も同旨),現に,P33会の意見陳述人の発言(同タ)のとおり,一般用医薬品の副作用による薬害患者には,添付文書を読まずに服用して発症した者も多いことや薬店で売っているからそれほど強い薬ではないだろうと思っていた者がいることに加え,事案6(2)カ(ア)の調査結果のとおり,一般用医薬品の添付文書について分かりにくいとの意見が少なくないこと,B同カ(イ)の調査結果のとおり,消費者の間には一般用医薬品の薬局又は店舗での購入に際して薬剤師からの情報提供を求める意見も多いところ,検討部会におけるP11のP12委員(事案6(3)オ),P19のP20委員(同キ),大学医学部教授のP26委員(同セ),大学薬学部教授のP30専門委員(同セ)及びP27協会のP28委員(同セ)の各指摘のとおり,添付文書又は外箱の注意書き等の単なる一方的な書面等の記載によるのでは内容・趣旨が十分に伝わらないことが多く,説明の実効性に限界があるといった実情があり,このような実情を踏まえ,一般用医薬品の安全性を確保するためには,単に添付文書や外箱の表示を充実させるなど,医薬品及びその使用の適否に関する情報提供の要否及び内容について購入者の意思・判断にゆだねるのではなく,副作用の危険が比較的低い医薬品を除いては,販売者側において,有資格者が自ら直接に購入者と対面した上で,購入者の年齢,性別,体格,その他身体上の特徴,顔色,表情等の外見や行動,態度,しぐさ等を直接視認するとともに,それを踏まえて購入者に質問をし,その回答に応じて更に質問を重ねるなど能動的・双方向的な対話を通じて所要の事項を聴取し,併せて購入者の声質や口調などを聞くこと等を通じて,購入者側の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断することが必要であり,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止するためには購入上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先させる必要があるとの考慮の下に(購入上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先させて副作用による健康被害を防止すべきことは,国会審議において,議員自身の薬害被害経験を踏まえた意見(事案6(5)エ(ア))及びP11のP44参考人(同オ(エ))の意見があったほか,検討部会等においても,P11のP12委員(事案6(3)タ),P63のP64委員(同(7)エ),P15のP16委員(同(3)イ)及び大阪府健康福祉部薬務課の意見陳述人(同タ)の各発言等で繰り返し述べられ,それらに対する異論は出されなかった。),上記のような情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断を可能とするために必要かつ実効的な手段として有資格者の対面による販売を義務付けたものと解するのが相当である。

イ(ア) そして,副作用による健康被害を防止するための一般用医薬品に係る有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断の実効性の観点から,有資格者の対面による販売と,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売とを比較検討するに,後者の販売方法については,(a)@一般に,購入者がインターネットの画面上で自分の症状等に合うと思われる種類の一般用医薬品を検索してその内容等を確認し,画面に表示される商品を購入する旨の申込みボタンをクリックして購入申込みをすると,若干の画面操作を経て売買契約が成立し,販売者から購入者に商品が郵送されるという方法であるところ,これに加えて,A原告P1のインターネット販売の実施例では,画面上で検索された一般用医薬品について,当該商品及びその禁忌事項に関する質問の画面が表示され,その質問の回答欄へのクリックの過程で禁忌事項に該当すれば次の画面に進めず売買契約が成立しない上,禁忌事項に該当しない場合でも,画面に注意事項が表示され,その注意事項の内容を確認・了承の上で商品を購入する旨の申込みボタンをクリックしなければ購入申込みができない仕組みが採られているものと認められ,(b)さらに,これらに加えて,インターネット販売の業界による自主規制案として,@P4ガイドラインでは,ウェブサイト,電子メール,電話,ファクシミリ等の情報通信技術を通じて,販売者側が一定の事項について購入者の申出により確認し,必要に応じて購入者に質問するとともに,その購入者の申出又は購入者への質問に対する返答を中心として,薬剤師又は登録販売者(第一類医薬品は薬剤師)において情報提供又は相談応需を行うことが提案され(別紙の8,10,12ないし14,17,18及び20),AP4業界ルール案(事案6(7)イ)でも,上記@と同様の方法により有資格者による情報提供又は相談応需を行うことが提案されていることからすると,上記(a)@の方法に同(a)A及び上記(b)@の方法を加味した方法(一般的な方法に原告P1の実施例と業界自主規制案の内容を加味した方法)を,原告らが他に主張する添付文書及び外箱の記載の充実とともに,実現性のある代替的な規制手段の具体的な内容として,本件規制の規制方法である有資格者の対面による販売との比較検討をする必要があるものと解される(なお,上記(b)@の情報通信技術の手段については,別紙の14の例示に係るウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各手段による通常の形態を前提として検討し,その余の手段の可能性等については,後記カ(イ)において補充的に検討する。)。

(イ) そこで,以上を前提に検討するに,まず,対面による販売においては,販売に当たる有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等(購入者の年齢,性別,体格,その他身体上の特徴,顔色,表情等の外見や行動,態度,しぐさのほか,声質や口調等)を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことを通じて,販売者側が購入者側(購入者の家族・知人等が使用者である場合の当該家族・知人等を含む。以下同じ。)の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を的確に判断することを確保できる(なお,薬剤師又は登録販売者が情報提供を行うことが法律上認められ,受診の勧奨を行うことが前提とされている以上,薬剤師又は登録販売者がこのような行為を行うことが医師法に違反する違法な診断行為に該当するとはいえない。事案6(3)セの検討部会における医療行為との関係に関する議論参照)のに対し,インターネットを通じた購入申込みでは,購入者側の属性・状態等の把握について,有資格者が自ら直接に購入者の様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことが困難であり(ウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各方法を通じて,購入者の申出又は必要に応じた購入者への質問によってこれらを行うとしても,購入者の申出による場合は受動的に購入者からの自己申告を基礎とするほかなく,能動的にこれを引き出すことはできず,申告内容の真偽の確認も著しく困難であるし,購入者への質問も購入者の様子等を見聞きしないでその要否・内容を判断することは著しく困難と考えられ,いずれも実効性に乏しい。),その難易及び実現可能性には相当の有意な差異があるものといわざるを得ない。この点に関し,原告らは,確認事項のチェックボックスを利用するなどして購入者から必要な情報の提供を受けることにより,販売者が必要な情報提供及び販売の適否の判断をすることができる旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))が,原告P1が実際に行っている購入者側の状況の把握のための画面にしても,P4ガイドライン(別紙の12及び28参照)及びP4業界ルール案等(事案6(7)イ,オ)の提案に係る仕組みにしても,購入者の自己申告が基本となっており,購入者が質問に真摯に対応し,質問の内容を正しく理解して正しく回答しなければ,購入者側の属性・状態等を的確に把握することはできないし,また,購入者が真摯にかつ誤りなく対応しているかどうかを販売者側で確認・把握することは困難であるといわざるを得ない(原告P1代表者も,第一次検討会において,よほどのことがない限り顧客の自己申告を信頼して販売することになることを認めている(事案6(6)カ)。)。
 そして,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることを担保するには,そのことについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に行われることが有効であると解されるところ,対面による販売では,勤務する薬剤師及び登録販売者は,その別と氏名を表示した掲示をした薬局又は店舗において,その別と氏名を名札で表示するなどし(新施行規則15条の15,別表第一の二,15条の2,142条),多数の購入者と対面して多数回にわたり直接のやり取りを行うことを要するものである以上,購入者への応対の相手方が有資格者であって,その有資格者が能動的・双方向的な聴取等を経て情報提供を懈怠なく適切に履行していることについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に担保される仕組みが確保されるものといえるが,インターネット販売では,購入者の申出又は必要に応じてウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各手段を通じて購入者と販売者側とのやり取りを行うことがあるとしても,その応対の相手方が真に有資格者であるかどうか及びその有資格者が所要のやり取り(画面上の表示に係る定型的な質問・確認事項に対し,選択肢から回答を選んだり確認のチェックボックスをクリックしたりすること等により収集される一般的な事項以外に個別に必要となる事柄に係るもの)を経て情報提供を懈怠なく適切に履行しているかどうかを購入者及び監督行政庁において確認することは,対面の場合と比較して著しく困難であるといわざるを得ない(事案6(3)ツのP21委員(大学院法学研究科教授)の発言参照)。そうすると,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることを購入者による確認及び行政上の監督によって担保することの実効性についても,インターネット販売は対面による販売に及ばず,両者の間には相当の有意な差異があるといわざるを得ず,インターネット販売を行う業者による対応策(原告P1の実施例)及び自主規制案(P4ガイドライン及びP4業界ルール案)の提案によっても,この差異を克服し得る方策が示されているとは認め難い。この点に関し,原告らは,対面による販売でも,名札の偽装等により情報提供の主体が有資格者であるかの確認は困難であり,インターネット販売でも,情報提供のルール作成,販売の適否の判断及び相談応需を担当する者を薬剤師として社内の勤務体制を作れば,無資格者による対応の防止として十分であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(X))が,名札の偽造及び無資格者の顧客応対の有無と上記社内体制の整備の適否とでは購入者による確認及び行政上の監督の難易に大きな差異があると考えられ,以上に説示したところによれば,上記主張を勘案しても,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることの購入者による確認及び行政上の監督による実効的な担保の観点から,対面による販売とインターネット販売との間に相当の有意な差異があることが否定されるものではないというべきである。

(ウ) 原告らは,医薬品の販売において,対面により購入者側の情報を的確に把握して適切な対応が採られることは例外的な場合であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))が,一般に,薬剤師等の有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者側の属性・状態等に係る情報を的確に把握することは,上記の過程を経ない場合と比べて,相当に容易であって実現可能性が高いものと考えられ,前示のとおり上記の過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保が困難であるインターネットを通じた購入申込みの場合には,上記の過程の確保が制度的に担保される対面による販売の場合との比較において,その難易及び実現可能性に相当の有意な差異・限界があることは否定できず,その結果,適切な対応が採られる可能性・確実性においても相当の有意な差異があることも否定できない。特に,インターネットを通じた購入申込みの場合に,購入者側からの禁忌事項等に関する情報提供は,原告P1が現に実施している方式及びP4業界ルール案によっても,禁忌事項に当たる場合に画面上でチェックをしてインターネットで返信する仕組みになっており,禁忌事項に当たらないことをすべて確認したのか,それとも禁忌事項を全く見ていないのか,禁忌事項の意味・内容を正しく理解しているのか(実際には禁忌事項に該当していても,文面との関係でそのことを認識していない可能性もある(事案6(7)カのP36委員(大学薬学部教授)及び事案6(3)ソのP20委員(P19)の発言参照)。)を返信内容のみから判断することはおよそできないし,また,注意事項を理解したかどうかをチェックして返信する仕組みを採る場合にも,実際に注意事項を読んで正しく理解したかどうかを返信内容のみから判断することは事実上困難である(仮に,画面を下までスクロールしなければチェックできないような仕組みになっていたとしても,同様である。)から,そのようなインターネットのシステム上の仕組みを設けることは,購入者側の自己責任を追及する手がかりとなり,販売者側の免責の根拠にはなり得るとしても,医薬品の副作用による健康被害を防ぐための措置として真に実効性のあるものとは認め難い。そして,この点は,前示のとおりの医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)等をめぐる本邦の現状(前記ア(ウ))の下で,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売について,購入者側の属性・状態等の的確な把握の難易及び実現可能性の観点から,これを確保し得ることが制度的に担保される有資格者の対面による販売との対比において,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることを困難にする点であるといわざるを得ない(なお,原告らは,インターネットを通じて医薬品の購入申込みをする者は元来相応に理解力の高い者であると主張する(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(ウ)c(a)(T))が,前示のとおりの消費者一般の副作用及び添付文書に関する意識・認識等の現状(前記ア(ウ))の下において,インターネットを通じて医薬品の購入申込みをしたことの一事をもって,直ちにその申込者のすべてが副作用及びこれに関する情報の重要性等についての意識・認識の高い者であるとは認め難く,この主張も上記の判断を左右するに足りるものとは認められない。)。

(エ) 次に,原告らは,販売者側の能力・資質を問題とする(原告ら主張イ(ウ)c(a)(U))が,薬剤師及び登録販売者は,所轄行政庁によって医薬品の販売に必要な免許又は資質の確認を受けた有資格者(薬剤師法,新薬事法36条の4)であり(なお,同条2項の政令は定めないものとされており,登録販売者は同条1項の試験に合格した者に限られる。),購入者と対面することを通じて,医薬品の効能・副作用に関する専門的知識を活用して,購入者側の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断すること(事案6(3)クのP23委員の指摘のように,マニュアルどおりではない受け答えをすることも含まれる。)に必要な能力・資質が制度的に担保されており(原告らの主張に係る不適切な対応の例が,これら有資格者の一般的な能力の欠如を示すものであることを認めるに足りる証拠はない。),しかも,対面による販売によって,購入者への応対の相手方がこれら有資格者であって,その有資格者が購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく情報提供を懈怠なく適切に履行していることについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に担保される仕組みが確保されることは上記(イ)で説示したとおりであり,また,登録販売者又は一般従事者が薬剤師の管理・指導の下で,一般従事者が薬剤師又は登録販売者の管理・指導の下で販売業務に従事する場合でも,これらの管理・指導に従って,購入者の希望する医薬品に係る情報提供又は販売の適否について何らかの問題があると判断した場合には,有資格者(第一類医薬品については薬剤師)による情報提供又は判断を行わせるべく当該購入者を当該有資格者に引き継ぎ又は当該有資格者の具体的な指示を求めることができるのであるから,有資格者による情報提供及び販売の適否の判断は実質的に確保されることになるのであり,有資格者が自ら直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行う過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保が困難であるインターネットによる購入申込みの場合とはその実効性に前示の有意な差異があるというべきである(上記(イ)及び(ウ)において説示したインターネット販売における質問・回答による購入者側の属性・状態等の的確な把握の困難性にかんがみると,原告らの主張に係るインターネット販売における質問項目の画一化の点(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(ウ)c(a)(T))を勘案しても,上記の判断が左右されるものとは解されない。)。

(オ) そして,原告らは,第二類医薬品については情報提供の努力義務が課されているにすぎないことを指摘する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(T))が,この場合でも,情報提供の努力義務を課する前提として,販売自体は対面によることが義務付けられているのであり,対面による購入申込みを受けた医薬品の販売について問題があると考えられた場合には,有資格者が販売業務の従事者であるときは自ら必要な情報提供をし,有資格者以外の者が販売業務の従事者であるときは情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断のため有資格者に引き継ぎ又は有資格者の具体的な指示を求めることを要求するのが第二類医薬品における情報提供の努力義務の趣旨であると考えられ,この点についての違反を理由として罰則又は行政処分を課することは困難であるとしても,努力義務を課していることには販売者に情報提供の必要性を認識させる点で重要な意味があり,第二類医薬品について情報提供が努力義務とされていることの一事をもって,対面による販売の趣旨が失われているとはいえないし,情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断する上での端緒となる情報の把握等において前示の難点のあるインターネットによる購入申込みとの対比においてより実効性の高いものというべきである。

(カ) さらに,原告らは,新薬事法36条の6第4項において,第一類医薬品に係る情報提供義務について,購入者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には情報提供義務が免除されていることからすれば,対面による販売の実効性は失われていると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(U))が,前示の改正法の趣旨,新薬事法36条の6第1項及び第4項の文脈並びに同法の趣旨・委任に基づく本件各規定の内容に照らすと,上記免除の規定の適用場面において想定されるのは,第一類医薬品について,薬剤師が購入者と直接の対面をした際に,購入者から説明を要しない旨の意思表示を受けた状況であり,その時点で,薬剤師は,当該意思表示が真意に基づくものであり,かつ,情報提供を省略することが適当であることを確認した上で,情報提供をしないものとすることが想定されており,通常は真に説明を要しない場合(例えば,薬剤師等の医薬品に関する専門家が購入する場合や,以前に情報提供を受けたのと同じ医薬品を購入する場合等にのみ当該意思表示がされることを前提として情報提供義務の免除が規定されているものの,仮に客観的には説明を要するのに当該意思表示がされた場合には,薬剤師の対面による確認・説明を経て当該意思表示が撤回され,免除の効果が失効して情報提供が行われること(合理的な理由なく当該意思表示及び免除の効果が維持される場合でも,事実上,情報提供が行われること)が想定されているものと解するのが相当であり(原告らは,このように解釈することは法律に規定されていない条件を付加するもので相当ではない旨主張するが,改正法の趣旨並びに法律の規定の文脈及び省令の規定の内容を総合勘案した上でこのように解釈することが妨げられるものではないと解される。),したがって,上記免除の規定の存在をもって,直ちに対面による販売の実効性が失われるものということはできない。

(キ) 加えて,原告らは,医薬品を実際に使用する者が自ら購入するとは限らないことから,対面による販売の実効性は失われている旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(V))が,対面による販売であれば,実際の使用者が購入者以外の者である場合でも,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取や購入者の様子の視認等を即時・確実に行うことを通じて使用者を確認し,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取を通じて使用者の属性・状態等を的確に把握して,それに応じた情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断を行うことができるし,購入時には具体的な使用者が特定されない家庭内等の常備薬の場合でも,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取を通じて当該医薬品の使用が想定される者(本人又は家族等)及びその属性・状態等を的確に把握して,それに応じた情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断を行うことができるのであるから,対面による販売の実効性が失われるものではないのに対し,インターネットによる購入申込みにおいては,使用者自身が購入申込みをするとは限らないことは対面による販売と同様であるばかりか,使用者と購入者の異同については,基本的に購入者の自己申告の内容を前提とせざるを得ず,その内容の真否を確認することは著しく困難であるから,インターネット販売はこの点でも対面による販売のような実効性を確保し難いといわざるを得ない。

ウ(ア) また,対面による販売では,購入時には必ず薬剤師等の有資格者が自ら購入者との直接の相談に即時に応じられる態勢が整えられており,かつ,販売者との間で能動的・双方向的な意思疎通が可能な状況にあることから,有資格者が購入者から必要な確認事項や疑問を引き出して即時に相談に応ずる機会が確保されており,かつ,上記イ(イ)で説示したところと同様に,そのことが購入者による確認及び行政上の監督によって実効的に担保される仕組みが確保されるものといえるのに対し,インターネットを通じた購入申込みにおいては,申込時に購入者が自ら確認事項や疑問を覚知・整理して自発的に質問等をしなければ有資格者との相談の機会が得られず,かつ,相談に対する回答が即時に得られるとは限らないのであるから,この点も,対面による販売のような実効性を確保し難い点であるといわざるを得ない。

(イ) 原告らは,電子メールやファクシミリ等の手段で早期に回答を得られる態勢を整備することは可能であり,深夜等においては,インターネット販売ではある程度の対応は可能であるのに対し,一般の薬局等でも即座に問い合わせに対する回答が得られるわけではない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(U))が,インターネット販売では購入の申込みは常にできる一方で,有資格者が購入者から必要な確認事項や疑問を引き出して相談の契機を作ることは期待できない上,購入時に常に有資格者が相談に応ずる態勢が確保され得るものではなく(P4ガイドラインにも相談を受ける時間が限定されることを前提とした記載があること(別紙の24),P4業界ルール案にも相談できる時間が限定されることを前提とした記載があることによれば,有資格者を常に24時間待機させて,すべての注文に即時に対応できる態勢を採ることは想定されておらず,インターネット販売を行う全業者においてこれを必ず履行することは現時点では事実上も困難であると解される。),有資格者による相談応需の態勢確保の有無に係る購入者による確認及び行政上の監督も困難であることは,対面による販売と大きく異なる点であるといえる。そうすると,インターネットを通じた購入申込みにおいては,対面による販売と比べて,必要な事項について相談及び情報提供の契機及び機会が失われ,所要の相談及び情報提供を経ないまま販売に至る可能性が高い点で(消費者一般に医薬品の副作用に対する意識・認識が十分でない現状からすれば,即時に回答が得られない場合に,後に返信の回答が来るのを待つよりも,多くの消費者が,相談の過程自体を省略して直ちに購入の手続を採ることになる可能性が高いものと考えられる。),対面による販売のような実効性を確保し難いものといわざるを得ない。

エ(ア) 加えて,インターネットを通じた購入申込みでは,購入者は実際に有資格者(その管理・指導の下にある一般従事者を含む。)と対面していないことから,これと対面している場合と比べて,虚偽の申告をすることに対する心理的な抵抗が少ないものということができ,虚偽の申告が多くなりがちである点で,対面による販売のような実効性を確保し難いことは否定できず,しかも,インターネット販売においては,購入者が虚偽の申告をした場合には,販売者側で申告内容の真偽を確認することは著しく困難であることからすれば,これらの点もインターネット販売について,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることが困難になる点であるといわざるを得ない。
 この点に関し,原告らは,対面による販売であっても,有資格者が購入者の虚偽の申告や誤った申告を見抜くことは困難であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(T))が,薬剤師等の有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者の申告内容の真偽を見極めることは,上記の過程を経ない場合と比べて,相当に容易であって実現可能性が高いと考えられ,上記主張は理由がない。

(イ) また,この点に関し,原告らは,購入者のプライバシー等の観点から,インターネットを通じた購入申込みの方が購入者の情報の開示に心理的な抵抗が少ない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(V))が,対面による聴取においては,有資格者が購入者のプライバシー等に適切に配慮した対応をするとともに副作用の危険等を適切に説明することで,上記の観点からの心理的な抵抗を除去して情報開示の必要性に理解を得ることは十分に可能であり,他方,インターネット販売においては,むしろ確実にデータ化される個人情報の流出等によるプライバシー侵害のおそれを懸念してその開示に消極的となる購入者も相当数いるものと考えられ,この点でも,対面による販売がインターネット販売との対比においてより実効性の高いものであることを否定することはできない(なお,仮に,原告らの主張に係る対人恐怖症等の者が,インターネット販売の場合に,有資格者と対面する場合と比して,より心理的抵抗が少なく自己の状態を伝えることができ,それにより購入者側の情報提供が容易になる場合があり得るとしても,同時に虚偽の申告についての心理的抵抗も少なくなることは否定できず,医師による投薬等による対応も考えられるところであって,上記イ以下で説示したところに照らせば,前示のとおりの副作用に関する消費者一般の意識・認識等の現状(前記ア(ウ))の下で,原告らの主張に係る上記の事例を勘案しても,なお,副作用による健康被害の防止の実効性の観点における対面による販売のインターネット販売に対する優位性及びその差異の有意性を否定することはできないというべきである。)。

オ.なお,インターネット販売を含む郵便等販売において,添付文書及び外箱の記載を充実させるといった代替的な規制手段については,前記ア(ウ)のとおり,これらの単なる一方的な書面等の記載によるのでは内容・趣旨が十分に伝わらないことが多く,説明の実効性に限界があるといった実情があるところ,有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者側の属性・状態等に係る情報を的確に把握し,これに即応した所要の情報提供及び相談を行うといった過程を経る対面による販売との対比において,上記の過程を経ない点で,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることが困難であることは明らかであるといわざるを得ない。

カ(ア) 以上のとおり,改正省令中の本件改正規定により新設された新施行規則中の本件各規定による本件規制において,副作用の危険の相対的に高い区分の一般用医薬品について,有資格者の対面による情報提供の義務又は努力義務の担保のために対面による販売を義務付け,その帰結としてその販売方法から郵便等販売を除外することは,有資格者による購入者側の属性・状態等の的確な把握並びにこれに即応した医薬品の効能・副作用に関する必要な情報の提供及び相談の機会を実効的に確保し,購入者による確認及び行政上の監督によってこれらを実効的に担保することを通じて,購入者による適切な選択及び適正な使用の確保に資するものであって,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保することにより一般用医薬品の副作用による健康被害を防止するという規制目的を達成するための規制手段として,必要性と合理性が認められるというべきであり,また,医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)等をめぐる本邦の現状の下で,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売においては,上記イないしオのとおり,有資格者の対面による販売のように,購入者側の属性・状態等の的確な把握並びにこれに即応した医薬品の効能・副作用に関する必要な情報の提供及び相談の機会を確保し,購入者による確認及び行政上の監督によってこれらを担保し得るものとはいえず,これらの実効性に相当の有意な差異・限界が存する結果,副作用の危険の相対的に高い医薬品の販売に当たり,有資格者の対面による販売と同等の所要の水準の安全性を確保し得るものとは認められず,前示のとおり,インターネット販売を行う業者による対応策(原告P1の実施例)及び自主規制案(P4ガイドライン及びP4業界ルール案)の提案に係る販売者側の対応や,添付文書及び外箱の記載の充実といった代替的な規制手段も,これらを法令で義務付けるか否かを問わず,有資格者の対面による販売と同等の所要の水準の安全性を確保し得るものとは認められない以上,本件規制については,上記の現状を前提とする限り,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないものと認めるのが相当である。

(イ) なお,インターネット販売における使用者の属性・状態等の把握及び情報提供の方法に関して,<A>第二次検討会では,原告P1代表者からP4業界ルール案の説明資料が提出される一方で,上記イ(ア)(b)@の情報通信技術の手段に関し,テレビ電話については,P59委員(大学総合政策学部教授)から,真に危険な医薬品についてはビデオ会議で薬剤師を呼び出すことも技術的には可能である旨の発言があった(前記1(7)イ))ものの,P4ガイドライン及びP4業界ルール案にはテレビ電話の手段に関する記載がなく,原告P1代表者やP5代表者等のインターネット販売の業界関係者からも同手段に言及する発言はなかったこと,<B>事案6(3)ケの検討部会におけるP24委員(大学フロンティア創造共同研究センター教授)の講義内容からすると,テレビ電話においては,映像の色等を一定の画質で正しく伝送するためには,カメラ,照明等の調整が必要となるものと認められ,インターネット販売において,カメラの性能や照明等の状態が区々に異なる各購入者の利用する様々な種類・状態のテレビ電話によっては,有資格者による購入者の顔の表情や顔色等の的確な把握を確保することは困難であること(この点で,一定の店舗に置かれた特定の種類・状態のテレビ電話を利用する事案6(1)オで認められていた方法とは本質的に異なることは明らかであり,また,乙第57号証の5によれば,インターネット販売を行う業者の中に,携帯電話を用いたテレビ電話による相談を受け付けている業者がいることがうかがわれるが,携帯電話を用いたテレビ電話では,画面の大きさ・性能等からして,有資格者による購入者の顔の表情や顔色等の的確な把握が困難であること(事案6(1)オの厚生労働省医薬食品局長通知参照)からすると,携帯電話を用いたテレビ電話が対面による販売と同等のものとはいえないことは明らかである。),<C>他方で,全購入者に対し統一的な種類・状態の携帯電話以外のテレビ電話の利用を必須の条件として義務付けることは実現可能性を欠くと考えられること等を総合考慮すると,現在の情報通信技術の状況及び事業上のコスト・態勢等を踏まえた現時点で実現性のある方法としては,前記イ(ア)のとおり,同(a)@の方法に同(a)A及び同(b)@の方法を加味した方法(一般的な方法に原告P1の実施例と業界自主規制案の内容を加味した方法)を具体的な内容として検討するほかなく,同(b)@の情報通信技術の手段については,これに例示として掲げられているウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリを通常の形態として検討するとともに,仮にその中に例示として掲げられていないテレビ電話が含まれ得るとしても,上記各手段との選択的な手段の一つとして,かつ,購入者の申出又は販売者側の必要に応じて,販売者の指定する一定の時間帯において(上記ウ(イ)によれば,有資格者を常に24時間待機させることは,業界自主規制案でも想定されておらず,インターネット販売を行う全業者においてこれを必ず履行することは現時点では事実上も困難であると解される。),各購入者の利用する様々な種類・状態のテレビ電話による交信が選択される形態のものとして検討するのが相当であり,現時点では,技術上及び事業上の観点から,テレビ電話をもって対面の方法を全面的に代替し得るこれと同等の方法として位置付けることはできないものといわざるを得ない。
 そして,上記のようなテレビ電話による交信の利用形態の下では,販売者と購入者との間でテレビ電話によるやり取りが選択されるとは限らず,前示のとおりの副作用に関する消費者一般の意識・認識等の現状(上記ア(ウ))の下で,上記イないしオに説示したところによれば,むしろその選択がされないまま購入に至ることが相当程度の蓋然性をもって想定されるといえるから,インターネット販売において,有資格者が自ら直接の視認及び及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行う過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保がいずれも困難であり,対面による販売と対比してこれらの実効性に相当の有意な差異が存することは,なお解消され得るものではないといわざるを得ない(また,仮にテレビ電話によるやり取りが選択されたとしても,上記のようなテレビ電話に係る現状によれば,購入者側の属性・状態等の的確な把握には限界があり,有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断について,対面による販売と同等の実効性を確保することはなお困難であるといわざるを得ない。)。したがって,テレビ電話を使えば対面で双方向的なやりとりが可能である旨の原告らの主張(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))は,以上に説示したところに照らし,採用の限りでなく,上記のようなテレビ電話による交信の利用形態があり得ることを前提としても,上記(ア)の判断が左右されるものではないといわざるを得ない。

(5) 上記(4)の点に関し,原告らの主張のうち,上記(4)において検討したもの以外の主張につき,以下,順次検討する。

ア.原告らは,インターネット販売が原因となって副作用が発生した事例の有無や件数は明らかでなく,インターネット販売を規制する立法事実がないと主張する(原告ら主張イ(ウ)b)。しかしながら,事案6(2)ウによれば,インターネット販売によって購入された一般用医薬品の服用による副作用被害の発症例は現に報告されて存在しており,その件数が判明していないのは,副作用情報の収集の際に購入経路等の調査がされていないことによるものであり,上記報告例の発症の原因が販売方法によるものか否かが判明していないのは,その原因の調査がされていないことによるものであるところ,一般用医薬品の服用による副作用被害の発症例が現に重篤な症状の例を含めて多数報告されて存在し,副作用による健康被害の防止のために医薬品の適正な使用に必要な情報の提供の確保が喫緊の課題とされる中で,前記(4)イないしオのとおり,インターネット販売によっては,購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び適切な相談の実効的な確保の点において,対面による販売によって実現し得る所要の水準を制度的に確保することができず,副作用による健康被害の防止を十分に図り得ないものといわざるを得ない以上,その危険を除去するために,本件規制によって副作用の危険性の相対的に高い医薬品につき対面による販売を義務付けることには必要性と合理性が認められるということができる(医薬品の副作用による健康被害の防止のためには,副作用が実際に発生する前に十全の対応を採る必要があることについては,事案6(3)イの検討部会でのP11のP12委員の発言,同(5)エ(ア)の国会審議での議員自らの薬害被害の経験に基づく発言など,改正法案及び改正省令案の立案の過程で薬害被害者等から繰り返し強調されているところである。)ので,上記指摘は本件規制の合憲性に係る前示の判断を左右するものとは認められない。

イ.原告らは,対面の原則の定義・根拠が明確に確立されておらず,改正法及び改正省令の立案の過程で十分に議論された形跡もない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c)。しかしながら,検討部会報告書の3(2)@には,対面販売について,「購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる」販売方法である旨の記載がされ,検討部会及び第一次検討会においても同旨の説明がされており(事案6(3)テ(6)オ),これは,新施行規則中の本件各規定にいう「対面で」の文言から自然に導かれる解釈であって,事柄の性質上,特段の定義規定まで要するものではないということができるし,また,対面の原則の必要性については,事案6(1)ア及びイのとおり,法改正の以前から重要とされてきたところである上,前記3(3)イ(う)及び(え)並びに前記(4)ア(ウ)のとおり検討部会及び国会審議で繰り返し議論されてきたところであり,原告らの上記主張は理由がない(なお,原告らは,第二次検討会における座長及び事務局の発言からすると,改正法及び改正省令の成立後も,対面の原則に対する明確なコンセンサスはなく,厚生労働省も明確な見解を持ち合わせていなかった旨主張するが,原告らの指摘する発言のうち,@P10座長が,購入者と使用者が異なる場合の対面販売の実効性に疑問を呈する原告P1代表者の指摘を受けて,過去において疑問に思っていた等と述べた発言については,それに続けて自らの考えとして,その場合でも有資格者の質問等により対面の実質は確保されると理解している旨の説明がされ,この説明は,既に検討部会において厚生労働省担当官からされた説明(事案6(3)ニ)と同旨であり,検討部会の議事録上もその説明に特に異論は出ていないことからすれば,上記発言は全体としてはその疑問点が上記説明により解消され得ることを述べたものと解されるし,A厚生労働省担当官の発言については,P10座長から「対面」についての「イメージ」を問われたのに対する応答であり,その応答の内容に照らしても,厳密な定義・根拠というよりも実際の販売の場面における具体的なイメージを分かりやすく紹介する趣旨で述べられたものと解され,対面の原則の定義・根拠については上記のとおり検討部会報告書並びに検討部会及び第一次検討会における事務局の説明の中で明確にされている以上,上記応答をもって,対面の原則の定義・根拠について厚生労働省が明確な見解を持ち合わせていなかったということはできないから,原告らの上記主張は失当である。)。

ウ.原告らは,対面販売による情報提供が必要な場合やそれが効果的な場合は必ずしも多くなく,むしろインターネット販売の方がより実効的な情報提供をすることができる旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))。しかしながら,自ら進んで自己の属性・状態等に係る情報を正しく適切に開示し,積極的に情報提供を求める購入者については,インターネット販売においても相応の情報提供を行うことができる場合があり得るといえるものの,前記(4)ア(ウ)のとおり,一般的には医薬品の副作用の危険性についての消費者の意識・認識が十分でない実情にあることからすれば,そのような購入者はむしろ少数に属すると考えられるのが実情であり,多数を占めると考えられる情報開示に消極的で情報提供への関心の高くない顧客層を想定して規制内容を定めることが安全性の確保の観点からは必要かつ合理的であるところ,前記(4)イないしオのとおり,副作用による健康被害を防止するための一般用医薬品に係る有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断の実効性の観点から,インターネット販売における情報提供・収集には,対面による販売との比較において相当の有意な差異・限界があるというべきであり,原告らがインターネット販売の方がより実効的な情報提供をすることができると主張する点は,これまで検討したところにかんがみ,いずれも対面による販売の優位性を否定するものとはいえず,上記の差異・限界を解消するに足りるものとは認められないといわざるを得ない(原告らは,インターネット販売では,購入前に店舗では通常見ることができない添付文書を見ることができるとか,時間を掛けて医薬品を選択することができると主張するが,前示のとおりの消費者一般の副作用及び添付文書に関する意識・認識等の現状(前記(4)ア(ウ))において,有資格者の対面による即時の能動的・双方向的な聴取及び直接の視認を経た情報提供が確保されない状況の下で,インターネット販売を利用する者が添付文書を丁寧に読んで正しく理解し,時間を掛けて適切な医薬品を選択することが確保されるものとはいえない以上,上記主張も理由がない。)。なお,原告らは,対面による販売において丁寧な情報提供のために時間を掛けることは,販売者と購入者に過大な負担を課すことになり,かえって購入者が重要な点を聞き損なうおそれがあるとも主張するが,副作用による健康被害の防止の実効的な確保の観点からは,丁寧な情報提供のために必要な時間を掛けることが購入者にとって過大な負担を課すものとはいえず,販売者側においても当然に果たすべき責務であるといえるし,有資格者の対面による情報提供においては特に重要な情報に重点を置いた説明が可能と考えられるので,上記主張も失当である。

エ.原告らは,改正法等の施行後も,一般の薬局や販売店等において,対面販売の原則が徹底されていることはうかがわれず,対面販売の原則は現実には守られていないというのが実情である旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(W))が,事案6(8)イ及びウによれば,改正法及び改正省令の施行直後にこれらの法令改正によって義務付けられた有資格者の対面による販売及び情報提供が必ずしも遵守されていない若干の事例があったことは認められるものの,改正法及び改正省令の趣旨が周知されるには一定の期間を要することは避けられず,また,一定の周知に要する期間を経てもなお看過し難い薬事法令の違反が続くようであれば,業務改善命令等による是正がされ,又は許可の取消しがされることになると考えられる(事案6(2)エによれば,相当多数の施設に対し立入検査が行われていることが認められ,実効的な監督処分等を行う態勢が整備されていることがうかがわれる。)から,上記事実をもって,対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定され,あるいはその実効性が失われるものということはできない(法制度としての規制の必要性・合理性に関しては,当該法令に基づく規制内容の遵守によって,一般用医薬品の副作用による健康被害の防止という規制目的の達成が実効的に確保されるか否かという点が重要なのであって,現にその実効的な確保が可能であり,代替的な規制手段によってはその実効的な確保が困難である以上,当該規制内容の遵守状況に関しては,法制度の運用における監督処分等の要否の問題にとどまり,当該規制自体の憲法適合性の判断を左右する事柄ではないというべきである。)。

オ.原告らは,インターネット販売では,どのような情報提供を行ったかの事後の検証も容易であり,さらに,購入履歴が残ることから,販売後に副作用が判明したような場合に連絡を取りやすいなどの利点もあると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(W))。しかしながら,P4ガイドラインやP4業界ルール案の内容に照らし,事後の検証や購入履歴を利用した追跡について,すべての業者がどれだけ実行可能な態勢を整備し得るかは疑問があり,その実行を担保するための行政上の監督も著しく困難であるといわざるを得ない(原告ら自身も,改正省令附則28条2項による継続販売者に関する経過措置の要件を満たした注文であるかどうかを判断するためには過大な労力が必要であることを自認している。)ことからすれば,上記原告らの主張によっても,インターネット販売における情報提供をもって規制の目的を達成し得るものと解することはできない。

カ.原告らは,本件規制においては,(a)(T)既存配置販売業及び(U)特例販売業の制度が,いずれも経過措置の中で残されており,対面販売の原則が守られない販売形態が事実上期限なく残されていること,(b)上記(a)(U)の特例販売業の許可を改正法施行直前に取得して医薬品の通信販売を行っている業者がいることからすれば,対面販売の原則の実効性は失われている旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(W)及び(X))。上記(a)については,(T)既存配置販売業者(改正法附則10条)には,配置員が配置先の顧客と対面して情報提供をすることが義務付けられており(改正法附則11条1項,新薬事法36条の5,36条の6第5項),講習,研修等により配置員の資質の向上が期されていることも併せ考慮すれば,一定の範囲で対面による情報提供の履践が確保されているといえる上,既存配置販売業者に関する経過措置は,事案6(5)エ(ア)において認定したところによれば,販売品目が限定的に認められてきているものであること(配置販売品目指定基準(昭和36年厚生省告示第16号)参照)及び購入者等に無用の混乱を与えないようにすること等の観点から設けられたものであると認められ,新薬事法に基づく配置販売業に移行していくことが想定されているものであるところ,新薬事法に基づく配置販売業者も,薬剤師又は登録販売者が配置先の顧客と対面して情報提供し,薬剤師若しくは登録販売者が自ら又はその管理・指導下の配置員を通じて配置先の顧客と対面して販売をすることが義務付けられており(新薬事法36条の5,36条の6第5項,新施行規則159条の14,159条の18),対面による販売の履践が確保されているし(原告らは,既存配置販売業者の配置員又は新薬事法に基づく配置販売業者の有資格者が逐一配置先に赴いて相談応需を行うことが現実に行われるとは思われないと主張するが,その根拠は不明であり,採用の限りでない。),(U)特例販売業については,旧薬事法35条において,当該地域における薬局及び医薬品販売業の普及が十分でない場合その他特に必要がある場合に店舗ごとに品目を指定した上での特例として認められたものであって,改正法案の検討段階でも縮小していく方向が適当とされ(検討部会報告書3(5)@),改正法による廃止によって同法施行後は許可されることがなくなり,事案6(3)サのとおり現にその数は減少してきていることを踏まえ,上記の要件に該当する地域等において特定の品目の医薬品の入手自体に支障を生ずる事態の防止等の観点から,例外的に本件規制の対象から除外されたものと解される。以上のことからすれば,上記(T)及び(U)は,いずれも,旧薬事法の下で明文で定められた類型の販売業の許可を受けた販売業者の営業について激変緩和の観点から設けられた経過措置であって,その内容にはそれぞれ必要性と合理性があり,かつ,いずれも縮小の方向に向かうことが予定されているのであるから,これらの例外的な経過措置が存在し,その期限が限定されていないことをもって,本件規制の必要性と合理性が失われるものではないし,薬事法令の条文上の明確な位置付けがなかった郵便等販売について同様の経過措置が設けられていないことが不合理であるということもできない。また,上記(b)についても,事案6(8)エによれば,改正法の施行直前に特例販売業の許可を取得した業者がその施行後に医薬品の通信販売を行っているとの事実が認められるが,旧薬事法35条にいう当該地域における薬局及び医薬品販売業の普及が十分でない場合その他特に必要がある場合に当たるとして許可を取得した業者である以上,その取得の時期と改正法施行日との近接性によって施行後の郵便等販売の許容性に影響が及ぶものではなく,真に上記要件を具備していなかったのであれば,許可が取り消されることになり,上記要件を具備して許可を得た業者の改正法施行後の営業の実態において薬事法違反等の事実が認められるのであれば,上記エのとおり,行政処分等による是正がされることになるのであるから,上記の事実について別段不合理な点は認め難い。

キ.原告らは,本件規制は,郵便等販売によらなければ一般用医薬品を購入できない事情のある者(過疎地の居住者,身体の障害等の理由で外出困難な者,多忙で営業時間に薬局等に赴くことができない者等)に対し医薬品の購入を不可能とするものであると主張する(原告ら主張イ(ウ)d(a))。しかしながら,インターネット販売においては,実際の商品の配送は運送業者を介して行われるのが通常であることからすれば,緊急に一般用医薬品を必要とする場合にはインターネット販売を利用することはできず,継続的に服用している医薬品を購入する場合又は常備薬として家庭等に備蓄する場合にインターネット販売が利用されることになると解される(原告P1代表者も,第一次検討会においてその点を認める発言をしている(事案6(6)カ)。)ところ,そのような利用方法を前提とすると,原告らの主張に係るインターネット販売を必要とする者とは,インターネット販売によらなければ医薬品を入手し得ないものではなく,単にインターネット販売の方がより利便に資することを述べているものにとどまり,医薬品の利便性よりも安全性を優先させた本件規制の必要性と合理性を否定する根拠となり得るものではないと解するのが相当である。すなわち,過疎地に居住している者が上記用途での医薬品の購入のために薬局又は店舗のある場所まで移動することが不可能であるとは考えられず,仮にそれに相応の困難を伴う者がいたとしても,配置販売業者を利用できない事情があるとは考え難い。また,多忙を理由とする者は,まさに利便性を求めるものにすぎず,自ら又は家族を通じて薬局又は店舗で医薬品を購入することが不可能であるとは考えられないし,身体上の移動の支障等の理由から外出が困難な者についても,配置販売業の利用又は医師の診察による投薬といった代替手段を採ることが不可能であるといった事情は認め難い。そして,本件規制の趣旨は,前記(4)ア(ウ)のとおり一般用医薬品の入手上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先すべきということであり,その趣旨には必要性と合理性が認められること,前記(4)カ(ア)のとおり,インターネット販売では,購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び適切な相談の実効的な確保の点において,対面による販売によって実現し得る所要の水準を確保することができず,副作用による健康被害の防止を十分に図り得ないものといわざるを得ないことからすれば,上記主張及びこれと同旨の利便性の観点からインターネット販売の規制に反対する意見が多数あることを考慮しても,本件規制の合憲性に係る前示の判断を左右するものとは認められない。
 なお,原告らは,インターネット販売業者では多数の品ぞろえを用意できると主張するが,薬局や店舗においても相当数の品ぞろえは確保されており,店頭にない薬品の取り寄せも可能であると考えられることからすれば,この点は,前示の判断を左右するものではない。また,原告らは,流行性の疾患の感染拡大防止のために外出が抑制される事態になったような場合にインターネット販売を利用した方が安全であると主張するが,この主張は,インターネット販売に従事する有資格者・従業員や運送業者がほぼ正常に活動できることを前提としているものと考えられるところ,そのような状況を前提とすると,インターネット販売を利用することによって薬局や店舗に出向かなくて済むという利点が,副作用による健康被害の防止の実効性の観点からのインターネット販売の問題点を克服できるほどのものであるとは考え難いことからすれば,この点も,前示の判断を左右するものではない。さらに,原告らは,インターネット販売を利用した方が早期に医薬品を手に入れることができると主張するが,主として継続的に服用される医薬品やいわゆる常備薬として備蓄される医薬品の購入に用いられるという前記のインターネット販売の利用の在り方を前提とすると,原告ら主張の利点は,それほど大きいものとはいえず,副作用による健康被害の防止の実効性の観点からのインターネット販売の問題点を克服できるものとはいえないから,原告らのこの主張によっても,前示の判断は左右されるものではない。

ク.原告らは,改正薬事法により規制緩和がされた部分がある一方で,本件規制はインターネット販売を行う業者にのみ厳しく,かつ,原告らの営業に重大な影響を与える規制である旨主張する(原告ら主張イ(ウ)d(b))が,本件規制は,薬局開設者及び店舗販売業者に等しく適用されるものであり,郵便等販売に該当する限り,インターネット販売のみならず,それ以外の郵便その他の方法による各種の通信販売全般に適用されるものであり,原告らのみに差別的に適用されるものではないし(これらのことは,前記(3)アにおいて説示したところからも明らかであるということができる。),事案6(8)オの認定に係る原告らの経営状況等(原告P1の総売上高の実績,総売上高及び当期純利益の予想金額並びに医薬品の売上高の総売上高に占める割合等,原告P2の医薬品の売上高の金額及びその推移)に照らすと,本件規制による一般用医薬品の販売収益の減少によって直ちに各種商品のインターネット販売を行う業者である原告らの経営に過酷な結果を招来するとまでは認め難く,原告らの上記主張は理由がない。

ケ.原告らは,本件規制によって医薬品の闇取引が横行するおそれがあると主張する(原告ら主張イ(ウ)d(c))が,本件規制によっても,薬局又は店舗における医薬品販売は可能であり,配置販売業者による販売も許容され,医薬品の入手自体が特に困難な場合については特例販売業者ないし離島居住者についての経過措置が設けられ,第二類医薬品の継続使用者についての経過措置も設けられていることに照らせば,本件規制によって直ちに一般用医薬品の闇取引が横行するとは考え難く,所論は理由がない。

コ.原告らは,再改正省令により改正省令附則に加えられた郵便等販売に関する経過措置のうち,(T)離島に関するもの(改正省令附則23条2項)については,離島以外にも薬局からの距離が遠い地域があること,(U)継続購入に関するもの(改正省令附則28条2項)については,郵便等販売を行う業者に購入履歴の調査等に過大な負担を課するものであることからすれば,合理的なものとはいえず,本件規制の違憲性を何ら減ずるものではないこと,(V)上記(U)の継続購入に関する経過措置の要件に該当しないにもかかわらず郵便等販売を行っている業者がいることからすれば,対面販売の原則は現実には守られていないという実態があるというべきであることを主張する(原告ら主張イ(エ))。
 しかしながら,上記(T)及び(U)については,再改正省令による経過措置は,(T)船舶・航空機等を利用しなければ医薬品を販売する薬局又は店舗に到達できないという点で,一般の過疎地と比べても格段に医薬品の入手自体に支障の生ずる可能性の高い「薬局又は店舗販売業の店舗が存しない離島」の居住者(改正省令附則23条2項)の場合及び(U)改正法施行前に現に特定の第二類医薬品を継続して使用し,同法施行後も同一の第二類医薬品を引き続き継続して使用する必要性がある継続購入者につき,有資格者が本人の情報提供を要しない旨の意思を確認してこれを要しないものと判断した場合(同省令附則28条2項)に,いずれも2年間に限定した経過措置を定めたものであって,その内容にはそれぞれ必要性と合理性があるものと解されるところ,このような期間の限定を付した例外的な経過措置が存在することをもって,第一類・第二類医薬品の通常の購入者との関係において有資格者の対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定されるものではなく,その合憲性に関する前示の判断が左右されるものではない。また,上記(V)については,上記エと同様の理由から,原告ら主張に係る事実をもって,対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定され,あるいはその実効性が失われるものということはできない。

サ.なお,原告らのその余の主張も,前記(4)の判断を左右するに足りるものとは認められない。

(6)ア.以上の諸事情を総合的に考慮すると,本件規制は,前記(2)の規制目的(一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保し,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止すること)を達成するための規制手段としての必要性と合理性を認めることができ,医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)及び情報通信技術等をめぐる本邦の現状の下において,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上,立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の合理的裁量の範囲について,職業活動の内容及び態様に関する規制として,あるいは狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課する規制に準じて,広狭のいずれに解するか(前記(1)参照)にかかわらず,その合理的裁量の範囲を超えるものではないというべきであり,本件規制及びこれを定める本件各規定を薬事法施行規則に加える改正省令中の本件改正規定は,憲法22条1項に違反するものということはできない。

イ.なお,付言するに,前示のとおり事柄の専門的・技術的な性質及び事情の変化に即応した柔軟な対応の必要性の観点から新薬事法において本件規制の具体的内容の定めが厚生労働省令にゆだねられていると解されることにもかんがみ,将来において医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)及び情報通信技術等をめぐる本邦の状況に有意な事情の変更が生じた場合には,一般用医薬品の副作用の危険性に応じた区分及びその区分に応じた規制方法の在り方を含めて,その時点の新たな状況に応じた規制内容の見直し(郵便等販売に関する経過措置の追加を含む。)が図られることが新薬事法の趣旨にも合致するものと解されるところであり,本件規制の憲法適合性(改正省令中の本件改正規定の合憲性)に関する上記アの判断は,本件規制の内容を将来の状況の変化の有無にかかわらず恒久的に固定化されるべき規制措置として位置付ける趣旨のものではない。

(次回へ続く)

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