政府公表資料等情報

司法修習委員会(第20回)平成23年9月6日より抜粋(下線は当サイトによる)

1.出席者

(委員) 今田幸子,大仲土和,大橋正春,鎌田薫,酒巻匡,鈴木健太,高瀬浩造,高橋宏志(委員長),安井久治(敬称略)

(幹事) 秋吉淳一郎,岩尾信行,大谷晃大,小野寺真也,笠井之彦,菅野雅之,木村光江,小林克典,関一穂,流矢大士,巻之内茂,升味佐江子,村田渉,山本和彦(敬称略)

2.報告

 笠井幹事から,第19回委員会以降の司法修習の状況及び法曹養成制度をめぐる近時の動きについて報告がされた。

(高橋委員長) 法曹の養成に関するフォーラムの第一次取りまとめでは,笠井幹事の報告にあったとおり,貸与制を基本とした上で,個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置として,十分な資力を有しない者に対する負担軽減措置を講ずるとされ,措置の具体的内容として,@給与所得者につき年収300万円以下,給与所得者以外につき所得200万円以下を基準に最長5年の返還猶予期間を設けること,A法科大学院における修学資金であることが明確な奨学金等については,その年間返還額を収入・所得額から控除することが示されたとのことである。今後,この取りまとめを受けた法改正がされる場合には,最高裁判所規則を改正する必要が生じることも想定され,場合によっては臨時の委員会開催も考えられるので,その点は御承知おき願いたい。
 また, 司法修習の意義及び重要性については,@司法修習が,社会に生起する実際の事件を前提に,実在する様々な法的問題に解決を与えるという法曹としての役割を果たすために必要な能力のかん養を図る臨床教育課程であって,新しい法曹養成プロセスにおいては,法科大学院教育との有機的連携の下に実務教育を担うという重要な位置付けを与えられており,法曹養成に必須の課程として置かれているものであるということ,A実際の司法修習も,法曹が,法律専門家として,社会の様々な分野で活動するに際して,共通して必要とされる問題解決に向けての思考方法や倫理的な側面も含む適切な活動の仕方を念頭においた汎用性のあるスキルとマインドの修得を目標として,中核である実務修習等を通じてこれを体験的に修得するものとして実施されているということなど,その意義及び重要性について,改めて確認をしておきたいと思うが,この点はよろしいか。

(出席委員全員) 了承

3.意見交換

 弁護実務修習の在り方について

(笠井幹事) 弁護実務修習については,昨年9月の第17回委員会及び本年3月の第19回委員会において意見交換が行われ,次のような点が確認されているので,整理して御説明する。
 まず,新司法修習の到達目標は,法廷実務に限られない幅広い法曹の活動に共通して必要とされる基本的なスキルとマインドのかん養であるが,これは,これまでの法曹の活動の実質を改めて確認し,その核心部分が何であるかを探求した上で必要な基礎力のかん養を図ろうとするものであり,当然ながらスタートラインに立つ段階での法曹としての質を下げるものではないとされている。
 また,ここでいう基礎力を,実質的な意味での法的分析能力,事実認定能力等と捉えるのであれば,法廷実務家に必要とされる基本的素養と法廷に限られない幅広い分野で活動する法律実務家に必要とされる基本的な素養に本質的な違いはないとされているところである。
 次に,弁護実務修習の指導の在り方について,法的紛争解決の最終手段である訴訟事件には,法廷実務家に限られない幅広い法曹の活動に必要な法的分析能力や事実認定能力を身につけるのに必要な要素が多く含まれていることから,新司法修習においても,訴訟事件を素材として指導を行うことも有効な方策であることが確認されている。
 また,弁護実務修習の指導においても,法廷実務家に固有の書面の形式等に関する知識の修得よりも実質的な法的分析能力や事実認定能力のかん養に向けた指導を行うことが重要であり,実質的な能力のかん養という点を意識して行われるのであれば,訴状,準備書面,弁論要旨等の法律文書を作成させることも有効な指導方法となり得るという点についても異論は見られなかった。
 なお,法科大学院教育に訴状,弁論要旨等の起案の実施を求めることについて,法科大学院教育に求められる範囲の法律文書の起案の機会を付与すべきことは認証評価基準からも明らかである旨の指摘,法科大学院教育で求められている「起案」,法的文書の作成については,法理論教育を前提に法的に見て必要な事柄を過不足なく論理的に順序立てて書くことであり弁護士の視点で法的問題を書面に整理して記載することは司法修習の課題である旨の指摘があった。
 最後に導入的な教育の在り方について,司法研修所における導入研修の復活が相当ではないこと,法科大学院教育がかつての前期修習を代替するものではないことは,従前から確認されてきたところであるが,少なくとも現状においては,何らかの導入的教育を行う必要性自体は否定されないこともまた,異論なく確認されたところである。
 問題はその具体的な内容や実施方法であり,現在,司法研修所,日弁連等において検討がなされているところであるが,一般論としては,共通的到達目標の内容等を前提として法科大学院に期待されている教育内容や新司法修習の理念を踏まえ,さらに議論を重ねる必要があるとされた。
 この点,法科大学院については,導入的教育をしなくてもよい程度にまで法科大学院が教育すべきであるという裏腹の問題はあるとしても,ここでいう導入的教育に携わるわけではないとの認識も示されたところである。
 以上が,これまでの委員会における弁護実務修習に関する議論状況である。
 次に,司法研修所と日弁連等との間における意見交換等の状況について御報告する。
 司法研修所では,このような当委員会の議論を踏まえ,本年3月9日に実施された日弁連司法修習委員会の定期会合の機会を利用したり,本年4月12日に司法研修所において実施された当事者講義の際に,その参観に加えて,弁護教官と意見交換を行う機会を設けるなどして,弁護実務修習の指導担当者等との間で積極的に意見交換を行ってきたところである。
 さらに,司法研修所と日弁連との間で,弁護実務修習の在り方,導入的教育の在り方等についての協議も継続的に実施しており,その中で,前回の委員会以降,特に弁護実務修習のための導入的教育の在り方を中心とした議論が行われているので,その概要を御報告する。
 まず,導入的教育の在り方については日弁連内にも様々な御意見があるようだが,少なくとも,第1クールの冒頭において,2日程度,全国の弁護士会共通の導入的カリキュラムを全修習生に参加させて実施すべきであるという御意見も述べられている。
 そして,そのような導入的カリキュラムを実施する場合には,従前から実施されている弁護士会の事前研修及び冒頭修習,司法研修所の出張講義と導入的カリキュラムとの関係を整理した上で,カリキュラムの具体的内容や司法研修所の協力の在り方などについて検討する必要があるとされ,これについては各弁護教官室も交えて検討を行っている。
 このほか,弁護実務修習を円滑に実施するため,各修習生に法科大学院で受けてきた実務基礎科目の内容についてのアンケートを行い,これを実務修習の指導担当者等にも配布して,指導の参考にしていただくことなども議論されているところである。
 以上,司法研修所と日弁連との間における意見交換等の概況について御報告させていただいた。

(高橋委員長) 先日の幹事会では,この点に関連して,巻之内幹事から導入的教育の実施等を内容とする日弁連内の議論の状況等が紹介され,意見交換がなされたと伺っている。その後,日弁連から,「法科大学院教育と司法修習との連携強化のための提言」が出されたということなので,大橋委員から,その内容について補足的に御説明いただきたい。

(大橋委員) 第17回委員会では,新しい司法修習制度のもとで弁護実務修習の担当者が持っている懸念というものについて,入口の部分,出口の部分という形で御説明させていただいた。弁護士会では,この問題というのは結局,本来あるべき法科大学院教育と司法修習との連携が十分ではないということにあるのではないかという問題意識のもとに,この連携強化をどう図っていくかを検討してきた。今回の提言は,その検討結果をまとめたものになる。
 今,高橋委員長から御説明があったように,この提言そのものは8月19日の日弁連の理事会において正式な意見となったものであるが,原案の段階で幹事会には御説明の上,御議論いただいたところである。この点については,後ほど木村幹事長から御説明があるかと思う。
 なお,今回の提言は,あくまで弁護実務修習を担当している弁護士会からの提言であるので,立場が違うと意見が異なるということも承知しているが,むしろそうした意見があることを前提に御議論いただきたいと考えている。また,この提言は,法科大学院教育と司法修習との連携について,法科大学院から弁護実務修習に至る各段階における問題点を指摘した上で,その解決のために関係者がとるべき事柄は何か,検討すべき事柄は何かということを挙げるという形式をとっている。
 全部で6項目の提言から構成されているが,各提言について簡単に御説明させていただく。
 提言の1は,法科大学院教育における実務基礎教育の一層の充実を求めるもので,この点は,民事訴訟実務の基礎,刑事訴訟実務の基礎及び法曹倫理について,共通的な到達目標というものが制定され,あるいは法律実務基礎科目の単位数が10単位に増えるということもあるので,これについては実現されるものと期待しているところである。
 提言の2は,日弁連において,法科大学院において学修した知識,技能の中で,弁護実務修習を効果的に行うためのものを指摘し,司法修習予定者において修習開始前にその復習ができるよう司法修習予定者に対する周知徹底の方法を検討し,必要な措置を講じるというものである。新しい修習制度のもとでは,当然,法科大学院において一定の実務基礎教育を習得していることが前提となっているため,この点について修習予定者に自覚してもらうことが必要ではないかというのが,この提言の理由である。
 提言の3は,現在,日弁連が実施している事前研修に関するもので,これは引き続き日弁連が実施するとしている。基本的に法科大学院で行われるべき部分について,いまだ不十分な部分があることから事前研修を実施しているというのが基本的な考え方である。
 続いて提言の4は,先ほど笠井幹事からの御説明にもあったが,やはり弁護実務修習を有効に行うためには,修習を担当する弁護士の側が,修習生が法科大学院において何を学んできたかということを知っていることが重要と考えられるので,この点についての情報を集め,修習担当者に提供すべきであると述べたものである。
 提言の5は,本日御議論をいただきたいいわゆる冒頭修習というもので,弁護実務修習を2か月という短期間で効果的に行うためには,あらかじめ弁護実務修習で何を行うのかということを修習生も明確に意識し,あるいは指導者の側もその点を意識して指導を行うことが必要であるということ,そのための教育の形として,冒頭修習が必要であろうと述べている。この点については,第17回委員会でも御説明があったように,裁判所,検察庁はそれぞれ独自の形でそのような教育を行っているものの,弁護士会としては人的な問題等,様々な事情があったため,なかなか実施が難しかったわけであるが,今回,日弁連がある程度中心となって行う必要があるということが,この提言の意味である。
 この提言では,冒頭修習は本来であれば各弁護士会だけではなくて,裁判所,検察庁も交えた上で,修習開始時に行うべきではないかとされているが,それが無理であれば,弁護士会が独自に実施するべきであるとした。その実施内容等については,先ほど笠井幹事からお話があったように,現在,司法研修所との間で協議が進んでいるところである。
 最後に,提言の6は,日弁連の弁護実務修習の充実に関する役割を述べたところである。弁護士会には,人数が非常に少ない小規模会もあるので,修習の方法,教育の方法等について十分研究する機会がないということも考えられるところであり,日弁連側で十分なフォローをしたいと述べるものである。
 日弁連では,2011年3月27日付けで「法曹養成制度の改善に関する緊急提言」を発表している。これは,法曹の養成に関するフォーラムに臨むに当たって,日弁連の現在の基本的な立場を確認するために作成したものであるが,この中では,前期修習あるいは導入研修の復活ということが提言されている。したがって,日弁連としての基本的な立場は前期修習等の復活になるが,その問題とは別に,今何をすべきかということで出されたものが今回の提言の6であるので,緊急提言の基本的な方向とは別に,冒頭修習の充実,実現という方向へ日弁連としては進んでいくと思われる。

(高橋委員長) 木村幹事長から,以上の意見書に関する幹事会での議論につき,御報告いただきたい。

(木村幹事長) 幹事会においては,弁護実務修習の在り方,特に導入的教育の在り方をテーマとして協議を行ったので,御報告する。
 幹事会では,まず,笠井幹事から,弁護実務修習に対する取組に関し,これまでの委員会や司法研修所と日弁連等との意見交換における議論状況等についての報告があった後,巻之内幹事から,日弁連において,「法科大学院教育と司法修習との連携強化のための提言案」と題する意見書を準備している旨の報告がなされた。この意見書案は,三庁合同で司法修習の開始当初に約1週間前後をかけて冒頭修習を実施することを要請したり,その実施が困難な場合には,各弁護士会が司法修習の開始当初に約2日間程度をかけて冒頭修習を実施することについて司法研修所及び各裁判所,各検察庁に理解と協力を求めることなどを内容とするもので,以後,日弁連の正式な意見となる可能性がある旨の紹介があったため,そこに含まれている論点,特に導入的教育の要否や実施内容に焦点をあてて意見交換を実施した。以下,その概要を御報告する。
 まず,巻之内幹事からは,短期間で効率的に修習の効果を上げさせるための工夫として,このような導入的教育が必要である旨の説明がなされた。
 笠井幹事の御説明にもあったが,これまでの司法修習委員会においても,少なくとも現状においては,何らかの導入的教育を行う必要性自体は否定されないことが異論なく確認されたところである。幹事会においては,この点を確認した上で,まず,三庁合同での導入的教育については,裁判所・検察庁において分野別実務修習の中でそれぞれ固有のプログラムを組んでクールごとにこのような導入的教育を実施しており,その必要はないとされた。他方,弁護実務修習に関しては,弁護士会としての組織的な対応が困難である上,会ごとに規模等に差があり,特に小規模会においてはクールごとの導入的教育の実施が難しいところもあって,修習生にとっては,配属された単位会によって扱いが大きく異なりかねないという問題があること,この問題を解消するために,全国の弁護士会に共通のカリキュラムとして,各実務修習地の修習生全員が参加する導入的カリキュラムを実施する必要があること,共通カリキュラムをクールごとに実施することは小規模会等の負担が大きいので,その回数を1回として,最も効果的な第1クールの早い段階で行うことについて意見の一致をみたところである。
 次に,期間については,分野別実務修習を実施している裁判所及び検察庁の協力が必要となるので,必要最小限の2日とし,民事弁護・刑事弁護各1日程度とした上で,具体的な日程の設定において,できる限り弁護修習以外の修習への影響を少なくするための工夫を行う。特に,修習区分ごとの期間設定に当たっては,選択型実務修習や集合修習の日程への影響も最小限に止めるよう留意しながら,第1クールの実日数を,他クールより導入的カリキュラム分として2日程度多く確保し,同日数を除いた第1クールの実日数と他クールの実日数が可能な限り均等になるよう司法研修所に工夫をしていただくことについて,異論なく確認がなされた。
 実施する場合の内容については,司法研修所各弁護教官室が実施している出張講義等との連携を充分に図り,全体として効果的な内容にしていただく必要があるということ,また,実施する場合の内容について,弁護士の活動全般について具体的なイメージを持たせることが非常に重要であること,分野別実務修習において何をどのように学ぶかが必ずしも充分に周知されていないので,それを明確にするという意味でガイダンス的な側面を持たせるということ,そして,法科大学院で履修した内容の応用として,具体的な事案を用いて,実際の法的分析,事実認定等に触れる機会を与えることについて,異論がなかった。
 また,巻之内幹事からは,意見書案の内容に従い,最終準備書面,証拠弁論,弁論要旨等の事実認定に関する起案を課すことが考えられるとの説明があったが,この点に関しては,むしろ,起案にこだわるのではなく,法科大学院で修得した知識等を実務の中でどのように使っていくのか,どのようにして具体的事案を分析,検討していくのかという基本的な考え方を指導するなど,弁護士倫理等も含めて,導入段階で全員を集めて実施するのにふさわしい,効果的なカリキュラムを検討すべきであるとの意見が多数述べられた。
 最後に,カリキュラムの具体的内容の検討や教材の作成については,日弁連と司法研修所が協力すべきことで,意見が一致したところである。
 幹事会においては,以上のような議論を踏まえ,弁護実務修習の在り方,特に導入的教育の在り方について,本日の委員会の議題とすることが了承されている。
 幹事会における議論の報告は以上である。

(高橋委員長) 本日は,ただ今の御報告等につき,まずは,弁護実務修習のための導入的カリキュラムの点にしぼって,御意見を伺いたいと思うがよろしいか。

(出席委員全員) 了承

(高橋委員長) まず,木村幹事長から御報告のあった幹事会の御議論について,付け加えて御意見等はないか。

(高瀬委員) 日弁連の御提言の中では導入的カリキュラムの中身として,教育のための起案というものが非常に重要なツールとして取り上げられているが,一方,幹事会からの報告では,必ずしも起案がそのツールとして最も有効なものではないという意味合いの発言があった。この点は,去年も一昨年も議論の対象になったことだと思うが,一番気になるところは,起案が重要なツールであるという意見があって,一方では,必ずしも起案にこだわる必要はないということであれば,やはり起案に替わるツールは一体どういうものなのかというところを今後きちんと議論していかないと,また来年も,使おうとしているツールが違うという問題が起こってしまうと思う。
 したがって,幹事会では,その起案に替わるツールというのは一体どういうものがあるのか,ぜひ御検討いただきたい。そうすれば,2年ほどで法科大学院のカリキュラムも変わり,時間数も変わるというお話であるので,それに基づいて,新しいツールが非常に有効に働くということが期待できるのではないかと思う。
 御報告を聞いていて,内容的にはよく分かるが,もう一つ霧が晴れないなと感じたところであったので,是非御検討をお願いしたい。

(酒巻委員) 高瀬委員のおっしゃったことにも関連するが,私自身もこの幹事会で議論,提言をされた導入的カリキュラムを第1クールの冒頭に2日間実施すること,それ自体には特段の異論はない。しかし,その内容については,先ほど木村幹事長から抽象レベルでは伺ったが,民事弁護,刑事弁護それぞれ1日で,具体的に何をされようとしているのかが,いまひとつわからない。そして今,起案,あるいは必ずしも起案でなくてもというような御説明もあったが,例えば教材であるとか,起案をするのであれば修習生に事前に記録を送付して書いてこいとか,いろいろな準備は当然するとは思うが,それを弁護士会,司法研修所の弁護教官と緊密に連携しておやりになると思うので,そこをもう少し御説明いただくと,高瀬委員がおっしゃっている霧の部分についても,はっきりするのではないだろうか。

(笠井幹事) 幹事会の中で出てきた御意見も含めて,少し御紹介をさせていただきたい。
 法科大学院教育から実務修習へ円滑に移行していくために,導入的カリキュラムで何をすればいいかについては,先ほど出てきたように弁護士の活動というのはどういうものなのかというイメージを持ってもらうガイダンス的な部分がまず一つ,それからもう一つ,中身の問題ということがあると思う。委員の御指摘の点は,中身の問題であろう。
 実務修習では,実際の事案を法的に分析をし,それから事実の認定をし,それを使って紛争を解決していくことになるが,その作業をしていく上で一番大事なものというのは何なのか,要するに,法科大学院で修得した知識,これを実務の中でどういうふうに使っていくのか,具体的事案をどのように分析・検討していくのか,この点に関する基本的な考え方を学んでもらうことが,実務修習への円滑な移行に一番大事であろうという御意見が,幹事会の中では幾つか出されていた。
 刑事弁護で申し上げると,弁論要旨を書かせたり,保釈請求書を書かせたりという中で,それらを身に付けさせるというのも一つのツールとしてあり得るが,必ずしもそうではなくて,実際に文章を書かなくても,例えば簡単な教材記録を与えて,それを読み解いて,そこから分析をして,結論を出していくというところを考えさせることで,そういった問題に対応できるのではないかという御意見もあった。
 具体的には,今年の4月から司法研修所の刑事弁護教官室で修習生に対して中間的な段階で1回,出張講義を実施しており,その講義を私も見せていただいたが,そこでは必ずしも弁論要旨等を書かせるというものではなくて,実際の生の素材を与えて,検察官は例えばこういう証拠に基づいてこういう主張をしてきた,それに対して,弁護人としてはどういう物の考え方で,どういう証拠を使って,その検察の主張あるいは証拠を弾劾していくかということを午前中にまず考えさせ,検討メモを作らせた上,それを踏まえて午後に双方向,多方向の講義をしながら,検察の主張していることと弁護人の物の見方や法律論の構成の仕方,これが全く違うんだということを理解させるような講義をしていた。
 実際に講義を担当された刑事弁護教官が一番お分かりかと思われるが,そのもう少し初歩的な段階のものを導入的カリキュラムで使うこともあり得るのではないか。

(大橋委員) 冒頭修習で何をするかについては,まだ検討中であり,具体的に決まっているわけではない。個人的な意見だが,基本的には,この冒頭2日間というのは,何かをここで教えるということではないのだろうと思っている。つまり,あくまで実務修習を有効に行うためには何が必要なのか,あるいは実務修習で学ぶものは何で,それについて修習生がいかに分かっていないのかということを分からせるということを,ここで行うのだろう。
 そういった意味で,起案を通じて何かを覚えさせるのではなくて,例えば事実認定であれば,事実認定というものをどういう形でやっていき,実務修習の中ではそれをどう学んでいくのか。自分たちが今までやっていなかったこと,修習において学ぶものは何かということを見せるということが,ここの問題なのだろうと思う。
 それからもう一つ,弁護修習の場合には,2か月という修習期間の中で,修習に適した事件にぶつかるという機会が非常に少ない。特に刑事弁護の場合,2か月間で刑事弁護のすべてを見聞することはまず不可能であり,刑事裁判修習あるいは検察修習の中で,刑事弁護をどのように学んでいくのかが重要となる。
 つまり,何かを学ぶというよりも,学ぶ手段であるとか心がけであるとか,そういうことのほうが重要ではないか。要するに,2日間で出来るのは,具体的なことを教えるのではなくて,何が分かっていなくて,何をこれから学ばなくてはいけないかという見取図,それぞれの修習生が修習中,何をやっていくべきかということをきちんと自覚させることが必要ではないかと考えている。
 具体的にそれをどう実施していくかというのは,また次に難しいところではあるが,例えば,弁護修習では必ずしも刑事弁護を十分に行うことはできない,したがって刑事裁判修習あるいは検察修習を使って弁護についてどう学ぶかという,そういう点を修習生に分からせるということが重要なことではないかと,私は今考えている。

(菅野幹事) 今,大橋委員の御発言を伺って,私もそのとおりだと思っている。
 幹事会の際に,必ずしも起案というツールにこだわる必要性はないのではないかという内容のことを申し上げた。その趣旨というのも,例えば今回お出しいただいた日弁連の提言の「最終準備書面や弁論要旨などの事実認定に関する書面の起案を課すことが考えられる」という,言葉尻だけをとらえてしまうと,それがひとり歩きして,やはり実際の修習というのは何か技術的な,細目的なところをクローズアップしてやるのかというイメージが,弁護修習のみならず分野別実務修習のまさに一番冒頭の時期に強く出てしまって,対外的にもあるいは修習生にもそういうメッセージを送ることにならないかなというあたりを少し心配した。
 むしろ形というよりは中身である。事前に課題を与えて,その課題について準備をしてもらうこと自体は悪いことではないと思うが,それをことさら準備書面を書かせる,弁論要旨を書かせるという形ではなくてよいのではないか。裁判実務修習では,今は判決にこだわらず,中身を重視したサマリーペーパーを準備してもらうとか,そもそもこういう論点について法律的にどういうふうに考えられるのか,あるいは事実認定のやり方だとするとどうするのかというところをまとめてもらう,そのような課題を主にやってもらっているわけである。
 同じように,弁護修習でも,当事者法曹としての弁護士の立場に立って,紛争というものをどのようにとらえて,それをどのように整理していくか,そうしたことを将来の課題として,これからどうやって身に付けてもらうか,そういう観点で提示すると,とても建設的な話になろうかと思う。

(高橋委員長) ただ今,菅野幹事からも御発言があった起案という言葉であるが,何か二義的に使われているような,あるいは使っている人によって起案に込めている意味が少しずれているような気がする。
 幹事会でも何か起案について御議論があったと聞いているが,刑事弁護教官の升味幹事から御説明をいただけないか。

(升味幹事) 私は幹事会において,古典的な指導方法である弁論要旨とか,保釈請求書の起案というような形にはこだわらないほうがいいのではないかという意見を述べた。教官に任命されて3年目であるが,研修所で修習生と接していると,当事者として主張する,事実を見るという姿勢を持つこと自体に,とても苦労している修習生が多い。もう一つは,ロースクールで手にした知識というツールを現実の事件の中でどうやって使うかというところがまさに司法修習だと思うが,そのツールの使い方に関する導入がないために,いつまでたってもその知識は知識としてあるけれども,現実の事件を解明する時に役立った形で使えないというところがある。
 それと,もう一つは,ちょっと低次元になってしまうが,どうしても修習生はマニュアルに引っ張られる。例えば弁論要旨を書けと言うと,弁論要旨の項目を書く。また,自白とか供述の信用性を弾劾しろと言うと,伝統的に法曹の世界ではこういう見方が有用という項目が幾つかあるのだが,そのような,客観的証拠との不整合とか,不合理な変遷とか,内容が不合理だとか,虚偽供述の動機があるとかいうことを一番上の行に書いてくる
 私たちはそんなことを整理して書いてもらいたいと思っているわけではなくて,現実の事件を見て,例えば検察官はどういう主張をしていて,それはどういう立証の構造になっているかということをまず理解する。それに対して,弁護側は検察官の主張立証のどこが弱くてどういうふうに弾劾したらよいかということを,現実の事案に基づいて組み立てていくその過程でロースクールにおいて身に付けた法的な知識や実務修習の間に身に付けた事実の見方についての認定,基本的手法を使ってほしいと。そして最後に,それらを上手に相手に伝えるためにはどういう表現がよいかというところまで進んでほしいのであるが,なかなかそこまではいかずに,その手前でとても苦労している
 例えば警察官がけがをしたという公務執行妨害等の事件で,警察官から自転車泥棒かもしれないと制止を求められたところこれに応じずに歩き続け,途中で警察官を突き飛ばしてけがをさせたという主張が検察側であったとする。そうすると,私たち弁護側としては,問題になっている公訴事実は暴行であるから,この点をきちんと弾劾してほしいと思うのだが,どういうわけか修習生には,客観的証拠との不整合がありそうだからということで,そこからすごく遠いところを弾劾する者がいる。あるいは現場に居合わせたはずなのに犯行を目撃していない証人というのがいた場合,これを目撃証人として弾劾する者もいる何か法的な思考,基本的な事実の見方のところで,とても苦労している現実がある
 そこで,今年の4月であるが,刑事弁護教官室は,これまで検討を重ねてきた実験的な取組みを行った。今,日弁連とは担当者レベルで協議をしているが,冒頭修習を行うとしたら,先ほど幹事らがおっしゃったように,一つはこれからの実務修習の中で,検察修習や刑裁修習の場面もきちんと生かした修習をしてほしい,そのためには,どのように今後の修習に取り組んだらいいかというところをぜひ話して,修習生が理解してくれたらいいと思っている。
 本日は,証拠開示に関する刑事系教官室共同の講義,問題研究があった。類型証拠開示として員面調書と検面調書しか挙げられない修習生もいる既に検察修習も終えており,送致記録に様々なものが含まれていると分かっているはずだと思うのだが,それも生かせていない。刑裁教官が講評の際に,「検察修習の時,検察官が請求している証拠以外にいろいろ送致されてきた書類はあっただろう。どのようなものがあったか見なかったのか。」とお聞きになったぐらいで,十分生かし切れていない。このあたりを解決できるような冒頭修習があるといいのではないか。
 それからもう一つ,刑事弁護教官室は,そういう基本的な事実認定の仕方が分かるような簡単な事案を使って,いわゆる弁論要旨の起案にこだわらない格好で,頭を使ってメモを作成するというようなもので導入カリキュラムができればいいと考えている。まだ詰めが進んでいないので,形は変わるかもしれないが。

(酒巻委員) 私は刑事の専門家のため,民事実務のことは分からないので,刑事実務に関しての大橋委員と升味幹事のお話を聞いて感じたことを申し上げる。修習生が現実の事件に直面して実務修習をする,あるいは刑事弁護については,修習期間の問題もあるので,全部を実務修習において取り上げることは期待できないことを前提におっしゃっていた修得すべき事柄というのは,私の理解では,ほとんど法科大学院における刑事実務の基礎という,いわゆる「実務基礎科目」で,少なくとも基礎的部分については教示されるべき内容であるように思われる。例えば,記録教材を素材として,弁護人の立場であったら,あるいは検察官の立場であったら,この材料をどう使うか,公判前整理手続の証拠開示規定をどう使うかといった頭の使い方を実践させるのが実務基礎教育であろう。
 したがって,先ほどの日弁連の提言にもあったとおり,法科大学院の実務基礎教育において,そこがきちんとできていれば今のような御苦労の話はないのかなという印象もある。もしかすると,それとさらに違うことをお考えになっているかどうか,私にはわからないが,今おっしゃったことは,それなりの資質のある学生が基本的な法的学識を修得した上で,法科大学院が,刑事実務の基礎,民事実務の基礎と言われている授業を適切な時機に展開し,そこで的確な教育がなされれば,最低限度の準備はできているはずであろう。もっとも,そうではない実例があるというのが,現実なのだと思う。
 ただ,まさに法科大学院教育と実務修習をつなげるためには,今お二人がおっしゃったようなことは大変重要なことであるから,どちらからも攻めていって,できる限りスムーズに接続ができ,修習生が最終段階でまさに法律と証拠を自ら使いこなすことのできる法律家になってくれるのが理想である

(鈴木委員) 私も導入研修について,抽象的な必要性というのはあるだろうなと思いつつ,一体何をやるのかというのがいまひとつよく分からなかったが,先ほど大橋委員が実務修習で何を学ぶか,君たちは何がまだ分かっていないのかということを最初に教えるということだとおっしゃって,ああ,なるほどと思った。
 そういう意味では,起案にこだわると,少しその趣旨から外れてしまうのではないか。もちろん,現実の記録を見せながら説明するという必要はあるのかもしれないが,必ずしも起案ということには結びつかないのではないかなと思った。
 ただ,導入研修を実施する上で,法科大学院を卒業した修習生が何をこれから学ぶべきか,何が伝えられるかということは,現在,現場で修習を担当している人たちは必ずしもわかっていないのではないか。私も法科大学院を卒業した修習生と付き合う機会があまりなく,また,法科大学院を卒業した弁護士はまだ修習生を指導する地位にはないと思う。そうであれば,法科大学院を卒業した修習生が何を必要としているかというのは,やはり研修所教官が把握し,それに基づいて導入研修をする必要があるのではないか。教官が直接導入研修をやるかどうかは別にして,その素材を提供するという必要があるのではないかと思う。
 その何かということについて,現実に法科大学院の卒業生たちがどういうレベルかというのは,酒巻先生のお話のように,本来身に付けているべきものと現実に身に付けているものとは別の問題であるので,現実に合わせて導入研修を実施するのであれば,司法研修所の教官らが関与して何をやるか,どういう材料を用意するかということを検討していく必要があるのではないか。

(大橋委員) 弁護士が起案と言っているときは,別に細かい形式のことを考えているわけではなくて,内容を考えた上で文章表現をするという一切のことを,起案と呼んでいる。つまり,これこれについての事実認定をしろとか言うよりも,弁論要旨を書けと言えば,お互いに何をするかというのが分かるわけで,そういう感覚が強いために,どうしても起案という言葉を使ってしまうのだろうと思う。決して形式にこだわるわけではない。
 ただ一つには,やはり法科大学院において,法文書作成というか,文章表現能力というものが,必ずしも正当な扱いを受けていないと感じている。つまり,司法試験の受験指導との兼ね合いがあったために,何か中途半端な形で文書作成の指導がされていて,どこまで法科大学院修了者が文書作成について知っているかを修習を実施する側で受け取れていないのではないか。
 私は例えば,酒巻委員がおっしゃるように,修習においては法科大学院で身に付けるべきものを身に付けていることを前提として進めばいいと考えている。法科大学院と修習の役割分担がお互いにまだはっきりしていないために,ここまでやっていないのはさらに修習でフォローしてあげなくてはいけないのか,それとも元々修習で本来やるべきなのか,はっきりしていないのだと思う。例えば民事であれば,具体的な証拠による事実認定というのは,やはり法科大学院教育ではなかなか難しいと思うし,例えば証拠の評価などは証人の顔を見なければ評価できないようなものだろうから,そうした部分は司法修習の役割なのだろう。
 つまり,司法修習でやったほうがいいものは何かということ,それと法科大学院教育でやれるもの,やるべきことの切り分けというのがどうしてもうまくできていない。双方の理解が不十分であるために,お互いに譲り合ったり,あるいは重複してしまったりという問題があるのだろうと思う。
 したがって,現段階では,先ほど研修所教官が知っているというお話もあったが,法科大学院のほうからここまでは自分たちでやっていることだから安心してくれという言葉をいただければ,修習の側としては非常に有り難い

(鎌田委員) これまでに何度も,この冒頭修習とか導入的教育をめぐる議論というのはされてきて,既に何人もの委員,幹事から御発言のあったところであるが,その中で私自身が個人的に懸念していたのは,例えばある種の弁護士の方からすると,弁護修習に来て初日にともかく事案を渡して訴状を書けとか,準備書面を書けとか,弁論要旨を書けと指示しても何も書けない,何も勉強しないできているということになり,これが法科大学院教育に対する不信となって,だからこそ修習に入る前に,起案といってもむしろ書式に合わせた書類の作成ぐらいは教えておかなきゃいけないという,このような議論が一部でなされていたということがある。今のそれぞれの委員,幹事の御発言は,やはり法科大学院教育の果たすべき役割と実務修習の果たすべき役割と,それぞれ主たる任務があって,その両者を正しくつなぐ何らかの手当てをすることが望ましいという点で,概ねコンセンサスがあるように思う。
 そういう意味で,弁護士会においても各単位会でそれぞれの考えに従ってそれぞれの立場から導入的教育をしているという段階から,全国で統一して今議論されたような認識を前提にした,望ましい導入的教育の在り方というものが実践される体制がとられるとなると,まだまだ今の段階で検討しなければいけない課題はあるとは思うが,法科大学院と司法研修所における実務修習とをつなぐ,次の良いステップが見えてくるようになるのではないかということで,幹事会の御提案については賛成をしたい。

(高橋委員長) 法科大学院側として,山本幹事から御意見はあるか。

(山本幹事) 私自身は幹事会では,弁護修習だけではなくて,裁判修習,検察研修でも同じようなことが必要ではないかと申し上げたが,裁判所と検察庁については,それぞれ分野別修習各クールの冒頭で導入的教育を実施しているというお話だった。
 せっかく全ての修習生が一堂に会する機会であるので,そこで法律家のそれぞれの在り方がどういうものなのか,この修習でどういうことを学ぶのか,最初の段階で明らかにすることは,非常に重要ではないかと思っている。

(大橋委員) 若干,法科大学院の学生あるいは修習生の名誉のために少し付け加えたい。実際の事件を担当していない者にインセンティブを与えるのは,法科大学院でも難しいだろうし,修習の場でも非常に難しいわけで,多くの人は弁護士になって自分の依頼者の顔を見たときに,やはりこの人を何とかしてあげようといろいろなことを考えるし,いろいろな力が出てくるのだと思う。逆に言えば,その当時は余り聞いていないことであっても,法科大学院において,あるいは修習において,きちんと説明しておいていただくということが,やっと2年後,3年後になって先生の教えたことが何であったか分かるということになるのだと思う。

(酒巻委員) 基本的には私も賛成であるし,幹事会のおまとめで結構だと思う。実際に実施するとなると,先ほど御紹介のあった,つまり明後日合格するであろう新第65期司法修習生の修習が開始される11月末からおやりになるということか。

(笠井幹事) 新第65期から準備をしていくということはなかなか難しく,実際に行うのは第66期からということになろう。日弁連との協議でも,現在,その方向で検討を進めている。

(高橋委員長) 先ほども少し申し上げたが,起案という言葉について,使っている方が2つの意味で使っておられるのかなという思いを持っている。弁護士の中でも一部の方は,起案というときにはやはり事案の分析,事実認定の見通し,そこを深く考えた上で文書にする,それを一括して起案と言っているのであろう。自分たちはそうしてきたからと,そういう意味で使っている「起案」だろう。
 私も升味幹事が言われた点を非常に強く危惧するところで,今の学生諸君はマニュアル好きで,そして,そういったマニュアルがたくさんあるようだ。私も弁護士の方と共同で,民事弁護研究の授業をしたことがあるが,ひな型,モデルがあるからか,学生たちはうまく訴状を書いてくるしかし,弁護士教員は,ここが大事だと形式とは別の角度から指導していた。起案という言葉をこのような実質的な意味で使っている方に対しては,そう大きな問題は感じないが,ただ残念ながら,鎌田委員が言われたように,一部の弁護士の方は,まさに自分が修習時代にやってきたとおり,記録を渡して起案しなさいという指導を行う危険がある。この種の起案も分析を踏まえての文章化なのであろうが,それをやると今の修習生はマニュアルに頼って考えてしまう。こちらは厳に慎むという方向で,これから教材等も御検討いただければと思う。
 自分が受けてきた修習と,これから自分が教えるものが違っていることに,戸惑いを持つ弁護士もいらっしゃる。裁判所,検察庁はある程度組織的にカバーしているが,弁護士会には小規模会もあるため,なかなか浸透していない。そこで,導入教育の2日間が安易なほうの起案になったのでは,何の意味もない,むしろ害が大きいであろう。
 それでは,確認をさせていただくが,少なくとも現状においては,分野別実務修習,特に弁護実務修習に円滑に移行するための導入的教育を実施する必要性は否定されないということでよろしいか。
 また,幹事会報告にもあったが,全国の弁護士会に共通のカリキュラムとして,第1クールの早い段階で1回,刑事弁護・民事弁護各1日の合計2日間行うことについてはよろしいか。

(出席委員全員) 了承

(高橋委員長) ひととおり御意見を伺ったので,簡単に本日の議論を整理させていただく。
 まず,「弁護実務修習における導入的教育について(第21回幹事会における議論の整理)」に記載された内容については,特に異存がなかったとまとめさせていただく。
 また,内容に関して,起案にこだわるのではなく,法科大学院で修得した知識等を実務の中でどのように使っていくのか,どのようにして具体的事案を分析,検討していくのかという基本的な考え方を指導するなど,弁護士倫理等も含めて,導入段階で全員を集めて実施するのにふさわしい,効果的なカリキュラムを検討すべきであるとの意見についてはいかがか。このような御意見が大勢であるという整理でよろしいか。

(出席委員全員) 了承

(高橋委員長) 再三申し上げたように,さらにこの趣旨で教材も含め,どのように実施していくか,それは日弁連を交えて関係者の間でさらに詰めていただきたい。

(鎌田委員) 最後の点であるが,最終的な責任は日弁連が負うのか,あるいは研修所が負うのか

(高橋委員長) 日弁連との協議も含めて司法研修所で取りまとめていただく。

(笠井幹事) 弁護士会において弁護実務修習を行う前提ではあるけれども,最終的には司法研修所のほうで修習全体を統括する。当然,司法研修所においてもその内容をどうするかというところにコミットはしていきたいと考えている。

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