政府公表資料等情報

法科大学院特別委員会平成23年1月26日(第43回)議事録より抜粋(下線は当サイトによる)

【田中成明(財団法人国際高等研究所副所長)座長】
 それでは議事に入らせていただきます。第3ワーキング・グループにおかれましては、平成22年の新司法試験の結果を踏まえた各法科大学院の教育の改善状況について調査を実施していただいていたところです。一定の結論が得られたということでございますので、今日は第3ワーキング・グループの主査である永田委員から、各法科大学院における教育の改善状況に係る調査結果についてご報告をお願いします。

【永田眞三郎(関西大学法学部教授)委員】
 ・・今回の調査では、昨年1月に本ワーキング・グループが報告した第1回の改善状況調査で指摘した課題等を中心に、各法科大学院での改善の進捗状況について確認を実施いたしました。調査方法でございますが、具体的な調査方法としましては、第1回の改善状況調査の時と同様でございます。まず、すべての法科大学院に対して書面での調査を実施し、教育の改善の進捗状況について全体的な把握を行いました。次に、8校に対しましてヒアリング調査を行い、そのうち3校を含む合計28校に対しまして実地調査を実施いたしました。28校の内訳でございますが、第1回の改善状況調査で「重点的にフォローアップが必要」または「継続的にフォローアップが必要」と指摘いたしました法科大学院25校は、この指摘を踏まえた改善の進捗状況につきまして、直接現地で確認をとるために調査を実施いたしました。さらに書面調査および平成22年新司法試験の結果を踏まえまして、修了者の質の確保に早急に取り組む必要があると考えられる法科大学院8校に対してはヒアリング調査を実施し、その結果、より詳細に確認することが必要と判断された法科大学院3校について実地調査をいたしました。以上、調査28校の内訳でございます。
 次に調査結果についてご報告いたします。各法科大学院は第1回の改善状況調査で、本ワーキング・グループが指摘した事項を踏まえて試行錯誤を重ねながら、改善の取組を強化していると言えます。今回の改善状況調査において確認された改善の取組と今後の課題についてご報告いたします。まず入試の問題ですが、入学者選抜での入学者の質の確保の重要性につきましては、これまでも本ワーキング・グループとして幾度も指摘してきたところでございます。今回のヒアリング調査や実地調査を実施した法科大学院の多くでは、途中経過ではございますが、平成23年度入学者選抜で競争倍率2倍以上の確保に努めるなど、改善の取組を実施していました。途中経過と言いますのは、まだ試験が終了していない法科大学院があるためです。その次に、すでにご案内のとおり、平成23年度の総入学定員が最大時5,825名と比べまして約2割減の4,571名まで定員が削減されるという見通しとなったということも考えますと、各法科大学院の入学者の質の確保に関する意識は着実に改善されていると申せると思います。もっとも数は限られていますけれども、競争倍率は依然として2倍を下回るなど入学者選抜に課題を抱えている法科大学院も見られました。これらの法科大学院では入学者の質の確保の必要性について今一度認識を新たにして、競争性の確保や入学定員の見直しなどの取組を徹底する必要があると思います。出口の方でございますが一部の法科大学院では修了者の多くが修了直後の新司法試験を受験しない、いわゆる受け控えをしている、あるいは受験しても合格率が著しく低いといった状況がなお見られますこのような状況を改善するためには、法科大学院が学生に対して学修の到達目標を明示するとともに、ファカルティ・ディベロップメント等を通じた教育内容・方法の改善や、成績評価・修了認定の一層の厳格化に組織的に取り組むことなどによって、十分な学力を身につけた者のみを修了させ、学生自身も当該到達目標を明確に意識して学修し、十分な学力を身につけたという自信を持って修了できるようにする必要があると思います。成績評価、修了認定の厳格化につきましては、今回ヒアリング調査や実地調査を実施した法科大学院では、GPA制度の導入、成績評価基準の見直しなど、様々な改善の取組がなされていることが確認されました。もっとも報告書に説明しておりますとおり、成績評価や修了認定の在り方についてはなお課題を抱える法科大学院もございます。これらの法科大学院は改善の取組の実効性を早急に検証し、改善を果たせるように組織的な対応を図る必要があると思います。
 なお、個別の法科大学院の改善状況に関する委員の所見につきましては、別紙にまとめております。第1回の改善状況調査で、昨年1月になりますが、重点的または継続的にフォローアップが必要と指摘した法科大学院25校につきましては、昨年にその指摘をしてから1年程度しか経過していないということもございまして、取組の実効性を含めて慎重に見極める必要があることから、第1回の改善状況調査で重点的または継続的にフォローアップが必要とした法科大学院については、現段階では特に変更を行わないで、今回の改善取組の進捗状況という観点から所見としてまとめました。また、新たに調査を実施した3校につきましては、継続的にフォローアップが必要と判断いたしました。詳細につきましては別紙をご確認いただきたいと思います。
 最後に、先ほどもご説明しましたとおり、各法科大学院においては第1回改善状況調査における本ワーキング・グループの指摘事項などを真摯に受け止めて改善の取組を強化しています。ただし、改善の取組の進捗状況につきましては別紙で示したとおり、各法科大学院で差があることもまた事実であります。各法科大学院は、引き続き、組織の在り方の検討や教育内容・方法の改善等に早急に取り組むとともに、改善の取組及びその効果について不断に検証を重ね、実効的に改善を果たせるよう組織全体で引き続き取り組む必要があります。私ども本ワーキング・グループとしては、各法科大学院のこれらの改善が一層加速され、実効を挙げるよう、平成23年度入学者選抜の結果、平成23年の新司法試験の結果を踏まえまして、引き続き改善状況調査を実施する必要があると考えております。
 私からの報告は以上でございます。

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明につきましてご意見・ご質問などございましたら、ご発言をお願いいたします。
 実際にヒアリングとか、各法科大学院の実地調査をされたご感想ですけれども、各法科大学院は、こういう調査に対しては余計なおせっかいだという反応なのでしょうか、それとも、自分たちに問題があるという認識なのか、そのあたりの反応はいかがでしょうか。

【永田委員】
 おせっかいであるとか、調査そのものについて協力する必要はないんじゃないかというような反応は、私の確認しております範囲にはほとんどないですけれども、やはり調査の基本的な視点である競争倍率の問題だとか、その他の視点につきましては若干の議論がある。しかし、概ね共通の認識になって、入口の問題も、競争倍率2倍を確保して質を上げなきゃならんということで認識がなされてきているし、それから成績の厳格化、あるいは教員の取組全体を組織的にやるべきだというあたりは、ほぼ一致している。若干、議論が見られるところもございましたけれども、基本的には最初のこの委員会でまとめてくださった報告書の方針については、共通の認識になっていると感じました。

【井上正仁(東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授)座長代理】
 私も第3ワーキング・グループのメンバーとしてヒアリングを行い、あるいは現地に行って各校の先生方とお話をしたのですけれども、一般的に言って、去年に比べれば、危機意識というか、深刻な状況にあるという認識はかなり強まっているように感じました。ただ、大学によってやっぱり温度差があり、積極的に組織的な取組をなさっているところもある一方で、議論はしておられるようなのですけれども、組織として具体的な取組がなされていず、教員個々に任されていて、その教員個々の対応にバラツキがあり、全体として状況が改善されているというようには見えないところもありました。そういう問題を抱えているところについては、我々も実地調査の最後に、所見として先生方にお伝えしており、こちらの考え方とは違う考え方を持たれている方々も当然おられるのですけれども、概ねこちらが申し上げたことを正面から受け取ってくださり、改善したいというふうには言っていただいてます。ただ実際問題として、非常に深刻な状況になってしまっているところでは、その状況を大きく変え得るような具体策というものがあるのか、模索してもなかなか見つからない、というのが実情であるのではないかとも感じられました。学生さんともいろいろお話したのですけれども、これも大学によってかなり温度差があり、深刻な状況にあるところでも、あまり危機意識を持っていないというか、のんびりしていて、ロースクール生活を楽しんでいるように見える。楽しむのは良いのかもしれませんが、危機的な状況にあるのにそれで大丈夫ですかと言いたいような感じを持つことが少なくありませんでした

【椎橋隆幸(中央大学大学院法務研究科長)委員】
 姿勢としては真摯に取り組んでおられる法科大学院が多いと言える一方で、ただそれが実際に効果に結びつくと判断できるような組織的な取組となっているかどうかについては、なお分かり難いところが依然としてあるという御説明と認識しました。それから、前に言われていた悪質なというか、改善を求める見解を出した事項に対してあからさまに反対するとか、一部の授業を予備校に丸投げする件とか、そういうような問題のある事例についてはもうなくなっているという認識でよろしいでしょうか

【井上座長代理】
 前者について、法科大学院として組織的な取組をされている、取組としてはかなりいろいろなことをやっておられるけれども、その効果は1年ぐらいでは当然現れないので、その効果がどう現れるのかを見守りたいというところと、議論はしておられるようだが、組織的な対応、例えば厳格な成績評価を図っていると言われるのだけれども、よく聞いてみると、それをシステム化し組織として管理するというような具体的な措置が取られていず、基本的に各教員に任されていて、各教員の対応がバラバラであるというところがまだあるということです。そういったことはやはり問題ですので、改めていただく必要があるというのが我々の意見なのです。

【永田委員】
 最後にご指摘があった具体的な話ですけれども、それについては具体的には改善されているということで、基本的にそういう提携ということがよくないということが改められたかどうかは確認できませんでしたけれども、実際にはもう大きく変わっておりますし、大学全体的に見ましても、基本的にもう少し出直そうというような雰囲気も出てきておりますので、前回のように正面からこうして何が悪いんだというような姿勢はもう無くなっていたという状況です。実際にはすでにそういう問題のある制度であるとか、取扱については廃止している、そういうことでかなり浸透している、あるいは理解されつつある、というふうに私のほうは認識しています。

 (中略)

【永田委員】
 ・・やはり法科大学院の教育として問題がある、あるいは最終的なパフォーマンスというか、成果に結びつかないのは、やはり修了時点の学生の力量と、新司法試験の距離にギャップがある、そういうことが問題で、それはやはり中の問題で、到達目標と言ってもいろんな意味がありますけれども、ここまでという到達目標をはっきりと教員も認識し、それを受けて、法科大学院生もきちっと認識して勉強をする、そういう風に改善していこうとしている大学は一定の成果があるし学生にも活気もあるんですが、そこがやはりはっきり見えてない教員にも見えていないし学生にもしっかり見せていないというところが一番問題で、そういう法科大学院はやはり試験問題を見ましても、いい問題でも、同じ系統の科目であっても条文整理ばかりを重視したり、旧司法試験型の問題で処理したり。それぞれは完結しているんでしょうが、先ほど申し上げましたように組織的に話がされていないので、教育ですからそんなに何もかも統一する必要はないんですが、同じ方向を見ていないというようなところがある。そういうことで、先ほどおっしゃった成績の厳格化、ごく一部サンプルでしか試験問題や答案を見ませんけれども、かなり如実にわかる。

【井上座長代理】
 成績評価の厳格化については、GPAを取り入れて、それが進級率だとか修了率に表れてきており、学生と話しても、学生の間に良い意味での緊張感が生まれてくるという、そういう効果はみられるのですけれども、制度は作ったものの、個別の成績評価は完全に個々の教員に任されていて、そこのところがまだ相当甘い。学生の方にも、甘くしてもらっているという認識があり、それでは自分たちとしても本当の実力がわからなくて困るという意見の人もいました。全国の法科大学院全体がそうだと受け取られると困るのですけれども、特に深刻な状況にある法科大学院の中には、教員も学生もそれなりにやっておられるのですけれども、外の世界の厳しさとの間で落差があり、修了した段階では学力がその外のレベルには達していないか、あるいは達しているという自信を持ち得ないため、修了直後の司法試験を受ける率が目立って低いし、低くなる一方というところがあるのです。

【田中座長】
 今、井上座長代理がおっしゃった、いわゆる受け控えという実態がかなり複雑化してきた感じでして、修了生自身が自主的にやっている場合と、大学として修了認定はするけれども、その年の司法試験は受けないようにアドバイスする場合とか、あるいはそもそも司法試験は受けないということで、いつまでも法科大学院にいても仕方ないから修了させる場合など、いろんな対応をしてるようなんですね。

【井上座長代理】
 我々が今回調査した限りでは、大学側が積極的に受けさせないというところはなかったと考えています。ただ、修了前後の時期に修了生のモチベーションをあげるような取組をほとんどしていず、あとは本人の責任だとして放置している。もちろん、施設を使わせたり、相談に乗ったりするという形で一定の努力をしておられるところはあるのですけれど、学力に自信を持って修了するという状態にはなかなかできていない。そういうところが、受け控えが目立って多くなっているという印象です。

【永田委員】
 修了時の力量と新司法試験のレベルの距離ですが、本来あってはならないことで、法科大学院を修了したら、新司法試験の受験資格が他の者と違って与えられるんですから、相当の力量を持つ者を修了させなければならない。こういうことが第1回の調査の時と比べまして今回はかなり認識されるようになった。そういう意味で成績評価をかなり厳しく、たとえば進級を半分位はさせないように、そしたら入口でもっとがんばれよってことがあるんですけれども、入口で入れてるからそうなっちゃうんだと、そういう意味で、修了した時の力量というものが程度を成してないというのは、制度的に問題なんだという認識はずいぶんはっきりしてきて、それは変わってきている。これも含めまして、前回も調査をして、今回も調査をして、そして、意見交換したときに、やはり相当程度改善される、それから一定程度改善されるという法科大学院が相当数ありますので、そういうところから見ますと、やはりかなり私どもの、先ほど田中座長がおっしゃった方向を理解して、そして相当数の法科大学院が悩ましい問題を抱えながらも進めようとしているということは言えるかと感じます。

【土屋美明(一般社団法人共同通信社論説委員・編集委員)委員】
 ちょっと質問なんですけどね、報告書を読んでて、どうしてこういうことが起きるのかちょっとわからないところがあるんです。たとえば4ページ上の方なんですけど、明らかに基礎的な理解を欠いていると思われる答案に合格点ないしそれ以上の評価を与えていると書いてあります。なぜこういうことが起きるのかというのが、その理由については法科大学院側から何か説明があったんでしょうかというのが1つ目です。それから、もうひとつ伺いたいと思ったのは、文部科学省が、ここでも議論したお話ですけれども、いろいろな支援措置の見直しについては何か意見が出たこととかございますか

 (中略)

【井上座長代理】
 財政支援の見直しは、文科省との関係での話であり、ワーキング・グループないしこの特別委員会としてその措置を取るというものではありませんので、直接こちらに何か言ってこられる筋合いの話ではないのだと思います。前者の点については、教員が大甘だと言うほかなくて、学生がたとえば1年生であるとか、あるいは人数も限られているという場合に、いきなり不可を与えてもう進級させないというのは過酷だと思うのでしょうか、大学の学部の段階では、そういう教員が少なからずいるように思いますがそれと同じような気分でつけておられるのかもしれません。我々としては、ごく一部の試験問題と答案しか見ていないので、一般化するのは危険ですけれども、見させていただいた限りで所見はお伝えしていまして、当の担当の先生がその場におられることもありますが、別に遠慮しないで、個々の学生との関係では、温情的な扱いをしてあげるのは教育者としてあるべき態度のように見え、不快な思いをせずにもすむのかもしれないけれども、結局は、その学生にとても不親切になるということを申し上げています。つまり、学生が客観的に自分の学力がどの程度かということを常に認識しながら学修していかないと向上しませんし、修了して外に出たら厳しい、全国レベルでの評価にさらされるわけですので、その場だけの温情的扱いはかえって不親切になる。そのことはかなり厳しく申し上げています。それに対して、あなたの考えの方がおかしいといった反応は、少なくともその場では返って来ていません。

 (中略)

【椎橋委員】
 公的な支援の見直しの対象になるかならないかという指標が2つありますが、先ほど最初の入試の競争倍率という関係の議論がございましたけれども、もうひとつの新司法試験の合格率の問題について、これを上げるために、法科大学院での授業、自学自修、これらの勉強によって力をつけて受験に向かって行く、これが一番理想的な形なんですけれども、試験の合格率を上げるために予備校に通う、あるいは予備校的な勉強をするというようなことに走る恐れがないかという不安があったんですけども、そういうような調査を委員の先生方がされるかどうかわかりませんけれども、そういうような事態があるのか、あるいは、答案をご覧になっててそういうようなところがあるのかもしれないなというようなことをお感じになったこととかありませんでしょうか。

 (中略)

【井上座長代理】
 前回やや問題があると思われるところもあったのですけれども、組織として予備校に通わせているとか、予備校に行くことを推奨しているといったことはうかがえませんでした我々は学生とも面談をし、予備校にどのくらい行っているのかとか、そういうことを聞きますけれども、個々的にはいるかもしれない。そういう人は元々そういう勉強の仕方をしていて、ロースクールに行くのは受験資格を取るためだけというふうに割り切っており、授業が終わるとすぐいなくなる。そういう人は一定数いるかもしれないのですが、他の学生にも実態はよくわからないみたいです。そもそも我々の面談に応じてくれる学生は、大学に熱心に来て勉強している人たちですので、そうでない人のことはよくわからないようなのです。ただ、模試だとか答練といったものを受けている人は少なからずいる。また大学として、たとえば、若手の弁護士に話をしてもらう、司法試験はこういうものだとか、自分は勉強はこうしたのだとかそういう話をしてもらうといった対応をしているところはいくつかあるようです。しかし、それで目立って効果があるというふうにも思えませんし、学生もそれをどれだけ評価しているのかは分からないというのが正直なところです。

 (中略)

【田中座長】
 ・・専門職大学院の場合、修了者の質の保証が深刻な問題なのですけれども、専門職大学院の中では、法科大学院は、質としては他の専門職大学院に比べれば数段ましな状態にあるのではないでしょうか。専門職大学院のひとつとして見た時に、法科大学院の質の維持の面でプラスもあればマイナスもあるのは、やっぱり日本の試験文化の影響が一番強い司法試験による規制が強すぎることです。司法試験に合格するとことと、ロースクールが学位を出すことの関係がうまく連動してないという問題があり、修了者を受け入れる側の法曹三者というギルド集団が、なかなか体質を変えないというところも大きな問題があります。そのあたり、大学の教育の質そのものを変えることと、司法試験の制度と、法曹全体の活動領域とか活動スタイルの転換ということを結びつけて、かなり構造的な変革をしないと、新しい法曹養成制度は定着しないところがあると思われ、安定するまではかなり時間がかかり、移行期はあれこれ難しいところがあります。・・マイナスの面ばかりに目が向きがちなのですが、全体として従来の法曹養成の仕組みからみると、やはりきちんとした法科大学院制度が相当数できて、そこで法曹養成教育をするという仕組みができただけでもかなり大きな進展だと思います。

 (中略)

【永田委員】
 特別委員会の役割は何かということなんですが、やはり制度が立ち上がって質の確保の問題がすごく大きな問題になって、私もそこに精力を集中させた感じでした。もう実地調査に行くたびにストレスがたまって、そんな明るい雰囲気じゃないですね。やはりなんとかして、と悩んでいる。そういう意味で質の確保のためにこの委員会があると思いますし、これからも果たさなくちゃならんと思うんですが、同時に今ある意味である程度うまくいってる法科大学院をさらにうまく進めて、良き、それこそトップクラスの法曹をどんどん出していけるような、そういうような組織にしていくためにどうするかという議論をしていく必要があると思うんです。そういう意味で、やはり少しここに力を注がざるを得ない事態があったと思うんですけれども、次の段階では、そういう方法も1つのテーマにしていただけたらなと、今日はフリートーキングですから、そういうことを申し上げてお願いしたいと思います。以上です。

 (中略)

【磯村保(早稲田大学法学研究科教授)委員】
 この委員会のマターかどうかということは別として、法科大学院の修了者の質が云々というときに、常に今まで引き合いにされていたのがペーパーテストの成績とか、そういうものが多かったと思うんですけれども、2004年度からスタートして、新司法試験を経て実務で活躍しておられる若い方々がずいぶん増えてきていると思いますので、そういう方々がどういう場面でどういう活躍をしておられるかというようなものが、ある程度データとして集積してくると、その全体としての法科大学院が成し遂げてきたこと、これから改善していくべきことというのが、そちらのほうからもまた見えてくる面あるのではないかと思いますので、ここの委員会だけではなくて、法曹三者の方々を含めて、そういうある種のデータ蓄積というようなものができるといいのではないかというように感じているところです。

【笠井治(弁護士)委員】
 やや細かい部分で恐縮なんですけども、いわゆる新司法試験受験のスリーストライクアウトになった者が、改めてまた別の法科大学院に入学すると、入学試験をするというような現象があるかと思うんですね。そのこと自体の是非とか、権利があるかないかというのは縛っていいのかという議論はあるかと思うんですけど、そうではなくて、改めてまたそういうアプライをして、あるいは、そうでない者については予備試験という逃げ道などを探すことになるのかもしれませんが、法科大学院との関係でいうと、当該法科大学院がそうした者の志願を受け入れて入学を認めるというような現象があるのかないのか、そこらへんをちょっと知りたいなというふうに思っています。実際入学の志願倍率にそれほど大きい影響を与えないだろうなというふうにも思うんですけれども、どんな感じかなというふうにちらっと今思ったものですから、もしおわかりであれば教えていただければと思います。

 (中略)

【田中座長】
 従来からいわゆる三振者について、以前から前の法科大学院を修了して、今試験を受けてる途中だけれども、別の法科大学院でもういっぺんきちんと勉強し直したいといって受けてる事例はあって、それはほとんどの大学が受け入れてる感じなのではないでしょうか。そういう人は今の権利を使い切ったあと、この新しいロースクールの権利は使えるというのは、難しいですけど、両方資格を足された場合にはどうするか。3回目は使い切ってしまえばいいですが、使い切っていない場合はどうするかというようなことは、それは制度的に作られているんでしょうか。

【井上座長代理】
 現実にそういう人が受けてきているところもあるというふうに聞いていますけれども、・・ロースクールの方針として、そういう人を受け入れないというか、よその法科大学院を無事修了している人については遠慮願うという方針をとっているところもある一方で、そのような人も特別視せず、一定以上の学力があれば受け入れるという方針のところもあると聞いています。

【田中座長】
 その辺、これからちょっとなんか問題になってくるかもしれないですね。

【笠井(治)委員】
 どういう問題になるのかがよくわからないですね。

【田中座長】
 もう一度ロースクールを受け直すのか、予備試験に流れるのか、わからないですね。しかし、ロースクールを修了した者が予備試験に受からないというのは、ロースクールの修了認定のレベルが問題になると思われ、ロースクールとしては非常に厳しい状態になります。そのあたり、もともと制度設計の頃から懸念された問題が出てくると思いますので、ちょっと来年以降新しい局面になるかもわからないですね。

【井上座長代理】
 従来のように、ずっと司法試験を受け続けて、歳を重ねていくといった人がどの程度いるのか、正確には把握できませんが、一定数はいるかもしれないという感じは持っています。今回の改善状況調査においても、司法試験の成績など非常に厳しい状況にあるところでも学生の方は余り気にしないで受験し、入学するという人が少なからずいて、話を聞きますと、合格までに時間がかかるのは当然で、それでも自分が努力していけばなんとなかるのではないかといった気持でいる人が結構多い。それは我々から見るとちょっと驚くべき危機感のなさ、切迫感のなさなのですけれども、そういった人がかなりいることは間違いない。従来も、なぜそういう生活が維持できるのか、恵まれているのか、あるいは誰かに依存しているのかもしれないですけれど、ずっとそういう生活を続けていた人がかなりいたそういった人達が法科大学院に入ってきているというようなところもある。法科大学院生の多数を占めるほどとは思いませんけれども、そういう人が結構いるところでは、全体的に温いと言いますか、温室のような心地良さが漂っているようなところがあり、一生懸命やっているトップクラスの人から見ると、そういった状態はモチベーションを落とすので困るということも聞きました。

【笠井(治)委員】
 耳に挟んだだけですからあれなのですが、他の法科大学院を出ていて、その意味での教育の成果がある程度あがっていると。しかし、新司法試験に受けるだけの知識も能力も力量もまだないと。という場合に、改めて新しい法科大学院に入学して、入学した時の成績なり初年度の前期の成績などはいいということは、大いにあるわけですよね。そうすると特待生で奨学金を得られる、こういうことになる可能性もそれなりにはあるようなんですよね。そういうことをしている学生もいるのかなという感じがしましたけど。

【井上座長代理】
 教育現場での経験を基に言いますと、数回授業をして見れば、そういうのはわかると思います。まともな先生ならですね。要するに学力がそれほどない人なのに、一定の知識はあって、知ったかぶりはできる。そういうのは数回授業をやれば、化けの皮はすぐはがれると思います。それを教員が見抜けずに優待生なんかにしているとすれば、そっちのほうがよほど問題だと思いますね。

【永田委員】
 よろしいですか。今の点で。上位校にあって成績がありながら、何回も失敗してしまった、5年で3回失敗している状況があって、その学生が再チャレンジする可能性がないわけではない。しかし、私どもが調査した法科大学院はおよそそういう傾向ではなくて、5年かかってなんとかという、さらに苦節10年型の旧司法試験、そういう形の意欲と資質というのは、自分自身に自信を持っていないからだと思うんです。ですからある大学院の例ですが、30数名3年生がいるはずなのに20名しかいない。どうしてドロップアウトしたんですかと聞いたら、そこの研究科長の見解じゃ、ドロップアウトじゃない、これは企業に行く見込みだとか、あるいは司法書士の勉強をしているという答えでした。もう苦節10年型、新司法試験にしがみつくという層は、この我々が調査した法科大学院にはないと考えてもよいかもしれない、もしくは再チャレンジも。全然ないという訳ではないが。上位校ではひょっとしたら起こるかもかもしれない問題ですが。下位校ではどんどん3年で、もういなくなってくるんですね。これは一例で、問題があったからお尋ねして、反応があったんで、そういう法科大学院もいくつかあると思うんです。そういう意味で、今、笠井委員がおっしゃったような苦節10年型がいて、もう一回再チャレンジするというのは、私どもが調査した限りではあまり現実性はない残念なことですよね、むしろ。しがみつかないんですから。そういうモチベーションを持てない層がある。我々が調査した限りでは、そういうシステムの問題はあまり感じられませんでした。

【田中座長】
 従来の旧司法試験の受験層を、そのまますべて新しいロースクールが受け入れてやっていくという形をそのまま引き継いでいくと、ロースクールの質はなかなかあがらないと思われます。新しいロースクールに入学させる段階で受験者の層をきちんと選択して、一定のレベルを持った者に対して教育していくという形でやっていかないと、従来の司法試験の合格率が、2%、3%だった頃の母集団に、全部ロースクールで学ぶチャンスを与えるという構造をやっている限り、法曹養成制度は全然よくならないんじゃないですかね。そのあたりは法科大学院の側で、法科大学院の教育の質とか、受け入れる学生のレベルそのものの質は相当厳しくきちんと確保しないと、制度改革の効果はでないのではないかと思います。このようにしてロースクール全体の教育の質を向上させ、一定レベルを確保した上で、司法試験ではなく、法務博士の学位そのもので修了者の質を保証していくというシステムに変えていかないと、展望が開けないという感じがします。なかなかそのあたりは、教育する側でも受験する側でも急に意識が変わるわけはないので、難しいところがあると思いますけれども。
 何か、特にこういうことを次期は集中的に審議すべきだというようなことがございましたらお願いします。

【土屋委員】
 先ほど学位の話が出てたんですけど、私が思うにですね。これは今、社会的な評価がそれほど高くないそこを高める努力をもっといろいろ考えて、対策を講じる必要があるんじゃないかと思います。たとえば、新しい公務員採用試験が平成24年に始まると思うんですけれど、経験者採用ですね。これが始まって、数年前からテスト的な形みたいなように思えるんですけど、経験者採用試験を人事院は始めてますけど、この経験者採用という試験の受験資格が、新司法試験の合格者という枠があってですね、今年度発表された人事院の資料を見ていましたら、法科大学院を修了して、新司法試験に合格した人が4名、採用が内定した。金融庁とかですね。受験者は、確か79人いたっていうんですけどね、そのうちたった4名が採用されたという話があった。たとえばこの類の次回国家公務員採用試験のメニューの中に、そういう法曹資格とか、そういうところとつながってくるような採用試験が導入されてくるのは私は非常にいいと思うんです。残念なのはそれが新司法試験合格者っていうところなんですね。法科大学院の修了生じゃないんです。だから法科大学院の修了生とか、法務博士の学位を持っている人などを対象とした、たとえばそういう試験採用のシステムだとか、いろんなことを検討していく必要があるんじゃないかと思うんです。これからおそらく法科大学院を修了しても、みなさん法曹になるわけじゃなくて、一部の人は企業に行くとかですね、そういうことはあり得ると思うんですね。そういう人たちをどう使っていくか。そういう人たちもおそらくこれから先増えていくだろうと思います。累積的にも含めて増えて。そういう人材活用の道というのはやっぱり議論の余地があると思います。ですからたとえば公務員制度の採用試験の中で、そういう改革が国家公務員レベルでは行われていますけど、地方公務員レベルでは余っているんじゃないか、いろいろあろうかと思うので、そのあたりの検討は、ここで議論する話じゃないかもしれないんですけれども、どっかでちゃんとやっていかなくちゃいけないというふうに思っています。

【田中座長】
 法務博士の学位の問題ですね。

【土屋委員】
 それから法務博士という学位が信用ありませんよね。この間、国立大学協会のアンケートで、パブリックオピニオンで出てきた人たちの意見をパラパラめくって読んでいましたら、法務博士の学位はいらないなんていう、まさに法科大学院を修了した方自身がそういうことを言っているというのがあって、あれっと思ったんです。これも対外的には非常に重要な学位だと思うんですね、私は。それが一定の質が保証されるという証明書でもあるわけなので、そこのところがもうちょっと評価されるにはどうしてやったらいいのかというのを考えていたんです。

【田中座長】
 法科大学院だけではなくて、専門職大学院全体について、学位をどうするかということが問題になっています。現在の日本では、本来、法科大学院の教育の質の問題に関係するのですけれども、各法科大学院の修了認定に対する信用がないから、法務博士というだけでは信用がないのですね。幾つかの特定の法科大学院の法務博士ならばそれなりの信用はあるかもわからないですけれども。土屋委員がおっしゃったような趣旨を実現しようとすれば、現状では、たとえばロースクールの修了資格を与えるための統一試験をして、それで品質を保証しろとか、日本はどうしてもそういう議論になってくるのですね。新司法試験に合格している者については一定の品質が保証されているけれども、なかなか法科大学院の修了ということだけでは質を保証しているという信用までされていないのが、残念ながら現状ですね。そこをなんとかしないとうまくいかないと思われます。

【土屋委員】
 それは私も非常に残念なんですよね。せっかく何年もかけて勉強してくるわけですから、それに対して一定の社会的な評価が与えられるという土壌を作らないと、やっぱり法科大学院に人が来ないということになろうかと思うんですね。そこは法科大学院入学者の質と関連する部分なんだろうと思います。

【田中座長】
 コア・カリキュラムを対外的に発表したりして、これだけのことを法科大学院はやってるんだということを対外的に示して、それを本当に各法科大学院が実証できるようになっていけば、法務博士そのものも一定の資格として信用を得ることができるようになると思います。残念ながら今のところでは、特定の法科大学院の法務博士であればそれはそれで通用するという状況にはあるのですけれども、法務博士一般にはなかなか信用が得られているとは言えない段階ですね。

【杉山忠昭(花王株式会社理事・法務部長)委員】
 ちょっとよろしいでしょうか。今のお話で、私は企業の法務なんでその採用の実態というものをご紹介したいんですけれども。我々企業法務の間で話しているのは、けっこう法科大学院卒業された方、司法修習を終わられた方で、そのまま企業の採用に応募してきてくれる方が結構いらっしゃいますみなさん非常に優秀です。最近あの、こう言うと語弊があるんですけれど、4年制の大学を出た方が、法科大学院生との比較じゃなくて、昔10年前ぐらいに出てきた方と比べてちょっと質が落ちて、なかなか企業として4年制の法学部を出てきた方を取りにくくて、もうやめちゃおうかと、極端な言い方をすると。そんなような雑談をしている状況です。私どもの会社はだいたい平均的だと思うんですけれども、法科大学院を卒業してきて応募された方は、だいたい昔でいう大学院で博士号を取った方と同じようなところで処遇をして、採っているケースが多いです。司法修習を終わられてそのままストレートで来た方、この方々は、司法修習の今のカリキュラムが実務に即応しているということで、その年齢とかというのと同じようなキャリアを積んできたということで。いわゆる、僕らはキャリア採用という言い方をしてますけれども、これぐらいの、学位とか資格っていうんじゃなくて、やってきたお勉強に対してそれくらいの価値はあるだろうということで最初の処遇を決めています。それは私どもの会社だけじゃなくて、聞いてみるとだいたい平均的にそうかなというような感じを持っております。先ほどちょっと思っていたのは、どうしても私は企業からの意見というかお願いになってしまうんですけれど、椎橋委員が先ほど懸念をご指摘されたと思うんですけれども、出口論で合格率というひとつの指標を持ちますと、どうしてもやはり各大学において、それを達成するためには受験テクニック、そういう試験体系にはなっていないというものの、やっぱりテクニックを覚えれば何ポイントかは絶対に上がるだろうと思うんですけれども、そういうふうにならないかな。我々企業は司法制度改革をやったときに、応用力のある実務に来ていただける方が法曹三者にも行くし、それ以外のところにも行く。そういうのが続いてることによって、ひとつの出口の畑として我々も加えていただけるし、我々もハッピーだし、このワーキング・グループでやっていたモニターリングで教育の内容・質でそういうことになってないかで見た場合にはご意見を言っていただけるという活動が、なんらかの形で今後とも継続して、その懸念というものはないようにしていただきたいなというのが、企業側採用の実情と、そういうなんらかのものは持ってるということと、そういう懸念に対して今後とも是非いい方向にやっていただきたいなという、ちょっと感想めいたことなんですけれども。

【井上座長代理】
 今のお話の最後の点ですけれども、教育の中身については、全般的には認証評価の枠組みの中で評価機関がかなり綿密な調査をし、意見を出しているのですが、その中で、たとえば極端に司法試験対策にシフトしているというところがあったとすれば、かなり厳しい指摘をしています。そもそも、設置基準でも認証評価基準でも、司法試験科目だけに傾いた教育ができないような仕組みにしており、その意味で装置は整っているのです。これに対して、第3ワーキング・グループがやっているのは、司法試験の成績が著しく悪い状況が続いているところは、教育に何か問題があるかもしれない、そういう角度から調査をさせていただいて所見をのべるというものでして、たとえば合格率がある大学は50%で、他のある大学は60%であるという場合に、60%のところの方が優れているので、50%のところは60%のところを追い越すようにしてくださいといったことを申し上げているのではないのです。また、司法試験の方も見直してほしいところがあり、今のような数字ですと、おっしゃったようなおそれが、良い教育をしている法科大学院についても出てくるかもしれない。そこで、先ほどの両省のワーキング・チームにおいても、司法試験の方にも問題はないか検討すべきであるということを言っておりますが、司法試験の比重がもうちょっと軽くなってくると、法科大学院でももっと良い教育ができるように思います。現に多様な教育をやっているところがいくつかあって、実際に修了生で、司法試験を通ったのに研修所に行かないで企業に就職し、あるいは受けるのをやめて企業に就職して、精力的に仕事をし、法科大学院で受けた教育が非常に役立っているという人もいますし、採用した側からも評価していただいている例もありますので、そういうところを伸ばしていきたいという気持を関係者は持っているのですが、今は司法試験がご承知のような状況で、どうしてもそれに振り回されてしまっているというのが現状なのだと思います。

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