平成24年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(3)

民法について

おおまかな傾向は、変わっていない。
全問が、知識問題である。
また、形式的にも、内容的にも、易しい。
肢の組み合わせや、5肢から1つ又は2つを選ばせる形式である。
一部の肢さえ判断できれば、正解することができる。
また、訊いている事柄も、基本的な条文・判例ばかりだ。
きちんと勉強すれば、確実に取れる問題である。
地道に勉強していれば、9割以上取るのも、十分可能だ。
短答を無難に合格したければ、民法で稼ぐ。
これが、基本となる。
特に新試験では、民法の比重が大きい。
民事系74問(150点満点)のうち、36問(74点)を民法が占める。
ほぼ半分が、民法ということになる。
全科目(350点満点)で考えても、74÷350≒21.1%。
2割強を、民法が占めている。
初学者は、とにかく民法を取ることを考えるべきである。

他方で、予備試験では、民法の比重は、他科目と同じである。
ただ、学習効率がよいという点。
すなわち、勉強すれば無難に点が取れることは同じだ。
従って、予備でも、まずは民法を取れるようにするのがよい。
もっとも、旧試験組であれば、何もしなくても、民法は取れるはずだ。
そういう人は、行政法、会社法、訴訟法を優先的に勉強すべきだろう。

新試験第18問、予備試験第7問の4は、平成15年改正事項であるが、執行法なので、細かい。

(新試験第18問、予備試験第7問)

 履行の強制に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。

4.賃貸人が賃借人に対して賃貸建物を引き渡さないとき,賃借人は,賃貸人に対し,遅延の期間に応じ,債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を自己に支払うべき旨を裁判所に請求することができる。

 

民事執行法、下線は筆者)

172条1項 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。

173条1項 第百六十八条第一項、第百六十九条第一項、第百七十条第一項及び第百七十一条第一項に規定する強制執行は、それぞれ第百六十八条から第百七十一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第一項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第二項から第五項までの規定を準用する。 

168条1項 不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。

新試験第21問の4は、動産債権譲渡特例法からの出題である。

(新試験第21問)

 債権譲渡に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。

4.A法人がBに対する金銭債権をCに譲渡し,その債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされた場合であっても,Aからの債権譲渡通知がBに到達しておらず,かつ,Bがその債権譲渡を承諾していないときは,Cは,Bに対して自己が債権者であることを主張することができない。

 

動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条1項)

 法人が債権(指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。

もっとも、本問は、5が誤りであることが比較的明らかである。

5.譲渡禁止特約が付された債権であっても差押えをすることはできるが,その差押債権者が譲渡禁止特約につき悪意であるときは,当該債権の債務者は差押債権者に対して譲渡禁止特約をもって対抗することができる。

 

最判昭45・4・10より引用、下線は筆者)

 譲渡禁止の特約のある債権であつても、差押債権者の善意・悪意を問わず、これを差し押え、かつ、転付命令によつて移転することができるものであつて、これにつき、同法四六六条二項の適用ないし類推適用をなすべきではないと解するのが相当である。

(引用終わり)

従って、4については、判断する必要がない。

新試験では、全問正解を狙いたい。
どの問題も、普通に勉強すれば、取れそうな問題である。
若干難しいかな、と思う問題は、11問(22点)。
16、17、18、20、22、25、30、32、33、34、36である。
これらを6問落としたとして、10点。
残りの25問(52点)のうち、4問落としたとして、46点。
合計の56点が、民法の最低ラインかな、という感じだ。

予備試験でも、民法は全部拾いたい。
若干細かい問題は、3問(6点)。
6、7、14である。
このうち一つは取って、2点。
残り12問(24点)のうち、2問落として、20点。
合計22点は、取っておきたい。

商法について

商法も、全体の傾向に変化はない。
会社法の条文が、メインである。
知っているか、知らないか。
それだけで、勝負がつく問題が多い。
例年どおり、細かい条文も訊かれている。
民法と比べて、多少勉強しても、取れないようになっている。
ただ、今年は論文の知識だけでも正解できるものもあった。
例えば、新試験第39問、予備試験の第17問である。

(新試験第39問、予備試験の第17問)

 株式の譲渡に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.株券発行会社が株券の発行を不当に遅滞し,信義則に照らし,株券発行前にされた株式の譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至った場合において,株主が意思表示のみによって株式を譲渡したときは,その譲渡は,会社に対しても,その効力を有する。

イ.譲渡制限株式について,会社の承認を得ないで譲渡がされた場合,その譲渡は,譲渡当事者間において,その効力を有しない。

ウ.株式の譲渡について,会社に対し適法に株主名簿の名義書換請求がされたにもかかわらず,会社の過失により名義書換が行われなかったときは,会社は,株主名簿の名義書換のないことを理由として,株式の譲渡を否定することができない。

エ.株式の譲渡に関する株主名簿の名義書換が会社の都合で遅れている場合には,会社は,その譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことができない。

オ.株券発行会社の株式について,その会社の剰余金の配当の基準日より前に株券が交付されて譲渡されたが,その基準日までに株主名簿の名義書換請求がされずに譲渡人が配当金を受領したときは,譲渡人は,譲受人に対し,受領した配当金相当額の金員について不当利得返還義務を負わない。

1.アイ   2.アウ   3.イエ   4.ウオ   5.エオ

名義書換不当拒絶の論点を知っていれば、アとウは正しいだろう。
それだけで、2が正解だとわかる。
また、同様にエが誤りということもわかる。
それから、イは相対的無効説から、誤りとわかる。

※なお、会社法の規定上は、譲渡は当然に有効である。
ただ、譲渡制限があると名義書換ができない。
その結果、会社に対抗できなくなる。

(会社法、下線は筆者)

130条1項 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない

133条1項 株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる

134条 前条の規定は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一  当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得することについて第百三十六条の承認を受けていること。
二  当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得したことについて第百三十七条第一項の承認を受けていること。
三  当該株式取得者が第百四十条第四項に規定する指定買取人であること。
四  当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること。

さらに、失念株の論点から、オは誤りだろう。
細かい条文の知識まで手が回っていなかった人も、こういうところはしっかり取りたい。

なお、アは、最大判昭47・11・8
イは、最判昭48・6・15
ウは、最判昭41・7・28
エは、最判昭30・10・20である。
また、オは、最判平19・3・8が、不当利得成立を前提とした判示をしている。

新試験第41問、予備試験第19問のアは、施行規則からの出題である。

(新試験第41問、予備試験第19問)

 会社法上の公開会社である大会社の株主総会に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.取締役会は,書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使のいずれもすることができる旨を定めた場合には,株主が同一の議案につき両方の方法により重複してそれぞれの内容が異なる議決権の行使をしたときの取扱いに関する事項を定めることができる。

 

会社法298条、下線は筆者)

298条
1項 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  株主総会の日時及び場所
二  株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三  株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四  株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五  前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

4項 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

311条1項 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。

312条1項 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。

 

会社法施行規則63条、下線は筆者)

 法第二百九十八条第一項第五号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

4号 法第二百九十八条第一項第三号及び第四号に掲げる事項を定めたときは、次に掲げる事項(定款にイ又はロに掲げる事項についての定めがある場合における当該事項を除く。)

ロ 一の株主が同一の議案につき法第三百十一条第一項又は第三百十二条第一項の規定により重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を定めるときは、その事項

細かいが、この辺りの施行規則の知識は、論文でも問われている。

平成21年新司法試験出題趣旨民事系第2問より引用、下線は筆者)

 設問5は,株主総会における議決権行使書面による議決権行使や委任状に基づく議決権の代理行使をめぐる法律問題をきちんと理解することができているかどうかについて試すものである。議決権行使書面による議決権行使の場合,書面に記載されたとおりの議決権行使がされたものとして取り扱われるが(会社法第311条第1項,第2項),委任状に基づく議決権の代理行使は,代理人による投票をもって議決権行使として取り扱われるのであり,このような両制度の趣旨・意義,法的構造の違い等についての基本認識が問われている。@において問題となるのは,まず,賛否の記載のない議決権行使書面について各議案につき賛成又は反対とみなす旨を記載することであるが,これは会社法施行規則第66条第1項第2号により認められており,その有効性を肯定した下級審裁判例も存在する。

ただ、施行規則まで全部フォローするというのは、無理がある。
基本書や答練等で出てきたものを、その都度フォローするという程度でよいだろう。
論文では、六法を参照できる。
それでも、事前に知らないと、なかなか引けない。
一度、自分で確認しておくだけでも、随分違う。
面倒ではあるが、出てきた場合にはきちんと引くクセをつけたい。

予備試験第24問は、合名会社と組織変更の意義さえ知っていれば解ける。

(予備試験第24問)

 合名会社及び合同会社に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.合名会社及び合同会社は,いずれも,社債を発行することができる。

イ.合名会社及び合同会社のいずれにおいても,社員は,定款に別段の定めがある場合を除き,会社の業務を執行する。

ウ.合名会社は,株式交換完全親会社となることができないが,合同会社は,株式交換完全親会社となることができる。

エ.合名会社及び合同会社のいずれにおいても,社員が負う責任は,間接有限責任である。

オ.合名会社が合同会社となるためには,組織変更計画を作成しなければならない。

1.アイ   2.アオ   3.イウ   4.ウエ   5.エオ

合名会社は、社員全員が無限責任社員である。

(会社法576条、下線は筆者)

1項 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一  目的
二  商号
三  本店の所在地
四  社員の氏名又は名称及び住所
五  社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六  社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準

2項 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

従って、エが誤っている。

また、組織変更とは、株式会社→持分会社又は持分会社→株式会社となる場合である。

(会社法2条、下線は筆者)

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

26号 組織変更 次のイ又はロに掲げる会社がその組織を変更することにより当該イ又はロに定める会社となることをいう。
イ 株式会社 合名会社、合資会社又は合同会社
ロ 合名会社、合資会社又は合同会社
 株式会社

従って、オも誤りとなる。
この時点で、5が正解と確定する。

新試験第54問、予備試験第29問は、一見すると解答となる肢がない。

(新試験第54問、予備試験第29問)

 手形は,主として「信用の手段」として規律され,小切手は,主として「支払の手段」として規律されている。次の1から5までの各記述のうち,このことと関係がないものはどれか。

1.約束手形の振出人は,第一次的な支払義務を負うが,小切手の振出人は,支払人が支払拒絶をしたことを条件とする支払義務を負うにとどまる。

2.小切手においては,支払人が銀行その他の金融機関に限られ,かつ,振出人は,その支払人の下に小切手の支払に充てられるべき資金を有していなければならないが,為替手形においては,そのような制約はない。

3.為替手形においては,支払人が引受けをすることができるが,小切手においては,支払人が引受けをすることはできない。

4.手形においては,満期の定め方として一覧払のほかに確定日払,日附後定期払及び一覧後定期払も認められるが,小切手においては,一覧払しか認められない。

5.小切手の支払呈示期間は,原則として振出日の日付から10日内とされているが,一覧払手形の支払呈示期間は,原則として振出日の日付から1年内とされている。

どれも関係がありそうだ。
しかし、新試験・予備試験の短答にはゼロ解答はない。
(かつて旧試験では、「正解がない場合は0を解答する」というものがあった。)
かならず、どれか1つ、正解がある。

おそらく、正解は1なのだろう。
小切手振出人の担保責任自体は、信用証券化防止の規律ではないからである。
もっとも、担保責任を「負うにとどまる」のはなぜか。
それは、引受けが禁止されているからだろう。
だとすると、3と同様、関係があるのではないか。
従って、本肢の「とどまる」の部分は、ない方がよかったと思う。

新試験第55問は、旧試験組にとっては易しい。
旧試験では、論文で毎年のように手形が出題されていたからである。
しかし、新試験から参入した人は、あまり手形法を勉強していない。
そういう人にとっては、厳しかったかもしれない。

(新試験第55問)

 AがBを受取人として振り出した約束手形を,Bは,白地式裏書によってCに譲渡し,Cは,この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは,記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは,この手形を取得する際,Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは,この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は,Fである。この手形の裏書欄の状況を簡略化して示したものが【図】である。
 この手形に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

 【図】
第1裏書 B → (白地)
第2裏書 D → E
第3裏書 E → F

ア.この手形には,裏書の連続が認められる。

イ.Fが,この手形をEから取得した際,DがCから盗取したものであることを知っていた場合,Aは,Dによる盗取の事実とFの悪意を証明することにより,Fに対する手形金の支払を拒むことができる。

ウ.Cは,盗難の時から2年間,この手形がCから盗まれたことを証明することにより,Fに対し,この手形の返還を請求することができる。

エ.この手形が金庫から盗み出されたことにつき,Cに重過失があった場合でも,Cは,この手形について遡求義務を負うことはない。

オ.判例によれば,Dは,この手形について遡求義務を負うことはない。

1.アウ  2.アエ  3.イウ  4.イオ  5.エオ

アは、手形法77条1項1号、16条1項により正しい。

手形法、下線は筆者)

16条1項 為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シタルモノト看做ス

77条1項 左ノ事項ニ関スル為替手形ニ付テノ規定ハ約束手形ノ性質ニ反セザル限リ之ヲ約束手形ニ準用
1号 裏書(第十一条乃至第二十条)

イは、既にEが善意取得しているから、Fは悪意でも承継取得できる。
従って、Aは支払いを拒めない。
よって、誤っている。

ウは、手形法には民法193条のような特則はないから、誤っている。
(なお、手形法77条1項1号、16条2項参照。)

手形法16条2項、下線は筆者)

 事由ノ何タルヲ問ハズ為替手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

エは、白地式裏書の場合、券面上に裏書署名がない。
従って、遡求義務(手形法77条1項1号、15条1項)は生じない。
よって、正しい。

一方で、Dは券面上に裏書署名をしているから、遡求義務を負う。
よって、オは誤り。

正解は、2ということになる。

予備試験第30問も同様に、手形を勉強していないと辛い。

(予備試験第30問)

 外形上通常の譲渡裏書であるが,取立委任の目的をもってされたいわゆる隠れた取立委任裏書について,手形上の権利は,通常の譲渡裏書におけると同様,裏書人から被裏書人に移転するとする説がある。次のアからオまでの各記述のうち,この説を採った場合の結論となり得ないものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.被裏書人が取立委任の目的につき善意の第三者に手形を裏書譲渡したときは,その第三者は,善意取得の規定によって保護される。

イ.被裏書人は,裏書人に対し,担保責任を追及することはできない。

ウ.取立委任の合意が解除されると,被裏書人の取立権限は消滅する。

エ.手形債務者は,被裏書人に対する人的抗弁を対抗することができない。

オ.被裏書人が破産した場合,裏書人は取戻権を有する。

1.アイ   2.アエ   3.イオ   4.ウエ   5.ウオ

被裏書人に権利が移転している以上、その譲受人も当然に承継取得できる。
従って、善意取得を論ずる余地はない。
よって、アは結論となり得ない。

被裏書人に権利が移転していることからすれば、裏書人の担保責任を追及できそうである。
しかし、裏書人・被裏書人間には取立委任の合意がある。
その趣旨から、担保責任の追及はできない(人的抗弁)と解しうる。
従って、イは結論となり得る。

設問の説(信託裏書説)からは、被裏書人が手形上の権利者である。
取立委任の合意は、裏書人と被裏書人間の特約に過ぎない。
だとすると、取立委任合意が解除されても、被裏書人は手形上の権利を行使しうる。
それが、素直な筋である。
しかし、取立委任が解除されれば、被裏書人には手形を所持する実質的理由がない。
そこで、そのような被裏書人の権利行使は、権利濫用として許されない。
そういう解釈も可能とされる。
従って、ウは、結論となり得る。

手形債務者は、手形所持人(権利者)に対する直接の人的抗弁を主張できる。
被裏書人を手形上の権利者と解する以上、同様に、被裏書人に対する人的抗弁を主張できる。
従って、エは、結論となり得ない。

被裏書人に権利が移転しているとすると、手形は被裏書人の破産財団に属する。
従って、裏書人は取戻権を有しない。

破産法62条)

2条14項 この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。

62条 破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第六十四条及び第七十八条第二項第十三号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。

よって、オは結論となり得ない。

以上から、2が正解となる。
なお、アエまたはイウが判断できれば、肢の組み合わせで結論が出る。
従って、オは判断する必要がない。

新試験では、確実に取るべきは、5問(10点)。
37、39、40、43、47である。
このうち、1問落としたとしても、8点。
なんとか取りたい問題は、8問(16点)。
42、44、45、46、50、51、53、55である。
このうち半分を取って、8点。
合計16点が、最低ラインかな、という感じである。

予備試験でも、確実に取りたいのは5問(10点)。
16、17、18、24、25である。
1問落としたとしても、8点を取る。
頑張って取りたいのは、6問(12点)。
20、21、22、23、27、30である。
半分を拾って、6点。
合計14点が、ここでの最低ラインという印象だ。

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