平成24年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(6)

刑訴法について

刑訴も、概ね例年どおりの傾向である。
ただ、昨年よりは、素直な問題が多かった。
解きやすいと感じた人が、多かったのではないか。
特に、論理問題は、どれも易しかった。
これをミスなくきちんと解けるかが、一つのポイントである。

新試験第23問のアは、最決平20・4・15である。

(新試験第23問)

 捜査機関が行う写真等の撮影に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。

ア.何人もみだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有しているから,公道を歩行中の人に対する警察官による容貌等の写真撮影は,撮影される本人の同意がなく,また裁判官の令状がない場合には,現に犯罪が行われ若しくは行われた後間がないと認められる場合であって,証拠保全の必要性及び緊急性があり,その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるとき以外は許されない。

 

最決平20・4・15より引用、下線は筆者)

 被告人本人の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,所論引用の各判例(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁最高裁昭和59年(あ)第1025号同61年2月14日第二小法廷判決・刑集40巻1号48頁)は,所論のいうように,警察官による人の容ぼう等の撮影が,現に犯罪が行われ又は行われた後間がないと認められる場合のほかは許されないという趣旨まで判示したものではない

 ・・捜査機関において被告人が犯人である疑いを持つ合理的な理由が存在していたものと認められ,かつ,前記各ビデオ撮影は,強盗殺人等事件の捜査に関し,防犯ビデオに写っていた人物の容ぼう,体型等と被告人の容ぼう,体型等との同一性の有無という犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手するため,これに必要な限度において,公道上を歩いている被告人の容ぼう等を撮影し,あるいは不特定多数の客が集まるパチンコ店内において被告人の容ぼう等を撮影したものであり,いずれも,通常,人が他人から容ぼう等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所におけるものである。以上からすれば,これらのビデオ撮影は,捜査目的を達成するため,必要な範囲において,かつ,相当な方法によって行われたものといえ,捜査活動として適法なものというべきである。

(引用終わり)

これは、司法試験平成20年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成20年最新判例肢別問題集より抜粋)

1:下記の二つの判例は、警察官による人の容ぼう等の撮影が,現に犯罪が行われ又は行われた後間がないと認められる場合のほかは許されないという趣旨まで判示したものではない。

最大判昭44・12・24(京都府学連事件)
 「憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。
 これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。しかしながら、個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法二条一項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。
 そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法二一八条二項のような場合のほか、次のような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときである。このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになつても、憲法一三条、三五条に違反しないものと解すべきである」。

最判昭61・2・14
 「速度違反車両の自動撮影を行う本件自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいつて緊急に証拠保全をする必要性があり、その方法も一般的に許容される限度を超えない相当なものであるから、憲法一三条に違反せず、また、右写真撮影の際、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになつても、憲法一三条、二一条に違反しないことは、当裁判所昭和四四年一二月二四日大法廷判決(刑集二三巻一二号一六二五頁)の趣旨に徴して明らかである」。

 

2:平成14年11月,乙が行方不明になったとしてその姉から警察に対し捜索願が出されたが,行方不明となった後に現金自動預払機により乙の口座から多額の現金が引き出され,あるいは引き出されようとした際の防犯ビデオに写っていた人物が乙とは別人であったことや,乙宅から多量の血こんが発見されたことから,乙が凶悪犯の被害に遭っている可能性があるとして捜査が進められた。
 その過程で,甲が本件にかかわっている疑いが生じ,警察官は,前記防犯ビデオに写っていた人物と甲との同一性を判断するため,甲の容ぼう等をビデオ撮影することとし,同年12月ころ,甲宅近くに停車した捜査車両の中から,あるいは付近に借りたマンションの部屋から,公道上を歩いている甲をビデオカメラで撮影した。さらに,警察官は,前記防犯ビデオに写っていた人物がはめていた腕時計と甲がはめている腕時計との同一性を確認するため,平成15年1月,甲が遊技していたパチンコ店の店長に依頼し,店内の防犯カメラによって,あるいは警察官が小型カメラを用いて,店内の甲をビデオ撮影した。
 以上の事実関係の下において、公道上の甲を対象としたビデオ撮影は適法といい得るが、パチンコ店内における甲を対象としたビデオ撮影については、およそ適法となる余地のないものである。

ウは、最決平21・9・28である。

ウ.捜査機関が,捜査の必要のため,宅配便業者の了解を得て,その運送過程下にある宅配便荷物を借り受けた上,荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を撮影する行為は,宅配便荷物の外部から照射したエックス線の射影により内容物の形状や材質をうかがい知ることができるにとどまるから,プライバシー等の侵害の程度が大きいとはいえない上,占有者である宅配便業者の承諾を得て行っているものであるから,検査対象を不審な宅配便荷物に限定して行う場合には,任意捜査として許容される。

 

最決平21・9・28より引用、下線は筆者)

 本件エックス線検査は,荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察したものであるが,その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上,内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって,荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから,検証としての性質を有する強制処分に当たるものと解される。そして,本件エックス線検査については検証許可状の発付を得ることが可能だったのであって,検証許可状によることなくこれを行った本件エックス線検査は,違法であるといわざるを得ない。

これは、司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より抜粋)

【問題】

3:警察官甲らは、かねてから覚せい剤密売の嫌疑でA会社に対して内偵捜査を進めていたが、A会社関係者が暴力団関係者から宅配便により覚せい剤を仕入れている疑いが生じたことから、宅配便業者の営業所に対して、A会社の事務所に係る宅配便荷物の配達状況について照会等をした。その結果、同事務所には短期間のうちに多数の荷物が届けられており、それらの配送伝票の一部には不審な記載のあること等が判明した。そこで、甲らは、同事務所に配達される予定の宅配便荷物のうち不審なものを借り出してその内容を把握する必要があると考え、上記営業所の長に対し、協力を求めたところ、承諾が得られたので、5回にわたり、同事務所に配達される予定の宅配便荷物各1個を同営業所から借り受けた上、X空港内税関においてエックス線検査を行った。その結果、1回目の検査においては覚せい剤とおぼしき物は発見されなかったが、2回目以降の検査においては、いずれも、細かい固形物が均等に詰められている長方形の袋の射影が観察された(以下、これら5回の検査を「本件エックス線検査」という。)。なお、本件エックス線検査を経た上記各宅配便荷物は、検査後、上記営業所に返還されて通常の運送過程下に戻り、上記事務所に配達された。また、甲らは、本件エックス線検査について、荷送人や荷受人の承諾を得ていなかった。上記事例において、最高裁は、本件エックス線検査は任意処分であるが、その限界を超えて違法であるとした上で、本件エックス線検査の射影の写真等を一資料として発付された捜索差押許可状に基づく捜索において発見された覚せい剤については、証拠収集過程に重大な違法があるとまではいえないとしてその証拠能力を肯定した。

【解答】

誤り(最判平21・9・28)。
 「本件エックス線検査は、荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について、捜査機関が、捜査目的を達成するため、荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察したものであるが、その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たるものと解される。そして、本件エックス線検査については検証許可状の発付を得ることが可能だったのであって、検証許可状によることなくこれを行った本件エックス線検査は、違法であるといわざるを得ない。
 ・・・本件覚せい剤等は、同年6月25日に発付された各捜索差押許可状に基づいて同年7月2日に実施された捜索において、5回目の本件エックス線検査を経て本件会社関係者が受け取った宅配便荷物の中及び同関係者の居室内から発見されたものであるが、これらの許可状は、4回目までの本件エックス線検査の射影の写真等を一資料として発付されたものとうかがわれ、本件覚せい剤等は、違法な本件エックス線検査と関連性を有する証拠であるということができる。
 しかしながら、本件エックス線検査が行われた当時、本件会社関係者に対する宅配便を利用した覚せい剤譲受け事犯の嫌疑が高まっており、更に事案を解明するためには本件エックス線検査を行う実質的必要性があったこと、警察官らは、荷物そのものを現実に占有し管理している宅配便業者の承諾を得た上で本件エックス線検査を実施し、その際、検査の対象を限定する配慮もしていたのであって、令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとはいえないこと、本件覚せい剤等は、司法審査を経て発付された各捜索差押許可状に基づく捜索において発見されたものであり、その発付に当たっては、本件エックス線検査の結果以外の証拠も資料として提供されたものとうかがわれることなどの諸事情にかんがみれば、本件覚せい剤等は、本件エックス線検査と上記の関連性を有するとしても、その証拠収集過程に重大な違法があるとまではいえず、その他、これらの証拠の重要性等諸般の事情を総合すると、その証拠能力を肯定することができると解するのが相当である」と判示した。
 本肢は、本件エックス線検査を任意処分としている点が誤っている。

エは、最決平17・9・27である。

エ.捜査官が被疑者に犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書で,立証趣旨を「犯行状況」とする書面の写真部分については,弁護人が証拠とすることについて同意しなかった場合であっても,刑事訴訟法第321条第3項所定の要件のほか,同法第322条第1項所定の要件を満たせば証拠能力が認められる。

 

最決平17・9・27より引用、下線は筆者)

 本件両書証は,捜査官が,被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして,これらの者被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ,立証趣旨が「被害再現状況」,「犯行再現状況」とされていても,実質においては,再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものと解される。このような内容の実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力については,刑訴法326条の同意が得られない場合には,同法321条3項所定の要件を満たす必要があることはもとより,再現者の供述の録取部分及び写真については,再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の,被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要があるというべきである。

これは、司法試験平成17年度最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成17年度最新判例肢別問題集より抜粋)

7:捜査官が被害者や被疑者に被害・犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書等で、実質上の要証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在であると解される書証が刑訴法326条の同意を得ずに証拠能力を具備するためには、同法321条3項所定の要件が満たされるほか、再現者の供述録取部分については、再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の要件が、再現者が被告人である場合には同法322条1項所定の要件が、写真部分については、署名押印の要件を除き供述録取部分と同様の要件が満たされる必要がある。

新試験第28問のエは、規則からの出題である。

(新試験第28問)

 証拠調べに関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

エ.証拠調べの請求は,証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して行わなければならず,裁判所は,その関係が明らかにされていないときは,証拠調べの請求を却下することができる。

 

刑訴規則189条)

1項 証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない。
4項 前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は、これを却下することができる。

規則までフォローしようとすると、かなり大変だ。
規則全部を、頭から覚えようとする必要はない。
ただ、基本書や判例、問題集、答練等で出てきたときに、その都度確認する。
そのクセをつけておけば、重要なものはある程度覚えられる。

新試験第30問、予備試験第17問は、最決平19・10・16を知っているか。
それが、カギになる。

(新試験第30問、予備試験第17問)

 犯罪の証明に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。

ア.裁判所は,被告事件について犯罪の証明があったときは,同事件について刑を免除するときを除き,判決で刑の言渡しをしなければならない。

イ.刑事裁判の有罪認定に当たって必要とされる「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」とは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。

ウ.裁判員の関与する判断に関しては,証拠の証明力は,それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断に委ねる。

エ.一般的に,情況証拠は,直接証拠に比べて証明力が低く,情況証拠により事実認定を行う場合は,直接証拠により事実認定を行う場合と比べてより慎重な判断が求められることから,反対事実の存在の可能性を許さないほどの確実性がなければならない。

オ.略式手続においては,書面審理による迅速な判断が要求されることから,犯罪の証明は証拠の優越で足りる。

1.アイ  2.アオ  3.イウ  4.ウエ  5.エオ

 

最決平19・10・16より引用、下線は筆者)

 刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。そして,このことは,直接証拠によって事実認定をすべき場合と,情況証拠によって事実認定をすべき場合とで,何ら異なるところはないというべきである。

(引用終わり)

上記判例から、イは正しく、エが誤っている。
まず、イの含まれる1と3は、正解とはなり得ないとわかる。
また、2も、正解とはなり得ない。

※2が正解になるのは、アとオが誤っている場合である。
しかし、オが誤っているとすると、5も正解となってしまう。
エが誤りとわかっているからだ。
正解が2つある問題は、存在しない。
従って、2は、正解になり得ない。

従って、4か、5か。
すなわち、ウとオのどちらが、より誤りといえるか。
それだけを判断すれば、よいことになる。
ウは、まあ、そうだろう、という感じだ。
実際には、これは条文があり、正しい。

裁判員法62条)

 裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。

他方、オの方は、いくらなんでもそれはないだろう、という感じだ。
利益原則にそんな例外があるなど、聞いたことがないはずである。
実際、そのような特則はない。
従って、オが誤りだから、5が正解と判断できる。

上記判例については、司法試験平成19年度最新判例肢別問題集で出題した。
また、司法試験平成22年最新判例肢別問題集でも、最判平22・4・27の引用判例として、重ねて出題している。

司法試験平成19年度最新判例肢別問題集より抜粋)

【問題】

5:有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいう。

6:有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義が、直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異なることは当然である。

【解答】

5:誤り(最決平19・10・16)。
 「刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨である」と判示した。

6:誤り(最決平19・10・16)。
 上記の判示に続けて、「このことは、直接証拠によって事実認定をすべき場合と、情況証拠によって事実認定をすべき場合とで、何ら異なるところはないというべきである」と判示した。

司法試験平成22年最新判例肢別問題集より抜粋)

【問題】

4:重要度:A
 判例によれば、刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ、情況証拠によって事実認定をすべき場合については、直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度にはおのずから差があるものといわなければならない。

5:重要度:A
 判例は、刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ、情況証拠によって事実認定をすべき場合には、直接証拠がないのであるから、情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人であるとしたならば合理的に説明することができる(あるいは、少なくとも説明が極めて容易である)事実関係が含まれていることを要するとした。

【解答】

4:誤り(最判平22・4・27、最決平19・10・16)。

 刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ、情況証拠によって事実認定をすべき場合であっても、直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度に差があるわけではない(最高裁平成19年(あ)第398号同年10月16日第一小法廷決定・刑集61巻7号677頁参照)。

5:誤り(最判平22・4・27)。

 判例は、刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ、情況証拠によって事実認定をすべき場合には、直接証拠がないのであるから、情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するとした。

新試験第36問は、被害者参加制度からの出題である。

(新試験第36問)

 次のアからオまでの各手続のうち,殺人被告事件の手続への参加を許可された同事件の被害者の配偶者が,公判期日において行うことが認められないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア.裁判所の許可を受けて証拠の取調べを請求すること

イ.被告人の更生可能性について述べた証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,裁判所の許可を受けて当該証人を尋問すること

ウ.裁判所の許可を受けて,犯行の動機について被告人に質問をすること

エ.裁判所に対し,強盗殺人罪の訴因への変更を請求すること

オ.検察官が懲役15年が相当であるとの意見を述べた後,裁判所の許可を受けて,「本件被告事件については無期懲役が相当である。」との意見を述べること

1.アイ  2.アエ  3.イウ  4.ウオ  5.エオ

手続きに能動的に関与することはできない。
それだけ知っていれば、アとエは無理だとわかる。
それだけで、2が正解とわかる。

なお、イは、316条の36である。

刑訴法、下線は筆者)

290条の2第1項 略・・当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)・・略

316条の33第1項柱書 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
3項 裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)・・略

316条の36第1項 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。

殺人の被害者の配偶者は、「被害者等」に含まれる。
従って、被害者参加人たりうる。
これも、一つのポイントである。

ウは、316条の37である。

(刑訴法、下線は筆者)

311条2項 被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。

316条の37第1項 裁判所は被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。

オは、316条の38である。

(刑訴法、下線は筆者)

293条1項 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

316条の38 裁判所は被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。

本問は、細かい知識がなくても、正解できる。
とはいえ、今後は、知らないと解けない問題が出てもおかしくない。
316条の33から39までの規定は、直前期に一度目を通しておくべきだろう。

新試験では、取りたい問題は8問(18点)。
21、22、25、26、30、31、33、35である。
このうち、一問落としたとして、16点。
できれば取りたい問題は、9問(23点)。
23、29、32、34、36、37、38、39、40である。
4〜5問取って10点は取りたい。
合計26点が、最低ラインだろう。
刑法の35点と合計で61点が、刑事の最低ラインである。
そして、公法(58点)、民事(92点)、刑事(61点)の合計が、211点。
これが、合格ラインの目安ではないか。
短答は、毎年キリのいい数字を合格点にする。
だから、210か、215か、その辺りだろう。
ただ、部分点の付き方によっては、220点くらいもあり得る。

予備試験では、取りたい問題は7問(14点)。
14、15、16、17、18、19、21である。
1問ミスしたとして、12点。
できれば取りたいのは、6問(16点)。
20、22、23、24、25、26である。
このうち、半分とって、8点。
合計20点が、刑訴の最低ラインである。
刑法の20点と合わせて、刑事では40点取りたい。
公法(37点)、民事(54点)と合わせて、131点。
これが、法律科目の最低ラインの目安となる。

一般教養について

予備試験の一般教養も、傾向は昨年と同様、という感じだ。
強いて言えば、理系の問題が若干易しくなったかな、という程度である。

基本的には、個人的に知っている分野、たまたま解ける問題。
そういったものを、探して解くしかない。
ただ、特に知識がなくても、これは取りたい、という問題もある。

絶対に取りたいのは、第36問である。

(第36問)

 旅行好きの 100 人に,ロンドン,パリ,ローマ,ニューヨークの四つの都市の内,どこを訪れたことがあるかを尋ねた。その結果,次の(*)が成り立っていることが分かった。この(*)と論理的に同じ意味になるものとして最も適切なものを,後記1から5までの中から選びなさい。

(*)ニューヨークかローマの少なくともどちらかの都市を訪れたことがある人だけが,パリとロンドンの両方を訪れたことがある。

1.ニューヨークもローマも両方とも訪れたことがない人は,全員パリかロンドンの少なくともどちらかの都市は訪れたことがない。

2.ニューヨークかローマの少なくともどちらかの都市を訪れたことがない人は,全員パリもロンドンも両方とも訪れたことがない。

3.ニューヨークかローマの少なくともどちらかの都市を訪れたことがある人は,全員パリとロンドンの両方を訪れたことがある。

4.パリもロンドンも両方とも訪れたことがない人は,全員ニューヨークかローマの少なくともどちらかの都市は訪れたことがない。

5.パリかロンドンの少なくともどちらかの都市を訪れたことがない人は,全員ニューヨークもローマも両方とも訪れたことがない。

*から、読み取れることは何か。
ニューヨークだけを訪れた人でも、パリとロンドンを訪れた人がいる可能性がある。
ローマだけを訪れた人でも、パリとロンドンを訪れた人がいる可能性がある。
ニューヨークとローマを訪れた人はどうか。
やはり、パリとロンドンを訪れた人がいる可能性がある。
しかし、ニューヨークにもローマにも訪れていない人。
その人は、パリとロンドンの両方を訪れたという可能性はない。

これらを整理した上で、1から5をみる。
そうすると、1が正解だということがわかる。

※本来は、以下のようにして解く。

「AだけがB」とは、「Bであれば全てA」ということである。
すなわち、B→Aである。
そうすると、

PかつL→NまたはR

(P:パリ L:ロンドン N:ニューヨーク R:ローマ)

が成り立つ。
同じ意味になるのは、その対偶であるから、

notNかつnotR→notPまたはnotL

となる。
これと同旨の肢を探すと、1がそれに当たる。
従って、1が正解である。
もっとも、上記のように、本問は普通に考えても解ける。

この種の問題は、公務員試験用の判断推理である。
その中でも、かなり易しいものが出題されている。
この種の問題は、普遍性が高い。
事前の準備が、役に立つ種類の問題である。
他の科目と違って、その知識が出ないと意味がない、ということはない。
苦手な人は、直前に何問か解いて慣れておくとよい。

第37問は、英語であるが、中身は易しい算数である。

(第37問)

 次の英文の解答として最も適切なものを,後記1から5までの中から選びなさい。

 Mr. Smith, 45 years old, has a son who is 12 years old, and both father and son have the same birthday. How old was the boy when Mr. Smith was 10 times as old as his son? You may assume that all months have the same number of days.

1.3 years 6 months
2.3 years 7 months
3.3 years 8 months
4.3 years 9 months
5.3 years 10 months

”10 times as old as his son”が、息子の年齢の10倍の意味であること。
それさえ気付けば、以下のような算式を思いつくはずである。

X+33=10X

これを解くと、

9X=33

X=33÷9

X=3+(2÷3)

すなわち、3歳と8か月となって、3が正解となる。

第18問は、地理からの出題であるが、知識がなくても解ける。

(第18問)

 工業は,一般にその種類によって特徴に応じた立地を選択する。下記のア欄は様々な工業が指向する立地の特徴を示したものであり,イ欄は日本の主な工業の種類を示したものであるが,このような一般原則に従った場合,ア欄とイ欄の組合せとして最も適切なものを,後記1から5までの中から選びなさい。

ア欄 工業が指向する立地

@ 製品に対する原料の重量が大きく,原料産地に立地する原料指向型
A 消費需要の大きい大都市に立地する市場指向型
B 安価で豊富な労働力を求めて立地する労働力指向型
C 原料輸入や製品輸送など交通の利便性を重視する交通指向型
D 企業間の受注の効率性や部品の輸送コストを抑えるため集積する集積指向型

イ欄 工業の種類

A 自動車,電気機械
B 繊維,縫製品
C 石油化学,鉄鋼
D ビール,印刷
E パルプ,セメント

1.@−A A−E B−C C−D D−B
2.@−B A−A B−D C−E D−C
3.@−C A−B B−E C−A D−D
4.@−D A−C B−A C−B D−E
5.@−E A−D B−B C−C D−A

ア欄に該当しそうなものを、イ欄から探していく。
すると、Dは、Aしか該当しなさそうだと気付く。
「部品」を使う業種が、他になさそうだからである。
(他の業種は、「原料」だろう。)
そこで、DにAを入れると、5が正解と確定する。
確実に解けそうな問題がない場合は、こういう解き方で拾っていく。

第15問は、多少知識が必要だが、解きたい問題である。

(第15問)

 世界の国又は地域の現行選挙制度に関する記述として明らかに誤っているものを,次の1から5までの中から選びなさい。

1.台湾総統の任期は 4 年で,再選は 1 回のみとされている。
2.ロシア連邦大統領の任期は 6 年で,3 選(連続しない場合を含む)は禁止されている。
3.フランス共和国大統領の任期は 5 年で,連続 3 選は禁止されている。
4.アメリカ合衆国大統領の任期は 4 年で,3 選(連続しない場合を含む)は禁止されている。
5.大韓民国大統領の任期は 5 年で,再選は禁止されている。

ロシアの大統領が、つい最近まで、メドヴェージェフだったのはなぜか。
それは、連続就任が禁じてられていたからだろう。
間にメドヴェージェフを挟めば、プーチンがまた大統領になれる。
だから最近、プーチンは、また大統領になった。
漠然とニュースをみていても、その程度はわかっていたのではないか。
そうすると、2はかっこ書が誤りで、正解になるとわかる。

他にも、ちょっとした知識があれば解ける問題が多い。
また、どの問題も、5択である。
すなわち、でたらめに選んでも、2割は正解できる。
そういったことからすれば、最低でも5割、30点は取りたい。
法律科目の131点と合わせて、161点。
これが、最低ラインの目安である。
昨年は、165点だった。
問題を見た感じでは、難易度に大きな変化はない。
今年も、その程度ではないか、という感じである。
ただ、部分点の付き方次第では、170点程度まで上がる可能性はある。

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