平成24年司法試験短答式試験の結果について

215点、5339人

法務省から、短答の結果が公表された(法務省HP)。
合格点は、215点。
短答合格者は、5339人だった。
概ね、予想どおりの結果だったといえる。

合格率、反転の兆し

以下は、年度別の合格者数等の推移である。

年度

合格点

平均点

合格点と
平均点の差

受験者数

合格者数

受験者
合格率

18

210

232.9

22.9

2087

1684

80.6%

19

210

231.7

21.7

4597

3479

75.6%

20

230

250.7

20.7

6238

4654

74.6%

21

215

228.1

13.1

7353

5055

68.7%

22

215

230.8

15.8

8163

5773

70.7%

23

210

219.2

9.2

8765

5654

64.5%

24

215

224.5

9.5

8332

5339

64.0%

昨年と比べて、全体の平均点が5点ほど上がっている。
昨年よりも、問題はやや易しかった。
他方で、合格点も、5点上がっている。
そして、受験者合格率は、昨年とほとんど変わらない。
すなわち、受かりやすさは、昨年と変わらなかった。

今年は、受験者数が減少に転じた。
そのため、毎年低下していた合格点と平均点の差。
これが、下げ止まり、若干の増加に転じている。
受験者合格率も、下げ止まった、という感じだ。

現在、ローは入学定員の削減を行っている。
志願者数の減少も、続いている。
他方で、新たに予備合格者が参入してくる。
しかしそれは、ロー組の減少量を補うほどの数ではない。
従って、受験者数の減少傾向は、今後も続くだろう。
すなわち、今後は、合格率は上昇傾向となる。
司法試験は、今より受かりやすくなっていく。

平均年齢は、30歳安定

以下は、短答合格者の平均年齢の推移である。

年度

短答合格者
平均年齢

18

29.92

19

30.16

20

30.36

21

30.4

22

30.8

23

30.7

24

30.9

年齢を上下させるのは、主として以下の要因である。

・受験生の累積は、上昇要因となる。
 昨年の受験生は、今年は一つ歳を取るからである。

・知識問題の比重が高いと、上昇要因となる。
 勉強量の多い受験生ほど、有利になるからである。

・三振制度等による退出者の数の増加は、下落要因となる。
 歳を取った受験生が退出するからである。

・新規修了生の増加は、下落要因となる。
 通常、新規の修了生は、滞留者より若いからである。
 なお、予備試験合格者の平均年齢は、31.57歳(昨年)である。
 従って、予備の新規参入は、下落要因とはならない。

新試験の短答では、30歳でほぼ安定し、上下しない。
上記の要因がうまくバランスし、大きく変動しないからだろう。
30歳という、やや高年齢になっているのは、知識重視の出題が影響している。
他方で、三振制度がある。
これが、累積を防止し、退出を促す。
最近では、三振する前に、諦めてしまう人も、多いようだ。
このことが、年齢の上昇を抑えている。
一方で、現在、新規修了生は減少している。
これは、下落抑制要因となっている。
これらが、微妙にバランスして、現状を維持している。
この傾向は、しばらく続きそうである。

短答でのアドバンテージ

今年の最高点は、322点だった。
一方、ギリギリ合格の人は、215点である。
その差は、107点だ。
総合評価では、短答の比重は、半分になる。
だから、総合では、53.5点のアドバンテージということになる。
これは、論文の得点に直すと、

53.5÷1400×800≒30.5点

ということになる。
概ね、設問一つ分という感じである。
ただ、これは最高点を取った場合である。

上位10%程度だと、どうか。
受験者8332人の10%は、833位。
これに該当する得点は、271点である。
そうすると、ギリギリの人との差は、56点。
総合評価では、28点の差。
論文では、28÷1400×800=16点の差となる。
これは、小問1つ分くらい、という感じだろうか。

上位20%もみてみよう。
受験者8332人の20%は、1666位。
これに該当する得点は、258点である。
ギリギリの人との差は、43点。
総合評価では、21.5点の差。
論文では、21.5÷1400×800≒12.2点の差である。
これも、小問1つ分、という感じである。

これらを、大きいとみるか、小さいとみるか。
微妙なところではある。
そのため、短答と論文の勉強量の配分に、悩むことになる。

短答と論文は、学習効率に特徴がある。
短答は、ほぼ勉強量に比例して、得点が増える。
もっとも、8、9割取れるところまでいくと、そこから先は伸びにくい。
他方、論文は、基本的な書き方や、典型論点の学習。
これをやっている時期は、飛躍的に効果がでる。
しかし、そこから先は、ほとんど成果につながらない。
従って、初学者は、まず短答7割を目指して、短答対策をする。
これは、短答で確実に受かるようにするためである。
短答に合格しないと、論文を勉強しても意味がない。
そして、それを達成するか、試験直前になったら、論文の書き方、典型論点を覚える。
これが、ベストな学習計画ということになるだろう。
ある程度勉強が進んでいる人は、短答9割を目指して、知識を詰める。
肢別本は、ほぼ全肢切れるようにしておく。
今年の上位10%の271点は、350点満点の約77%だ。
ほぼ8割を取れば、上位10%に食い込める。
これは、ある程度勉強の進んだ人からすれば、可能なレベルである。
一方、論文は、構成のやり方や典型論点を忘れない程度に、やっていく。
予備校答練では、基本論点を基本に忠実に論証し、当てはめる訓練をする。
細かい論点は、落としてもよい。
あとは、知らない条文が出ても、趣旨を考え、そこから当てはめができるようにする。
その程度ということになるだろう。
結論的には、いずれにせよ短答重視ということになりそうである。
ただ、最近の再現答案等をみると、基本論点の論証が雑すぎるものが多い。
理由付けすら、しないものもある。
短答重視でもよいが、最低限の論文の学習は、おろそかにすべきでない。

科目別得点状況

以下は、各科目の平均点及び足切り者の割合の推移である。

年度

公法系
平均点

民事系
平均点

刑事系
平均点

公法系
最低ライン
未満割合

民事系
最低ライン
未満割合

刑事系
最低ライン
未満割合

18

58.5

101.4

73.0

1.9%

0.6%

0.1%

19

60.2

103.0

68.5

4.3%

2.1%

0.9%

20

69.7

104.8

76.2

0.7%

1.3%

0.4%

21

63.0

101.7

63.4

2.7%

2.5%

3.9%

22

71.5

96.5

62.8

0.5%

2.4%

4.5%

23

59.3

102.6

57.3

4.4%

1.7%

8.0%

24

54.8

97.6

72.0

11.3%

3.2%

1.3%

今年は、公法系が厳しかった。
平均点は、過去最低である。
そして、足切りがメチャクチャに多い。
実に全体の1割以上(943人)が、公法の足切りでやられている。
これは、過去に例のない水準である。
実際、問題をみると、基本的な問題を全部拾っても37点程度だった。
これは、足切りラインの40点を切っている。
特別の対策をしないで普通に受けると、足切りに引っかかる。
そのくらいの難易度である。
ちょっと難しすぎたかな、という印象だ。
同時に、年ごとの難易度に関係なく最低ラインを一定にすること。
そのことにも、問題があるという感じがする。
公法については、特に新判例対策をやっておくべきである。
今年も、相当な数が出題されている。
これは、知らないと、解けない。
公法で足切りになれば、他の短答科目、論文が全て無駄になる。
要注意である。

他方で、刑事は易しかった。
特に、刑訴の難易度が下がった、という印象である。
足切りは、平成21年以降最低の水準である。
民事は、例年並みか、やや難しい、という感じだった。

圧倒的な予備組の強さ

今年は、予備合格者が初めて参戦した。
その戦績が、注目されていた。
結果は、85人受験して、84人合格。
ほぼ全員が、合格だった。
予備試験の短答は、ほぼ新試験と同水準の難易度である。
これをクリアした集団なのだから、当然ではある。
とはいえ、これは圧倒的だ。

この予備組は、論文も上位の力を持っている。
予備の論文の合格水準は、過去の新試験の合格水準よりも高い。
(詳細は、「平成23年予備試験論文式試験の結果について」参照。)
このことから、論文式でも、ロー組より高い合格率になるはずである。
当然、これは法科大学院の存在意義に疑問を投げかけるだろう。
他方で、ローの側からは、これは司法試験の問題のせいだ、と言うはずである。
すなわち、ローの教育を受けた修了生が合格できない一方で、予備が受かる。
これは、暗記重視の問題の方が悪い、ということである。
適切な問題なら、ロー組が予備に負けるはずがない、という前提がそこにある。
修了生7割が達成できないのは、問題が難しすぎるからだ。
もっと、ローの修了生が受かるような問題にしろ。
最近、そういう要求が出始めている。
今回の結果は、その要求の根拠としても、流用されそうである。
しかし筆者には、ロー組が予備を上回る結果が出力される問題は、思い浮かばない。

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