平成24年予備試験短答式の結果について

今年も165点

法務省が、予備試験短答式の結果を公表した(法務省HP)。
合格点は、昨年と同じ165点。
合格者数は、1711人だった。
合格点は、予想どおり。
しかし、合格者数は、予想より多い。
そんな感じである。

昨年より受かりやすかった

昨年は、採点対象者6410人中、1339人が合格。
合格率は、20.8%だった。
今年は、採点対象者7135人中、1711人合格。
合格率は、23.9%である。
昨年より、3%ほど合格率が上昇している。
受験者は増加したが、それよりも合格者の増加率が高かったためである。
仮に、昨年と同じ合格率なら、7135×0.208≒1484人合格となる。
これと比べても、かなり受かったな、という印象だ。
今年の短答は、昨年より受かりやすかったといえる。

科目別状況

以下は、各科目の平均点等を昨年と比較したものである。
一般教養のかっこ内は、比較のため、30点満点に換算した数字である。
また、筆者の予想最低ラインは、今年の問題を実際に見た印象としての参考点である。

 

 

平成23年
平均点

平成24年
平均点

筆者の予想
最低ライン

憲法

15.8

15.1

20

行政法

12.2

12.5

17

民法

19.2

16.3

22

商法

12.9

14.7

14

民訴法

14.7

16.9

18

刑法

18.6

16.6

20

刑訴法

14.0

15.6

20

教養

23.2
(11.6)

27.2
(13.6)

30
(15)

合計

130.7

134.7

161

昨年と比べると、全体平均点が4点上がっている。
全体的には、昨年より少し易しかった。
合格点は昨年と同じだから、やはり受かりやすくなっている。
仮に、この4点分、合格点が上がったとする。
そうすると、合格点は、169点。
法務省の得点別人員調によれば、合格者数は、1497人となる。
これは、前述した昨年と同じ合格率の場合の合格者数1484人に近い。
やはり、合格率の上昇分は、この4点に対応している。

そして、一般教養をみると、昨年より4点高い。
全体平均点の上昇分は、一般教養によるともいえる。
そう考えれば、今年の受かりやすさは、一般教養が易しくなったことによる。
逆に言えば、法律科目の難易度は、昨年と同じだったということになる。

法律科目を個別にみると、商法、民訴、刑訴が2点弱の上昇である。
これは、問題が易しくなったという面もある。
同時に、これらは、旧試験時代の下三法である。
論文では出題されたが、択一の出題がない科目だった。
そのため、初年度は、知識面が十分でなかった。
しかし今年は、旧試験組が下三法の知識を入れてきた。
その結果が、反映されたと考えることもできる。
特に、商法は、予想より出来がよかった。
会社法については、力を入れて勉強した人が多かったのだろう。

他方で、行政法は、相変わらず出来が悪い。
今年は、一般教養を抜いて、最下位の出来となった。
やはり、ゼロから勉強するという難しさがある。
しかも、出題形式が厳しい。
肢の組み合わせで解ける出題であれば、もう少し平均は高くなるはずである。
内容的にも、難しい問題が多かった。
新試験の方では、公法で943人もの足切りが出ている。
(「平成24年司法試験短答式試験の結果について」参照。)
行政法の難しさは、その一因になっている。
ロー生にとっても、行政法は厳しい。
予備組にとっては、なおさらだろう。

平均点が下がった科目は、民法と刑法である。
民法は3点弱、刑法は2点下がっている。
これは、問題の難易度が上がった分と考えてよさそうだ。

全体を概観した感じだと、商法・民訴は多くの人が勉強している。
他方で、公法系・刑事系と民法は、やや勉強不足の感がある。
逆に言えば、商法・民訴は現段階での伸びしろが少ない。
これ以上勉強しても、得点の上昇に結びつきにくい。
これに対し、公法・刑事、民法は、伸びしろが大きいという感じだ。
今年、上記平均点に近い得点分布で不合格だった人。
そういう人は、公法・刑事、民法に力を入れた方がよい。
特に民法は、勉強すれば取りやすい問題が出ることが多い。
平均点以下しか民法が取れなかった人は、明らかに勉強不足である。
そういう人は、まず民法を勉強すべきである。

論文合格率は厳しい

今年は、短答の合格者数が増えた。
昨年と比べると、372人の増加である。
仮に、論文合格者が昨年と変わらないと、論文は受かりにくくなる。
昨年は、採点対象者1293人中、123人が合格。
合格率は、9.5%だった。
今年の短答合格者は、1711人。
10名程度が採点対象者から外れるとすると、1701人。
その上で、123人が合格すると考えてみる。
そうすると、合格率は、123÷1701≒7.2%となる。
これは、最後の旧試験である平成22年度(7.0%)と同じ水準である。

ここで、少し気になるニュースがある。

日経新聞WEB版 2012/6/13 20:39配信記事より引用)

予備試験合格率の向上を 法曹養成で民主党PTが提言

 民主党の法曹養成制度検討プロジェクトチームは13日、法科大学院の修了者以外に司法試験の受験資格を与える予備試験の合格率を大幅に高めるべきだとする提言をまとめた。出題範囲から一般教養を削除するために、司法試験法の改正を求めている。

(引用終わり)

これを受けて、合格者数が増えるのでは。
そういう期待をしたくなる。
ただ、さすがに今年すぐ増える、ということはないだろう。
とはいえ、短答合格者の増加に合わせて、若干増えることはありうる。
例えば、150人くらいは、考えうるだろう。
その場合、合格率は150÷1701≒8.8%。
これでも、昨年より低い。
旧試験でいえば、平成20年(8.7%)と同じ水準である。
いずれにせよ、数字の上では、論文は厳しい勝負となる。

合格答案のイメージ

とはいえ、合格答案のレベルは、印象としてはそれほど高くない。
合格者の再現答案をみても、「この程度か」と思うはずである。
しかし、「これを超える答案を書いてやろう」と思うのは、間違いである。
昨年の職種別論文合格率のトップは、大学生とロー生である。
(「平成23年司法試験予備試験口述試験(最終)結果について」参照。)
論文合格率(短答合格者ベース)は、大学生が24.7%、ロー生が25%だった。
4人に1人は、受かる割合である。
前記の厳しいはずの論文合格率が、ウソのようである。
重要なことは、ロー生と大学生とで、合格率に差がないことだ。
ローで学ぶような内容は、合格には必要でない。
すなわち、大学生が書くような答案が、合格答案である。
逆の言い方をすれば、大学生が書けないような部分には、配点はない。
書いても無駄、と思っておくべきである。

また、受験生全体の出来という面からみると、非常に悪い。
昨年の論文の平均点の水準を、新試験・予備とで比較すると、新試験の方が高い。
(「平成23年予備試験論文式試験の結果について」参照。)

他方で、予備論文の合格水準は、新試験の合格水準より高い。
平均レベルと合格レベルの逆転現象が生じている。
その原因は、予備と新試験の合格率の違いにある。
予備は、全体のレベルが低いが、その中から極端に絞りこむ。
新試験は、全体のレベルは予備より高いが、大して絞り込まれない。
その差が、ねじれ現象を生んでいる。

では、予備の合格レベルは、新試験で言えば何番台の水準なのか。
昨年の予備の合格点は、245点。
予備の論文は、500点満点だから、これは49%の得点率である。
そこで、昨年の新試験論文で、得点率49%の水準を調べてみる。
新試験では、論文は800点満点である。
その49%は、392点。
昨年の新試験論文で、392点以上を取ったのは、1378人。
すなわち、昨年の新試験の1378番台の答案が、予備の合格水準に相当する。
昨年の新試験の論文採点対象者は、5654人であるから、上位24.3%に当たる。
興味深いことに、これは前記大学生・ロー生の予備論文合格率とほぼ一致する。

新試験の問題を解いてみて、再現答案等を参考にする場合があるだろう。
そういう場合には、1000番台前半の答案を目安にするとよい。

今度は、採点基準との関係でみてみよう。
昨年の合格点の得点率49%というのは、採点方針では「一応の水準」に相当する。

司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準についてより引用)

1.採点方針

(1) 白紙答案は零点とする。

(2) 各答案の採点は,次の方針により行う。

ア.優秀と認められる答案については,その内容に応じ,下表の優秀欄の範囲。
 ただし,抜群に優れた答案については,下表の優秀欄(  )の点数以上。

イ.良好な水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の良好欄の範囲。

ウ.良好とまでは認められないものの,一応の水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の一応の水準欄の範囲。

エ.上記以外の答案については,その内容に応じ,下表の不良欄の範囲。
 ただし,特に不良であると認められる答案については,下表の不良欄[  ]の点数以下。

優秀

良好

一応の水準

不良

50点から38点
(48点)

37点から29点

28点から21点

20点から0点
[3点]

(引用終わり)

上記の表は50点満点だから、49%は24.5点に当たる。
一応の水準の真ん中くらいが、実際の合格点になっている。
そして、配点は、大学生でも知っている基本部分に集中している。
とりあえず、それを拾えば、一応の水準はクリアする。
これだけで、合格答案である。
さらに、若干応用部分に触れれば、上位の合格答案である。
そのことを、きちんと踏まえた上で、答案構成をする。
無理をしないことが重要だ。

予備校答練では、細かい論点を拾わないと、合格答案と評価されない。
そのため、この辺りが歪みやすい。
答練では、「基本はできています。後は○○の論点を復習してください。合格まであと一歩です」等と講評されるのが、ベストの状態だと思っておくべきである。
(○○の論点は、復習する必要がない。)
逆に、答練では論述が雑でも、とりあえず触れられていれば点数がつく。
本試験でも、多論点型なら、それでよい。
しかし、そうでない場合は、きちんと論証しないと評価が伸びない。
その辺りの差は、答練を受ける上で、注意しておきたい。

戻る