政府公表資料等情報

法科大学院特別委員会平成24年1月30日(第46回)議事録より抜粋(下線は当サイトによる)

【田中成明(財団法人国際高等研究所副所長)座長】
 それでは、議事に入らせていただきます。まずは、法科大学院をめぐる最近の動向、必ずしも歓迎すべき動向ではないのですが、これにつきまして、色々と関連データも準備していただいておりますので、事務局からの説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、資料2-1から御説明をさせていただければと思います。資料2-1につきましては、行政刷新会議ワーキング・グループ「提言型政策仕分け」で、昨年の11月に開催されました。この提言の中には、法科大学院に関することも指摘を頂いております。その点について、まずは御報告をさせていただければと思います。・・ここでは、教育といたしまして、大学改革の方向性の在り方ということで、・・大学は将来を見据えた明確な人材育成ビジョンを持っているのか、ということが論点として掲げられておりました。この論点に係る議論の中で、法科大学院についての御指摘を頂いているところでございます。・・ここで、指摘を受けているところを御紹介させていただきます。「法科大学院の需給のミスマッチの問題については、定員の適正化を計画的に進めると共に、産業界・経済界との連携を取りながら、法科大学院制度の在り方そのものを抜本的に見直すことを検討する」。これが、ワーキング・グループでの取りまとめとして、提言されたところであります。・・そして、最後では、どのような議論が行われたかというところで、法科大学院について、明示的に書いてある箇所のみ抜粋をさせていただいておりますが、御紹介させていただきたいと思います。・・法科大学院については専門職業人になる基準が試験合格という明確性があるため、教育効果が十分ではないということがあきらかになっているのではないか、という御指摘。・・法科大学院でも試験合格以外に経済界の人材として、法律的専門性を持つ人材を育てるというなら、それを明確にし、かつその成果をいかに目指すかを明確にすべきではないか。そのためには、産業界でのニーズを具体的に把握すべきではないか、という御指摘を頂いております。三つ目、法科大学院の問題は大学教育のある側面、特に高等職業教育の面に関して、その問題を浮き彫りにしたのだろうとする御指摘。また、・・法科大学院は失敗。一刻も早く見直すべき。法科大学院制度は、その制度の存廃も含めて抜本的に改革すべきという御意見。その下でございますが、法科大学院について、廃止も含めて抜本的な見直しが必要ではないかという御指摘。更に、・・法科大学院は、抜本的な見直し・廃止も含めて検討すべきではないかという御意見がございました。また、法科大学院のこれまでの取り組みについてのしっかりとした評価、今後の在り方の徹底的な議論が必要ではないかという御指摘を頂いております。そして、最後から二つ目でございますが、法科大学院制度の在り方そのものについてもこれまでの成果を十分に検証し、抜本的な見直しを検討する。このようなことが、11月の行政刷新会議のワーキング・グループAで議論されたという状況でございます。このように行政刷新会議における仕分けで御指摘を受けて、私共としても、中教審の場において御議論を頂ければと思い、本日は紹介をさせていただきました。なお、併せて、そのような対外的な動きといたしまして、資料2-2をご覧いただければと思います。法曹の養成に関するフォーラム、これは現在議論が進んでいるところでございます。こちらの法曹の養成に関するフォーラムについては、関係六大臣が申し合わせをして設置された会議でございまして、ちょうど先週の金曜日に第7回が開催されたところでございます。既に御承知だとは思いますが、昨年の夏に、一つの大きなポイントでございました、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方についてとして、第一次取りまとめがなされたところでございます。そして、昨年の後半から法曹の養成に関する制度の在り方について、議論が始まってきたという状況でございます。・・本年の5月までを目標に、まずは現状の把握、特に関係者からのヒアリングを中心として、意見交換を行っていくという段取りが予定されております。ポイントといたしましては、活動領域の拡大、法曹養成制度についてでございます。本年の5月には、その現状把握及び意見交換を踏まえた論点の整理ということで、議論を進めていくことが確認されております。その後でございますが、平成24年6月から平成25年5月までにかけて、その論点整理を踏まえた検討をしていくということで、大きく三つ論点が掲げられ、活動領域拡大の方策について、将来の法曹人口の検討、法曹養成制度の在り方ということで、このような大きな三つの論点を中心に議論し、取りまとめを平成25年の5月ということで予定がされております。・・以上、資料2-1と資料2-2で、法科大学院関係の今現在動いている状況等を報告させていただきました。このような状況を踏まえていただいた上で、資料2-3でございます。法科大学院制度に関する現状分析として、是非、法科大学院特別委員会でも御議論いただければと思い、論点を整理してまいりました。まず、問題意識でございます。資料にございますように、大変厳しい現状の中、志願者の減少や新司法試験の合格率の低迷等はもとより、昨年11月の提言型政策仕分けにおきましても、先ほど御紹介したような御指摘を頂いて、法科大学院制度の在り方そのものを抜本的に見直すことを検討するという取りまとめがなされるなど、極めて厳しい状況にあると認識をしております。このような状況にあることを踏まえた上で、法科大学院制度が法曹養成制度の中核的機関として、社会の期待に応えるため、教育の改善をはじめとした様々な改革に取り組むことが必要だろうと考えており、以上のことから、改めて法科大学院をめぐる現状や、現在まで進めてきている各種施策の実施状況を検証いただき、更なる改革に向けた新たな取組の展開について検討していただくことが重要ではないかと思っているところでございます。そのような意味で、現状の分析といたしまして、ポイントは、恐らく、法科大学院をめぐる現状について、新司法試験合格率の低迷、法科大学院志願者の減少、入学定員・実入学者の減少等のデータを今一度御確認いただく必要があるのではないかと考えております。更に、続きをご覧いただければと思いますが、そのような項目への取組については、既にこの特別委員会におきましても、平成21年4月に御提言を頂いております。そのように、これまでの取組である、改善方策について、その実施状況及び成果を御評価いただくのだろうと考えております。ポイントといたしましては4点あり、入学者の質の確保修了者の質の確保組織見直しの促進評価システムの改善等でございます。これらにつきまして、資料2-4において、データベースで整理させていただきましたので御報告をさせていただければと思います。法科大学院の現状に関するデータとして整理をしております。まず、1点目が新司法試験の合格状況でございます。グラフとともに御説明をさせていただきたいと思いますが、平成22年頃に合格者数を年間3,000人程度とすることを目指すという政府の目標については、御承知の通り実現していない状況でございます。そのような中で、受験者数が増え、合格者数が頭打ちのため、合格率が低下しているという状況でございます。ただ、受験者数については、ここ1〜2年がピークではないかという見込みがございます。更に、法科大学院の入学定員の見直し等が行われております。それに伴う修了者数の減少により、数年後には受験者数が大幅に減少する見込みではないかと認識しております。尚、データで御紹介をさせていただきたいのはグラフでございます。平成18年受験者数につきましては、2,091名から平成23年の8,765名と大きく受験者数が増えております。ただ、例えば平成22年から平成23年につきましては、その受験者数の増加ペースが徐々に落ちてきている状況も見て取れるかと思っております。また、合格者数につきましては、平成18年の1,009名から、平成23年は2,063名ということでございます。この点につきましては、平成20年以降は、2,000名で推移をしているという状況でございます。このような状況の中で、折れ線グラフのようになっているわけでございますが、平成18年に48.3%あった合格率が、平成23年に23.5%まで落ち込んでいるという状況がございます。このような現状にあることを踏まえた検討が必要なのではないかと考えております。続きまして、法科大学院の志願者・入学者の状況でございます。次の資料でございますが、こちらにつきましては、新司法試験の合格率低迷を背景に、法科大学院の志願者総数自体も減少しております。初年度から約3分の1程度の規模まで小さくなっているという実態、また未修者の司法試験合格率の低迷によりまして、社会人や非法学部の入学者が減少してきており、これも初年度から比べると、約3分の1の規模まで減ってきているという状況でございます。志願者数の推移につきましては、平成16年度の段階で72,800人いた志願者が、現在では22,927名というところまで減ってきているという状況でございます。また、社会人非法学部出身の入学者の状況でございますが。社会人で平成16年度は2,792名であったものが、平成23年度では平成764名に。また、非法学部出身者が平成16年度に1,988名であったものが、平成23年度で748名というところでございます。そのようなことから、「参考」の新司法試験合格状況について先ほど全体の合格率も御説明いたしましたが、更にうち数でございます。既修者の平成18年の合格率48.3%が、平成23年では35.4%と、マイナス13%の減という状況となっております。一方、未修者の合格者につきましては、平成19年の合格率32.3%が平成23年の合格率16.2%と、マイナス16%の減と半減している状態でございます。次は入学定員・実入学者数の状況でございます。入学定員・実入学者数の状況は、平成21年の中央教育審議会の提言を踏まえて、平成23年度までに全ての法科大学院が入学定員を削減し、ピーク時と比較して約2割、1,254名の減となっております。更に、入試における競争性の確保等を通じて質の高い入学者を確保することに努めていただいた結果、平成23年度のいわゆる実入学者の数につきましては、ピーク時と比較して約4割減って、3,620名となっております。グラフで申し上げますと、例えば、入学定員につきましては、平成19年度の5,825名がピークでございます。それが平成23年度に約2割減って4,571名。また、実入学者についてのピークは平成18年度の5,784名でございます。これにつきましては、平成23年度で3,620名の4割減という状況で、入学定員・実入学者数が減少しているという状況でございます。次の資料をご覧いただければと思います。法科大学院の修了者の状況でございます。ここにつきましても、厳格な成績評価・修了認定の実施によりまして、標準修業年限で修了される方の数は低下をしているところでございます。例えば、平成17年度の段階では、9割以上が標準修業年限で修了されておりましたが、平成22年度につきましては73.6%まで標準修業年限で修了される方が減ってきている。いわゆる厳格な成績評価や修了認定が行われているという状況が進んでいると認識をしているところでございます。以上が法科大学院を取り巻く現状、経緯を含めての説明でございました。それを踏まえて、最後となりますが、法科大学院教育の改善状況でございます。中央教育審議会法科大学院特別委員会におきまして、平成21年に提言を頂きました。先ほどの資料にもあった4点について、その進捗状況を御説明させていただきたいと思います。まずは一つ目、入学者の質の確保でございます。ここは、(1)にございますように、入学定員の見直し等による競争性の確保が進んでおります。入学者選抜における競争倍率2倍以上の確保ということで、例えば平成21年度は32校から、平成23年度は54校ということで、競争倍率2倍以上を確保しようという動きは各大学に浸透しつつある状況だと思っております。また、二つ目の項目の入学定員の削減は、先ほど御説明したような状況でございます。また、実入学者も先ほどのような状況で、着実に削減されている。また、(2)でございますが、適性試験の合格最低基準点の導入につきましても、各大学で、適性試験の成績が全国総受験者の下位から15%未満の者は入学させないという方向で、取組も徐々に進んできているという実態がございます。続きまして、修了者の質の確保でございます。(1)にございますように、共通的な到達目標の導入ということで、法科大学院修了者が共通的に備えておくべき能力の到達目標の設定を進めていくという動きは着実に進んでおります。平成20年から21年にかけまして、文部科学省の補助事業で東大、京大、神戸大学が取組をされた法科大学院コア・カリキュラムのモデルにつきまして、それをベースに、それぞれの大学で到達目標を設定していこうという動きが広まりつつある状況だと認識をしております。また、(2)にございますように、法学未修者の充実のための省令改正といたしまして、未修1年次の法律基本科目については、6単位まで増しても良いということで、省令改正をしたところでございます。本日の議題で資料が出てまいりますが、現在、私共で調査をさせていただいたうち50の大学で、増加に取り組んでいただいているというデータが出てきている状況でございます。また、(3)の成績・進級判定の厳格化は、先ほど御説明したような状況で着実に進んでいると理解しております。続いて三つ目の組織見直しの促進でございます。(1)の入学定員の見直しや統廃合の促進というところで、二つ目でございます。入学定員の削減はもとより、現在二つの大学において学生募集の停止が表明されたというところでございます。また、(2)にございますように、財政支援の見直しにも着手させていただいております。深刻な課題を抱える法科大学院につきましては、新司法試験の合格率や入学者選抜の競争倍率を指標として、国立大学であれば運営費交付金、私立大学であれば私学助成の減額ということで取り組む。まさに平成24年度からその取組が進められる状況となっております。平成24年度の対象校といたしましては6校という状況であります。そして、四つ目であります評価システムの改善等といたしましては、認証評価の基準・方法の改善として省令改正をさせていただいております。従来、評価について省令には明記されておりませんでしたが、修了者の進路等についても評価項目として追加すべきということで、省令を改正しております。それ以外にも重点的に評価をすべき項目等の設定を行いまして、認証評価基準や、その方法が改善されるような取組が進められているところでございます。そして、この中央教育審議会において、現在、改善状況調査を行うためのワーキング・グループが設置されて、各大学へ個別に伺いまして、その教育の改善状況について調査をし、結果を公表しているという状況でございます。昨年度の調査結果におきましては、28校に対して個別に課題等を指摘し、その改善を促すという取組を進めてきたという状況でございます。以上、御説明が長くなってしまって大変恐縮ではございますが、最近の法科大学院をめぐる現状、改善の取り組み状況について御報告させていただきました。

【椎橋隆幸(中央大学大学院法務研究科長)委員】
 貴重な資料、ありがとうございました。各ロースクールで平均して2割定員を削減して、実人員は更に低いようですが、このまま、例えば司法試験の合格者が2,000人程度ということで推移した場合に、合格率がどこで止まると予想されているのでしょうか。私は、期待して見ているのですが、そこにきて少しずつ上がってくれば、一定の司法試験の受験者、法曹希望者もいるわけですから。合格率が上がってくれば、志願者もまた増えてくると期待しているのですけれども。一番下になるのは、どの辺りなのかという予測が分かれば教えていただきたい。

【今井専門職大学院室長】
 きちんとしたシミュレートを行ったわけではないのですが、例えば、先ほどの資料2-4で新司法試験合格状況、実入学者数などを御説明させていただきました。新司法試験受験者数につきましては、ここ1、2年がピークになるのではないかという見込みも出てきておりますので、やはり新司法試験を受ける方が徐々に減ってくるということとともに、実入学者数が減少されていけば、見込みではございますが、1年か2年後には上に向かっていくような状況も生まれてくるのではないかと考えております。ただ、その辺りにつきましては、まだ数字が動きますので、はっきりとした確証はないのですが、イメージとしてはそのようなものを持っているところでございます。

 (中略)

【日吉由美子(弁護士)委員】
 質問です。進級判定の厳格化というのが進んでいるように、数字からは見て取れるという御報告がございましたけれども。お分かりになる範囲で結構なのですが、例えば、多くの大学院でどのような形の進級判定、タイミングはどうなのか、1年終了時、2年終了時と1年ごとにやっているのか。それから進級判定の材料と申しますか、材料は期末試験のようなものだけでやっているのか、その指標はどうなっているのか。分かる範囲で、現状どうなっているのか教えていただければ幸いです。

【小代専門教育課課長補佐】
 私共が認識している範囲でお答えをさせていただきます。まず進級判定というところでの段階です。その部分で各大学において色々なパターンがあるのですが、例えば1年生では2年生に上がる時、ここはまさに進級というところで判定をして、その段階で一定程度の条件を達成しなければ1年生をもう一度やるという形です。それから、2年生から3年生も同じような形で、進級の段階で受けているというパターンのところ。あとは、最後までは進むのだけれども、修了ができないという形で制限をしているところと、例えば2パターンございます。また、その段階で、どのような指標を用いるかということについて、最近増えてきているのはGPAというものを導入しまして、単位の修得は何単位以上取得するということがありますが、加えて成績の中身などを点数化していきます。例えば、成績の中身ですから、優を何点、良を何点とする。その平均が一定以上の平均の点数でないと、進級ができないと。そのような場合には、一旦取った単位につきましても、取り直さなければ、その点数が上がらないということになりますので、ある一定程度の範囲の中で、取った単位につきましても、取り直しをしていただくという形でやっておられるところ。これも進級の段階で使う場合と、最後の修了の判定で使う場合、両方の段階で使う場合と3パターンございます。

 (中略)

【磯村保(早稲田大学法学研究科教授)委員】
 定員と実入学者の乖離の問題というのは、恐らく首都圏とそうでないところで、やはり大きな違いがあって、志望者が多い地域とそうでないところで、このような差が表れて、それが入学者の質に関わるとすると、数年後には司法試験の合格率にも反映され、さらに志望者が減少するという形で、悪循環に陥って定員を確保することが難しい状況にあるかと思います。しかし他方で、当初から言われてきたことですけれども。色々な地域に法科大学院が設置されて、それぞれの地域でそれぞれのニーズに対応するということを考慮すると、倍率だけで自然に絞っていくということが良いのかどうか、一つ気になるところではあります。もう一つは、行政刷新会議でも同じ前提なのですが、需要と供給のバランスという発想については、必要な人数分だけしか法曹資格を与えないという方向で良いのかどうかは、国によって全く違っています。例えば、私が滞在経験のあるドイツなどでは、法学部を卒業して国家試験に合格するという数は非常に多くて。しかし、非常に多くの人が、実際に弁護士になるのではなく、例えば公務員になる、企業に就職するなどしていきます。そうすると、法曹資格も、かつてのイメージでは、司法試験に合格すれば、当然に法曹になるということが大前提で、それ以外の道に進むというのは、ほとんど例外であったわけですけれども。そのような発想をずっと続けていっても良いのだろうかとうことも、もう一つ重要な問題点ではないかと感じているところです。

【田中座長】
 今の点は、鎌田委員、フォーラムの方でかなり重点的に問題視されているところではないですか。

【鎌田薫(早稲田大学総長・法学学術院教授)委員】
 私は磯村委員と認識を共通にしていて、今回の問題提起も、これまでもそうなのですが、やはり合格率が非常に低いということが、諸悪の根源であって、いかに合格率を上げるかが重要だと思います。そのためには、一つは質の向上ですけれども、絶対数増も必要です。合格率を数字の面で上げていくために、中教審の側では分母を減らすために非常に努力をしてきたところですけれども、分子は増えていかないそれどころか、受給論で、もっと減らせという声が強いわけであります。フォーラムの中にもやはり3,000名の合格という閣議決定を実現するべきであるというお考えの方もいらっしゃれば、もっと減らすべきであるというお考えの方もいらっしゃる。今は、職域拡大の問題が、需要を増やす手段という意味で、当面の議論の課題になっておりますけれども、その次には、やはり法曹人口論のようなものが議論の対象になっていくのだろうと思っております。個人的には、前から申し上げているように、どのような法曹像をイメージするのかによって、適正な合格者の人数というのは変わってくるものです。法科大学院制度の出発点からになりますが、法科大学院を通じて、いわゆる従来型の法曹を増やそうとしているのか、もっと幅広い意味での優れた法律実務家を増やそうとしているのか。恐らく、司法制度改革の理念は後者だったと思うのです。後者の優れた法律実務家を幅広い分野に供給できるようにする。その優れた法律実務家が全部法曹資格を持つ必要があるのか、ないのかということは、一つの中間的な論点としてはあり得るのではないかと思っております。現状では、法科大学院を修了して、法曹資格を取得できなかった人の就職の道というのは、あまり拡大していない。しかし、仮に法曹資格を与えれば拡大するのかと言うと、そこにも難しい問題がありそうです。ということで、どちらの考え方を取るかということはとりあえず置いておいて、職域の拡大可能性というのがあり得るのかということ、それが、最近のフォーラムにおいて、議論の対象となっているのは、ある意味では必然的なのではないかと思います。

【田中座長】
 今の問題は、法科大学院制度を設計する段階から問題になっておりました。司法試験に合格した人の職域を広げることをベースに考えるのか、法科大学院修了者の法務博士の職域について何らかの制度的手当てをするのか、どちらをベースに対応していくかということには、非常に難しい問題がありまして、とくに法科大学院修了者の法務博士をベースにして職域を広げるということになってくると、範囲が広がって効果が大きくて、法曹資格のビッグバンのような話になってきますので、今のところは、司法試験に合格した人の職域を広げるということで議論をしていくという話になっているわけです。将来の司法試験の位置付けの問題については、当初から色々な議論をしてきているところです。

【土井真一(京都大学大学院公共政策連携研究部教授、京都大学大学院法学研究科教授)委員】
 司法試験に合格した人を法曹の有資格者と呼ぶとすれば、法曹有資格者が今後どのような形で活躍されていくのかということについて、検討せざるを得ず、それはこの場というよりもフォーラムでやっていただくということになると思うのです。その際に、やはり色々な問題がありまして、一つは、すぐに就職をした人の収入がどの水準にあるのかということについても、かつての弁護士さんたちに比べてどうかという指標があるのですが、では現在の経済水準の中で、他の職種と比べた時にどの程度なのかという指標もあり得ます。例えば、医師が最初にお勤めになる時の給料はそれほど高くないので、そのようなものと比べた時にどの程度なのかということについても考えていかなければ、ある種の給与水準を維持するために、どれぐらいの人数にするのかという議論も出てきかねません。そのようなところもトータルで判断していただこうということになると、やはりフォーラムやその他の然るべき場で全体像を把握していただく必要があるのではないかと思います。他の領域からしても、法曹有資格者の給与水準は最大の関心事で、やはり、あるパフォーマンスに対して、あるペイをするということが前提で、企業や地方公共団体等も考えます。給与水準が高止まりした段階で、あちこちに送り出すといっても、受け入れる側としては、そこまでのパフォーマンスが期待できるのかという話になりますので、その辺りを検討していただく必要があるのではないかと思い、潜在的なニーズは、地方公共団体等もありますし、大学でもインハウスのローヤーを雇うことも考えられるわけで、それぞれ考えられるのではないかと思います。法曹有資格者の需給はそのような問題だとして、法科大学院としてどのように対応するかということですが、司法試験合格者数の当初の目標は3,000人であったわけで、先ほど他の委員からもありましたように、3,600人まで実入学者が少なくなってきているということは、これを継続すれば合格率は3,000人合格ならば、累積で83%を超えることになるはずなのです。当初の定員が多かったというイメージが強いので、法科大学院の定員や入学者は多いのだという話になっておりますが、現在はそのような状態ではありません。ただ、入学してから修了するまで2〜3年かかり、それから更に受験資格が失われるまで5年かかるわけですから、入学者数を絞っても、効果が出るのが遅くなるというのは、仕方がないことで、さらにこれ以上絞るという話になってきますと、当然やはり合格者数はどうするのかが問題になります。合格者3000人を前提にしますと、もう絞れないということになってきているのだと思います。ただ、制度として問題があるとすると、合格率というか、入学者の倍率、競争倍率2倍を確保して、色々と定員あるいは実入学者を減らした結果、既に入学者が1桁であるという大学も出てきておりますので、そのような大学について、どのように今後考えていくかということは、真剣に議論をしなければならず、現状維持で良いというわけではないだろうと思います。

 (中略)

【田中座長】
 ・・適性試験の最低基準点の設定の問題について、御意見の交換をしていただいたところですけれども、これに関して、前回の議論を踏まえて事務局の方でポイントを整理していただきましたので、御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
 それでは資料に基づいて御説明、御報告をさせていただきます。資料5-15-2と机上配付資料でございます。まず資料5-1では、この特別委員会におきましても、適性試験の改善については、平成21年4月の段階で御提言を頂いております。資料にございますように、「統一的な入学最低基準については、総受験者数の下位から15%程度の人数を目安として、適性試験実施機関が、毎年の総受験者数や得点分布状況などを考慮しながら、当該年度の具体的な基準点を設定すべきである」ということでございます。また、その最低基準点の考え方として、やはり適性試験を課している制度趣旨を無意味にするような著しく低い点数の者を入学させないということで、この設定を考えていく必要があるのだと。また、このようなことを踏まえまして、最後に、最低基準点の設定がなされるべきなのだろうということが提言されております。・・基本的には、法科大学院の入学者の質の保証も含めて担保するために、適性試験を課している制度趣旨、これを踏まえた対応を徹底していただく必要があるのだろうと思っております。そのためには、最低基準点というものをそもそもどのように理解していくのかということで、例外のない基準として設定していくのか、それとも若干の例外があっても原則とした上で例外も認めていくのか。また、出願の資格としてまで設定するのか合否を判定する際の基準として設定していくのか。この辺りの議論をしていただく必要があるのではないかと認識しております。また、その最低基準点の設定主体でございますが、報告書完成時には、適性試験実施機関をイメージしておりましたが、現段階ではやはり大学での適切な設定が必要になってくるのではないかということが、検討の一つのポイントになるのではないかと思います。また、最低基準点のラインの設定方法については、データで次回以降御説明させていただきたいのですが、下位15%を定数にすることの適切性についての御議論がポイントとしてあるのだろうと思っております。最低基準点の公表につきましても、仮にそのような形で基準として使うのであれば、やはり学生への配慮の観点から明示していく必要があるのだろうと。また、その明示方法としては、例えば募集要項への明記など、何らかの周知が必要なのだろうと思われます。実際にこの募集要項などで明記をする取組も、これから始まっていこうかというところですので、このようなところを整理して、きちんとした形でこの適性試験が置かれた趣旨を達成できるような取組を進めていくことが必要なのだろうと考えているところでございます。

【磯村委員】
 今御紹介いただいた問題点、まず最低基準点の性格をどう捉えるかということなのですが、既修者として法学部生を採るときに、我々が最も安心して見られるデータというのは、法律試験の成績なのだろうと思うのです。法学部生として非常に成績が優秀であるけれども、適性試験が不得意であるという者がいますが、適性試験のポイントに重要な意味が与えられるとすると、そのような学生を拾い上げることはできないという面があります。あまりリジッドに考えると、あるタイプの学生は適性試験が苦手で、しかし法律が不得意かと言うとそうではないというケースもあるということを前提として御議論いただくと良いのではないかと思いました。

【永田眞三郎(関西大学法学部教授)委員】
 この下位15%未満という基準なのですが、磯村委員とは若干違う考え方をしております。現在の司法試験おいて15%未満での合格というのは、データとしても整理されているかと思いますが、極めてエピソード的であると言えます。いくつかの法科大学院でそれぞれのそのようなエピソードをお持ちですが、最近は極めて例外的であります。また、この基準を守れていない法科大学院も含めまして、この基準は妥当であるというところに定着しつつあります。ここまできて、この基準の設定を後退させ例外を認めるべきであるとなると、そもそも適正試験を実施する意味が無くなると思います。個々において、失敗する、成功するということは、どの試験でもあることですから、設けている以上は、例外有りではない方が良いのではないかというのが、私の考え方です。以上です。

【田中座長】
 この適性試験の問題は、法科大学院で学ぶべき法的思考能力の試験ではなく、大学院レベルの学修をする基礎的な一般的適性、素養の試験であるというのが一般的な理解だと思います。磯村委員の示された問題は、他の分野で言うと、例えば、美容専門職大学院などについては、本当に大学院レベルの専門職大学院かどうかということが問題になっておりまして、美容師としての高度のノウハウを身に付けるのに適しているかどうかということよりも、そもそも大学院レベルの学識・素養を持っているかどうかを一般的に判定する適性試験を設けるべきではないかという意見が、専門職大学院全般の見直し論の中でありまして、そのような場合、適性試験に受かることと、美容師としてのノウハウの修得の適性との相関関係は、ロースクール以上にバラつきがあると思われます。そのような問題をどのように評価するかという問題がありまして、なかなか適性試験の位置付け、性格付けは、やはり法的思考能力のテストではないということをわざわざ強調して適性試験を導入していることの趣旨との関連で、磯村委員の指摘された点は難しい問題だと思います。

【永田委員】
 現在は問題形式が変わっていますが、従来の5択の方式で考えると、10問中2問できれば20点取れるのです。あとの8問は鉛筆を転がすと2割ですから16点くらいですから、2問できた人が36点取れる確率があるのです。運の良い人は40点取れる。その意味ではやはり、そのような試験をやりながら、10問中2問くらいしか正答できない受験生でも合格させるというのは、問題があろうかと思います。

【田中座長】
 今、永田委員が御指摘の点、下位15%の適性がどうかというのは、前も議論があったところです。また、どこが設定をするかということも重要な問題で、各法科大学院に任すか、ここでガイドライン的なものを示すかが以前から議論になっています。

【土井委員】
 私もワーキング・グループの委員ですので、その経験で話をさせていただくと、基本的には永田委員に賛成です。磯村先生の勤務校であれば、法律試験の水準等についても、一定の信頼があるという上での議論になるわけですけれども、実地調査に伺いますと、法律試験が良いからとか、小論文試験で良かったからとか、社会人としての実績があるからというような例外を主張されることが多々ございます。もし本当にその例外を認めようとし出しますと、法律試験の水準がどうで、その採点がどうなっていて、入試全体においてどのような位置付けかということを、きちんと押さえない限り、本当に例外なのかどうかは判断し切れない状態になってきます。このままワーキング・グループがずっと続くわけではないと思っておりますが、そのような作業をしない限り、判定できないということは大変な負担で、やはり15%というのは非常に悪い数字ですので、それを目指さなければ駄目だという形でやる方が安定的に運用できる基準になるのではないかと思います。

【笠井治委員】
 磯村委員にたたみ掛けるようで大変申し訳ないのですが、今の問題は入学者の質を確保しなければならないと、そのような施策の状況に置かれているわけです。もちろん、磯村委員がおっしゃったことは、入学者の質はごく例外を認めても確保できるのだとおっしゃっているのだろうと思うのですけれども、先ほどのように、磯村委員の勤務校については、その懸念がないかもしれないのですが、私共、改善状況調査ワーキング・グループで各校を巡った中身、結果としては、確かにエピソードで例外的に15%未満の方でも司法試験合格があり得ても、大きい傾向としては非常に絶望的ではないかと思われるところがありました。それは、そのような学校に共通した問題としてあるのではないかと強い危惧感を持ったわけです。ですから、状況の変化ということが、今後あり得るとは思いますが、それまでは今回の施策を徹底する意味で、疑念を残さないという意味で、基準に例外を残さないようにした方が良いのではないかというのが私の考えです。

【磯村委員】
 制度のマクロ的な運用として考えるときには、御指摘の通りであるということに異論はありません。ただ、問題は例外的にエピソード的なケースがあるという場合に、どこまで裁量の幅を認めるかという話なのだと思います。エクスキューズに使われるということを懸念するあまり、現実にある例外事例を見逃して良いのかという問題提起として御理解いただければと思います。

【田中座長】
 恐らく磯村委員の指摘された事例も適性試験がそういう形で最低ラインを設けていないから、いい加減な受け方をしたということも考えられ、適性試験をこういう形で運用するのだということを周知すれば、それはそれで受験生も然るべく対応できることだと思います。ただ、そうなるとやはり、下位15%が適切なのかどうかということの方が問題になります。あまり厳しくすると、受験者の数が全般的に減っている状況もありますから、厳しいラインを設けることも問題ですが、15%というのが、永田委員が指摘されたようなレベルならば、少し低すぎるのではないかという気もします。

【永田委員】
 結論を次回議論されると思うのですが、ワーキング・グループでも実態を感覚的に把握しておりますし、数値としてもある程度どのような状況か御報告できるかと思いますので、その時にまた御判断いただければと思います。全体として、それが徐々に守られ、やはりどの法科大学院もこの基準以下は絶望的だと。そのような学生を入れている大学ですら、そのような感覚を持ち始めておりますので、その辺もまた次回御報告したいと思います。

【磯村委員】
 一つだけ追加をいたしますと、・・法科大学院の入学者選抜においては、適性試験を重要な判定資料として活用することが求められています。問題はこの部分と連動しているところがあって、適性試験の最低基準はクリアしているけれども、法科大学院の受験者の中では、適性試験の点数が非常に低いグループに属するという場合に、適性試験の考慮割合を少なくとも一定程度入れるとすると、その点数によってトータルでの判定の中で非常に不利益を受ける。そういうケースがあり得るように思います。その場合に、・・適性試験での最低基準は15%割合とするルールにし、しかし、15%を超えた人については、適性試験の考慮割合を著しく小さくするというのは、この考え方から言うとできないように思われます。そういうように考えていくと、適性試験の重みはそれなりにありまして、現在の適性試験をどこまで考慮することが、法曹となるべき人の確保という点から言ってどのように効果的なのか、そこが最大の疑問点であり、したがって、問題は15%の設定よりは、むしろ全体の仕組みの問題なのではないかという気がします。

【木村光江(首都大学東京大学院社会科学研究科法曹養成専攻教授)委員】
 今の点については、私も以前からそう思っておりまして、実は、適性試験の点数は、正確な数字を持っているわけではありませんが、年齢によってかなり違うようです。幅広い方々に法曹に入ってもらうという観点からすると、社会人など色々な経験を積んだ方が相対的に不利になる試験は望ましくないと思います。ですから、今の磯村委員からの御指摘なのですが、どの程度考慮すべきものなのかということについて、もう一度考え直す必要があると思います。

【鎌田委員】
 今御指摘の二つの問題は、別々の問題だと思うわけです。最低点、一定のラインをクリアしていないような人は、法科大学院生として相応しくないそれがこの15%ラインの問題ですが、それとは別に、それぞれの法科大学院で様々な判定をする際に、適性試験にどれぐらいのウェイトを置くかという問題があります。我々は総合判定方式と言っているのですが、やはり社会人の場合や、留学生も少数ですがいますので、そのような人を全て一律に適性試験が何%と単純に計算して足し算をするという判定は適切でないと考えています。それはしかし、各大学が設ける判定基準の作り方の問題ですので、ここで直接取り上げられている対象とは少し区別して議論した方が良いかと思います。資料5-1の一番上にある、重要な判定資料というものをどのような形で運用するかということでは、問題の対象になりますけれども、最低基準点そのものとは少し性質の違うものではないかと思っております。ただ、その中で、15%が良いかどうかということは、十分に議論していただく必要があると思うのは、標準偏差の算定にあたって、上15%、下15%というのは、すごくできる人とすごくできない人とされているのですが、今は適性試験の実受験人数が相当減ってきている標準偏差の考え方は、できる人からできない人まで均一に受けているという前提での発想でして、ある程度できる人のみしか受けなくなった時に、この考え方で本当に良いのかどうかということは、少し考えていく必要があるのだろうかと考えておりますので、いずれ本格的に検討をする時には、難しい問題にゼロから取り組み直すことになるのかもしれません。

【田中座長】
 そうですね。この適性試験の判定資料のウェイトの問題は、別の論点として、最低基準をクリアしておれば、実質的な判定資料としてはゼロのような形の運用もあり得るわけで、そうすると、適性試験の趣旨からずれてくることも考えられます。適性試験のウェイトが非常に高い選抜方式と非常に低い選抜方式というバリエーションはあり得ると思うのですが・・・。

【永田委員】
 この適性試験の判定資料のウェイトの問題というのは、正確なデータは取っていません。これまでのワーキング・グループでは、そこまで踏み込むことなく、せめて15%未満の者の合格を避けるという方向で改善を図ってきました

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