平成24年司法試験論文式
民事系第3問の感想と参考答案

試験問題は、こちら

基本から書く、とはどういうことか

本問は、極端に基本的な部分と、極端に応用的な部分が混在している。
そのような場合、前者だけを書けば、優に合格答案となる。
難問と言われた平成22年の民事系第2問。
これも、Aランクの論点だけで合格答案となることがわかっている。
司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(民訴法)参照。)
ただ、基本事項をどのように書いたらよいのか。
これがよくわからない、という人が意外と多い。
かつては、予備校がその役割を担っていた。
しかし、最近の予備校では、「本問は重点講義に書いてあるので、そのとおりに書けば合格答案です」というような解説をしていたりする。
直前に重点講義の該当箇所を読めるのであれば、それでよい。
実際には、問題が漏洩しない限り、あり得ない話である。
仮に文献を手元に置いて書いても、配点のある事項をきちんと書けるとは限らない。
その種の文献は、基本事項を一々書いていないことが多いからである。
これが、論文試験の怖いところだ。
本問を、基本から書くにはどうすればよいか。
今回は、その点を考えてみたい。

典型的適用場面をしっかり書く

設問1(1)は、処分証書の特質と、二段の推定が問われている。
従来の基本書や予備校テキストでは、これらはあまり触れられていなかった。
しかし、現在では、両者は基本事項に属する知識とされている。

共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)民事訴訟法より引用、下線は筆者)

4−3−7 書証

書証の意義を理解し、申出方法の種類を説明することができる。

文書の成立の真正の意義とその推定について、判例を踏まえて、具体例に即して説明することができる。

(引用終わり)

 

共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)民事訴訟実務より引用、下線は筆者)

2−3 証拠

○証拠方法(人証、書証、その他)の概念・機能・特徴と、証拠調べの方法を説明することができる。
○証拠の収集に関する基本的な制度を説明することができる。
書証における成立、成立の推定、実質的証拠力について具体的な設例において説明することができる。
処分証書・報告文書の特徴を説明することができる。

(引用終わり)

少なくとも、二段の推定は、過去の新試験及び予備試験で出題済みである。
過去問検討だけで、何度か書くことになる。
従って、これは、基本事項として書けなくてはいけない。
他方、処分証書については、知らなかったという人もいただろう。
従って、この点については、直接触れられなくてもよかった。

本問では、当初の請求原因Aと、第2の請求原因Bの場合が問われている。
どちらが、メインなのか。
前者だと答える人は、受かりやすい。
後者だと答える人は、受かりにくい。

前者は、典型的な処分証書であり、二段の推定の適用場面である。
書こうと思えば、書ける。
多くの人が、書いてくる。
その結果、配点もそこに集中する。
(その仕組みについては、司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(商法)司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(民法)参照。)
だから、ここをしっかり書く。
他方、後者は、普段考えたことのない場合である。
書こうと思っても、なかなかうまく書けない。
誰も、自信を持って書けないだろう。
その結果、配点は小さくなる。
だから、短く適当に書く。
まずは、この大局観が重要となる。

処分証書については、その真正な成立が法律行為の成立を意味すること。
すなわち、単なる直接証拠を超える意味があることを示せるか。
これが、一つのポイントである。
「当該文書によって法律行為がなされた」という特質から、上記を導く。
この点は、知らないとどうにもならない。
ただ、知らなくても、少なくとも直接証拠となり得ること。
これは、わかるはずである。
この点を指摘できれば、一応合格ラインだろう。

二段の推定は、用意している知識をそのまま書くことになる。
用意していないのは、単なる勉強不足である。
ここは、雑に書くと、そのまま評価に直結する。
結論だけでなく、根拠も書く必要がある。
ここをしっかり書くことが、合格答案の要件である。

以上のことを、当初の請求原因Aとの関係で書く。

では、第2の請求原因Bはどうか。
ここは、極端に言えば、白紙でも合格レベルである。
しかし、実際には、白紙というわけにはいかない。
一応、何か文字を埋める必要がある。
連帯保証契約書と代理権授与は、関係がない。
だから、無関係、という程度でよいのだろう。
こういうところをうまく逃げるのも、一つのテクニックである。

ただ、若干気をつけたい点がある。
まず、「第2の請求原因において、本件連帯保証契約書は処分証書でない」とするのは、誤りである。
第2の請求原因A(代理人としての保証契約の締結)との関係では、処分証書だからである。
処分証書といえないのは、代理権授与行為との関係を考えているからに過ぎない。
すなわち、連帯保証契約書によって代理権授与がされたわけではない、ということである。
もっとも、この点はやや揚げ足取り的な面がある。
答案上、代理権授与との関係が意識されていると善解できる場合は、減点はされないだろう。

それ以上に注意すべきは、代理権授与との関係で間接証拠であるとしてしまうことである。
すなわち、本件連帯保証契約書から、代理権授与が推認できるとする。
これは、危険である。
本問の末尾には、同契約書が挙がっている。
もう一度、これを見てみるべきである。
これを見て、ああCに代理権が授与されているな。
そう思う余地は、あるだろうか。
実は、その答えは、問題文上明示されている。

(問題文より引用、下線は筆者)

弁護士L:確かに,保証契約を締結した者がB本人であるとの前提に立てば,二段の推定を考えていけば足りるでしょう。他方で,仮にCがBから印章を預かっていたとすると,CがBの代理人として本件連帯保証契約書を作成したということも十分考えられます。

修習生P:しかし,本件連帯保証契約書には「B代理人C」と表示されていないので,代理人Cが作成した文書には見えないのですが。

(引用終わり)

文面上Cが登場しないのに、どうしてCへの代理権授与が推認できるのか。
あり得ないことである。

さらに、問題がある。
当初の請求原因において、二段の推定の一段目を認めたのはなぜか。
我が国では印章が重視されている。
だから、Bも自分の印章は大事に保管しているだろう。
だとすれば、その印章が押される場合、Bが自分で押したと考えるべきだ。
すなわち、Bの印章の印影が顕出されれば、押印はBの意思によると推定できる。
こういうロジックだったはずである。

なのに、Bの印章の印影の顕出された同契約書から、この押印は多分Cが押したのだ。
だから、Cの代理権授与を推認できる。
このように考えられるだろうか。
むしろ、BではなくCが押したというためには、一段目の推定を破る必要があるのではないか。
すなわち、Bは印章を大事に保管している。
その印章の印影が、顕出されている。
だとすれば、これはBが押したのだろう。
いやいや、実は印章はCが保管し、Cが押したのだ、というためには、上記の推定を破る必要がある。
むしろ、Cへの代理権授与を否定する方向の証拠ではないのか。
上記ロジックからは、そういうことになるはずである。
ここが、実は冒頭で述べた、極端に応用的な論点の一つである。
一般には、むしろ二段の推定を署名代理に及ぼしている。
本問でいえば、作成者B代理人Cによる成立の真正を推定できるとする。
(ただし、代理による法律行為、本問では第2の請求原因Aとの関係を念頭に置いている。)
すなわち、上記とは全く逆の方向に考えている。
それは、理論的に、どう正当化できるのか。
そういう問題である。
もっとも、これは誰も書けないから、触れる必要はない。

しかし、何のためらいもなく、「代理権授与を推認する間接証拠」とやってしまうこと。
それは、上記一段目の推定の意味がわかっていない。
そのことを、自ら明らかにするようなものである。
これは、減点対象とされても、やむを得ない。
(だからこそ、前述のように、「白紙」の方がマシなのである。)
ただ、どうもそのように書いた受験生の方が、多数派のようである。
だとすると、大勢には影響ない、ということになるだろう。

代理権授与の推認を可能にするのは、同契約書をCが作成した。
その事実と、併せて主張された場合に限られる。
しかし、その場合でも、推認力は弱い。
無権代理の場合でも、契約書を作成して押印することは、通常あり得るからである。
なお、本問では、日頃から印章をCに預けていたという事情をBが主張している。

(問題文より引用、下線は筆者)

 Bは,本件連帯保証契約書の連帯保証人欄の印影は自分の印章により顕出されたものであるが,この印章は,日頃から自分の所有するアパートの賃貸借契約の締結等その管理全般を任せている娘婿Cに預けているものであり,押印の経緯は分からないと述べた。

(引用終わり)

この事情は、上記推認力を減殺するものである。
特別の授権がなくても、普段から印章をCが持っていた。
それはすなわち、「保証契約の授権があったからこそ印章を預かっている」という筋道を否定するからである。

弁論主義の根拠から書く

設問1(2)をみて、いきなり「Pの見解の問題点」から検討した人。
そういう人は、「判例の射程を限定していないことが問題だ」。
「本問とは事案が違うから問題だ」。
その程度のことを、書き並べることになる。
そういう人は、受かりにくい。

司法試験では、基本を訊くための素材として、事例が出されている。
それを書けば、合格答案である。
司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(民訴法)参照。)
本問で、問われる基本は何か。
弁論主義だということは、すぐにわかるだろう。
だから、弁論主義の根拠から、考えていく。

弁論主義の根拠は、私的自治の訴訟上の反映。
すなわち、当事者意思の尊重である。
裁判所が、当事者の主張しない事実を基礎に判決をするとどうなるか。
当事者の意思に通常反するだろう。
不意打ちになるからである。
ここから、第1テーゼが導出される。

Pのいう最判昭33・7・8は、その例外を認めるものである。
上記弁論主義の根拠との関係で、その例外を認める論理はあり得るか。
例えば、不意打ちにならない程度のささいな食い違いだからだ。
そういう理屈は立つだろう。
ここは、予備校では論点として、同旨の論証が用意されているところである。
長い論証の場合、弁論主義の趣旨からきちんと理由付けされているはずである。
「今時論証ブロックなんて覚えたら落ちる。知らない方がマシ」などと言われる。
しかし、長い論証は、趣旨から書いてあるから、こういうときに役に立つ。

さて、本問との関係で、上記の論理に問題はあるか。
ここで、小問(1)は、若干ヒントになる。
小問(1)は、本人構成か代理人構成かで、契約書の意味が変わることを訊いている。
すなわち、B本人によるのか、代理人Cによるかで、主張立証の構造が変わる。
特に、代理構成を採る場合、本問では代理権授与が主要な争点になると明示されている。

(問題文より引用、下線は筆者)

弁護士L:その判例の読み方にはやや難しいところがありますから,もう少し慎重に考えてください。先にも言ったとおり,本件連帯保証契約書の作成者が代理人Cであるという前提に立つと,本件連帯保証契約書において保証意思を表示したのは代理人Cであると考えられ,その効果がBに帰属するためには,BからCに対し代理権が授与されていたことが必要となります。そうだとすると,第2の請求原因との関係では,BからCへの代理権授与の有無が主要な争点になるものと予想され,本件連帯保証契約書が証拠として持つ意味も当初の請求原因とは違ってきますね。なぜだか分かりますか。

(引用終わり)

当初の請求原因では、被告Bは代理権授与を争いようがない。
にもかかわらず、裁判所からいきなり代理構成を認定されたら、不意打ちになるだろう。
だとすると、もはや、当事者の不意打ちにならないようなささいな食い違いとはいえない。
この点が、Pの見解の問題点だ、ということになる。

多くの人が、「不意打ちになるから」というようなことは、書いただろう。
しかし、弁論主義の根拠にまで結び付けて書いているか。
場当たり的に、「不意打ち」を持ち出したような雑な答案は、評価を下げる。
ここでの合格ラインは、弁論主義の根拠から結論を導いているかである。

訴訟告知ではなく、補助参加について書く

設問2は、訴訟告知の知識を訊いている。
訴訟告知は告知者のためか、被告知者のためか。
補助参加した場合と、告知されただけの者との違い。
そういったことが、メインに違いない。
そう思った人は、受かりにくい。
上記のようなことは、基本事項ではないからである。
問題文にも、その旨示してある。

(問題文より引用、下線は筆者)

弁護士L:・・(略)・・そこで,私は,念のため,第2の請求原因として,Bではなくその代理人Cが署名代理の方式によりBのために保証契約を締結した旨の主張を追加し,敗訴したときには無権代理人Cに対し民法第117条の責任を追及する訴えを提起することを想定して,Cに対し,訴訟告知をしようと考えています

修習生P:訴訟告知ですか。余り勉強しない分野ですのでよく調べておきます。

(引用終わり)

訴訟告知については、細かいことは知らなくていいよ。
そういう趣旨で、上記は挿入されたと考えるべきである。

訴訟告知の効果として、参加的効力がある。
特に勉強していなくても、おぼろげながら知っていた人が多かっただろう。
その程度でも、現場で条文を確認すれば、思い出すことができる。

(民事訴訟法、下線は筆者)

53条
1項 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
4項 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす

46条 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する
各号略。

条文をみれば、補助参加できる者には、参加しなくても参加的効力が生じる。
そういうことではないか、と現場で気付くことができる。

補助参加については、基本論点、Aランクの論点があった。
参加の利益と、効力の及ぶ客観的範囲である。
これは、気付けば誰でも書けるし、自分も書けるはずである。
だから、ここをしっかり書く。
他にも、何か色々ありそうである。
しかし、典型論点ではない。
だから、こんなものは書かなくても受かる。
現場で、そう判断できることが重要である。

※実際には、XからもBからも訴訟告知を受けていること、争点によってはX側に参加した方がよかったり(代理権授与の有無について)、Bの側に参加した方がよかったり(代理行為による保証契約締結の有無について)することから、争点ごとの補助参加の可否や、利害対立がある場合における被告知者への参加的効力の肯否、実際に補助参加した場合と異なり訴訟告知を受けたに過ぎない場合には参加を事実上強制されることになることから、参加的効力発生を制限すべきでないか等の論点がある。
しかし、こういうものは、書きに行く必要がない。

また、設問2は、全体の4割の配点がある。
各設問のうちで、最も配点が大きい。
それなのに、参加の利益と客観的範囲だけでいいのか。
不安になるかもしれない。
しかし、その4割の配点のうちの大部分が、上記2つの論点に乗ってくる。
それだけのことである。
配点が大きいから、書くべき事項が多いということには、ならない。

本問では、Cの主張との関係で書く形式になっている。
参加の利益と客観的範囲に絡めて、主張を構成すればよい。
すなわち、参加の利益がないから、「参加することができる第三者」に当たらない。
それから、設問の事実@Aには、効力が及ばない。
これを、Cの法律上の主張にすればよいとわかる。

どちらも、事前に論証を用意しているはずである。
それに沿って、書けばよい。
ただ、少し悩むのは、訴訟物限定説(主文限定説)に立った場合である。
この立場からは、Cにはそもそも参加的効力が及ばない。
だから、事実@Aが客観的範囲に含むかは、検討する必要がないことになる。
しかし、わざわざ@とAに分けている。
ここに配点があることは、明らかである。
従って、やはり、この点も検討すべきである。
その上で、最終的には、「Cの主張のうち参加の利益の欠缺をいう部分が正当である以上、@もAも否認できる」のようにまとめてしまえばよいだろう。
過度に論理的に考えて、本来書くべき事項を落としてしまう人がいる。
そういう人には、優秀な人も多い。
しかし、そのような態度は受かりにくい。
多少おさまりが悪くても、点を取りに行く方がよい。
どうしても気になる、というのはわかるが、割り切りも大事である。
なお、この点については、判例も、両方検討して両方否定したものがある。

最判平14・1・22より引用、下線は筆者)

  旧民訴法78条,70条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成12年(許)第17号同13年1月30日第一小法廷決定・民集55巻1号30頁参照)。
 また,旧民訴法70条所定の効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく,その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和45年(オ)第166号同年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1583頁参照),この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし,ここでいう判決の理由とは,判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい,これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして,その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。

 これを本件についてみるに,前訴における被上告人のDに対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって,上告人の被上告人に対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく,前訴の判決は上告人の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから,上告人は,前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって,上告人が前訴の訴訟告知を受けたからといって上告人に前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも,前訴の判決理由中,Dが本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが,上告人が本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は,前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから,同記載をもって,本訴において,上告人は,被上告人に対し,本件商品の買主が上告人ではないと主張することが許されないと解すべき理由もない

(引用終わり)

そういう意味でも、両方検討して間違いではない。

なお、判例は、参加の利益については、明確な規範を用いない。
上記判例のとおり「訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合」とするのみである。
逆に言えば、この判例の規範をそのまま使えば、どうとでも当てはめることができる。
学説選択に迷ったら、この規範を使ってしまってもよいだろう。

一方で、訴訟物(主文)限定説は、基準が明確である。
だから、当てはめがしやすいという利点がある。
ただ、その反面で、硬直的な結論になりやすい。
補助参加を肯定しないと次の論点が出てこない。
そういう場合に、少し困ることになる。
その場合には、「44条の異議がなかった場合」として繋げるのが、テクニックである。
参加の利益は、44条の異議があって初めて問題になるからだ。
もっとも、本問は訴訟告知の事案なので、これは使えない。
なので、前述のように、やや強引に両方書いてしまうよりない。

客観的範囲については、判例のように傍論を除くのが一般だろう。
そうすると、@には及ぶが、Aには及ばないとなるのが、素直である。
@の代理による契約締結がなければ、表見代理によって請求を認容できない。
これに対し、代理権授与のないことは、積極的には表見代理の成立要件ではないからである。
こういうところは、受験生は間違えると落ち込みがちである。
しかし、実際には、ここを間違えても、あまり成績には影響しない。
また、そもそも理由中の判断を全て含む説に立って、あっさり肯定してもよい。
むしろ大事なことは、補助参加制度の趣旨や参加的効力の性質。
そこから、結論を導出しているかどうか、という点である。

通常共同訴訟がわかっているか

設問3は、同時審判申出訴訟を問うている。
しかも、控訴の場合が問われている。
ここで、同時審判申出訴訟の控訴審の審理を答える。
そう思う人は、受かりにくい。
併合強制以外は通常共同訴訟だった。
だから、通常共同訴訟を書くのだな。
そう判断できる人が、受かりやすい。

すなわち、共同訴訟人独立の原則を示す。
ここから、一方のみの控訴だと、統一が図れないことが導かれる。
両方控訴の場合には、条文を引いて、41条3項をそのまま示す。
同項の適用によって、併合強制になれば、統一が図られる。
ここで注意すべきは、なぜ併合強制で統一が図られるのか。
その理由を示すことである。
ここで、通常共同訴訟における主張共通と証拠共通の話が出てくる。
これは、どの基本書にも書いてある基本事項だ。
主張共通はないが、証拠共通はあるとするのが、通説である。
そうすると、証拠共通による認定の統一。
これが、審判の統一を裏打ちするものとなる。
逆に言えば、その限度でのみ、統一が図られる。
この部分を、指摘できたかどうか。
ここでは、それがポイントということになる。

逆に、やってはいけないのは、両負けを防ごうとして無理をすることである。
典型例は、何の説明もなく40条を適用することだ。
「実質的には合一確定の要請があるから」等とするのも、同様である。
これでは、通常共同訴訟であるという基本をわかっていない。
そう評価されても、やむを得ないだろう。
これをやってしまうと、大きく評価を落とす。
実は、40条の類推・準用の余地を検討するのは、正しい。
ここでの応用的な論点は、まさにその点にある。
しかし、そのようなことは、書きに行くと、かえって失敗する。

基本だけで紙幅は埋まる

上記の基本事項だけを淡々と書いたのが、下記の参考答案である。
1行25文字で、7ページの中ほどくらいである。
この程度しか、紙幅はない。
応用的な論点を書こうとすると、基本が雑になる。
それは、かえって評価を落とす。
重要なことは、基本原理から説明することである。
例外が問われれば、まず原則の根拠を答える。
応用的な制度が問われれば、その基礎となる基本の制度を答える。
特に民訴は、旧試験時代から、ずっとそこが問われてきた。
それは、今でも変わっていない。
「職権で証拠調べできる場合を論ぜよ」と言われれば、まず弁論主義を説明するのである。
いきなり「職権で証拠調べできるのは以下の場合である」と列挙しても、評価は低い。
受かりにくい人は、職権証拠調べをいくつ挙げたかで、点が付くと思ってしまう。
しかし、実際には、弁論主義から説明しているかで、評価が分かれる。
新試験になって、こういう一般論は書いたらダメ。
そう指導されている人もいる。
これは、誤った指導である。
この部分は、気付かないと、勉強の方向性まで誤ってしまう。
受かりやすい人は一発で受かり、受かりにくい人は何度受けても受からない。
その原因の一つが、ここにある。

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

(1)当初の請求原因Aの事実を立証する場合

ア.本件連帯保証契約書の持つ意味

 ある法律行為について処分証書がある場合において、その成立の真正が証明されたときは、そのまま当該法律行為の成立が認められる。なぜなら、処分証書とは、法律行為を文書でした場合における、その文書自体をいうから、その成立の真正は、そのまま当該法律行為の成立をも意味するからである。
 本問において、請求原因Aの保証契約は、本件連帯保証契約書によってされたから、本件連帯保証契約書は、処分証書としての意味を持つ。従って、その成立の真正が立証されれば、請求原因Aの事実が認められる。

イ.Bの印章による印影顕出の持つ意味

 文書を証拠とするには、その成立の真正を証明する必要がある(228条1項)。成立の真正とは、作成者の意思に基づくことである。
 私文書において、本人の押印がある場合、通常本人の意思に基づいてされたといえるから、成立の真正が推定される(228条4項)。さらに、印章を重視する我が国の慣習上印章は本人が保管し、自ら押印するのが通常であることから、押印の印影が、本人の印章により顕出されたときは、本人の押印であると推定される(判例)。その結果、本人の印章による印影の顕出は、当該文書全体の成立の推定を生じさせる(2段の推定)。
 以上から、本問で、Bの印章による印影が顕出されたことは、上記2段の推定を生じさせ、本件連帯保証契約書の成立の真正を推定させる意味を有する。

(2)第2の請求原因Bの事実を立証する場合

 BのCに対する代理権授与行為は、本件連帯保証契約書によってされたわけではない。従って、本件連帯保証契約書は、上記代理権授与行為との関係では処分証書ではない。そして、本件連帯保証契約書には「B代理人C」と表示されておらず、他にCの代理権をうかがわせる記載もないから、上記代理権授与行為を推認させる書面ということもできない。
 よって、本件連帯保証契約書は、第2の請求原因Bの事実との関係では、単独では証拠としての関連性がなく、何ら意味を有しない。そうである以上、証拠能力の要件としての成立の真正は問題とならないから、そこに顕出された印影も、何ら意味を持たない。

2.小問(2)

(1)民事訴訟において、訴訟資料の収集・提出は当事者の責務とされる(弁論主義)。その根拠は、実体私法上の原則である私的自治の訴訟上の反映、すなわち、当事者意思の尊重にある。そして、当事者の主張しない事実を基礎に判決がされると、当事者にとって不意打ちとなり、その意思に反することになるから、当事者の主張しない事実を、裁判所は判決の基礎としてはならない(弁論主義の第1原則)。
 Pのいう判例は、上記の例外を認めるものであるから、その趣旨は、当事者にとって不意打ちにならないようなささいな事実の食い違いに過ぎない場合に限り、当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることも許されるとしたものと解すべきである。

(2)これを本問でみると、本人B自身による契約締結であるのか、代理人Cを介した契約締結であるのかによって、前記1のとおり、本件連帯保証契約書の意味が変化する等、立証の構造が異なり、Bの防御の在り方も変化することになる。特に、第2の請求原因による場合にはCへの代理権授与の有無が主要な争点になることが予想されるのであり、Xによる主張がない場合、Bはこれを争う機会を奪われることにもなり得る。そうである以上、Xが代理人Cによる契約締結を主張していないのに、裁判所がこれを認定することは、Bにとって不意打ちとなる。従って、本問の事実関係の下では、当事者にとって不意打ちにならないようなささいな事実の食い違いに過ぎないとはいえない。よって、上記判例の趣旨は、本問の場合には及ばないと考えられる。

(3)以上から、Pの見解は、本問にも当然に判例の趣旨が及ぶと考える点に問題がある。

第2.設問2

1.Cの法律上の主張

(1)訴訟告知をなしうる相手方は、「参加することができる第三者」に限られる(53条1項)。しかし、Cには、訴訟の結果について利害関係(42条)がないから、Bがした訴訟告知に基づく判決の効力は、Cには及ばない(主張@)。

(2)訴訟告知によって生じる参加的効力(53条4項、46条1項柱書)は、設問の@及びAの事実の存否には及ばない(主張A)。

2.主張の当否

(1)主張@について
 補助参加制度の趣旨は、当事者の一方を勝訴させて参加人の利益を確保する点にあるところ、勝訴・敗訴の結果とは、端的には判決主文に示される判断にほかならないから、42条にいう訴訟の結果についての利害関係とは、判決主文に示された判断によって、論理的に法的地位が決定される関係にあることをいう。
 本問では、判決主文で示される判断は、連帯保証債務の履行請求権の存在であって、Cは連帯保証人でも主債務者でもないから、これについて論理的に決定される法的地位を有しない。従って、Cには訴訟1の結果について利害関係がなく、Bがした訴訟告知に基づく判決の効力は、Cには及ばない
 よって、主張@は、正当である。

(2)主張Aについて

 参加的効力とは、参加人・被参加人間において敗訴者責任を分担させるために、信義則上認められる効力であるから、既判力と異なり、主文に限定されず、判決理由中の事項にも拘束力が及ぶ。もっとも、主文を導くのに必要でない事項については、必ずしも十分な攻撃防御が尽くされているとはいえないから、上記敗訴者責任分担の基礎を欠いている。従って、拘束力が及ぶのは、判決理由中の判断のうち、主文を導くのに必要な事項に限られる。
 本問で、事実@は訴訟1において表見代理の成立を認めるのに必要な主要事実であるから、主文を導くのに必要な事項である。しかし、事実Aは、表見代理の成立要件ではないから、主文を導くのに必要な事項とはいえない。
 よって、参加的効力は、事実@には及ぶが、事実Aには及ばない。主張Aは、事実@については理由がなく、事実Aとの関係においてのみ正当である。

3.結論

 上記2(1)のとおり、Cにはそもそも参加的効力が及ばないから、主張Aの当否にかかわりなく、Cは@及びAのいずれの事実についても否認することができる。

第3.設問3

1.@の場合について

(1)同時審判申出訴訟は、あくまで通常共同訴訟である。通常共同訴訟では、合一確定の要請(40条1項参照)がなく、各事件は別個独立であるから、共同訴訟人独立の原則(39条)が妥当する。従って、Xの控訴がない以上、XB間の訴訟は控訴審に移審せず、XC間の訴訟のみが控訴審に移審する。その結果、XB間の訴訟はXの敗訴で確定する(116条1項)。

(2)この場合、控訴審では、Cに対する請求のみが審判対象となるから、控訴裁判所がこれを棄却する場合には、Xは両負けとなる。

2.Aの場合について

 C及びXが控訴すると、XC間及びXB間の両訴訟が控訴審に移審する。両訴訟が同一の控訴裁判所に係属する場合には、弁論及び裁判は併合しなければならない(41条3項)。併合審理がされた場合であっても、共同訴訟人独立の原則から主張共通は認められないが、同一裁判所の心証は一つであることから証拠共通が認められる。その限度で、審判の統一が図られる。

3.結論

 以上のとおり、法律上併合審理が強制される場合には、併合審理による証拠共通が作用する限度において、審判の統一が図られ、原告の両負けを避けることができる。他方、Xが控訴せず、又はXの控訴があっても各事件が別個の控訴裁判所に係属した場合のように、法律上併合審理が強制されない場合には、審判の統一は図られず、原告の両負けが生じ得る。

以上

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